報道現場の作業時間を75%削減。リソース不足を補う伴走支援がAI活用の決め手に

株式会社大分放送様は、大分県を放送対象地域とするテレビ・ラジオ兼営の放送局です。JNN系列の放送局として、地域に根ざした情報発信を担う一方、業界全体の人手不足や多メディア展開による業務量の増大という課題に直面していました。

同社ではこれらの課題解決と、よりクリエイティブな業務への注力を目指し、生成AI活用プラットフォーム「Taskhub」を導入。今回は、導入を主導された技術局長兼技術部長の後藤 昌弘さんに、導入の背景から具体的な成果、そして今後の展望まで詳しくお話を伺いました。

導入前の課題と成果

課題導入後の成果
報道部門におけるネット配信記事の作成に、1本あたり6~8時間かかっていた。ワークフローの活用により、記事作成の作業時間が約2時間に短縮 (約75%削減)。
手作業が多く、番組企画などクリエイティブな業務に時間を割けなかった。社員のAIリテラシーが向上。ITスキルに関わらず、アイデア出しや資料作成にAIを活用する文化が醸成されつつある。
業務が属人化しており、ベテランのノウハウ継承が困難だった。Taskhubの「ワークフロー機能」でノウハウを標準化し、経験の少ない社員でも高品質な業務を遂行できた。
情報漏洩リスクへの懸念から、全社的なAI活用に踏み出せなかった。NDA締結やガイドライン策定により、セキュアなAI利用環境を構築。社員が安心して使えるプラットフォームを提供。

手作業の多さと業務の属人化が課題。クリエイティブな時間創出のためAI活用へ

※ 後藤さんのインタビュー写真を元にTaskhubで画像編集

Q. まず、生成AIの導入を検討し始めた背景や、当時の課題について教えてください。

後藤さん: 放送業界では、放送用のコンテンツを制作するだけでなく、Webサイト用の記事やYouTube用の動画など、様々な媒体へ出力する必要があり、作業そのものが非常に増えています。その一方で、業界全体として人手不足や社員の高齢化という課題もあり、多くの業務を限られたマンパワーでこなさなければならない状況でした。特に手作業が多い部署では、本来時間をかけるべき番組やイベントの企画といったクリエイティブな業務になかなか時間を割けないという現状がありました。事業に貢献し、視聴率にも繋がるような、人間にしかできない付加価値の高い作業時間をいかに創出するかが大きな課題でした。

Q. 業界特有の課題もあったのでしょうか?

後藤さん: はい。特に我々のような地方局では、ベテラン社員が持つ豊富な経験やノウハウに業務が依存しがちで、属人化が進んでしまうという問題がありました。例えば、経験豊富なベテラン社員であれば質の高いネット記事を素早く作成できても、経験の浅い若手には同じことができません。そのノウハウをいかにして伝えていくか、という技術継承も大きな課題でした。このような背景から、業務を効率化し、課題を解決する手段として生成AIの活用ができないかと考え始めたのがきっかけです。

セキュリティと「アプリ」形式、そしてリソース不足を補う伴走支援が決め手に

Q. AI導入は、どのようなきっかけで本格的に検討が始まったのでしょうか?

後藤さん: 経営者会議で同業の大手放送局がドラマ制作にAIを活用した事例が共有されたことが大きなきっかけとなりました。その会議でAIの将来性が話題となり、弊社でもトップダウンで「AIを使って業務効率化ができないか」という話が具体的に始まりました。その後、報道部門での原稿チェックやAIアナウンサーといった細かい活用事例も出てくる中で、自社でも導入しようという機運が高まっていきました。

Q. ツールを選定する上で、Taskhubが決め手となったのはどのような点でしたか?

後藤さん: 当初はネットニュースなどで情報を集め、いくつかのサービスを比較検討していました。Taskhubのことは、展示会で初めて知りました。お話を伺う中で、専門的な知識がなくても目的別の「アプリ」や「ワークフロー」という形で使える点に非常に魅力を感じました。また、当時最も重視していたのがセキュリティで、入力した情報がAIに学習されないという点が、企業として利用する上での必須条件でした。Taskhubはその点をクリアしていたことに加え、これまで調べてきた他のサービスにはない、独自の形式が印象的でした。

Q. ツールそのもの以外に、評価されたポイントはありましたか?

後藤さん: 弊社の元々あった課題として、システム担当者のリソースが限られてしまっていたことが挙げられます。そのため、ツールを導入するだけでなく、導入プロセス全体をサポートしていただける体制が不可欠だと考えていました。Taskhubは、トライアルの段階からコンサルティングや勉強会を実施してくださり、非常に手厚いサポートが期待できると感じました。海外の大手サービスでは難しいであろう、日本語でのきめ細やかな対応や小回りの利く体制も安心材料でしたね。実際に、役員会に提案する際の資料作成まで手伝っていただき、導入準備をスムーズに進めることができたのは、この伴走型の支援があったからこそです。

