生成AIでチャットボットを作る5つステップ|生成AIをチャットボットで活用するには

デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速に伴い、企業の生成AI活用は加速を続けています。特に企業の業務効率化や顧客サービス向上のために、生成AIを活用したチャットボットの導入が注目されています。

従来のチャットボットと比較して、生成AIを活用したチャットボットはより柔軟で自然な対話が可能となり、ビジネスにおける活用範囲が急速に広がっています。

本記事では、生成AIとチャットボットの基本的な概念から、それらを掛け合わせることのメリット、さらに実際にチャットボットを作成する方法まで、詳しく解説します。

生成AIとは

生成AIとは、人工知能技術の一種で、新しいコンテンツを自動的に生成する能力を持つAIシステムです。生成AIは「生成的人工知能」とも呼ばれ、英語では”generative artificial intelligence”や略して”GenAI”と表現されます。

生成AIの最大の特徴は、入力(プロンプト)に対してテキスト、画像、音声などの様々な形式のデータを新たに生成できることです。重要なのは、単に既存のデータを組み合わせるだけでなく、訓練データから学んだ規則性や構造を基に、訓練データに含まれていない新しいデータを生成できる点です。

著名な生成AIシステムとしては、OpenAIが開発したGPT-3やGPT-4の大規模言語モデルを使用して構築されたChatGPTや、GoogleのBard(現Gemini)などのチャットボットが挙げられます。また、Stable DiffusionやDALL-Eなどの画像生成AIも生成AIの一種です。

役割別によく使用される生成AIは下記です。

  • テキスト生成: ChatGPT(OpenAI)、Gemini(Google)、Claude(Anthropic)
  • 画像生成:DALL-E、Stable Diffusion、Midjourney
  • 音声・音楽生成:ElevenLabs、Mubert
  • コード生成:GitHub Copilot、Amazon CodeWhisperer

生成AIは2020年代初頭から急速に発展し、現在ではアート制作、文章作成、ソフトウェア開発、ヘルスケア、金融、マーケティングなど、様々な業界で活用されています。

チャットボットとは

チャットボットとは、「チャット」と「ロボット」を組み合わせた言葉で、人工知能を活用した自動会話プログラムのことです。ユーザーからの質問に自動で返答するシステムであり、テキストや音声を使って自動的に会話を行うプログラムといえます。

チャットは、インターネットを利用したリアルタイムコミュニケーションのことで、主にテキストを双方向でやり取りする仕組みを指します。一方、ボットは「ロボット」の略で、人間に代わって一定のタスクや処理を自動化するためのプログラムです。

チャットボットの歴史は古く、以前から存在していましたが、当初はあらかじめ人間によってパターン化された対応しかできず、「人工無脳」と揶揄されることもありました。しかし、人工知能技術の発展と自然言語処理技術が実用的なレベルになってきたことで、より高度なチャットボットが実現するようになりました。

生成AIとチャットボットの違いは?

従来のチャットボットと生成AIを活用したチャットボットには大きな違いがあります。
従来のチャットボットは、主に事前に用意された応答パターンに基づいて会話を行うプログラムです。つまり、「〇〇という質問に対しては、△△と答える」というルールをあらかじめ設定しておき、そのルールに沿って応対するものでした。このようなチャットボットは、想定された質問に対しては適切に回答できますが、想定外の質問に対しては適切に対応できないという制限があります。

一方、生成AIを活用したチャットボットは、大量のデータから学習し、入力に対して新しいテキストを生成する能力を持っています。これにより、事前に設定されたパターンだけでなく、より柔軟で自然な対話が可能になります。たとえば、OpenAIのChatGPTやGoogleのBard(現Gemini)などは、様々な質問に対して人間のような回答を生成することができます。

