ローコードとAIの融合が開発の壁を打ち破る。Microsoft技術を駆使した次世代ソリューションの裏側

昨今、多くの企業で導入が進む生成AI。しかし、その活用方法や開発における技術的課題、導入後の現場への浸透など、乗り越えるべきハードルは少なくありません。今回は、Microsoftテクノロジーに精通し、SES事業からAIソリューション開発まで幅広く手掛ける株式会社ミラクルソリューション様にインタビューをさせて頂きました。

同社が提供する「PowerAppsxAI業務アプリ構築サービス」を題材に、AI開発の具体的な課題や、ローコードツールを活用した解決策、そしてユーザー体験(UX)向上のための工夫について、代表取締役の長岡さん、ならびに開発の最前線に立つエンジニアの阿部さんにお話を伺いました。

▼株式会社ミラクルソリューション 代表取締役 長岡さん

▼ミラクルソリューション株式会社 阿部さん

Microsoftテクノロジーへの深い知見を活かし、AIソリューション開発へ

Q.まず、読者に向けて貴社の事業内容について教えていただけますか?
長岡さん:私たちの事業は、SESを主軸としながら、お客様のニーズに合わせて受託開発や派遣など柔軟に対応しています。特に強みとしているのは、Microsoftテクノロジーです。Azureなどのクラウド基盤から、Microsoft 365の運用・移行まで豊富な実績があります。最近ではAI分野にも注力しており、Power AutomateやCopilot Studioを組み合わせた「AIエージェント」の開発にも力を入れています。

Q.今回お話しいただくAIプロジェクトの概要について教えてください。
長岡さん:今回は弊社がお客様にご提供しているソリューションについてお話しします。具体的には、お客様からのご依頼を受け、Power AutomateやCopilot Studioを用いて開発・リリースしたAIエージェントおよびAIシステムである「PowerApps x AI業務アプリ構築サービス」について詳細をご説明できればと思います。

開発期間とコストを圧縮する、ローコードプラットフォームという選択

Q.「PowerAppsxAI業務アプリ構築サービス」を立ち上げるに至った背景や、技術選定の理由についてお聞かせください。
長岡さん:背景には、MicrosoftがAI分野へ大規模な投資を開始した際、その将来性にいち早く着目し、自社で技術実証を進めてきた経緯があります。Microsoft製品を軸としたのは、大企業が求める高いセキュリティ水準を満たしているためです。すでに導入済みのMicrosoft365のID管理基盤をそのまま活用できる点は、インフラ知見を持つ弊社の強みとも合致しており、お客様が最も安全かつスピーディにAIを導入できる最適解だと判断しました。

Q.その中で、技術基盤としてPowerAppsなどを選定されたのはなぜでしょうか?
長岡さん:担当した阿部をはじめ、社内のエンジニアが既にPower Automateを用いたシステム構築で複数の実績を持っていたことが大きな理由の一つです。また、従来のスクラッチ開発では、多大な費用と長い開発期間がお客様の大きな負担となっていました。しかし、PowerPlatformのようなローコードツールを活用することで、開発期間を大幅に短縮し、コストも抑制できます。こうした近年の開発トレンドを踏まえてお客様にご提案し、採用いただくに至りました。

AIが「表」を認識しない壁。プロンプトの工夫とUXへの徹底したこだわり

Q.AIソリューションをお客様に提案し、開発を進める上で直面した課題や壁はありましたか?
阿部さん:はい。PDFやWord文書からテキストを読み取り、パラメータ化する処理自体は比較的スムーズに進みました。しかし、Word文書内に含まれる「表形式」のデータをAIに正しく認識させることが非常に困難でした。他のテキスト部分と同じようにプロンプトで指示を出しても、AIが表の構造を理解できず、キーとバリューの形式で綺麗に出力してくれなかったのです。データソースの形式に合わせてAIに出力させる部分で、多くの時間を要しました。

Q.その「表が認識されない」という課題は、どのように乗り越えたのでしょうか?
阿部さん:解決策となったのは、Microsoftが提供するAI Builderという機能です。AI Builder独自のプロンプト実行機能を使い、「どの値がキーで、どの値がバリューに該当するのか」を具体的に自然言語で記述して指示しました。すると、AIがその指示を正確に理解し、綺麗に表データを読み取って出力してくれるようになったのです。これには私も驚きました。

Q.他にも開発で苦労された点はありますか?
阿部さん:もう一つは、Teamsと連携させたAIチャットボットによる操作サポート機能の実装です。これは、ユーザーの質問に対してAIが回答案を作り、それを人間のオペレーターが確認して返信する仕組みなのですが、この構築には工夫が必要でした。