「よくわからないから怖い」という懸念を、手厚いサポートを根拠に説得

Q. AI導入にあたり、社内での合意形成はどのように進められましたか?

後藤さん: やはり「よくわからないから怖い」という、情報漏洩に対する漠然とした不安の声が非常に大きかったです。これは他の系列局でも同様で、リスクを恐れてなかなか一歩を踏み出せないという空気が強くありました。そこで、ChatGPTのようなサービスを会社単体で契約するよりも、Taskhubのようにセキュリティが担保され、手厚いサポートを提供してくれる小回りの利く会社と組む方が、結果的に安全で確実だということを説明しました。経営層もAIの有効性は認識していたので、「自社のリソースだけでは導入を軌道に乗せるのは難しい。だからこそ、費用をかけてでも専門家の力を借りる必要がある」と、外部の力を活用するメリットを説得しました。

Q. 社員が安全に使えるようにするために、どのような環境整備を行いましたか?

後藤さん: まず、キー局から提供いただいたサンプルを参考に、社内向けのAI利用ガイドラインを作成しました。情報漏洩リスクや生成物の権利関係といった注意事項を盛り込み、AIを使う際は会社が契約したサービスを原則として利用するよう定め、いわゆるシャドーITを防ぐ体制を整えました。

その上で説明会も開催し、「非公開の社内情報は入力しない」といった基本的なルールを周知徹底することで、社員が安心して使える環境を構築できたと考えています。そして、法人契約のサービスとしてTaskhubを選定し、提供を開始しました。

記事作成時間が75%削減。ITに不慣れな社員も活用し、全社的なリテラシーが向上

※ 後藤さんのインタビュー写真を元にTaskhubで編集

Q. 導入後、特に成果が出ている活用事例について教えてください。

後藤さん: 最も分かりやすい成果が出ているのは、報道部門でのネット配信記事の作成業務です。これまでは担当者が音源を聞きながら手作業で文字起こしを行い、記事を作成していましたが、短い素材でも非常に時間がかかり、1日に作成できる本数が限られていました。このプロセスにTaskhubで構築したワークフローを導入したところ、従来6時間から8時間かかっていた作業が、約2時間で完了するようになりました。最大で約75%の作業時間削減となり、現場からも高い評価を得ています。

また、重要な点として、このネット配信記事の生成に利用しているのは、あくまで弊社が一般に公開している放送済みのニュース映像などがベースであり、記者が取材した秘匿性の高い情報は一切利用しておりません。

Q. 定量的な成果以外に、どのような変化がありましたか?

後藤さん: 定性的な面では、社員のAIに対するリテラシーが向上したことが大きな成果です。定期的に勉強会を実施していただいたおかげで、これまでAIとは無縁だと思っていたような社員も積極的に活用するようになりました。これは正直、予想外の嬉しい変化でした。自然な話し言葉で指示できるというAIの特性が、ITスキルの有無に関わらず広く受け入れられた要因だと感じています。特に、放送原稿をネット記事にする際に必要な「タイトルを考える」という新しい業務では、アイデア出しのために多くの社員がAIを活用しており、業務に欠かせないツールとなりつつあります。

AIを事業の根幹を支える戦略的な武器へ

Q. 今回の導入プロジェクト全体を振り返って、 成果を上げることができた要因は何だったとお考えですか?

後藤さん: Taskhubというプラットフォーム自体の有効性はもちろんですが、それ以上に、御社のスタッフの方々によるコンサルティングやサポート、アプリやワークフローの作成といった伴走支援が、弊社にとっては非常に大きな価値がありました。先ほども申し上げた通り、私たちだけでは人手が足りず、ここまで具体的な成果を出すことは到底できなかったでしょう。ツールと手厚いサポートが一体となったサービスだったからこそ、このような結果を実現できたと思います。

Q. 最後に、今後の展望と、AI導入を検討している企業へのメッセージをお願いします。

後藤さん: 今後は、現在中心となっている報道部門での活用をさらに定着させつつ、営業部門や番組編成部門など、他部署への横展開を進めていきたいと考えています。将来的には、個別の業務効率化に留まらず、AIを弊社のブランディングやイメージ向上、そして事業の根幹である「視聴率向上」に繋がる戦略的な武器として活用していくことが目標です。

情報の鮮度やスピードが求められる放送業界において、生成AIは非常に強力なツールになります。導入をためらう理由は、多くが漠然とした不安から来ているのではないでしょうか。その不安は、まず試してみて、使いながら解消していくしかありません。Taskhubのように、トライアルに柔軟に対応してくれるだけでなく、セキュリティや導入プロセスに関する相談にも手厚く乗ってくれる伴走型のサービスは、特に弊社のようなリソースが限られた企業にとって、導入のハードルを大きく下げてくれるはずです。まずは一度、試してみることを強くお勧めします。

この記事をシェアする

目次

Popular

人気記事

×
TaskHub PC Banner
TaskHub SP Banner