生成AIは「令和のゴールドラッシュ」。岡山香川架け橋法律事務所が見据える、業務自動化とAIアシスタントが共存する未来

日々進化を遂げる生成AIは、今やあらゆる業界で業務効率化や新たな価値創出のための重要なツールとなっています。今回は、特に正確性と専門性が求められる法律事務所において、いち早く生成AIを導入し、活用を加速させている岡山香川架け橋法律事務所の代表弁護士 呉さんにお話を伺いました。ツールの選定から具体的な活用方法、組織への浸透プロセス、そしてAIと共に歩む未来の展望まで、語っていただきました。

質と量の両面から業務を変革。AI導入で目指した課題解決

Q.まず、なぜ生成AIを導入・活用されているのでしょうか。

呉さん: 当事務所では、質と量の両面における課題解決のために生成AIを活用しています。法律事務所の業務は多岐にわたりますが、特にご相談者様への対応品質の向上と、膨大な量の文章作成業務の効率化は常に追求すべきテーマです。生成AIを導入したことで、これらの課題に効果的にアプローチできるようになりました。

例えば、質の向上という面では、ご相談者様からいただいた内容を事前にAIで分析し、事案を整理した上で弁護士が実際の相談に臨む体制を取っています。これにより、論点を明確にし、あるべき法律アドバイスの筋道を立てやすくなりました。結果として、より深く、的確なリーガルサービスを提供できており、サービスの質が向上していると実感しています。

個別作業の効率化から業務フローの完全自動化へ。進化し続けるAI活用術

Q.導入当初から現在に至るまで、生成AIの活用方法はどのように変化・進化してきたのでしょうか。

呉さん: 生成AIが話題になり始めた一昨年(2024年)頃から個人的に触り始め、本格的に業務で活用するようになったのは昨年(2025年)からです。現在、当事務所で主に活用しているのはGoogle系のGeminiとNotebookLMで、今後も当面はこの路線で進める予定です。

活用方法は段階的に進化しており、当初はブログの原案作成や動画の原稿作成といった、情報発信業務における下調べやドラフト作成が中心でした。しかし現在では、より専門的な業務へと活用の幅が広がっています。具体的には、NotebookLMを使って案件の反論文を精査したり、経営分析に活用したりと、単なる作業補助にとどまらない使い方をしています。

そして現在、最も注力しているのが、これまで個別に行っていたAIによる作業を連携させ、一連の業務フローを完全に自動化する取り組みです。例えば、ご相談の応募がメールであった場合、Googleフォームへの入力を促し、その入力内容をプロンプトに基づいてGeminiが分析。結果をドキュメントに保存し、タスク管理ツールのTrelloに自動で登録する、といった流れを構想しています。この仕組みが完成すれば、お客様がフォームに入力してから弁護士が内容を把握するまでの手作業が一切なくなり、業務は劇的に効率化されるでしょう。個別のタスク処理から、AIをエージェントのように活用して業務プロセス全体を最適化するフェーズへと移行している段階です。

活用フェーズ 主な利用ツール 具体的な活用内容
導入初期 ChatGPT, Gemini ・ブログや動画原稿の作成
・情報収集、下調べ
活用拡大期 Gemini, NotebookLM ・案件の反論文精査
・経営分析
・プレゼンテーション資料作成
自動化期 Google自動化ツール, Gemini, Trello ・相談受付からタスク管理ツールへの登録までを完全自動化
・各種ツールを連携させたエージェント的な活用

導入効果は「時間」と「品質」に。リテラシー格差を乗り越える組織的アプローチ

Q.生成AIの導入によって、具体的にどのような効果がありましたか。また、職員の方々が使いこなす上で、何か課題や工夫された点はありますか。

呉さん: 導入効果は、時間的な効率化と業務の質の向上という二つの側面で非常に大きく表れています。時間的なメリットを例えるなら、これまで5分かかっていた文章作成がわずか30秒で完了するようなイメージです。文章を扱う業務が非常に多い法律事務所にとって、この時間短縮効果は計り知れません。

