「LINEでのお問い合わせ対応を自動化したいけれど、何から始めればいいかわからない」
「LINE公式アカウントとLINE WORKS、どちらのチャットボットを使えばいいの?」
このような疑問や悩みをお持ちではないでしょうか。
本記事では、LINEチャットボットの基本的な仕組みから、具体的な作り方、そしてビジネスチャットツールであるLINE WORKSとの違いについて詳しく解説しました。
特に、顧客対応の効率化を目指す企業様や、社内業務の自動化を検討されている担当者様に向けて、実践的な活用事例や最新の生成AI連携トレンドも交えてご紹介します。
企業のDX支援を行っている専門家の視点から、失敗しない導入のポイントを解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
LINEチャットボットとは?仕組みとできること
LINEチャットボットとは、LINEのトーク画面上でユーザーからのメッセージに対し、プログラムが自動で返信を行うシステムのことです。
企業や店舗が顧客とのコミュニケーションを効率化するために導入するケースが増えており、簡単な質問への回答や予約受付などを無人で行うことができます。
ここでは、LINEチャットボットが具体的にどのような仕組みで動いているのか、そして導入することで何が可能になるのかを深掘りして解説します。
仕組みを正しく理解することで、自社に最適な導入方法が見えてくるはずです。
LINEチャットボットの基本的な仕組み
LINEチャットボットは、ユーザーがLINEアプリを通じて送信したテキストやスタンプなどの情報を受け取り、あらかじめ設定されたルールやAIの判断に基づいて適切な返信を返すプログラムです。
この仕組みは、大きく分けて「LINE公式アカウント」のプラットフォーム上で動作するものと、開発者向けの「Messaging API」を利用して外部サーバーと連携するものの2種類が存在します。
ユーザー側の視点では、普段友だちとやり取りするのと同じ感覚で企業アカウントにメッセージを送るだけで、即座に回答が得られるという体験になります。
裏側のシステムでは、ユーザーのアクション(メッセージ送信やボタンタップ)が「イベント」としてサーバーに送られ、それに対する「レスポンス」としてメッセージが返送されるという処理が高速に行われています。
最近では、単なるルールベースの応答だけでなく、自然言語処理技術を用いたAIチャットボットも普及してきました。
これにより、ユーザーの曖昧な発言に対しても文脈を理解して回答することが可能になり、より人間に近い自然なコミュニケーションが実現できるようになっています。
市場全体の動向として、対話型AIやチャットボットの需要が急速に拡大している背景を知ることは重要です。 https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3728
自動応答と有人対応(手動チャット)の違い
LINEチャットボットを導入する際に理解しておきたいのが、ボットによる「自動応答」とスタッフによる「有人対応」の使い分けです。
自動応答は、24時間365日いつでも即座に返信ができる点が最大の特徴であり、よくある質問や定型的な手続きに適しています。
一方、有人対応は、個別の複雑な相談やクレーム対応など、人の判断や感情への配慮が必要な場面で力を発揮します。
多くの企業では、これらを完全に切り離すのではなく、ハイブリッドで運用する手法が採用されています。
例えば、最初の受付はチャットボットが自動で行い、ボットでは解決できない高度な質問だと判断された場合にのみ、有人対応へ切り替えるというフローです。
この切り替えをスムーズに行うことで、スタッフの業務負担を大幅に削減しつつ、顧客満足度を落とさない対応が可能になります。
LINE公式アカウントの設定では、この「応答モード」の切り替えや、ボット稼働中であっても手動でチャットに割り込める設定などが用意されており、運用体制に合わせて柔軟に設計することが重要です。
LINEチャットボットで実現できる代表的な機能
LINEチャットボットを活用することで、単なる会話だけでなく、ビジネスに直結するさまざまな機能を実装することができます。
代表的な機能として挙げられるのが「自動予約受付」です。
ユーザーはトーク画面上のリッチメニューや会話形式のガイドに従って希望日時を選択するだけで、Webサイトに移動することなく予約を完了させることができます。
また、「商品検索や診断コンテンツ」も人気のある機能の一つです。
いくつかの質問に答えていくことで、ユーザーに最適な商品をおすすめしたり、見積もりシミュレーションを提示したりすることができます。
これにより、ECサイトなどでの購入率向上(コンバージョンアップ)が期待できます。
さらに、「会員証連携」や「配送状況の確認」など、既存の顧客データベースとLINEのIDを紐付けることで、パーソナライズされたサービス提供も可能です。
このように、LINEチャットボットは単なる問い合わせ対応ツールにとどまらず、マーケティングやセールス、CRM(顧客関係管理)のハブとして機能するポテンシャルを持っています。
