「膨大な過去の契約書をデータ化して管理したいけれど、手入力は時間がかかりすぎる」
「スキャンしてPDF化まではしたものの、必要な契約書を探すのに苦労している」
このように、契約書管理の効率化において悩みを抱えている法務担当者や総務担当者の方は多いのではないでしょうか?
紙の契約書を単にスキャンするだけでは、検索性や活用度は上がりません。そこで注目されているのが、AI技術を活用した文字認識技術「AI-OCR」です。
本記事では、契約書管理にAI-OCRを導入するメリットや、従来のOCRとの違い、そして自社に合ったツールの選び方について詳しく解説しました。
数多くの企業のDX支援を行ってきた知見をもとに、実務で本当に使えるツールやノウハウをご紹介します。
業務効率化のヒントになるはずですので、ぜひ最後までご覧ください。
そもそも契約書管理におけるAI-OCRとは?
AI-OCRとは、人工知能(AI)技術を活用して、画像データに含まれる文字をテキストデータとして認識・抽出する技術のことです。
特に契約書管理においては、スキャンした契約書画像から「契約締結日」「契約先名」「契約金額」などの重要項目を自動で読み取り、台帳作成を補助する役割を果たします。
ここでは、従来の技術との違いや、なぜ今必要とされているのかについて解説します。
従来のOCRとAI-OCRの違い
従来のOCR(光学文字認識)は、あらかじめ設定されたルールに基づいて文字を読み取る仕組みでした。
そのため、活字であってもフォントが崩れていたり、スキャンの傾きがあったりすると認識精度が著しく低下するという課題がありました。 また、読み取り位置を座標で厳密に指定する必要があり、フォーマットが異なる契約書を読み取るには、その都度設定を行う必要があったのです。
一方、AI-OCRはディープラーニング(深層学習)などのAI技術を取り入れています。 AIが大量の文字データを学習しているため、多少のかすれや傾き、さらには手書き文字であっても高い精度で認識することが可能です。
さらに、2025年現在では生成AI(LLM)技術との融合が進み、単に文字を読み取るだけでなく、契約書の文脈を理解して高度な要約やリスク条項の検出まで可能になりつつあります。
特に契約書のような非定型帳票において、AIが「ここが日付である」「ここが自動更新条項である」と自律的に判断して抽出できる点が大きな違いです。
従来のOCRとAIを用いた読み取り精度のギャップについては、こちらの記事でも詳しく検証されています。 https://basecapanalytics.com/the-3-ocr-accuracy-gap/
なぜ契約書のデータ化にAI-OCRが必要なのか
電子帳簿保存法やインボイス制度への対応が一巡した現在、企業における文書管理は「法対応」から「蓄積データの活用・業務効率化」フェーズへと移行しています。
しかし、契約書は過去何十年分もの紙原本が倉庫に保管されているケースが多く、これらをすべて手作業でデータ化するのは現実的ではありません。
単にPDF化するだけでは画像データとしての保存に留まり、後から「あの会社との覚書の内容を確認したい」と思っても、ファイル名でしか検索できず、本文の内容までは検索できません。
必要な情報を即座に取り出し、リスク管理や更新管理を行うためには、契約書の中身をテキストデータ化する必要があります。
そのための手段として、人間がすべて入力するのではなく、AI-OCRを用いて自動化・効率化することが不可欠となっているのです。
また、リモートワークの普及により、出社せずに契約内容を確認できる環境整備が求められていることも、導入を後押ししています。
国税庁による電子帳簿保存法関係の公式情報はこちらからご確認いただけます。 https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2009/denshi_chobo/index.htm
AI-OCRが得意なこと・苦手なこと
AI-OCRは万能に見えますが、得意な領域と苦手な領域が明確に存在します。
まず得意なこととしては、大量の文書を高速で処理することです。
人間であれば数日かかる量のデータ化も、AI-OCRであれば数時間で完了します。
また、学習済みのモデルがある場合、一般的な契約書のフォーマットであれば、設定なしで主要項目を自動抽出することが可能です。
