株式会社xenodata lab.は「経済予測」という専門領域に特化した大規模言語モデル(LLM)を提供しています。同社が開発した『SPECKTLAM』は、単に未来を予測するだけでなく、その「根拠」を分析・提示することで、企業の高度な意思決定を支援します。
今回は、同社代表取締役の関さんに、『SPECKTLAM』開発の背景から、ChatGPT登場後の戦略転換、そして「予測AI」が持つ真の価値と今後の展望について、深く話を伺いました。

ChatGPT登場前からLLMに着目、サービス連携を前提とした“事前処理”で独自の価値を創出
Q.まず、貴社の事業内容を教えていただけますでしょうか。
関さん: 我々は、経済予測を専門とするAIを開発し、SaaSモデルで提供しています。例えば「アルミニウムの価格はどうなるか」「米国のインフレ率はどう推移するか」といった、様々な経済動向の将来を分析し、企業の意思決定を支援するサービスです。
私自身は、株式会社xenodata lab.の代表を務める関と申します。キャリアの最初は公認会計士として5年ほど監査業務に従事し、その後、事業開発の経験を積むために株式会社ユーザベースに入社しました。そこでSPEEDAなどの事業に携わる中で、「将来の予測や分析を自動化できないか」という顧客ニーズの存在を強く感じました。
当時はまだAIという言葉が一般的ではありませんでしたが、そこに大きな可能性があると考え、このxenodata lab.を立ち上げた次第です。
Q.経済予測AI『SPECKTLAM』を開発した背景について教えてください。
関さん: 開発の直接的なきっかけは、2022年頃、ChatGPTが登場する前に遡ります。当時、技術への探究心が強い弊社のエンジニアが、会社のプロジェクトとは別に自主的に言語モデルを作っていたのです。私はそれを見て「これは、とんでもない技術だ」と衝撃を受けました。それまでの自然言語処理とは次元が違う、革新的なテクノロジーだと確信し、この技術に投資することを決めました。その意思決定から半年ほどでChatGPTが世に出てきて、「やはり皆気づくよな」と感じたのを覚えています。つまり、市場のトレンドを追って「次は言語モデルだ」と考えたのではなく、社内の技術的ブレークスルーから開発がスタートしたという経緯になります。
Q.ChatGPTの登場は『SPECKTLAM』の開発にどのような影響を与えましたか?
関さん: 当初は我々もChatGPTのような汎用的なリサーチができると考えていましたが、巨大テック企業が提供するサービスと同じ土俵でかつ「会話型」の領域で戦うのは、現実的ではないと判断しました。経済分野に特化すれば勝てるかとも考えましたが、昨今目覚ましい進化を遂げている汎用的なAIモデルを見ても分かる通り、対話型の領域で真正面から競合するのは得策ではないと感じています。
そこで我々は、サービスに連携できる形へと大きく舵を切りました。我々のサービスでは50万社の企業分析や7万指標の経済統計予測など、膨大な数の分析を提供しています。これを汎用的なLLMのAPIを使って実行しようとすると、API費用が莫大な金額になってしまいます。サービス提供側にとって、都度プロンプトを入力する使い方ならまだしも、我々のように何万、何十万件もの分析結果を「事前に処理しておく」使い方には、外部APIは全く向いていません。自社でLLMを持ち、我々が独自に持つ用語辞書や構造化データと連携させ、欲しい出力結果を事前に大量処理できる点にこそ、自前で開発を続ける価値があると考えています。
予測の“根拠”を言語モデルで可視化。納得感ある経営判断支援
Q.『SPECKTLAM』は具体的にどのような価値を提供しているのでしょうか?
関さん: 『SPECKTLAM』の最大の価値は、予測結果の「根拠分析」ができる点です。例えば、「緩やかな円安が進む」という予測結果が出たとします。これまではその予測結果だけが提示されていましたが、『SPECKTLAM』によって「なぜそう言えるのか」という根拠を文章で示せるようになりました。「レアメタルの需要が増加している」「このマクロ指標が上昇している」といった複数の要因を分析し、予測に至った経路を説明してくれるのです。根拠が提示されなければ、その予測結果をブラックボックスとして受け入れるしかなく、経営の重大な判断材料としては不十分になってしまいます。
しかし、特に大企業の経営判断の現場では、その背景にあるロジックが不可欠です。『SPECKTLAM』が根拠を分析することで、ユーザーは「なるほど、このデータがこう動いているから、確かにそうなる可能性が高いな」という納得感を持って、次のアクションを検討できるようになりました。
Q.実際に導入されている企業の活用事例について教えてください。
関さん: 例えば、株式会社クボタ様にご導入いただいています。クボタ様の生産管理部門などでは、我々のAIを使って自社製品の月次需要を予測されています。その予測結果と、先ほど申し上げた『SPECKTLAM』による根拠分析を参考に、自社の生産計画の妥当性を検証するなど、経営判断の一つとしてご活用いただいています。もちろん、我々の予測だけで全てを判断されるわけではありませんが、外部のマクロ環境から見た客観的な視点として役立てていただいている事例です。
Q.導入企業がスムーズに活用できるよう、どのような工夫やサポートをされていますか?
関さん: 我々のサービスは、直感的に操作いただけるUIの構築に努めていることや、導入目的を明確にお持ちのお客様が多いこともあり、「導入したものの使い方が分からない」という状況は少ないと認識しています。表形式の情報が多すぎると感じるお客様向けに、要点を文章で要約する機能なども備えています。
その上で、我々が注力しているのは、文化の醸成です。「AIの予測を基に経営判断をする」という文化は、まだ世の中に十分に根付いていません。この領域のパイオニアとして、AI予測の価値や信頼性をいかにご理解いただくか。お客様一社一社と向き合い、丁寧に説明し、AI活用の文化を組織に根付かせていく啓蒙活動こそが、我々の責任だと考えています。
生成AI時代に「予測AI」が持つ大きな可能性
Q.今後、『SPECKTLAM』やサービス全体をどのように発展させていきたいですか?
関さん: 我々の大きなビジョンは、「何か将来予測を知りたいと思ったら、まずxenoBrainを開くのが当たり前」という世界を実現することです。
そのために、今後はよりインタラクティブ性を高めていきたいと考えています。例えば、ユーザーが「為替がもう少し円高に振れたら、この指標はどう変わるか」といったシナリオを対話形式で試せるようにしたり、AIエージェントが必要なデータを自動で収集・分析したりできるようにするなど、ユーザー自身が納得のいく予測を画面上で作り出せる体験を提供したいです。日本のビジネスパーソンが来期の予算や中期経営計画を立てる際に、まずxenoBrainで叩き台を作り、上司とその画面を見ながら議論する。そんな未来を一日も早く実現したいですね。
Q.最後に、企業のAI活用を検討している読者へメッセージをお願いします。
関さん: この記事を読んでくださっているのは、企業のAI活用を真剣に考えている方々だと思います。昨今は生成AIの話題で持ちきりですが、企業のDXや経営効率化を考える上で、もう一つ巨大な「予測AI」という分野があることも、お伝えしたく思います。需要予測や経営判断の高度化において、予測AIは非常に大きな貢献ができます。
今回ご紹介した『SPECKTLAM』は、経済に特化した国内初の生成AIであり、非常にユニークな存在です。そして、その技術を活用した我々のサービスは、生成AIだけでなく「予測AI」の力で皆様のビジネスを支えることができます。将来の不確実性と向き合う際には、
ぜひ我々のような予測AIの専門家を頼っていただけると嬉しいです。