実際にLINE活用で成果を上げている導入事例として、こちらのケーススタディも参考になります。 https://www.lycbiz.com/jp/case-study/line-mini-app/spice-works/
【キーワード解説】LINEチャットボットとLINE WORKSのボット機能の違い
「LINEチャットボット」という言葉を聞いたとき、一般向けのLINE(LINE公式アカウント)で動くボットを指す場合と、ビジネス版LINEである「LINE WORKS」のボットを指す場合があります。
これらは利用目的やターゲット層が明確に異なるため、導入前にはっきりと区別しておく必要があります。
ここでは、それぞれのプラットフォームがどのようなシーンに適しているのか、その違いと特徴について整理します。
自社の課題解決にはどちらのツールが最適なのか、判断基準としてお役立てください。
顧客向けなら「LINE公式アカウント」
一般の消費者(BtoC)を対象としたマーケティングやカスタマーサポートを行いたい場合は、「LINE公式アカウント」でのチャットボット構築が必須となります。
日本国内で圧倒的なユーザー数を誇るLINEアプリ上で動作するため、ユーザーに新たなアプリをインストールさせる必要がなく、友だち追加のハードルが極めて低いのが利点です。
LINE公式アカウントのチャットボットは、販促や集客、顧客エンゲージメントの向上を主目的として設計されます。
例えば、クーポンの配布、キャンペーンの応募受付、新商品の告知などを自動化し、ユーザーとの接点を強化するために活用されます。
また、1対1のチャット機能だけでなく、一斉配信やセグメント配信(属性に合わせた配信)とチャットボットを組み合わせることで、より効果的なマーケティング施策を展開できます。
「顧客とつながる」ことを最優先に考えるのであれば、迷わずLINE公式アカウントを選択するべきでしょう。
社内・組織向けなら「LINE WORKS」
一方、社内の業務効率化や従業員同士のコミュニケーション円滑化(BtoB、社内利用)を目的とする場合は、「LINE WORKS」のチャットボット機能を利用します。
LINE WORKSは、ビジネスチャットツールとしてセキュリティ管理機能や掲示板、カレンダーなどが統合されており、その中の一機能としてBotが存在します。
LINE WORKSのチャットボットは、社内システムと連携した業務の自動化に特化しています。
外部の顧客とやり取りするためではなく、社員が業務上の申請を行ったり、会議室を予約したり、社内FAQを検索したりするために使われます。
LINEと同じ使い慣れたインターフェースであるため、社員への導入教育コストが低く、現場のスタッフでも直感的に操作できる点がメリットです。
総務や人事、情シス部門への問い合わせ対応を自動化し、バックオフィス業務の負担を軽減したい場合には、LINE WORKSが最適な選択肢となります。
LINE WORKSでのBot活用の詳細については、公式のヘルプセンターに詳しい定義が記載されています。 https://help.worksmobile.com/ja/faqs/services/line-works/message/others/what-is-bot-message-room/
LINE WORKSのチャットボットでできること
LINE WORKSのチャットボットを活用すると、日々の定型業務をトーク画面上で完結させることが可能になります。
例えば「勤怠打刻Bot」を導入すれば、出退勤の時間をトークに送信するだけで勤怠管理システムにデータが登録されます。
また、「安否確認Bot」を使えば、災害時に全社員へ安否確認メッセージを一斉送信し、回答状況を自動集計することもできます。
さらに、社内のファイルサーバーやスケジューラーとAPI連携させることで、外出先からでも必要な資料を探したり、同僚の空き時間を確認したりすることが容易になります。
稟議の承認通知をLINE WORKSで受け取り、その場で「承認」ボタンを押して処理を完了させるワークフロー連携も一般的です。
このように、LINE WORKSのチャットボットは「仕事のアシスタント」としての役割を果たします。
各ベンダーから提供されている連携テンプレートも豊富にあり、プログラミングなしで導入できるBotも増えているため、手軽に業務改善を始められる点が大きな魅力です。
LINEチャットボットを導入する3つのメリット
LINEチャットボットを導入することは、企業側にとってもユーザー側にとっても大きなメリットをもたらします。
特に、人材不足が叫ばれる昨今において、自動化による業務効率化は避けて通れない課題です。
ここでは、LINEチャットボット導入によって得られる具体的なメリットを3つの観点から解説します。
コスト削減だけでなく、売上向上や顧客体験の改善にどうつながるのか、その効果を確認していきましょう。
24時間365日の自動対応で機会損失を防ぐ
人間のスタッフが対応する場合、どうしても営業時間という制約が発生します。
しかし、ユーザーが商品に興味を持ったり、疑問を感じたりするのは、必ずしも営業時間内とは限りません。
深夜や早朝、休日などに問い合わせを行い、返信が遅いとわかると、その時点で購入意欲が冷めてしまったり、他社へ流れてしまったりするリスクがあります。
