2025年2月にOpenAIは、ChatGPT向けの新機能「Deep Research」を発表しました。
膨大なデータのリサーチや分析を自動で行うAIエージェントであり、ビジネスや学術研究の現場での活躍することが期待できるツールです。
本記事では、Deep Researchの性能や主な機能、具体的な使い方や注意点を、実際に使いながら解説します。
Deep Researchの展望についても記載しているため、ぜひ最後までご覧ください。
Deep Researchとは
Deep Researchは、OpenAIが2025年2月に発表したChatGPT向けの新機能で、オンライン調査やデータ解析を自動で行うAIエージェントです。
従来のChatGPTのように即座に回答する対話型AIを超えて、ウェブ検索や情報収集、分析までを一括で実行し、人間が数時間かけて行うようなリサーチを数十分で完了できることが特徴です。
Deep Researchは、OpenAIの最新モデル「o3」を基盤としていて、ChatGPTサイト上で利用可能です。
このモデルは高度な推論能力を持ち、ChatGPTのウェブ閲覧機能やコード実行環境(Python)、画像・PDF解析といった機能を統合して活用することで、複数の情報源から必要なデータを収集・整理します。
生成されるレポートには参照元(出典)が明示されるため、ユーザーは情報の信頼性を容易に検証することができます。
Deep Researchは、単なるQAボットではなく、「調査専任のAIアシスタント」として機能し、ビジネスや学術での情報収集を強力にサポートするものです。
AIエージェントについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
AIエージェント(自律型AI)とは?活用するメリット、生成AIとの違いなどを解説!
Deep Researchの性能
AIの知識レベルと推論能力を評価するテスト「Humanity’s Last Exam」をDeep Researchで行ったところ、その正答率が26.6%を記録しました。
以下の表を見ると、その他のモデルのスコアは半数以上が10%未満という結果のため、Deep Researchの能力の高さが伺えます。
モデル | Accuracy(正答率) |
GPT-4o | 3.3% |
Grok-2 | 3.8% |
Claude 3.5 Sonnet | 4.3% |
DeepSeek-R1 | 9.4% |
OpenAI o3-mini(high) | 13.0% |
Deep Research | 26.6% |
参考:OpenAI
現実世界の複雑な課題を扱うテスト(GAIA)では、正答率が約63.6%から72.6%に向上したとの報告もあり、高度な解析力が短時間で発揮できる点が評価されています。
また、Deep Research以外の検索系AIと異なる点として「データの網羅性と分析」が挙げられます。
検索系AIには、以下のようなそれぞれ特有の強みが存在します。
Perplexity | リアルタイムの検索性に強み |
Felo.ai | 多言語での文献検索や翻訳に強み |
Deep Research | 数百以上の膨大なデータを網羅し、それを分析、レポート化することに強み |
ビジネスでの活用など、調査結果の信頼性とその分析内容が重要である際にはDeep Researchが最も有用であるといえます。
Deep Researchの特徴
Deep Researchには4つの特徴があります。
この特徴を実際にDeep Researchを使用しながら解説します。
①網羅的な情報収集 | 検索時、数百以上のデータを閲覧・網羅 |
②PDF・画像も分析対象 | PDFや画像形式の情報も取得可能 |
③時間をかけた正確なリサーチ | 最大30分の時間をかけて綿密にリサーチする |
④回答時に出典が明記 | 出典先明記により、ハルシネーションリスクが低減 |
①網羅的な情報収集
Deep Researchでは、従来の検索機能を備えたAIと比較したとき、より多くのデータを網羅的に収集し吟味することができます。
実際に「直近3年で生成AIが日本社会に与えた影響」を調査してもらうと、20件のソースに基づいたレポートが回答されました。

②PDFや画像も分析対象
Deep Researchでは、記事やレポートといった文字媒体の情報に限定されることなく、PDFや画像も収集し分析することができます。
そのため、政府機関がPDF形式で公開しているデータや、レポート内で使用されている統計データの画像なども調査時に活用することができます。
今回の調査では文部科学省がPDF形式で公開した『初等中等教育段階における
生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン』を参照することができています。

③時間をかけた正確なリサーチ
Deep Researchはリサーチ時に5分~最大30分の時間をかけて調査を行います。
ある程度の時間をかけていることで、正確な情報の吟味や従来のChatGPTではできなかったレベルでの分析を行うことができるようになっています。
今回の調査では回答までの時間に16分かかりました。
④回答時に出典が明記
Deep Researchは回答時にその回答がどの情報に依拠しているのかを出典明記と言う形で提供します。