つまり、従来のチャットボットが「プログラムされた応答」を提供するのに対し、生成AIを活用したチャットボットは「生成された応答」を提供するという違いがあります。

生成AIとチャットボットを掛け合わせることのメリット

生成AIとチャットボットを掛け合わせることで、多くのメリットが生まれます。

1.より自然で柔軟な対話が可能

生成AIを活用したチャットボットは、最新の自然言語処理技術と機械学習の進歩により、驚くほど自然な会話を実現します。文脈を理解し、ニュアンスを捉え、感情表現まで含めた人間らしい対話が可能です。従来のルールベースのチャットボットでは対応できなかった曖昧な表現や、予期せぬ質問にも柔軟に対応できるようになりました。

2.複雑な質問にも対応可能

生成AIは膨大なデータベースから学習し、複雑な質問や状況に対して的確な回答を生成します。単純な質問応答だけでなく、複数の情報を組み合わせた分析や、状況に応じた提案まで可能です。ユーザーの質問の背景にある真の意図を理解し、最適な解決策を提示することができます。

3.継続的な学習による回答精度の向上

生成AIの特筆すべき特徴は、継続的な学習による性能向上です。日々のユーザーとの対話から得られる新しい表現やトレンド、さらには業界特有の専門用語まで学習し、回答の精度を着実に向上させていきます。この学習能力により、時間とともにより洗練された対話が可能になります。

4.人的コストの削減

生成AIチャットボットの導入により、企業の顧客対応業務は大きく変革します。24時間体制のコールセンターや、大量の問い合わせ処理が必要な部門では、人件費の大幅な削減が可能です。また、定型業務の自動化により、人的リソースを より創造的で付加価値の高い業務にシフトすることができます。導入企業の実績では、カスタマーサポートのコストを最大70%削減した例も報告されています。

5.24時間365日の対応が可能

生成AIチャットボットは、人間のような疲労や気分の変動がなく、常に安定したサービス品質を提供し続けます。深夜や休日、災害時など、通常のカスタマーサポートが対応困難な状況でも、迅速かつ正確な対応が可能です。これにより、顧客満足度の大幅な向上だけでなく、言語間を超えたグローバルな対応や、外国企業ビジネスにおける時差の問題も解消できます。

生成AIでチャットボットの作成は可能?

昨今生成AIを活用してチャットボットを作る企業が増えています。生成AIの発展により、一般的なチャットボットよりも生成AIを活用し、自社の開発が実現しています。生成AIの技術的なブレークスルーは、従来の機械学習やニューラルネットワークから「ディープラーニング(深層学習)」への進化が大きな要因となっています。

2014年頃から変分オートエンコーダや敵対的生成ネットワークなどの進歩により、複雑なデータを生成することができる実用的なディープニューラルネットワークが登場しました。

さらに2017年には、Transformerネットワークの登場により、より大規模な生成モデルが実現し、現在の生成AIの基盤となっています。これらの技術発展により、高度なチャットボットの開発が可能になりました。

現在では、大手企業だけでなく中小企業でも、様々なプラットフォームやツールを活用して、生成AIを搭載したチャットボットを比較的容易に導入することができるようになっています。

生成AIでチャットボットを作る方法|5ステップで解説

生成AIを活用したチャットボットを作成するためには、以下の5つのステップを踏むことが重要です。

STEP 1: 目的の明確化と要件定義

チャットボットを導入する最初のステップは、その目的を明確にすることです。チャットボットに何を期待するのか、どのような役割を果たしてほしいのかを具体的に定義します。
例えば、カスタマーサポート用なのか、営業支援用なのか、あるいは社内の情報検索用なのかなど、目的によって設計や必要な機能が変わってきます。また、ターゲットとなるユーザーは誰なのか、どのプラットフォーム(Webサイト、モバイルアプリ、SNSなど)で利用されるのかも明確にしておく必要があります。チャットボットの目的を明確にすることで、次のステップで適切な技術選定ができるようになります。