LINEチャットボットを導入すれば、24時間365日、即座に応答することが可能になります。
ユーザーが「知りたい」と思った瞬間に情報を提供できるため、熱量の高い見込み顧客を逃さず、機会損失を最小限に抑えることができます。
特にECサイトや予約が必要なサービスでは、夜間のアクセスが多い傾向にあります。
チャットボットが夜間も休まずに接客を行うことで、営業時間外のコンバージョン(成約)を増やし、結果として全体の売上アップに貢献するという効果が期待できます。
問い合わせ対応の工数を削減し、業務効率化につなげる
カスタマーサポートの現場では、「営業時間は何時ですか?」「送料はいくらですか?」「予約の変更方法は?」といった、いわゆる「よくある質問」の対応に多くの時間を割かれているケースが少なくありません。
これらは定型的な回答で済むことが多く、必ずしも人間が対応する必要がない業務です。
LINEチャットボットにこれらの一次対応を任せることで、有人対応の件数を劇的に削減することができます。
スタッフは、クレーム対応や複雑な相談、成約に近い商談など、人間にしかできない付加価値の高い業務に集中できるようになります。
これにより、少人数でも質の高いサポート体制を維持できるだけでなく、スタッフの精神的な負担軽減や残業時間の削減にもつながります。
業務効率化はコストカットだけでなく、従業員満足度の向上という側面でも大きなメリットを生み出します。
チャットボットを含めたDXによる業務効率化を推進するための具体的な進め方や成功事例については、こちらの記事で解説しています。 合わせてご覧ください。
ユーザーにとって問い合わせのハードルが下がる
電話やメールフォームでの問い合わせは、ユーザーにとって心理的・物理的なハードルが高いものです。
「電話がつながらない」「メールの返信がいつ来るかわからない」「文章を考えるのが面倒」といった理由で、問い合わせ自体を諦めてしまうこともあります。
LINEチャットボットであれば、普段使い慣れているLINEアプリから、友だちに話しかけるような感覚で気軽に質問ができます。
選択肢をタップするだけで回答が得られる形式であれば、文字入力の手間さえ必要ありません。
この「手軽さ」は、顧客との接点を増やす上で非常に重要です。
些細な疑問でも気軽に解消できる環境を整えることで、ユーザーのサービスに対する理解が深まり、信頼感の醸成につながります。
結果として、顧客ロイヤリティが高まり、リピーターの獲得やLTV(顧客生涯価値)の向上に寄与します。
LINEチャットボットの作り方・構築方法は大きく2種類
LINEチャットボットを構築する方法は、大きく分けて2つのアプローチがあります。
プログラミング知識が不要な簡単な方法から、エンジニアによる開発が必要な高度な方法まで、自社の目的やリソースに合わせて選択することが重要です。
ここでは、それぞれの構築方法の特徴と選び方について解説します。
どちらの方法が自社のやりたいことを実現できるのか、比較検討の材料としてください。
1. LINE公式アカウントの「応答メッセージ(標準機能)」を使う
1つ目は、LINE公式アカウントの管理画面(LINE Official Account Manager)に標準搭載されている機能を利用する方法です。
これは「応答メッセージ」や「AI応答メッセージ」と呼ばれる機能で、特定のキーワードに対して事前に設定したメッセージを返す仕組みです。
この方法の最大のメリットは、完全無料で利用でき、専門的な技術知識が一切不要である点です。
管理画面から直感的な操作で設定できるため、今日からすぐにチャットボットを始めたいという小規模な店舗や企業に向いています。
ただし、あくまで事前に設定したキーワードに反応するシンプルな仕組みであるため、複雑な条件分岐や、外部データベースとの連携、購入履歴に基づいた出し分けなどはできません。
「まずはFAQの自動化から始めたい」「コストをかけずに試してみたい」というフェーズに最適な選択肢です。
2. 「Messaging API」を使って外部ツールや独自開発をする
2つ目は、LINEが提供している開発者向け機能「Messaging API」を利用する方法です。
これを使うことで、LINEのサーバーと自社のサーバー(または外部ツールのサーバー)を連携させ、自由度の高いチャットボットを構築できます。
Messaging APIを利用すれば、ユーザーごとの情報を保存して会話の内容を変えたり、自社の在庫システムと連動させたり、生成AIを組み込んで自然な会話を実現したりと、実現できる機能の幅が格段に広がります。
この方法をとる場合、自社でエンジニアを確保して開発を行うか、Messaging APIに対応した外部のチャットボットツール(SaaSなど)を契約するのが一般的です。
本格的なCRM施策や、高度な業務自動化を目指す場合は、こちらの方法を選択することになります。
Messaging APIを利用した開発や料金体系の技術的な詳細については、LINE Developersのドキュメントをご確認ください。 https://developers.line.biz/ja/docs/messaging-api/pricing/index.html.md
【比較】標準機能とAPI連携どちらを選ぶべき?