まず、アプリの専門性が高かったため、お客様からいただいた情報をAIが正しく読み取れるよう、ナレッジの形を整える作業に時間をかけました。加えて、今回はAIに全てを任せるのではなく、最終的に人間が承認するという工程を挟む必要があったため、AIの処理と全体の運用フローをどう噛み合わせるかという設計も一から作り込んでいます。今後は新しい機能を活用して、このあたりの処理をよりスムーズに進化させていきたいと考えています。

ユーザーが「使いたい」と思う体験を。処理速度と細部への配慮が鍵

Q.どんなに画期的なツールでも、中々現場で使ってもらえないということもあります。利用者に活用してもらうために、UX(ユーザー体験)の面で工夫したことはありますか?
阿部さん:おっしゃる通りで、その点は今回の開発で強く意識させられた部分です。ユーザーが「自分で操作した方が早い」と感じてしまっては、アプリケーションは使われなくなってしまいます。特にAIによるOCR処理は、どうしても時間がかかりがちです。当初はかなり時間がかかっていた処理を、プロンプトの書き方や周辺の処理フローの順番を見直すことで、最終的にAIの実行時間を初期の半分以下にまで短縮しました。処理時間が5〜6秒かかるとユーザーは遅いと感じてしまうため、処理速度の向上には細心の注意を払いました。

Q.処理速度以外に、UX向上のために意識したポイントはありますか?
阿部さん:アクセス権限の管理や、予期せぬ文字列が入力された際のサニタイズ(無害化)も重視しました。この点において、開発基盤にPowerAppsを選んだことは正解でした。PowerAppsには、データソースを破損させる可能性のある不正な記号などを自動的に除去してくれる機能が備わっており、堅牢なシステムを構築する上で非常に助かりました。その他にも、マウスを合わせた時の挙動や、注意書きの表示位置といった非常に細かい点についてもお客様からご指摘をいただきながら改善を重ね、ユーザーが直感的に使えるようなインターフェースを目指しました。

人の目で探していた情報をAIが瞬時に抽出。大幅な業務効率化に期待の声

Q.実際にソリューションを導入したことで、どのような成果がありましたか?
阿部さん:OCR機能については高い評価をいただいています。これまでは、担当者の方が分厚いPDF資料の中から、約20項目もの必要な情報を目で見て探し出し、手で入力するという作業を行っていました。しかも、資料のフォーマットは完全に統一されているわけではなく、毎回探すのに大変な労力がかかっていたと伺っています。今回開発したOCR機能により、形式が異なる文書からでも必要な項目をAIが正確に、かつピンポイントで抽出できるようになりました。そのデータをパラメータ化して後続の文書発行までを自動化できたことで、「大幅な時間短縮が見込める」と期待を寄せていただいています。

AI開発の先へ。「日本一AIエンジニアを輩出する企業」を目指す人材育成への挑戦

Q.最後に、貴社の今後の展望についてお聞かせください。
長岡さん:私たちは、「日本一、世界一AIエンジニアを生み出す企業になりたい」という大きな目標を掲げています。その実現に向け、現在AIエンジニア向けの教育コンテンツを制作中です。既に「1ヶ月でWindowsサーバーエンジニアになる本」といった内容の「なる本シリーズ」という書籍があるのですが、その続編として「1ヶ月でAIソリューションエンジニアになる本」という書籍を執筆しており、まもなくリリース予定です。

さらに、これらのコンテンツを掲載するeラーニングプラットフォーム「Miracle Learn」を立ち上げました。これは弊社の社員教育だけでなく、一般の方向けのBtoC、法人のお客様向けのBtoBとしても展開していきます。今後もお客様の課題解決や社内での実証を通じてAI技術を磨くだけでなく、教育という側面からも多くのエンジニアを育て、日本のIT業界が抱える人材不足という社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。

Q.読者の方へメッセージをお願いします。
長岡さん:私たちがリリースしたeラーニング「Miracle Learn」は、サーバーエンジニアやクラウドエンジニア、そしてAIを扱えるエンジニアを目指すためのコンテンツが見放題で、月額1,200円から学習をスタートできます。地方にお住まいであったり、未経験の学生さんであったり、「自分でもエンジニアになれるだろうか」と不安に思っている方でも、気軽に挑戦できる価格設定とコンテンツになっています。ぜひこの「Miracle Learn」を活用して、エンジニアへの第一歩を踏み出していただきたいです。

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