手書き文字に関しても、丁寧な文字であれば非常に高い精度で読み取ることができます。
一方で、苦手なこともあります。
例えば、人間でも判読が難しいほどの崩れた文字や、極端に薄い印字、汚れがひどい書類などは誤認識する可能性が高くなります。
また、契約書のレイアウトが極めて特殊的で複雑な場合や、表組みが入り組んでいる場合も、正しく項目を抽出できないことがあります。
AIはあくまで確率に基づいて文字を判定しているため、100%の精度を保証するものではないという点を理解しておく必要があります。
契約書業務にAI-OCRを導入する具体的なメリット
契約書管理にAI-OCRを導入することで、現場の業務負担は劇的に軽減されます。
単なる「文字起こしツール」ではなく、法務や総務の業務プロセスそのものを変革する力を持っています。
ここでは、導入によって得られる具体的な4つのメリットについて深掘りして解説します。
管理台帳への入力工数を大幅に削減できる
契約書管理において最も手間がかかるのが、Excelや管理システムへの「台帳入力」です。
契約書を見ながら、契約書名、相手方、締結日、終了日、自動更新の有無などを一つひとつ手入力していく作業は、集中力を要する上に単純作業であるため、担当者にとって大きな負担となります。
AI-OCRを導入すれば、スキャンした契約書をアップロードするだけで、AIが主要な項目を自動で読み取り、CSVデータやシステム上の項目に自動転記してくれます。
人間が行う作業は、AIが読み取った結果が正しいかどうかの確認作業のみになります。
これにより、ゼロから手入力するのと比較して、作業時間を半分以下、場合によっては数分の一にまで短縮することが可能です。
空いた時間を、契約審査や法的なリスク分析など、人間が本来注力すべきコア業務に充てることができるようになります。
全文検索や対話型検索により過去の契約書を即座に探せるようになる
AI-OCRの大きなメリットの一つに「全文検索」が可能になることが挙げられます。 さらに最新のツールでは、生成AIを活用して「損害賠償の上限が設定されていない契約書を探して」といった自然言語での対話型検索が可能なものも増えています。
ChatGPTを使った社内文書検索の導入メリットや具体的な事例について、こちらの記事で詳しく解説しています。
従来の画像PDFや紙の管理では、「秘密保持契約書」というタイトルやファイル名でしか探すことができませんでした。
そのため、「損害賠償の上限についてどのような条文を結んでいたか」や「特定のプロジェクト名が含まれている契約書はどれか」といった細かい内容で検索することは不可能でした。
AI-OCRを活用して契約書の本文全体をテキストデータ化しておけば、キーワード検索で該当する契約書を瞬時にピックアップできるようになります。
過去の類似契約を参照したい場合や、トラブル発生時に法的根拠を確認したい場合に、倉庫に行って段ボールをひっくり返す必要はなくなります。
必要な情報へ数秒でアクセスできる環境は、法務部門のレスポンス向上に直結し、企業としての意思決定スピードを早めることにも繋がります。
目視チェックの負担と入力ミス(ヒューマンエラー)を減らせる
人間が手作業でデータを入力する場合、どうしても避けて通れないのが入力ミスなどのヒューマンエラーです。
特に契約金額の桁間違いや、日付の入力ミスは、更新期限の管理漏れなどの重大なリスクにつながる可能性があります。
また、長時間にわたる入力作業は疲労を招き、ミスの発生率をさらに高めてしまいます。
AI-OCRを使用する場合、ベースとなる入力はAIが行い、人間はあくまで「確認者」の立ち位置になります。
多くのAI-OCRツールでは、AIが読み取りに自信がない箇所をアラートで表示してくれたり、元画像とテキストを並べて表示してくれたりする機能が備わっています。
ゼロから入力するのではなく、正解かどうかをチェックする作業プロセスに変わることで、精神的な負担が減り、結果としてデータの精度も向上します。
ダブルチェックの手間も大幅に軽減されるでしょう。
手作業によるデータ入力のミス発生率やコストに関する統計データについては、以下も参考になります。 https://www.docuclipper.com/blog/data-entry-statistics/
電子帳簿保存法対応やペーパーレス化を加速できる
電子帳簿保存法の要件を満たすためには、「取引年月日」「取引金額」「取引先」などの項目で検索できる状態で保存することが求められます。