どちらを選ぶべきかは、「実現したい機能」と「予算」のバランスで決まります。
標準機能がおすすめな場合:
- 予算をかけずに無料で始めたい
- 単純な「よくある質問」の回答ができれば十分
- すぐに運用を開始したい
- 難しい設定や開発は避けたい
Messaging API(外部ツール・開発)がおすすめな場合:
- 顧客データと連携したOne to Oneマーケティングを行いたい
- 複雑なシナリオ分岐や診断コンテンツを作りたい
- 自社システムや予約システムと連携させたい
- ChatGPTなどのAIを活用したい
最初は標準機能でスモールスタートし、運用しながら機能不足を感じた段階でAPI連携へ移行するというステップアップも可能です。
まずは自社の要件を整理し、無理のない範囲で導入を検討しましょう。
【作り方1】LINE公式アカウントの標準機能でLINEチャットボットを作る
まずは、最も手軽に始められるLINE公式アカウントの標準機能を使ったチャットボットの作り方を解説します。
この方法であれば、特別なツールを契約する必要はなく、LINE公式アカウントの開設さえ済んでいればすぐに設定可能です。
具体的な設定手順として、「応答メッセージ」「AI応答メッセージ」「リッチメニュー」の活用法を紹介します。
これらを組み合わせるだけでも、十分に実用的な自動応答システムを構築することができます。
応答メッセージ(キーワード応答)の設定方法
「応答メッセージ」は、ユーザーが送信した特定のキーワードに反応して、あらかじめ登録しておいたメッセージを返す機能です。
例えば、「営業時間」というキーワードに対して「平日9:00〜18:00です」という返信を設定しておくことができます。
設定手順は以下の通りです。
- LINE Official Account Manager(PC版管理画面)にログインします。
- 左側メニューの「自動応答」内にある「応答メッセージ」をクリックします。
- 「作成」ボタンを押し、タイトルや応答させるキーワード(完全一致のみ)、返信内容を入力します。
- 保存して設定を有効にします。
この機能を活用するには、ユーザーにどのようなキーワードを入力してもらいたいかを案内することが重要です。
リッチメニューや挨拶メッセージで「『予約』や『料金』と入力してください」と誘導することで、スムーズな自動応答が可能になります。
カードタイプメッセージの設定方法と特徴
「カードタイプメッセージ」は、画像やテキストをカード形式(カルーセル)で横並びに表示し、ユーザーが左右にスワイプして閲覧できる機能です。 商品カタログやスタッフ紹介、メニュー表などを直感的に見せることができる点が特徴です。
設定画面では、「プロダクト」「ロケーション」「パーソン」などのタイプを選択し、画像や説明文、リンクボタンを登録します。 ユーザーが特定のキーワード(例:「おすすめ」)を送信した際に、このカードが表示されるよう「応答メッセージ」と組み合わせて設定します。
テキストだけのやり取りよりも視覚的な訴求力が高く、アプリのようなリッチな操作感を提供できるため、ユーザーの興味を惹きつけたい場面で活用すると効果的です。
リッチメニューを活用してタップ操作で誘導する方法
テキスト入力によるチャットボットは、ユーザーにとって「何と入力すればいいかわからない」というストレスを与えることがあります。
そこで活用したいのが、トーク画面下部に表示される画像メニュー「リッチメニュー」です。
リッチメニューの各ボタンに「よくある質問」「予約する」「クーポン」などのテキストを設定しておきます。
ユーザーがそのボタンをタップすると、設定されたテキストが自動的に送信され、それに対して応答メッセージが反応するように設計します。
これにより、ユーザーは文字を入力することなく、直感的なタップ操作だけでチャットボットと対話できるようになります。
スマホユーザーにとって最も使いやすいUI(ユーザーインターフェース)であるため、チャットボット運用の際は必ず設定しておくべき機能です。
【作り方2】Messaging API(外部ツール)で高度なLINEチャットボットを作る
より本格的な運用を目指すなら、Messaging APIを活用したチャットボット構築に挑戦しましょう。
APIを利用することで、LINE公式アカウントの枠を超えた多彩な機能拡張が可能になります。
ここでは、API連携によって実現できる高度な機能や、外部ツール導入のメリット、そして話題の生成AIとの連携について解説します。
競合他社と差別化を図り、顧客満足度を最大化するためのヒントとなるはずです。
