代表1人とインターン6名で実現。業務時間8割削減を達成した農業スタートアップのAI活用戦略

2021年創業の農業コンサルティング会社、株式会社農情人では、生成AIの全社的な活用が驚異的なスピードで進んでいる。代表1人とインターン6名という少人数体制ながら、導入から短期間で業務時間を最大8割削減するという高い成果を達成した。その裏には、「農業の常識を超越する」という壮大なビジョンを掲げ、超高齢化が進む農業界の課題解決と、自社の生産性最大化という2つの目的をAIで両立させる戦略があった。今回は、株式会社農情人 代表取締役の甲斐さんに、同社の取り組みについて伺いました。

▼株式会社農情人における生成AI活用

項目 概要
主な活用業務 ・ブログ執筆(780日以上連続更新)、プレスリリース作成

・SNS投稿、音声配信(台本・音声)などのコンテンツ制作

・市場リサーチ、議事録要約、資料作成

・農家向けAIサービスの開発 等

主な導入効果 ・リサーチ業務、Discord運営チェック:7〜8割短縮

・ブログ執筆:約6割削減

・企画の試作サイクル:数週間 → 3〜4日に短縮

推進体制 代表取締役 1名 + 高校・大学生インターン 6名

鍵は「人がやるべきことへの集中」。AIでコンテンツ制作からサービス開発まで加速

Q.まず、農情人では生成AIをどのような目的で導入されたのか、背景を教えてください。

甲斐さん: 私たちの目的は、一言で言うと「農業の常識を超越する」を実現するための武器として生成AIを活用することです。その背景には2つの大きな課題認識があります。

1つ目は、農業界が新しいデジタル技術の波に乗り切れていないという深刻な課題です。ご存知の通り、農業従事者の約7割が65歳以上という超高齢化社会で、「キツイ、汚い、かっこ悪い」といった3Kのイメージも根強いです。私たちは、そんな状況だからこそ、小規模な農家さんでも簡単に使える最先端技術を届けたいと考えています。

2つ目は、私たち自身の経営課題です。弊社は私とインターン6名というマイクロ法人で、オンラインコミュニティ運営からブログ執筆、クライアントワークまで、全員が複数の業務を兼務しています。この体制で生産性を最大化するには、AIには担えない「人がやるべきこと」にリソースを集中させる必要があったのです。

Q.非常に広範囲に活用されているようですが、具体的にはどのような業務で活用されていますか?

甲斐さん: 最も活用しているのはコンテンツ制作ですね。例えば、780日以上毎日更新を続けているブログ記事は、AIに構成案や初稿を作らせることで、1記事あたりの執筆時間を90分から30分へと約6割削減できました。他にもプレスリリースの作成、SNS投稿文、さらには書籍執筆の構成案まで、あらゆる文章作成業務でAIは欠かせません。最近では、台本作成から音声生成までAIで行う音声配信にも挑戦しており、更新頻度を週1回から2回に増やすことができました。

正直なところ、インターン生も含め、それぞれが自発的に活用範囲を広げているので、私も全てを把握しきれていないほどです。議事録の要約やリサーチ業務はもちろん、農産物のプロモーション動画や概念説明用のマンガ制作など、クリエイティブ領域にも活用が広がっています。

「まずAIに聞く」文化が試作サイクルを数週から3日へ短縮

Q.それだけの活用で、定量・定性両面で大きな効果が出ているようですね。

甲斐さん: はい。定量的な効果で言えば、技術動向のリサーチやDiscordコミュニティの運営チェックにかかる時間は7〜8割程度短縮されました。これまで数時間かかっていた作業が30分程度で終わるようになったのは非常に大きいです。

しかし、それ以上に重要なのが定性的な効果、特に「挑戦の加速」だと感じています。社内では「まずAIに聞いてみる」「まずAIに作らせてみる」が合言葉になっており、新規プロジェクトを立ち上げる心理的なハードルが劇的に下がりました。結果として、企画からプロトタイプ開発、プレスリリースまでの一連の試作サイクルが、以前は数週間かかっていたものが3〜4日に短縮されています。2025年のある月には、1ヶ月で15本ものプレスリリースを配信したこともありました。

AIとの壁打ちでアウトプットの質も向上し、定型業務から解放された分、私たちは企画のブラッシュアップなど、より創造的な業務に時間を使えるようになりました。

Q.代表1人とインターン生という体制で、どのようにAI活用を浸透させたのでしょうか?

甲斐さん: 私たちは「まず使ってみる」という実践を何よりも重視しています。小難しい座学よりも、とにかく最新のAIツールに触れてもらう。インターン生には最新モデルが使える環境を提供し、資料作成などの実践を通じて使い方を覚えてもらっています。高校生や大学生でも、AIを使いこなせば、ベテラン顔負けの質の高いアウトプットを出せるようになる。これは大きな教育効果だと感じています。

また、社内だけでなく、社外を巻き込んだ活動も積極的に行っています。農家さんが現場の課題をAIで解決する「農業AIハッカソン」を開催したり、大学でAIを使った企画書作りの講義を行ったり、日本農業新聞で特集を組んでいただいたり。こうした対外発信を通じて、私たち自身の知見も深まっています。

業務効率化の先へ。AIで新たなサービスを創造し「新3K農業」を目指す

Q.AI活用は社内の業務効率化に留まらず、新たなサービス開発にも繋がっているのですね。

甲斐さん: はい。例えば、農業AIハッカソンからは、農家さんがレビューへの返信文を簡単に作成できる「らくらく農園だより」というサービスが生まれました。他にも、乳製品の消費を応援するゲーミフィケーションアプリ「Milk Monster」を企画するなど、AIを起点とした事業創造に挑戦しています。

Q.最後に、今後の展望についてお聞かせください。

甲斐さん: 短期的には、農家さん向けの伴走型AI活用支援サービスを全国に展開し、自治体と連携した「地域課題×AI」の企画も広げていきたいと考えています。

そして長期的なビジョンとして、私たちは生成AIの活用を通して、日本の農業を「かっこよくて、稼げて、感動を与える」という“新3K”に変えていきたいです。日本の農業におけるAI普及率はまだ低いですが、私たちはこれを「遅れている」のではなく「伸びしろがある」と捉えています。AIという武器を手に、若者が「農業をやってみたい」と心から思える未来を創ること。それが、私たちの最終的なゴールです。

株式会社農情人では、共に農業の未来を創るインターン生を募集しています!

今回の記事で紹介したように、株式会社農情人では、高校生や大学生のインターンが第一線で活躍しています。

  • 「AIを使って社会課題を解決したい」
  • 「スタートアップのスピード感の中で、実践的な経験を積みたい」
  • 「農業や食の未来に貢献したい」

そんな熱意ある学生の皆さんからのご応募をお待ちしています。詳細は以下のページをご覧ください。

▼ご応募はこちらから

https://ai-intern.metagri-labo.com/