生成AIを始めとしたAIの進化が目覚ましい中、今注目を集めているのが「AIエージェント」です。
多くの人がAIエージェントに言及する中、「AIエージェントって何?」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
AIエージェントは自律性を持ち、人間と同じように自発的に行動するAIです。
本記事ではAIエージェントについて詳しく解説しますので、是非ご覧ください。
AIエージェントは自律型のAI
AIエージェントとは、特定のタスクを自動的に実行するために設計された高度なソフトウェアプログラムであり、人工知能(AI)の一分野です。
Gartner社では、AIエージェントは以下のように定義されています。
デジタルおよびリアルの環境で、状況を知覚し、意思決定を下し、アクションを起こし、目的を達成するためにAI技法を適用する自律的または半自律的なソフトウェア
引用:Gartner
AIエージェントの大きな特徴は「自律性」であり、ユーザーの意図や状況を理解し、適切な行動を自動的に選択します。
そのため、質問や入力に対し決まった形で応答する従来のAIツールと異なり、機転を効かせてタスクを実行していくことが可能です。
また、AIエージェントには「パーソナルエージェント」と「企業エージェント」という2つの考え方があります。
パーソナルエージェント
パーソナルエージェントとは、ユーザー1人1人のスケジュール管理や今日やるべきことの提案など、日常生活のサポートを行うAIエージェントです。
企業エージェント
企業エージェントとは、企業の業務の中に入り込み、業務の効率化・自動化を行うAIエージェントです。
例えば、企業ホームページやサービスページに訪れたユーザーの求める情報を自分で考え提供する、カスタマーサポートなどに活用することができます。
AIエージェントの5つの種類
AIエージェントの種類には以下の5つがあります。
- 反応型エージェント
- モデルベース型エージェント
- 目的ベース型エージェント
- 効用ベース型エージェント
- 学習型エージェント
この5つについて解説します。
①反応型エージェント
反応型エージェントは、事前に定義されたルールや条件に基づいて即座に反応するシステムです。
反応型エージェントの例として、チャットボットがあります。
チャットボットはユーザーからの入力に対して事前にプログラムされた応答を返します。
これらのエージェントはシンプルな構造を持ち、リアルタイムでの応答が求められる業務に適しています。
②モデルベース型エージェント
モデルベース型エージェントは、環境の状態を内部に保持し、その情報を基に状況に応じた判断を行います。
例えば、ロボット掃除機は部屋の地図を内部に保持し、障害物を避けながら効率的に掃除を行います。これにより、動的な環境でのタスクに適しています。
③目標ベース型エージェント
目標ベース型エージェントは、与えられた目標を達成するために自律的に考え、行動選択を行います。
④効用ベース型エージェント
効用ベース型エージェントは、効用理論に基づいて最適な行動を選択します。効用とは、特定の状態や行動から得られる満足度や利益を指します。
例えば、投資アドバイザーAIは、投資ポートフォリオの効用を最大化するために最適な投資戦略を提案します。
リスクとリターンのバランスを考慮しながら最適な意思決定を行うため、経済や金融の分野で特に有用です。
⑤学習型エージェント
学習型エージェントは、過去のデータや経験を基に自己改善を行い、時間の経過とともにパフォーマンスを向上させます。
動的な環境での適応能力が高く、長期的なパフォーマンス向上や、常に学習し続ける必要がある業務や市場での活用に適しています。
AIエージェントと生成AIの3つの違い
AIエージェントと生成AIは一見同じように感じますが、以下の3つの違いが存在します。
AIエージェント | 生成AI | |
①行動の仕方 | 自律型(自ら考え、適切な判断を下す) | 受動型(人間の指示に基づき行動する) |
②効率化できること | 複合的なタスク | クリエイティブな業務 |
③学習プロセス | 利用者のフィードバック・最新の情報を絶えず学習 | 事前にセットされたデータ以外の学習は行わない |
活用例 | ・カスタマーサポート ・音声アシスタント ・自動運転 | ・動画作成 ・BGM(音楽)作成 ・コピーライト |
①行動の仕方が違う
AIエージェントと生成AIの一番の違いは行動方法にあります。
AIエージェントは、与えられた目標に対し、必要なタスクを自ら考え、「自律的」に実行します。
従来のAIと異なり、「○○のタスクを実行しませんか?」といったように、AIの側から人間に対して働きかけることができます。
また、AIエージェント自身がその他のAIと協業し、一緒になってタスクを実行していくことも可能です。
一方で生成AIは、人間の指示(プロンプト)に基づき行動し、その指示に対する回答を出力します。
受動型の行動方法であり、生成AI側からの働きかけは存在しません。
②活用用途が違う
AIエージェントと生成AIでは、活用場面に違いがあります。
生成AIは、「コピーライト」などの、人間の定性的な感覚を理解したクリエイティブな業務に活用できます。そのため、テキスト・画像・動画の作成といった創造性が必要な仕事の補助として利用することができます。