Messaging APIで拡張できる機能(セグメント配信・DB連携など)
Messaging APIを利用する最大の利点は、外部のデータベースやシステムとLINEを接続できることです。
これにより、ユーザーのLINE IDと自社の会員IDを紐付ける「ID連携」が可能になります。
ID連携ができれば、例えば「過去に商品Aを購入した人だけに、関連商品Bの案内を送る」といった精度の高いセグメント配信が実現します。
また、ユーザーがLINE上で入力したアンケート回答を顧客管理システム(CRM)に自動保存したり、LINEから直接ECサイトの購入履歴を参照したりすることも可能です。
さらに、複雑なシナリオ分岐も自由に設計できます。
診断コンテンツのように、「はい/いいえ」の回答に応じて次々と質問を変え、最終的にユーザーにぴったりの結果を表示するといった動的な挙動は、APIならではの機能です。
外部のチャットボットツールを導入するメリット
Messaging APIを利用するにはプログラム開発が必要ですが、ゼロから開発するにはコストと時間がかかります。
そこで多くの企業が利用しているのが、APIに対応した「LINEチャットボットツール」や「マーケティングツール」です。
「Lステップ」や「MicoCloud」などが代表的です。
これらのツールを導入するメリットは、プログラミング不要(ノーコード)でAPIの高度な機能を利用できる点にあります。
管理画面上でドラッグ&ドロップでシナリオを作成したり、詳細な顧客分析を行ったりする機能がパッケージ化されています。
初期費用や月額費用は発生しますが、独自開発に比べて安価かつ短期間で導入でき、ベンダーによるサポートも受けられるため、費用対効果の高い選択肢と言えます。
自社の目的に合った機能を持つツールを選定することが、成功への近道です。
ChatGPTなど生成AIと連携させるトレンド手法
近年、最も注目されているのが、ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)とLINEチャットボットの連携です。
従来のチャットボットは、事前に設定されたシナリオ通りの会話しかできませんでしたが、生成AIを組み込むことで、あらゆる質問に対して自然な日本語で回答を生成することが可能になりました。
特に、2025年8月にOpenAIからリリースされた最新モデル「GPT-5」の登場により、この分野はさらに進化しています。
GPT-5は、簡単な質問には即座に答える一方、複雑な相談には「思考時間」を挟んで深く推論してから回答するという、人間に近い柔軟な対応力を備えています。
また、「gpt-5-mini」のような軽量で低コストなAPIモデルも提供されており、LINEチャットボットへの組み込みコストも以前より最適化されています。
例えば、マニュアルPDFをAIに学習させ、ユーザーからの質問に対してマニュアルに基づいた正確な回答を自動生成させるといった使い方がトレンドです。
これにより、シナリオ設計の手間を大幅に減らしつつ、極めて精度の高い自動応答システムを構築できるようになっています。
最新モデルGPT-5のリリース日、搭載機能、料金、GPT-4との違いについて詳細を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。 合わせてご覧ください。
業種別・LINEチャットボットの活用事例
LINEチャットボットは、業種や業態を問わずさまざまなシーンで活用されています。
自社と同じ業界の成功事例を知ることは、具体的な運用イメージを掴む上で非常に有効です。
ここでは、飲食店・美容室、EC・小売、カスタマーサポートという3つの主要なカテゴリーにおける活用事例を紹介します。
それぞれの現場でどのような課題が解決されたのかを見ていきましょう。
【飲食店・美容室】予約受付の自動化とリマインド配信
飲食店や美容室、サロンなどの店舗ビジネスでは、電話予約の対応が業務の妨げになることが多々あります。
LINEチャットボットを導入し、予約システムと連携させることで、トーク画面上で空き状況の確認から予約完了までを自動化できます。
ある美容室では、LINEでの予約受付を開始したことで、電話対応の時間が月間30時間削減され、施術に集中できる環境が整いました。
また、予約日の前日に自動で「リマインドメッセージ」を配信することで、うっかり忘れによる無断キャンセル(ドタキャン)を大幅に減らすことにも成功しています。
さらに、来店後に「施術はいかがでしたか?」というアフターフォローメッセージを自動送信し、口コミ投稿を促すなど、リピート率向上施策とも相性が良いのが特徴です。