これらの検索要件を満たすためのインデックス情報(索引)を付与する作業は、数が多ければ多いほど大変な作業となります。
AI-OCRを活用すれば、これらの必須項目を自動的に抽出し、電子帳簿保存法の要件に適合した形でデータを保存・管理することが容易になります。
また、契約書の電子化が進むことで、物理的な保管スペースを削減できるだけでなく、紙原本の紛失リスクや、災害時の消失リスクへの対策(BCP対策)にもなります。
法対応とペーパーレス化を同時に推進し、バックオフィスのDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させるための強力なエンジンとなるのがAI-OCRなのです。
政府が推進するデジタル社会の実現に向けた重点計画や進捗については、デジタル庁の資料も参照してください。 https://www.digital.go.jp/policies/report-202309-202408/progress
導入前に知っておくべきAI-OCRのデメリットと注意点
AI-OCRは非常に便利なツールですが、決して魔法の杖ではありません。
導入後に「思ったのと違った」と後悔しないためには、事前にその限界や注意点を正しく理解しておくことが重要です。
ここでは、導入前に把握しておくべき3つのデメリットと注意点について解説します。
手書き文字や複雑なレイアウトは100%認識できるわけではない
前述の通り、AI-OCRの精度は飛躍的に向上していますが、それでも100%の認識精度ではありません。
特に、崩れた手書き文字、訂正印が重なっている箇所、背景に模様や網掛けがある文字などは、正しく読み取れないことがあります。
また、契約書のレイアウトは企業によって千差万別です。
段組みが複雑なものや、条文の中に表が挿入されているような特殊なレイアウトの場合、読み取り順序が狂ったり、項目抽出がうまくいかなかったりするケースがあります。
「AIだから全自動で完璧にやってくれる」と過度な期待をしてしまうと、導入後のギャップに苦しむことになります。
あくまで「入力支援ツール」であり、ある程度の修正作業は発生するものだという前提で運用フローを設計することが大切です。
トライアル期間などを利用して、自社の契約書との相性を確認することをおすすめします。
最終的な目視確認と修正作業は必ず発生する
AI-OCRがどれだけ高精度であっても、最終的なデータの正当性を保証するのは人間の責任です。
特に契約書という法的拘束力のある重要書類を扱う以上、誤ったデータが登録されてしまうと、契約更新の意図しない終了や、支払い金額の間違いなど、経営上のリスクに直結します。
そのため、AI-OCRが出力したデータに対して、必ず人間による目視確認と修正のプロセスを設ける必要があります。
AI-OCR導入の効果は「入力作業のゼロ化」ではなく、「入力作業の効率化」です。
「入力時間が8割削減できれば成功」といった現実的な目標値を設定し、確認作業にかかる工数も含めた運用体制を構築しましょう。
ツールによっては、確認画面の使いやすさ(UI/UX)に差があるため、確認作業がしやすい画面設計になっているかどうかも選定時の重要なポイントです。
機密情報を扱うためのセキュリティ対策が必須
契約書には、企業の取引情報、秘密保持情報、個人情報など、極めて重要な機密情報が含まれています。
クラウド型のAI-OCRサービスを利用する場合、これらのデータを外部のサーバーにアップロードして処理することになります。
そのため、セキュリティ対策が不十分なサービスを利用することは、情報漏洩のリスクを招くことになります。
サービス選定の際は、通信の暗号化やデータの保管方法はもちろんのこと、ISO27001(ISMS)などの第三者認証を取得しているか、アクセス制限機能が充実しているかなどを厳しくチェックする必要があります。
また、AIの学習データの扱いについても確認が必要です。
アップロードした契約書データが、AIモデルの再学習に利用されるのか、それとも利用されずに破棄されるのかは、サービスの利用規約で明確に規定されています。
企業のコンプライアンスポリシーに合致したサービスを選ぶようにしましょう。
生成AIを企業で利用する際の情報漏洩リスクや対策については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。