STEP 2: 技術選定とインフラ設計

目的が明確になったら、次は適切な生成AIモデルとチャットボットプラットフォームを選定します。

生成AIモデルには様々な種類があり、それぞれ特性が異なります。例えば、OpenAIのGPT系モデルやGoogleのGeminiなどがあり、用途や要件に合わせて選択する必要があります。
また、チャットボットを構築するためのプラットフォームも多数存在します。LINE、Facebook、Twitterなどのプラットフォーム向けのボット開発ツールや、IBM WatsonのようなAIプラットフォームなどから選択することができます。

さらに、セキュリティ要件も重要な考慮点です。特に顧客情報を扱う場合は、データの暗号化やアクセス制御などのセキュリティ対策を十分に行うことが求められます。

STEP 3: 会話フローとスクリプトの設計

チャットボットの「会話力」はユーザー体験に直結する重要な要素です。そのため、ユーザーがどのような質問をするか、それに対してチャットボットがどう応答するかという会話フローを設計する必要があります。

まず、ユーザーシナリオを作成し、想定される質問と回答のパターンをリストアップします。次に、これをもとにQ&Aデータを準備します。生成AIを活用する場合でも、基本的な回答パターンやナレッジベースを用意しておくことで、より精度の高い応答が可能になります。
また、会話の自然さを考慮したスクリプト設計も重要です。機械的な応答ではなく、人間らしい会話ができるよう工夫することで、ユーザーの満足度が向上します。

STEP 4: AIモデルのトレーニングとテスト

生成AIモデルを効果的に活用するためには、適切なトレーニングとテストが不可欠です。
まず、STEP 3で準備したデータを使ってAIモデルをトレーニングします。トレーニングの方法はモデルによって異なりますが、基本的には既存のモデルをファインチューニングして特定のドメインや用途に適応させることが多いです。
トレーニング後は、様々なテストケースを作成して実行し、チャットボットの応答を評価します。

特に以下の点に注目してテストを行いましょう。

  • 想定される質問に正確に答えられるか
  • 想定外の質問に対しても適切に対応できるか
  • 会話の流れが自然か
  • 誤った情報を提供していないか

テスト結果をもとに、必要に応じてモデルの再トレーニングや会話フローの調整を行いましょう。

STEP 5: 導入と継続的な改善

チャットボットの開発が完了したら、実際の運用環境に導入します。導入にあたっては、ユーザーへの周知やサポート体制の整備も重要です。
導入後も、チャットボットの性能は継続的に監視し、改善を続けることが重要です。

ユーザーからのフィードバックを収集し、それをもとにチャットボットの応答を改善していきます。また、定期的に性能評価を行い、必要に応じてモデルの再トレーニングや機能の追加を検討します。

特に生成AIを活用したチャットボットの場合、誤った情報を提供したり、不適切な発言をしたりする可能性があることに注意が必要です。Microsoftの人工知能プロジェクト「Tay」が悪質なユーザーの誘導により不適切な発言をするようになってしまった事例もあるため、モニタリングと制御の仕組みを適切に設計することが重要です。
参考:差別的発言を連発したAIボット「Tay」 Microsoftが謝罪

生成AIチャットボットの開発環境は?おすすめツールも増えてきている

生成AIチャットボットを開発するための環境やツールも充実してきています。例えば、LINEは「LINE Bot」の開発・普及のために「Messaging API」を提供し、「LINE BOT AWARDS」を開催して外部開発者を支援しています。

また、IBMは「Watson」の「Botkit Watson」というチャットボット向けの「Watson Conversation 連携ミドルウェアプラグイン」を提供しています。「Slack」向けに会話エンジンとして「Watson Conversation」を提供し、開発者向けにAPIやサンプルコード、チュートリアルなどのリソースを公開しています。

これらのプラットフォームやツールを活用することで、専門的な知識がなくても、生成AIを活用したチャットボットを開発することが可能になっています。

おすすめの生成AIチャットボットサービス3選

生成AIを活用したチャットボットの導入を検討する企業にとって、適切なプラットフォームの選定は重要な課題です。市場には多数のサービスが存在しますが、特に日本語対応や企業向け機能に優れた3つのサービスを厳選してご紹介します。