【EC・小売】商品の検索アシストと配送状況の確認
商品を多く抱えるECサイトや小売店では、ユーザーが欲しい商品になかなか辿り着けないという課題があります。
そこで、LINEチャットボットを「接客スタッフ」として活用する事例が増えています。
例えば、アパレルブランドのLINEアカウントでは、チャットボットが「性別」「好み」「予算」などをヒアリングし、おすすめのコーディネートや商品を提案します。
これにより、店舗で接客を受けているような体験を提供し、購入への動機付けを行っています。
また、購入後の「配送状況の確認」もLINEで完結できるようにすることで、問い合わせの手間を減らしています。
ヤマト運輸や佐川急便などの配送業者もLINEを活用しており、再配達依頼がLINEだけで完結する仕組みは、多くのユーザーにとって馴染み深い成功事例と言えるでしょう。
【カスタマーサポート】よくある質問(FAQ)の自動回答
メーカーやWebサービス企業におけるカスタマーサポートでは、FAQの自動化が最もスタンダードな活用法です。
製品の使い方や故障時の対処法など、膨大なマニュアル情報をチャットボットに集約させることで、ユーザーの自己解決を促します。
ある家電メーカーでは、故障診断チャットボットを導入しました。
「電源が入らない」などの症状を選択していくと、ボットが対処法をステップごとに案内し、それでも直らない場合にのみ修理受付フォームへ誘導するというフローです。
これにより、コールセンターへの入電数が20%削減され、オペレーターは本当にサポートが必要な複雑な案件に注力できるようになりました。
ユーザーにとっても、電話の待ち時間なしで24時間解決策が得られるため、満足度の向上につながっています。
LINEチャットボットの導入・開発にかかる費用相場
導入を検討する際に最も気になるのが費用です。
LINEチャットボットの費用は、利用するプランやツールの有無、開発規模によって大きく異なります。
ここでは、LINE公式アカウント自体の利用料金、外部ツールの相場、そして開発会社に依頼する場合の費用目安について整理します。
予算計画を立てる際の参考にしてください。
LINE公式アカウントの利用料金(無料・有料プラン)
まずベースとなるのが、LINE公式アカウントの利用料金です。
初期費用はかかりませんが、月間のメッセージ配信数に応じてプランを選ぶ必要があります。
- コミュニケーションプラン(無料): 月間200通まで配信可能。
- ライトプラン(月額5,000円): 月間5,000通まで配信可能。
- スタンダードプラン(月額15,000円): 月間30,000通まで配信可能。(それ以上は従量課金)
※料金は2025年12月時点のものです。最新情報は公式サイトをご確認ください。
重要なのは、ユーザーから送られてきたメッセージに対する「自動応答」や「チャットの返信」は、配信数としてカウントされない(無料)という点です。
つまり、チャットボットとしてのやり取りがメインで、こちらからの一斉配信をあまり行わないのであれば、無料プランのままでもかなりの規模まで運用することが可能です。
最新のプラン詳細や機能仕様については、LINEヤフー社が公開している媒体資料(Business Guide)が正確です。 https://www.linebiz.com/sites/default/files/media/jp/download/LINE%20Business%20Guide_202310-202403.pdf
チャットボットツールの月額費用相場
Messaging APIを利用した外部のチャットボットツール(SaaS)を導入する場合、LINE公式アカウントの料金とは別に、ツールの利用料が発生します。
- 初期費用: 0円〜10万円程度
- 月額費用: 3,000円〜3万円程度(機能や配信数による)
安価なツールであれば月額数千円から利用でき、ステップ配信やリッチメニューの切り替えなど、標準機能にはない便利な機能が使えます。
LステップやLinyなどの高機能なツールになると、月額数万円〜となり、専任のコンサルタントがつくプランなども用意されています。
開発会社に依頼する場合の初期費用目安
自社独自の要件を満たすために、オーダーメイドでチャットボット開発をシステム会社に依頼する場合、開発費(イニシャルコスト)が発生します。
- 簡易的なボット開発: 10万円〜50万円
- システム連携を含む開発: 50万円〜300万円
- AI搭載・大規模開発: 300万円以上
これに加えて、サーバー保守費用などが月額数万円程度かかります。