一方でAIエージェントの強みは、「その場その場での機転が必要な業務」への活用です。自律性を持っているAIエージェントは、自ら考えてその場面における最適な行動を選択するため、より人間が日常的に行う業務や行動の効率化が期待できます。
どちらかが優れているわけではなく、場面に合せて適切に活用する必要があります。
③学習プロセスが違う
AIエージェントと生成AIでは、情報の学習の仕方が異なります。
生成AIは、RAGやファインチューニングを利用しない限り、企業導入されているモデルでは入力された情報の学習は行われません。
AIエージェントは、自身が作り出した成果物に対する人間のフィードバックを学習し、次のタスク実行の際に活かすことができます。
AIエージェントを活用する3つのメリット
AIエージェントの業務活用には、以下の3点が存在します。
①業務効率化
②個別最適化されたサービスの提供
③人為的ミスの削減
この3つのメリットについて解説します。
①業務効率化
AIエージェントは、ある一連の業務プロセスの自動化を実現することができます。
「プレゼン資料作成」を例として考えると、資料の構成決めから、それに伴う情報収集と資料そのものの作成を、「○○のプレゼン資料を作って」という命令一つで実行できます。
人間が行う作業を全く同じ形で踏襲し、人間以上の早さで仕上げていくことができるのがAIエージェントです。
単純作業を命令一つで済ますことで、人間はよりクリエイティブな「人間だからできる仕事」に時間を使っていくことができます。
②個別最適化されたサービスの提供
AIエージェントは、個々のユーザーに最適化されたサービスを提供することを可能にします。
ユーザーの行動履歴や過去の購入履歴を分析し、そのデータに基づいて、個々のニーズに合わせたサービスや製品を提案できます。
また24時間365日稼働させることができるため、常に質の高いカスタマーサポートを提供できます。
③人為的ミスの削減
AIエージェントは、データ入力や計算などの反復的な作業を自動化することで、人為的ミスを大幅に削減します。
人間が行う作業にはどうしてもミスがつきものですが、AIエージェントは一貫して正確な結果を提供します。
これにより、品質の向上やコスト削減を達成することができます。情報に制限をかけることや、インシデントが発生していないかの定期的な監査が必要です。
AIエージェントのサービス事例
AIエージェントのサービスは、海外企業を中心に提供されています。
ここでは、具体的に以下の2つのAIエージェントサービスについて解説します。
IBM Watson Assistant | AIエージェントやAIアシスタントをノーコードで作成するツール |
Alexa Smart Properties | Amazonが提供する、Alexaを用いた音声エージェントサービス |
①IBM Watson Assistant
IBM Watson Orchestrateは、ビジネス現場の業務自動化を支援するAIエージェントやAIアシスタントをノーコードで作成することのできるツールです。
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組織内の様々なアプリケーションやデータソースと連携可能であり、過去の対話や社内知識から学習し文脈を理解する継続学習機能を備えています。
IBMの自動化技術により手作業プロセスの最大80%削減も可能とされ業務生産性の大幅向上が期待できます。
参考:IBM
②Alexa Smart Properties
Alexa Smart PropertiesはAmazonが提供する、AIアシスタント「Alexa」を活用した音声エージェントサービスです。
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日本では「高齢者施設」「ホテル」「マンション」などの施設での導入が想定されており、人材不足とインバウンド増加に伴う宿泊施設の需要増加の間に存在する課題解決に活用されるとのことです。
AIエージェントの活用事例
日本でもAIエージェントの作成や業務活用の構想を掲げる企業が増加しています。
①AIエージェントによる業務アシスタント 日本電気株式会社
NECは、2025年1月から業務を自律的に行うAIエージェントを提供予定であり、生成AIなどのITサービスを統合活用することで生産性向上を図ります。
このAIエージェントは、ユーザーの依頼内容をもとにタスクを分解し、業務プロセスを設計・実行する機能を持ち、特に経営計画や人材管理、マーケティング戦略の自動化が期待されています。
従来、複数のAIを組み合わせることで課題が生じていましたが、NECはその複雑さを解消し、高度な専門業務を効率化する助けとなることを目指しています。
参考・画像引用:日本電気株式会社
②複数のAIエージェントが協業する「Smart Agent構想」 株式会社NTTデータ
NTT DATAは、少子高齢化による労働力人口の減少とIT人材不足に対応するため、生成AIを活用した業務効率化の「SmartAgent」概念を提唱しています。
このコンセプトでは、複数のAIエージェントが自律的に業務を支援し、特に営業領域での効率化を目指しています。
AIエージェントによる業務アシストにより、業務時間の大幅な短縮が期待され、企業の生産性向上が実現される見込みです。
NTT DATAは、生成AIを駆使して労働集約型から知識集約型ビジネスへの転換を進めています。
参考・画像引用:株式会社NTTデータ
AIエージェントの注意点
