生成AIによる「気づき」の創出と全社的な業務効率化の未来

不動産にテクノロジーを掛け合わせ、新たなソリューションを提供するククレブ・アドバイザーズ株式会社。2019年の設立からわずか5年後の2024年11月に東証グロース市場への上場を果たし、少数精鋭ながらも急成長を遂げる同社は、事業の中核にAIを据えています。

同社が開発・提供するAIツール「CCReB AI」は、社外への提供だけでなく、社内の業務効率を飛躍的に高める原動力にもなっています。今回は、同社代表取締役の宮寺さんに、AIプロジェクトの背景から社内外での具体的な活用事例、そして生成AIによって描く未来の展望まで、幅広くお話を伺いました。

不動産テックを駆使し、企業の課題を解決。独自の事業モデルで急成長

Q.まず、貴社の事業内容についてお聞かせください。
宮寺さん: ククレブ・アドバイザーズは、「不動産テックの力で社会に役立つソリューションを提供したい」という想いから、2019年に設立されました。現在は主に2つのビジネスモデルを展開しています。一つは、自社開発のシステムを用いて「不動産を売却したい」「遊休資産を活用したい」といった企業のニーズを自動で検知し、直接解決策をご提案する事業です。そしてもう一つは、その基盤となる不動産テック自体を、サブスクリプションサービスとして同業他社様にも提供する事業です。自社でシステムを活用するだけでなく、プラットフォームとして外販も行うという、この二本立ての事業を軸に、2024年11月には東証グロース市場への上場を果たしました。

製品の付加価値向上と社内の業務効率化。二つの側面から推進する生成AIプロジェクト

Q.貴社は以前からAIを活用されていますが、昨今の「生成AI」については、どのような目的でプロジェクトを進めているのでしょうか?
宮寺さん: 私たちのサブスクリプションサービスに「CCReB AI」というプロダクトがあります。これは、様々な開示情報から特定のワードの組み合わせをAIに学習させ、「この会社は不動産を売却しそうか」といった可能性をスコアリングするツールで、2020年から販売しています。しかし、ここ最近で単なるAIから一歩進んだ「生成AI」が大きな潮流となり、私たちもテックツールを販売していく上で付加価値をさらに高める必要があると考え、この潮流に追随すべくプロジェクトが始まりました。

プロジェクトの目的は二つの側面に分かれます。一つは、今お話しした「CCReB AI」という製品自体の生成AI化です。そしてもう一つが、社内の業務効率化です。当社は上場時で12名、現在も20名弱という非常に人数の少ない会社なのですが、その業務効率を支えているのが、外部にも販売している「CCReB AI」の社内活用です。このツールのおかげで、例えば資料の分析時間が圧倒的に短縮できています。この取り組みをさらに推し進め、生成AIをもっと日常業務に落とし込んでいこうと、最近新たなプロジェクトも始動しました。現在はその準備段階として、全社的な生成AI活用のルール作りや、各部署でどのプロダクトをどう活用すれば業務効率が上がるのか、といったことを試し始めているところです。

「経験と知識」を共有知化。AI活用で分析時間を大幅短縮し、生産性を飛躍的に向上

Q.社内でのAI活用について、具体的な業務内容や、それによって得られた成果をお聞かせください。
宮寺さん: 社内での効果としては、サブスクリプションで提供している「CCReB AI」を、私たち自身の営業活動でも活用していることが大きいです。例えば、「不動産を売りませんか?」といったご提案をする際の営業アタックリストを効率的に作成したり、個別のお客様について調べることで「このお客様は、このようなことにお悩みではないか」といった仮説を立てたり、提案の精度を高めるためにツールを使っています。

この活用による定量的な効果として、まず分析にかかる時間が圧倒的に短くなりました。中期経営計画や有価証券報告書を一件一件ウェブサイトで探して分析するのは、私の前職では徹夜で行うような膨大な時間がかかる作業でした。しかし今では、営業担当者が自分のアカウントでツールにログインすれば、必要な時に必要な分析結果をすぐに得ることができます。

また、定性的な効果としては、属人性の排除と人材の早期戦力化が挙げられます。本来、企業不動産の提案は長年の経験と知識が必要だと考えられてきましたが、そのノウハウを「CCReB AI」に凝縮しています。そのため、この領域の経験が全くない社員でも、ツールの操作さえ覚えればすぐに第一線で活躍できます。これはOJTの観点でも非常に有効で、未経験者であっても戦力化までの時間を大幅に短縮できています。これらの成果が、フィー収入という形で会社の収益に直結し、生産性の向上に繋がっています。少数精鋭の当社が事業を成り立たせているのは、まさしくこのAIをはじめとするテクノロジーの力なのです。

営業の「無駄」をなくし提案の質を向上。顧客の課題解決に貢献する「CCReB AI」

Q.次に社外、つまり「CCReB AI」を導入されている企業様での活用事例や成果についてお聞かせください。
宮寺さん: 導入企業様における活用法も、実は社内での活用と似ています。このツールは、もともと私自身がこの仕事をしていて「こういうツールがあったら便利だな」と感じていたものを形にしたものですから。多くの企業様が、何も調べずに手当たり次第にDMを送るなど、非効率で直感的な営業活動に課題を感じています。そこに当社のツールを導入いただくことで、アプローチしても無駄になる可能性が高い先が排除され、行くべき先が明確になります。つまり、ファーストアプローチにかかる時間が劇的に短縮されるのです。

お客様からは「まさにこういうものを探していた」「今までの営業活動は本当に時間の無駄だった」といったお声をいただくことが多く、導入の決め手になっています。また、闇雲に提案するのではなく、ツールが示すロジックを基に「こういう理由で不動産を売却した方が良いのではないでしょうか」と質の高い提案ができるようになります。その結果、実際に不動産売却に繋がったという事例や、提案をきっかけに別の課題が見つかり、新たな仕事に繋がったというフィードバックもいただいています。不動産に限らず、自社の商材を売るために特定のキーワードに関心を持つ企業を探すといった、副次的な営業リスト作成にもご活用いただいています。

対話による「気づき」の提供と、全社員がAIを使いこなす組織へ。描く未来の展望

Q.最後に、「CCReB AI」と貴社自身の今後の展望についてお聞かせください。
宮寺さん: 生成AIに関しては、本当の意味でその価値を発揮できるような機能改良を目指しています。現在はキーワードを提案してくれる機能を部分的に実装しましたが、私たちが描く未来像は、ツールが一方的にリストを提示するのではなく、利用者との対話を通じて様々な情報や提案を返してくれる「壁打ち相手」のような存在になることです。利用者がAIとの対話の中で、自ら「気づき」を得られるような状態を目指したい。これが製品としての目標です。

一方、社内においては、この生成AIという大きな変化の波に乗り遅れることなく、全社員が当たり前に使いこなせる組織を目指しています。ただガイドラインを配布するだけでは定着しないため、研修の実施はもちろん、今後は部署ごとに、より業務に即した深い学習を進めてもらう計画です。どのようなテンプレートで質問するかで返ってくる答えの質は全く変わりますから、業務セクションごとにある程度、定型の質問フォーマットを用意し、それを各自が活用していく。もちろん、最後に人間が考え、修正すべき部分は残りますが、「ここまで人間が残業してまでやる必要はないのでは?」という業務は社内にまだたくさんあります。そこを生成AIで効率化し、生まれた時間でさらにクリエイティブな仕事に磨きをかけていきたい。これは遠い未来ではなく、この1年くらいで当たり前にできる体制にしたいと考えています。