1.ナレカン|日本語に特化した高性能チャットボット

ナレカンは日本語自然言語処理に特化したAIチャットボットサービスで、社内ナレッジ管理と検索機能を統合したプラットフォームとして注目されています。最大の特徴は「自然言語検索」機能で、日常会話のように「先月の営業報告書を探して」といった曖昧な検索クエリにも対応可能です。

基幹システムとの連携機能を備えており、Salesforceやkintoneなどの主要CRMとのAPI連携が可能です。中小企業から大企業まで幅広い規模に対応し、導入企業では情報検索時間の75%短縮を実現したケースが報告されています。料金体系は従量課金制を採用しており、初期費用0円から利用可能な点が特徴です。

セキュリティ面ではISO/IEC 27001認証を取得し、オンプレミス環境への導入も可能です。特に医療機関や金融機関など機密情報を扱う業界での導入実績が豊富で、アクセスログの完全な追跡機能を備えています。

2.Gemini|Google開発の対話型チャットボット

Googleが開発した生成AI「Gemini」は2024年8月に大幅な機能強化が行われ、独自チャットボット作成機能「Gems」が追加されました。有料プラン(Advanced /Business /Enterprise)ユーザーは、自然言語での指示入力だけで専門特化型ボットを構築可能です。

特徴的な機能として「Gemマネージャー」が挙げられ、作成したボットを即時呼び出してGoogle Workspaceとの連携が可能です。実際にJEITAの統計データを参照するテレビ出荷台数分析ボットを1分で構築した事例があり、専門知識不要での開発を実現しています。

画像生成機能「Imagen 3」を統合しており、マーケティング資料作成から商品デザイン提案までマルチモーダル対応しています。ただし生成画像には「SynthID」電子透かしが埋め込まれ、AIコンテンツであることが判別可能な仕組みを採用しています。

3.PKSHA Chatbot|企業向け高度AIソリューション

PKSHAテクノロジーが提供する企業向けチャットボットソリューションで、特に大規模組織向けのカスタマイズ性が特徴です。自然言語理解エンジン「Deep Dialogue」を搭載し、複雑な質問文の意図を98.7%の精度で解析可能です。

最大の強みは外部システムとの連携機能で、SAPやOracle ERPなど50種類以上の企業システムとAPI連携実績を有することです。某生命保険会社では給付金請求処理を自動化し、応答率90%維持と処理時間40%短縮を達成しています。

料金体系は「Basicプラン」が月額547,250円(税込)からで、500ユーザー同時接続と99.99%の稼働率保証を提供しています。金融庁の監査基準に対応したログ管理機能を標準装備し、完全なトレーサビリティを確保しています。

セキュリティ面では仮想プライベートクラウドを採用し、NTTドコモグループでは13サービスに跨る共同利用基盤として導入実績があります。継続学習機能により、利用開始後3ヶ月で回答精度が平均35%向上する検証結果も報告されています。

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生成AIでチャットボットを作成するまとめ

生成AIを活用したチャットボットは、企業の業務効率化や顧客サービス向上に大きく貢献する可能性を秘めています。従来のルールベースのチャットボットと比較して、より自然で柔軟な対話が可能になり、複雑な質問にも対応できるようになりました。

生成AIチャットボットを導入するためには、目的の明確化、適切な技術選定、会話フローの設計、AIモデルのトレーニングとテスト、そして継続的な改善が重要です。これらのステップを踏むことで、効果的なチャットボットを構築し、運用することができます。

生成AIの技術は急速に進化しており、今後数年間であらゆるWebサービスがチャットボットをユーザーインターフェースとして採用する可能性があります。企業はこの技術トレンドをしっかりと理解し、適切に活用することで、競争優位性を確保することができるでしょう。

ただし、生成AIの利用には責任ある対応も求められます。不適切な内容の生成リスクや法規制の動向にも注意を払いながら、適切な形で生成AIチャットボットを導入・運用していくことが重要です。