契約書に強いAI-OCRツールの選び方5つのポイント
市場には数多くのAI-OCRツールが存在しますが、すべてが契約書管理に適しているわけではありません。
請求書に特化したものや、汎用的なものなど、それぞれに特徴があります。
契約書管理を成功させるために、ツール選びで押さえておくべき5つのポイントを紹介します。
1. 「契約書特化」の読み取りモデルや設定があるか
AI-OCRには、あらゆる帳票に対応できる「汎用型」と、特定の帳票に特化した「特化型」があります。
契約書管理を主目的とするならば、契約書に特化したモデルや機能を持っているツールを選ぶのが効率的です。
契約書特化型のツールやプランでは、AIがあらかじめ「契約書とはこういうものだ」ということを学習しています。
そのため、「第◯条」といった条文構造や、「甲」「乙」といった契約当事者の関係性を理解しやすく、精度の高い読み取りが期待できます。
また、契約書のタイトル(契約類型)を自動で判別して分類してくれる機能など、契約書管理ならではの便利機能が搭載されていることも多いです。
汎用型を選ぶ場合でも、契約書用のテンプレートや設定プリセットが用意されているかを確認しましょう。
2. 契約締結日・契約金額などの「項目抽出」が可能か
契約書管理で最も重要なのは、全文のテキスト化だけでなく、管理に必要な情報の「抽出」です。
「契約締結日」「契約開始日」「契約終了日」「自動更新の有無」「契約金額」「取引先名」といった主要項目を、AIが自動で見つけ出して抽出してくれる機能があるかを確認してください。
単に文字をデータ化するだけのツールでは、その中から必要な日付や金額を探してコピペする手間が発生してしまいます。
高機能なツールであれば、契約書の中に複数の日付が含まれていても、前後の文脈から「どれが契約締結日か」を判断して抽出してくれます。
この抽出精度の高さが、その後の台帳作成の工数に直結するため、デモやトライアルで実際の自社の契約書を読み込ませて確認することをおすすめします。
3. 縦書き・手書き・多言語など自社の契約書に対応できるか
自社で扱っている契約書の種類や形式に対応しているかも重要なチェックポイントです。
例えば、不動産関連や古い契約書では「縦書き」のものが多く存在します。
また、海外企業との取引が多い場合は、英語や中国語などの「多言語対応」が必須となります。
署名部分の手書き文字を認識させたい場合もあるでしょう。
すべてのAI-OCRが縦書きや多言語に対応しているわけではありません。
横書きの日本語は得意でも、縦書きになった途端に精度が落ちるツールもあります。
自社が保管している契約書のバリエーションを洗い出し、それらを問題なく読み取れる機能が備わっているかを確認しましょう。
特にグローバル展開している企業にとっては、多言語対応の可否はツール選定の決定打となり得ます。
4. CSV連携やAPIなど、既存システムとの連携はスムーズか
読み取ったデータは、最終的に契約管理システムや法務データベース、あるいはExcelなどで活用することになります。
そのため、出力形式や連携機能の柔軟性は非常に重要です。
基本的にはCSV形式での出力ができれば多くのシステムに取り込めますが、出力する項目の並び順やヘッダー名をカスタマイズできると、加工の手間が省けます。
さらに、API連携機能があれば、AI-OCRで読み取ったデータをボタン一つで自社の基幹システムや契約管理クラウド(CLM)に自動連携させることも可能です。
既存の業務フローにどのように組み込むかをイメージし、データ連携がスムーズに行えるツールを選びましょう。
5. 費用対効果(1枚あたりの単価)は見合っているか
AI-OCRの料金体系は、月額固定費に加え、読み取り枚数や項目数に応じた従量課金制が一般的です。
契約書の枚数が数千枚、数万枚とある場合、1枚あたりの単価のわずかな差が、トータルコストに大きく影響します。
まずは、データ化したい契約書が現在どれくらいあり、今後毎月どれくらい増えていくのかを試算しましょう。
その上で、初期導入時にかかるコストと、ランニングコストをシミュレーションします。
また、単純な金額だけでなく、「削減できる人件費」との比較も重要です。
多少コストがかかっても、法務担当者の残業時間が大幅に減り、高付加価値な業務に集中できるのであれば、投資対効果は十分にあると言えます。