企業の業務に活用ができれば非常に便利であるように思われるAIエージェントですが、使用時には注意しなければならない点も存在します。
注意点 | 課題 |
①行動理由のブラックボックス化 | 「何故その行動をしたのか」が不透明 |
②ハルシネーションのリスク | 誤った判断や偏ったデータの利用による誤回答 |
③情報漏洩のリスク | 無制限に情報にアクセスができることによる、意図しない情報流出 |
この3点について解説します。
①AIエージェントの行動理由がブラックボックス化する
AIエージェントの特徴は自律性であるため、基本的には与えられた目標に対して自らタスクを生成し、優先順位をつけ実行します。
しかし、その行為に至った判断アルゴリズムの全てが開示されるわけではないため、何故その行動をしたのかの理由が不透明になる可能性があります。
AIエージェントの特性上一部のプロセスがブラックボックス化することは避けられないため、ビジネス活用では、動作プロセスを全て人間が設定でき、それに基づく行動をする「AIワークフロー」が適している場合もあります。
②ハルシネーションのリスク
AIエージェントの行動や成果物は学習データに依存します。
そのため、学習元データの質が低かったり、偏ったデータであったりすると、AIは誤った判断・回答を出力することがあります。
そのため、AIエージェントの使用前に、質の高いデータセットの用意・それを適宜更新していくことのできるAI人の確保が必要です。
また、「最後に人間が確認すること」も忘れないようにしてください。
③情報漏洩のリスク
AIエージェントは自己判断により、様々なツールやファイルから必要な情報を取得します。
そのため、意図せず機密性の高い情報が取得され、それが外部流出してしまう可能性があります。
これを防ぐためには、以下の対応が必要です。
・アクセス権限に制限をかける
・定期的な監査、チェック
・社員のリテラシー向上のための研修
AIエージェントを使用する際は、セキュリティの安全性を必ず確保するようにしてください。
企業活用ならAIワークフローがおすすめ
ここまでAIエージェントについての説明をしてきましたが、AIエージェントの企業活用をすぐに実現することは難しいと思われます。
AIエージェントは「判断過程のブラックボックス化」により、回答・判断の根拠が示せないことや、誤った回答が出力された際にすぐに修正を行うことができません。
そのため、判断の安全性・回答の信頼性に欠け、セキュリティやコンプライアンスの観点から企業活用は、まだ現実的でないと言えます。
一方で、事前に人間がプロセスや取得する情報を指定し、それに基づきAIが作動する「AIワークフロー」があります。
AIワークフローでは、AIは人間の決めた範囲の動作しかしないこと、修正はフローの問題点を点検するだけであるため、安心安全にAIを活用することができます。
AIワークフローは「人間が制御できるAIエージェント」です。
AIワークフローならTaskhub
Taskhubは、ノーコードでワークフローを構築可能かつ、全て日本語で使用でき、誰でも簡単にAIワークフローを構築できます。
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ワークフローでは、外部ツールと連携し情報を取得すること、取得した情報を基に生成AIにタスクを実行させることができます。
AIエージェントと比べ、はるかに安全に活用していくことができます。
まとめ
ここまでAIエージェントについて解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
AIエージェントに関するまとめは以下の通りです。
- AIエージェントは、自律的に環境を感知し、「機転を利かせたタスク実行」が可能。
- 生成AIとの主な違いは、行動方法と得意な業務の2つ
- AIエージェントは革新的な反面、リスクを正しく認識することが必要
- 現代日本のAI活用では、AIエージェントよりも、AIワークフロー
OpenAIのCEO サム・アルトマン氏は以下のように述べています
原文:We are now confident we know how to build AGI as we have traditionally understood it. We believe that, in 2025, we may see the first AI agents “join the workforce” and materially change the output of companies. We continue to believe that iteratively putting great tools in the hands of people leads to great, broadly-distributed outcomes.
日本語訳:我々は今、AGIを構築する方法を知っていると確信している。私たちは、2025年に最初のAIエージェントが「労働力に加わり」、企業の生産性を大きく変えるのを見ることができると信じている。私たちは、優れたツールを人々の手に繰り返し与えることで、広く分散された素晴らしい成果が得られると信じ続けている。
AIエージェントの業務活用は、AIエージェントの持つ特徴を理解した上で活用してくことが重要です。
本記事でご説明したことを踏まえて、導入していくようにしてください。