株式会社オプトは、AI活用を全社的な重要テーマと位置づけ、業務効率化から顧客提供価値の向上まで、多岐にわたる取り組みを加速させている。同社が目指すのは、AIをテコに労働集約型のビジネスモデルから脱却し、社員一人ひとりがより付加価値の高い業務に集中できる環境を構築することだ。そのユニークな推進体制や具体的な活用事例、そして今後の展望について、全社のAI推進を担う取締役 千島さんにお話を伺いました。

LTVの最大化を目指し始まったAI活用
Q.まず、貴社がAI活用で目指している全体像について教えてください。
千島さん: 千島さん:オプトの大きな方針として、LTVM(Life Time Value Marketing:オプトでは、エンドユーザーへの価値提供を通じて、顧客企業の持続的な事業成長を実現する意味で使用)の実現を掲げています。その実現のためには、社員がより顧客の課題や業界構造とエンドユーザーが求めていることを理解し、顧客と向き合う時間を創出することが不可欠です。そこで、AI活用における大きな方針として3つの柱を立てています。一つ目は、AIを活用してオペレーション業務を自動化し、社内フローを改善していく「業務効率化」。二つ目は、タレント力の向上やナレッジマネジメントといった「組織力強化」。そして三つ目が、これらの活動を支える「AI-Readyな情報基盤の構築」です。これらを有機的に連携させながら、全社的な生産性向上と提供価値の最大化を目指しています。
Q.具体的な取り組み事例にはどのようなものがありますか?
千島さん: 領域は多岐にわたりますが、例えばスケジュール調整の場面では、多忙な社員の空き日程をAIが自動で解析し、調整可能性の高い候補を提案してくれるPoC(概念実証)を行っています。本人にSlackで打診し、やりとりを重ねて最終的な日程を確定するところまでを自動化する試みです。また、人事領域では採用活動にも活用しており、私も現在2027年卒の新卒採用面接でAIを活用しています。
「ミドルアップダウン」な推進と創発的な開発文化
Q.非常に多くの取り組みをされていますが、それらを実現に移すための社内体制はどのようになっているのでしょうか?
千島さん: オプトでは「ミドルアップダウン経営」を掲げて組織運営を行っています。AIの取り組みは、経営層がトップダウンで「これを使いなさい」と指示するだけでは現場に浸透しませんし、かといって個人のボトムアップの活動だけではインパクトが限定的になりがちです。そこで重要になるのが、部長を中心としたミドルレイヤーの存在です。彼らがトップの方針を現場の言葉に翻訳して伝え、同時に現場から生まれた良いユースケースを吸い上げて全社に展開する、そのハブとしての役割を担ってくれています。
Q.トップダウンとボトムアップ、両方の動きをミドル層が繋いでいるのですね。
千島さん: はい、その通りです。トップダウンもボトムアップもどちらも非常に重要で、その両輪を回すキーとなるのがミドル層だと考えています。例えば沖縄拠点のAI変革プロジェクトも、現地の部長陣が「自分たちで変革を起こそう」と主体的に活動を進めてくれています。各組織にいるトップレベルのプレイヤーが良い使い方を実践してくれると、その成功事例と共にAI活用が組織全体に広がりやすいという実感があります。
Q.広告運用エージェントのような先進的な取り組みは、どのようなきっかけで生まれるのですか?
千島さん: これもまた、様々な要因が集約された結果です。経営視点では、AIで生産性を上げられなければ企業の存続が危うくなるという強い危機感があります。一方で現場では、労働集約型のビジネスであるが故の恒常的なリソース不足に悩み、「オペレーションはAIで自動化を進め、自分たちは考える作業や顧客と向き合う活動に時間を使いたい」という切実なニーズがありました。経営と現場、双方の課題感が合致した形です。総じて言えば、すべての起点は「課題」にあります。社内では常々「顧客と課題の解像度を上げていこう」と言っているのですが、解くべき課題が明確になって初めて、その解決手段としてAIが活きてくるのだと考えています。
コア事業におけるAIエージェント活用状況と今後の展望
Q.コア事業である広告運用における「広告運用エージェント」について詳しく教えてください。
千島さん: 広告運用と一言でいってもプロセスは様々ですが、例えばクリエイティブ制作の領域では、AIで静止画や動画を生成することや、ターゲットユーザーのペルソナを生成するAI、そのペルソナ向けのショート動画のストーリーラインを考えてくれるAIなどが稼働しています。この「クリエイティブ制作エージェント」という一つの中にも、さらに複数の専門エージェントが連なっているイメージです。ただ、現段階では各エージェントが分業している状態であり、今後はこれらを束ねてより大きなタスクをこなせる統合的なエージェントへと進化させていきたいと考えています。
Q.現場での開発や改善はどのように進めているのですか?
千島さん: 現場主導での創発的な開発を重視しています。例えば、同じ課題に対して拠点内で複数のアプローチやエージェントが生まれることもあり、オプトではそれを「被りは良し」として奨励しています。案件単位でそれぞれが最適なツールを作り、その中で汎用性やインパクトが高いものを横展開していくスタイルです。これにより、現場のリアルな課題に即したAI活用が次々と生まれています。開発基盤としては、全社で導入しているGoogle Workspace上でツールが作られるケースが多いですね。
Q.最後に、事業価値をさらに高める上で、今後AIをどのように活用できるとお考えですか?
千島さん: 大きくは「社内の生産性向上」と、それと表裏一体である「顧客提供価値の最大化」の両輪を回していくことが重要です。これまでは社内向けの活用事例を中心にお話ししましたが、今後は顧客提供価値の向上への貢献をさらに強化していきます。そのために最も重要なのは、AIをどう使うか以前に、「顧客の課題の解像度を上げること」です。オプトが長年培ってきたインハウス支援事業の経験を活かし、顧客のより近くで、同じ目線で課題に向き合う。その姿勢こそが、真の顧客提供価値の向上に繋がり、AI活用の精度を高めていくと確信しています。これまでの個別のAI活用という「点」の取り組みを、今後は提供価値を軸に束ねていくことで、「面」として大きなインパクトを創出していきたいと考えています。