安さだけでなく、機能とコストのバランスを見極めることが大切です。
契約書の読み取り・管理におすすめのAI-OCRツール・システム
ここからは、契約書のデータ化に定評のあるおすすめのAI-OCRツールやシステムを紹介します。
汎用的に使えるものから、契約書管理に特化したクラウドサービスまで、代表的なものをピックアップしました。
【汎用型】DX Suite(AI inside株式会社)
DX Suiteは、日本国内でトップクラスのシェアを誇るAI-OCRサービスです。
手書き文字の認識精度が非常に高く、クセ字や訂正印なども高精度で読み取ることができます。
「Intelligent OCR」というエンジンを搭載しており、契約書を含むあらゆる帳票のデータ化に対応可能です。
直感的に使えるユーザーインターフェースも評価が高く、現場の担当者が簡単に設定を行えます。
契約書専用ではありませんが、非定型帳票を読み取る「Multi Form」などの機能を使えば、様々なレイアウトの契約書から必要な情報を抽出できます。
【汎用型】SmartRead(株式会社コージェントラボ)
SmartReadは、高い識字率と使いやすさを両立させた次世代のAI-OCRサービスです。
文書の仕分けから文字認識までを一気通貫で行えるのが特徴で、様々な種類の書類が混在していても自動で分類して処理してくれます。
事前設定が不要な項目抽出機能を持っており、文書をアップロードするだけで特定の情報を抜き出すことが可能です。
確認・修正画面の操作性が良く、人間のチェック作業を効率化するための工夫が随所に施されています。
【契約書特化】LegalForceキャビネ(株式会社LegalOn Technologies)
LegalForceキャビネは、AI契約審査プラットフォームで有名なLegalForceが提供する、契約書管理に特化したシステムです。
契約書をスキャンしてアップロードするだけで、AIが自動で契約情報を抽出し、台帳を作成してくれます。
最大の特徴は、契約書の管理だけでなく、更新期限の自動アラートや、関連する契約書の紐付けなど、法務機能を網羅している点です。
単なるOCRツールではなく、契約書管理業務全体をデジタル化したい企業に最適です。
全文検索機能も強力で、法務リスクの管理レベルを一気に引き上げることができます。
同社が提供する契約書レビューや管理システムに関する最新情報は、こちらの公式ブログでも発信されています。 https://legalontech.jp/5519/
【契約書特化】バクラク電子帳簿保存(株式会社LayerX)
バクラク電子帳簿保存は、電子帳簿保存法に完全対応した文書管理サービスです。
契約書だけでなく、請求書や領収書などの国税関係書類を一元管理できます。
AI-OCR機能が標準搭載されており、アップロードするだけで日付・金額・取引先を自動入力してくれます。
特に経理・財務部門との連携がスムーズで、契約書に記載された金額情報などを会計処理に活かしたい場合に強みを発揮します。
UIが非常にシンプルで使いやすく、導入のハードルが低いのも魅力です。
【契約書特化】RICOH 契約書管理サービス(リコージャパン株式会社)
複合機メーカーであるリコーが提供する契約書管理サービスです。
リコー製の複合機と連携し、紙の契約書をスキャンするだけで、クラウド上のフォルダへ自動保存・データ化を行うことができます。
スキャン作業の手間を最小限に抑えられるのが大きなメリットです。
また、契約書の有効期限管理や権限設定など、管理に必要な機能も充実しており、紙文書と電子文書の統合管理をスムーズに実現します。
ハードウェアとソフトウェアをセットで導入したい企業におすすめです。
リコージャパンのソリューションを活用した具体的な導入事例や効果については、こちらをご覧ください。 https://www.ricoh.co.jp/case/2108-ricoh
その他の主要なAI-OCRサービス比較
上記以外にも、多くのベンダーがAI-OCRサービスを提供しています。
例えば、Google Cloudの「Document AI」や、Amazon Web Servicesの「Amazon Textract」などのクラウドベンダー系APIは、開発力のある企業であれば低コストで自社システムに組み込むことが可能です。
また、Sansanが提供する「Contract One」は、正確なデータ化を強みとしており、契約書管理のデータベース構築に定評があります。