品質面での効果も顕著です。これまでは、残念ながらお受けできないご相談をお断りする際、収益に繋がらないこともあり、返信メールがどうしても簡潔なものになりがちでした。しかし今では、NotebookLMを活用することで、非常に丁寧な文章を効率的に作成できます。これは顧客対応の品質を大きく向上させるものです。また、受任した案件においても、事実関係を抜け漏れなく整理し、ご相談者様の心情にも配慮したアドバイスができる点は、特に経験の浅い弁護士にとって大きなメリットだと感じています。

一方で、ツールを導入する上での課題は、やはり職員間のリテラシー格差です。どのようなツールでもそうですが、得意な人、普通の人、苦手な人が出てきます。当事務所では、まず得意な2割の職員に新しい情報をインプットして先陣を切ってもらい、その知見を普通レベルの6割の職員へと広め、さらに苦手な2割には個別教育で補うという、組織全体で知識を広げる体制をとっています。また、定例会議でのレクチャーや日々の声かけを通じて、AI利用の「癖付け」を意識的に行っています。

最近ではさらに一歩進め、AIが苦手な人でもその恩恵を受けられるよう、業務フロー自体を自動化する環境整備を進めています。一度実装してしまえば、職員はAIの存在を意識することなく、自動的に出力された結果を使って業務を進められます。これは、AIが苦手な職員をサポートすると同時に、AIを使いこなせる人材とのリテラシー格差を、ある意味で広げていく側面もあるかもしれません。

AIと音声で対話する未来へ。弁護士一人ひとりに付くパーソナルアシスタント

Q.今後、生成AIの活用について、どのような未来を展望されていますか。

呉さん: 現在はテキストベースでのやり取りが中心ですが、近い将来、入力インターフェースが音声になるだろうと予測しています。弁護士とご相談者様の会話をAIがリアルタイムで聞き取り、文字起こしをするだけでなく、その内容を同時並行で整理・法的検討し、必要なアドバイスや潜在的なリスク、関連判例などを即座に提示してくれる。しかも、その回答がテキストではなく、AIによる合成音声で返ってくる。そんな未来がすぐそこまで来ていると考えています。

そうなれば、弁護士は相談が始まると同時に音声機能付きのAIツールを立ち上げ、お客様へのヒアリングに集中できます。AIはそれを聞きながら、「その場合はこのようなリスクが考えられます」「この点について追加で確認が必要です」といったサポートをリアルタイムで提供してくれる。まさに、弁護士一人ひとりに専属の優秀なアシスタントが付くようなものです。このような機能は、ひょっとすると今年中にも登場するのではないかと期待しており、私たち法律家は、その時どう活用するのかを真剣に考えるべき段階に来ています。

「やらなきゃ」と思ったなら今すぐ動くべき。生成AIは令和のゴールドラッシュだ

Q.最後に、これからAI活用を目指す経営者や企業担当者の方へメッセージをお願いします。

呉さん: 私は、生成AIは「令和のゴールドラッシュ」だと思っています。金脈を掘り当てられるかは分かりませんが、掘り始めなければ何も得られません。生成AIも同じで、まずは使い始めること、そして自社の事業にうまく組み込むことができれば、莫大な利益に繋がる可能性を秘めたツールです。

ゴールドラッシュの時も、最初に走り出した人は少数で、多くの人はその価値に気づいていませんでした。最も多くの金を手にしたのは、最初に掘り始めた人々です。早く始めれば始めるほど、リターンは大きくなります。私たちの業界でも生成AIの導入にはまだ温度差がありますが、どの業界でも同じでしょう。しかし、インターネットやスマートフォンがそうであったように、生成AIが当たり前になる時代は必ず来ます。それならば、待っている理由はありません。

この記事を読んで「やらなきゃ」と少しでも思ったなら、今日、今この瞬間から実行に移すべきです。早く使い始めた人がその利便性をいち早く享受し、ビジネスを成長させてきた歴史が、生成AIにおいても繰り返されると確信しています。