これにより、人間が参照元サイトを自分の目で確認し、事実と異なった回答(ハルシネーション)をしていないかを確認することができます。
結果的にハルシネーションリスクの軽減が可能です。
Deep Researchのユースケース
Deep Researchが具体的にどのような場面で威力を発揮するか、いくつかユースケースを挙げて紹介します。
①市場分析・競合調査
自社と競合他社の業界レポートやニュース記事、公開データをくまなく収集し、主要な指標を比較したレポートを自動生成します。
例えば、ある企業について、その製品評価から資金調達状況、大手企業での導入事例に至るまで網羅的に調べ上げることが可能です。
実際、オープンソースのAIツールを対象にDeep Researchに調査をさせたテストでは、GitHubのスター数やコミュニティ規模、銀行や大手IT企業での採用実績、市場トレンドの推移など、膨大な情報をまとめ上げ、比較表や結論とともに詳細な報告書を出力しています。
このように、人では見落としがちなデータポイントまで拾い上げてくれるため、ビジネス戦略立案の下調べに有用です。
②学術情報のリサーチ
最新の研究論文や技術ブログ、特許情報まで横断的に調査し、専門分野の知見を整理します。
例えば、IT企業のエンジニアが新しいプログラミング技術について事例や評価をまとめたりする際に、Deep Researchは強力なリサーチ助手となります。
関連する学術文献を読み込み重要なエビデンスを要約するだけでなく、必要に応じて統計データを抽出して解析することもできるため、短時間で質の高い技術レポート作成が可能です。
③金融リサーチ・データ分析
経済指標や市場データ、財務レポートなどを収集し、投資判断や経営戦略に役立つインサイトを提供します。例えば市場トレンドの予測では、ニュース記事やアナリストレポートを収集するだけでなく、株価や経済統計データを取り込みPythonで分析しグラフ化する、といった高度な処理も自動で行います。
その結果を踏まえて「どのセクターが成長傾向にあるか」「リスク要因は何か」といった示唆まで引き出してくれるため、ファンドマネージャーや経営企画担当者にとって貴重なレポートが得られます。
Deep Researchはまだ公開されたばかりであるため、具体的な導入事例は報告されていませんが、今後導入事例・活用事例は増えていくことが予想されます。
Deep Researchの使い方・料金
Deep Researchは現在、ChatGPT PROプランに登録しているユーザーにのみ限定公開されています。
・ChatGPT PROプランの料金
料金 | 200ドル(約30,516円)※2025/2/6現在 |
使える機能 | ・GPT-o1への無制限アクセス・GPT-o1 proへのアクセス・Deep Researchの利用 |
PROプランに登録されている方であれば、チャット画面で「GPT-o1」「GPT-o1 pro」のどちらかを選択し、「詳細なリサーチ」をONにすることで使用できます。

Deep Researchの注意点
Deep Researchにはいくつかの注意点も存在します。
①ハルシネーションリスク | 事実に依拠しない誤った回答をする可能性 |
②参照元情報がデマの可能性 | フェイクニュースやデマ情報を参照する可能性 |
③応答までに時間がかかる可能性 | 場合によっては30分程度の時間を要する |
①ハルシネーションリスク
Deep Researchはその仕組みによってハルシネーション発生の確率を軽減しているものの、ゼロではありません。
例えば、参照元のデータが古かったり、現在では否定されている学説に基づき回答を生成してしまうと、ハルシネーションを引き起こしてしまいます。
Deep Researchの使用時には、必ず人間が最終確認をすることを徹底してください。
②参照元がデマの可能性
Deep Researchが回答時に参照したデータがデマ情報を含んでいたり、フェイクニュースである可能性があります。
内部のシステムによって、偏った情報の収集は抑えられているものの、可能性は否定しきれないため、こちらも人間の最終確認が必須となります。
③応答までに時間がかかる可能性
Deep Researchでは回答までに最大30分の時間がかかります。
そのため、すぐに特定の物に関する情報が欲しい、という場合にはその他の検索ツールを使用することをおすすめします。
また、レポートの作成はバックグラウンドで行えるため、リサーチをしている間は他の作業をして待つことも可能です。
Deep Researchの展望
Deep Researchの登場によって、今まで人間が行ってきた「一次情報のリサーチ」はAIに代行させることが可能になると思われます。
例えば記事執筆やレポート作成時、一般的な情報やネット上に公開されているデータはDeep Researchに収集させ、それを基に人間が分析・洞察を加えて洗練させていくという仕事の進め方に変容していくのではないでしょうか。
現在、Deep ResearchはChatGPT Proに登録しているユーザーにのみ公開されていますが、OpenAIは様々な機能拡張を計画しています。
ChatGPT Plusユーザーへの公開 | 1か月後を予定 |
モバイルアプリへの対応 | 1か月後を予定 |
レポート内での画像・グラフ表示 | 数週間以内を予定 |
より専門性の高いソースの利用 | 未定 |
Operatorとの連携 | 未定 |
今後のDeep Researchのアップデートにも期待が持てます。
まとめ
ここまでDeep Researchについてご説明しましたが、いかがだったでしょうか。
以下がDeep Researchについての簡単なまとめです。
- Deep Researchは、OpenAIが2025年2月に発表したChatGPT向けの新機能で、オンライン調査やデータ解析を自動で行うAIエージェント
- Deep Researchの性能は非常に高く、推論機能はモデルトップクラス
- 現在はChatGPT PROプランで限定公開されている
- 非常に便利な機能だが、最後には人間が確認することが必須
Deep Researchは適切に使いこなすことができれば、今の業務の在り方を大きく変えるツールになります。
是非、ご活用ください。