自社のリソース(開発者がいるか、法務担当者が使うか)や、予算規模に合わせて、最適なツールを比較検討してください。
AI-OCRを活用して契約書管理を効率化する手順
ツールを選定したら、実際にどのように業務を進めていけば良いのでしょうか。
AI-OCRを活用して契約書管理を効率化するための標準的なフローを解説します。
スキャンによるデジタル化(PDF化)
まずは、紙の契約書をスキャナーや複合機で読み取り、PDFなどの画像データにします。
この際、AI-OCRの認識精度を高めるために、解像度は「300dpi以上」を目安に設定しましょう。
また、カラーである必要は必ずしもありませんが、印鑑の色などを識別したい場合はカラー、データ容量を軽くしたい場合は白黒など、用途に合わせて設定します。
ホッチキス留めされている契約書は外す必要があるため、断裁機を使用するか、フラットベッドスキャナーで丁寧に読み取るなどの工夫が必要です。
AI-OCRによるテキストデータ化と項目抽出
作成した画像データをAI-OCRツールにアップロードします。
多くのツールでは、ドラッグ&ドロップで簡単に登録できます。
アップロードされたデータに対して、AIが自動的に文字認識処理(OCR処理)を行い、テキストデータ化と必要な項目の抽出を行います。
この処理は通常、バックグラウンドで行われるため、大量のファイルを一度にアップロードして、処理が終わるのを待つことができます。
人の目による補正・確認作業
AIの処理が完了したら、必ず担当者が確認画面を開き、読み取り結果のチェックを行います。
AIが誤認識している箇所(例えば、「1」と「l」、「0」と「O」など)や、抽出範囲がズレている箇所を手動で修正します。
特に契約金額や日付は重要項目なので、原本と見比べて慎重に確認します。
このステップを経ることで、データの信頼性を担保します。
契約管理システムやデータベースへの保存・活用
修正が完了したデータは、CSV形式などでダウンロードし、Excel台帳や契約管理システムにインポートします。
あるいは、ツール自体がデータベース機能を持っている場合は、そのまま保存・管理を開始します。
データ化された後は、更新期限のアラート設定を行ったり、関連部署への共有設定を行ったりして、実際の業務で活用していきます。
これにより、契約書の検索や期限管理がスムーズに行えるようになります。
AI-OCR導入による契約書業務の改善事例
最後に、実際にAI-OCRを導入して契約書業務を改善した企業の事例をいくつか紹介します。
具体的なイメージを持つことで、自社での活用シミュレーションに役立ててください。
数万件の紙契約書を短期間で電子化・台帳化した事例
創業から数十年が経過し、倉庫に数万件の紙契約書が眠っていたA社。
法対応のために電子化を決定しましたが、手入力では数年かかると試算されました。
そこでAI-OCRと契約書管理システムを導入。
スキャン代行業者と連携し、画像化したデータをAI-OCRで一気に処理しました。
その結果、わずか数ヶ月で過去分の契約書のデータ化と台帳作成を完了。
過去の契約内容を瞬時に検索できるようになり、法務相談への回答スピードが大幅に向上しました。
契約書情報の入力作業を自動化し、法務部門の残業を削減した事例
毎月数百件の新規契約が発生するB社では、法務担当者が月末になると台帳入力のために残業を繰り返していました。
AI-OCR機能を搭載した契約管理システムを導入したことで、契約書を受け取ったら即座にシステムへアップロードする運用に変更。
主要項目の入力が自動化されたため、担当者は確認と承認を行うだけで済むようになりました。
その結果、入力業務にかかる工数が約70%削減され、残業時間がゼロになっただけでなく、契約審査などのより重要な業務にリソースを割けるようになりました。
DXによる業務効率化の進め方や、他の成功事例については、こちらのガイド記事で網羅的に解説しています。
「PDF化」しただけで満足していませんか?契約書を“死蔵”させる「デジタル化の罠」と7割が経験するリスク
紙の契約書をスキャンしてPDFにする。多くの企業が「DXの第一歩」として取り組むこの作業ですが、実はここに大きな落とし穴があります。単に画像として保存されただけのPDFは、中身を検索できない単なる「デジタル画像」に過ぎません。これでは、倉庫の段ボールがサーバー上のフォルダに変わっただけで、必要な情報を探す手間は変わらないどころか、ファイル名が不適切なら一生見つからない「電子ゴミ」になりかねないのです。