開発会社に依頼する場合は、要件定義からしっかりと行う必要があり、コストも時間もかかりますが、自社のビジネスモデルに完全にフィットした独自のシステムを構築できるのが強みです。
LINEチャットボット導入時の注意点と対策
LINEチャットボットは便利なツールですが、運用方法を誤ると逆効果になることもあります。
特に、LINEはユーザーにとってプライベートな空間であるため、企業からの過度な干渉は嫌われる傾向にあります。
導入後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、事前に対策すべき注意点を3つ解説します。
これらを押さえておくことで、スムーズな運用開始が可能になります。
ブロック率を高めないためのシナリオ設計
LINE公式アカウント運用の最大の敵は「ブロック」です。
チャットボットのシナリオ設計が不適切だと、ユーザーは「通知がうるさい」「欲しい情報に辿り着けない」と感じ、すぐにブロックしてしまいます。
対策としては、無駄なメッセージ配信を控えることが第一です。
チャットボットの応答は必要最低限かつ簡潔にし、ユーザーが求める回答へ最短ルートで導く設計を心がけましょう。
また、不要な通知をオフにできる機能を持たせたり、興味のある情報のジャンルをあらかじめ選んでもらったりするなど、ユーザーに配慮した設計がブロック防止につながります。
業界ごとの平均ブロック率や、ブロックを防ぐための具体的な施策については、こちらの記事で詳しく解説されています。 https://blog.socialplus.jp/knowledge/line-block-rate/
botが回答できない場合の「有人切り替え」ルールを決める
どんなに優れたAIチャットボットでも、全ての質問に完璧に答えることは不可能です。
ボットが回答できない状況になったとき、「わかりません」と繰り返すだけでは、ユーザーのストレスはピークに達します。
必ず「ボットで解決しない場合の逃げ道」を用意しておきましょう。
「オペレーターにつなぐ」というボタンを表示させたり、有人チャット対応時間を案内したり、電話番号や問い合わせフォームへ誘導したりする動線設計が必須です。
自動化と有人対応のシームレスな連携こそが、顧客満足度を維持する鍵となります。
LINE WORKS連携時のセキュリティ設定
LINE WORKSを使って社内情報を扱う場合、セキュリティ対策は極めて重要です。
特に、個人個人のLINEアカウントと連携させる場合や、社外秘のデータをBot経由で閲覧できるようにする場合は注意が必要です。
LINE WORKSの管理画面では、ファイル送受信の制限や、ログの保存期間、アクセス制限などを細かく設定できます。
また、GPT-5などの生成AIと連携させる場合は、入力したデータがAIの学習に使われない設定(API利用時のデータポリシー確認や、法人向けプランの利用)を確実に行う必要があります。
情報漏洩リスクを考慮し、情シス部門と連携して適切なセキュリティポリシーを策定しましょう。
管理者が設定できるセキュリティ権限や監査ログの詳細については、以下の管理者ガイドを参照してください。 https://help.worksmobile.com/ja/admin-guides/security/administrator-authorities/manage-administrator-authorities/
LINEチャットボットに関するよくある質問
最後に、LINEチャットボットの導入を検討している方から頻繁に寄せられる質問をまとめました。
これから導入を進めるにあたっての疑問解消にお役立てください。
個人でもLINEチャットボットは作れますか?
はい、個人でも作成可能です。
LINE公式アカウントは個人・法人問わず誰でも無料で開設できます。
Messaging APIも開発者登録(LINE Developers)を行えば無料で利用できるため、プログラミングの学習目的で個人開発のボットを作っているエンジニアも数多く存在します。
個人の趣味のアカウントや、サークル活動の連絡網などにも活用できます。
プログラミングの知識がなくても作れますか?
はい、作れます。
本記事で紹介した「応答メッセージ」や「AI応答メッセージ」といった標準機能を使えば、プログラミング知識は一切不要です。
また、Messaging APIを利用する場合でも、「チャットボット作成ツール」などのノーコードツールを契約すれば、管理画面上の操作だけで高度なボットを作成できます。
専門知識がなくても導入できる環境は十分に整っています。
LINE WORKSのフリープランでもBotは使えますか?