コクヨの調査によると、ビジネスパーソンが書類探しなどに費やす時間は年間約150時間にも及ぶと言われています。さらに恐ろしいのは、管理不全による経営リスクです。ContractS株式会社の調査では、契約業務に携わる人の約7割が何らかの「ヒヤリハット」を経験しており、その中で最も多かったのが「契約更新漏れ・期限切れ(33.3%)」でした。中身が見えないPDFのまま放置することは、こうした時限爆弾を抱え続けることと同義なのです。
引用元:
コクヨ株式会社「書類を探す時間は“1年で約80時間”」(2018年)、ContractS株式会社「ニューノーマル時代の契約業務に関する調査」(2021年)
引用元の調査データを含め、契約業務における課題と実態についてはこちらのリリースで詳細が確認できます。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000423.000036601.html
【実践】AI-OCRを「守りの要」にする3つの鉄則
では、どのようにすれば契約データを安全かつ有効に活用できるのでしょうか。答えは、AI-OCRを単なる「入力補助ツール」としてではなく、「リスク管理のゲートキーパー」として位置づけることです。ここでは、明日から意識を変えられる3つの活用鉄則をご紹介します。
使い方①:「全文検索」で過去の知恵を資産に変える
契約書の価値は、トラブルが起きたときだけにあるのではありません。過去の類似案件でどのような条文を結んだか、どのようなリスクヘッジをしたかという「交渉の履歴」こそが企業の資産です。AI-OCRで全文をテキスト化し、キーワード一つで過去の全契約から関連条項を引っ張り出せる状態にすることで、法務部門の経験値が個人の頭の中から組織全体へと共有されます。
使い方②:「自動抽出」で更新アラートを完全自動化する
人間がExcel台帳で期限管理を行うのは限界があります。「更新の3ヶ月前に通知する」といったルールがあっても、入力ミスがあれば機能しません。AI-OCRの項目抽出機能を使い、「契約終了日」や「解約通知期限」を自動でデータベース化し、アラートシステムと連携させましょう。これにより、「うっかり更新してしまった」「解約し忘れた」という無駄なコスト発生をシステム的に防ぐことができます。
使い方③:「関連紐付け」で契約の全体像を可視化する
基本契約と個別契約、覚書や変更契約書など、契約は一対一とは限りません。AI-OCRで読み取ったデータをもとに、これらの文書を紐付けて管理することで、契約の親子関係や変更履歴が一目でわかるようになります。M&Aやデューデリジェンス(資産査定)の際にも、必要な契約群を即座に提示できる体制は、企業の信頼性を大きく高めることにつながります。
まとめ
企業は労働力不足や業務効率化の課題を抱える中で、生成AIの活用がDX推進や業務改善の切り札として注目されています。
しかし、実際には「どこから手を付ければいいかわからない」「社内にAIリテラシーを持つ人材がいない」といった理由で、導入のハードルが高いと感じる企業も少なくありません。
そこでおすすめしたいのが、Taskhub です。
Taskhubは日本初のアプリ型インターフェースを採用し、200種類以上の実用的なAIタスクをパッケージ化した生成AI活用プラットフォームです。
今回の記事で紹介したような画像からの文字起こし(AI-OCR機能)はもちろん、メール作成や議事録作成、さらにレポート自動生成など、さまざまな業務を「アプリ」として選ぶだけで、誰でも直感的にAIを活用できます。
しかも、Azure OpenAI Serviceを基盤にしているため、データセキュリティが万全で、情報漏えいの心配もありません。
さらに、AIコンサルタントによる手厚い導入サポートがあるため、「何をどう使えばいいのかわからない」という初心者企業でも安心してスタートできます。
導入後すぐに効果を実感できる設計なので、複雑なプログラミングや高度なAI知識がなくても、すぐに業務効率化が図れる点が大きな魅力です。
まずは、Taskhubの活用事例や機能を詳しくまとめた【サービス概要資料】を無料でダウンロードしてください。
Taskhubで“最速の生成AI活用”を体験し、御社のDXを一気に加速させましょう。