はい、LINE WORKSのフリープラン(無料版)でも公式が提供する基本的なBot機能は利用可能です。
ただし、APIを利用して自作のBot(Custom Bot)を追加・運用する機能は、現在有料プラン(スタンダードプラン以上)での利用が基本となっています。 本格的なシステム連携や独自の業務自動化Botを導入する場合は、スタンダードプラン以上の契約が必要になるとお考えください。
あなたのLINEボット運用は「思考停止」していませんか?「成果を出す企業」と「離脱される企業」の決定的違い
チャットボットを導入しただけで、顧客対応が完了したと思っていませんか?実は、ツールに頼り切った「思考停止」の運用を行うと、顧客満足度は向上するどころか、急速に低下してしまう恐れがあります。ガートナー社の調査などが示唆する顧客心理のデータを紐解くと、便利なはずのボットが逆に顧客を遠ざける要因になっている可能性が見えてきます。この記事では、「離脱される企業」と「成果を出す企業」の分かれ道を、顧客体験(CX)の視点と具体的なテクニックを交えながら解説します。
【警告】「とりあえず自動化」は顧客の心を冷ますかもしれない
「自動応答にしておけば、24時間対応できて便利だろう」――。もしそう安易に考えているなら、それは危険なサインかもしれません。PwCの調査によると、消費者の約6割は、たとえ技術が進歩しても、カスタマーサービスにおいては「人間味のある対応」を求めていることがわかっています。
これは、企業側が効率化を優先してコミュニケーションを機械に丸投げする「接客の外部委託」が起きている証拠です。この状態が続くと、次のようなリスクが考えられます。
- 顧客の感情を無視する: トラブル時にも機械的な定型文が返され、顧客の怒りを増幅させる。
- 潜在ニーズを逃す: 選択肢以外の要望に対応できず、本来売れるはずだった機会を損失する。
- ブランドへの愛着が薄れる: 「大切にされていない」と感じさせ、他社への乗り換え(サイレント・チャーン)を招く。
便利なツールを導入したつもりが、気づかぬ間に、顧客との間に「冷たい壁」を作ってしまっている可能性があるのです。
引用元:
PwCの「Future of Customer Experience Survey」では、消費者の59%が、企業が顧客体験において「人間的な要素(Human touch)」を失っていると感じており、テクノロジーがいかに進化しても、人間らしいつながりが重要であると指摘しています。(PwC “Experience is everything: Here’s how to get it right” 2018年)
【実践】チャットボットを「最高の接客係」に変える3つの視点
では、「成果を出す企業」はチャットボットをどう設計しているのでしょうか?答えはシンプルです。彼らはボットを「コスト削減ツール」ではなく、「顧客体験を向上させるパートナー」として設計しています。ここでは、今日から見直せる3つの「賢い」運用視点をご紹介します。
視点①:あえて「人間らしさ」を演出するマイクロコピー
無機質な「選択してください」という文言だけでは、顧客は事務手続きをしている気分になります。そこで、ボットのメッセージ(マイクロコピー)に、あえて「人格」や「感情」を持たせましょう。
- 改善のヒント:ボットにキャラクター設定を行い、「お待たせしました!」「そのお悩み、解決するお手伝いをさせてください」といった、温度感のある言葉遣いを採用します。これにより、機械的なやり取りの中にも心理的な安心感が生まれ、対話の継続率が向上します。
視点②:「わかりません」を「チャンス」に変える導線設計
どれほどAIが進化しても、答えられない質問は必ず発生します。思考停止する運用では、ただ「回答できません」と返して終了してしまいますが、賢い運用ではここを接客のチャンスと捉えます。
- 改善のヒント:回答不能時に「申し訳ありません。私の勉強不足です」と素直に謝罪させた上で、「人間のスタッフに交代しますか?」や「お問い合わせフォームで詳しく伺えますか?」と、即座に次の解決策を提示させます。この「逃げ道」の設計こそが、顧客のストレスを最小限に抑える鍵となります。
視点③:受動的な対応から「提案型」への進化
ユーザーからの質問を待つだけのボットは、言われたことしかやらない指示待ち人間と同じです。成果を出すボットは、会話の流れからニーズを先読みし、提案を行います。
- 改善のヒント:例えば「予約したい」という操作の後に、「当日は〇〇フェアを開催中ですが、詳細をご覧になりますか?」とプラスアルファの情報を投げかけます。ユーザーが気づいていなかったメリットを提示することで、単なる自動化ツールを超えた「有能なコンシェルジュ」としての価値を発揮し始めます。
まとめ
LINEチャットボットやLINE WORKSの導入は、顧客対応のスピードアップや社内業務の効率化に極めて有効な手段です。
しかし、実際に導入を進めるとなると、「API連携などの専門知識がない」「シナリオ設計に割く時間がない」「セキュリティ面での懸念がある」といった課題に直面し、導入ハードルが高いと感じる企業も少なくありません。
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