ビジュアルコミュニケーションを牽引する株式会社アマナが、AI活用に特化したクリエイティブチーム「A³(amana AI architects)」を発足させました。同チームが新たに提案する「Image to Multichannel」は、制作ワークフローをAIネイティブな視点で見つめ直し、一つのコアビジュアルから多様なメディアへ展開する、クリエイティブの質と量の両立を目指すソリューションです。今回は、チームを率いるプロデューサーの高橋さんと、アートディレクターの大熊さんにお話を伺いました。

企業のコミュニケーション活動を支えるアマナが、AI特化チーム「A³」を発足
Q.まず、貴社の事業内容と、お二人の自己紹介をお願いいたします。
高橋さん: 株式会社アマナは、数名のフォトグラファーが立ち上げた会社で、今期で47期目を迎えます。長年、撮影事業を基軸に展開してきましたが、時代のデジタル化に伴い、現在は動画やWeb、デジタル広告など、企業のコミュニケーション活動全般を支援するコンテンツ制作会社へと進化を遂げました。社員の半数以上がクリエイターという、制作会社としても非常にユニークな組織構成がアマナの強みです。
私と大熊の役割についてですが、私はプロデューサーとして、クライアント様のニーズを伺いながら、社内のクリエイターと連携してプロジェクトを推進する役割を担っています。一方の大熊は、アートディレクターとして長年さまざまなクリエイティブ制作の現場を統括してきました。
もともとそれぞれ別の部署で活動していましたが、AIを活用したクリエイティブに特化する新チーム「A³」が発足したことを機に、二人ともそちらへ移籍しました。現在は10名ほどのチームで、私がビジネス側の窓口、大熊が制作現場の指揮を執る形で、AIを実制作にどう取り込んでいくかを日々追求しています。非常に多くの引き合いをいただいており、今後さらに体制を強化していく予定です。
詳しくはこちら:https://a3.amana.jp/
AIネイティブな制作フロー「Image to Multichannel」
Q.今回お話しいただく「Image to Multichannel」のプロジェクト概要と発足経緯を教えてください。
高橋さん: AIの「大量に、高速に生成できる」という特性をうまく取り入れながら、皆様のクリエイティブを支援していきたい、という思いから発足しました。これまでチャネルごとに点在していて管理が大変だったビジュアルを、一つのコアビジュアルを起点に多様に展開していく。そういった形で、ワークフロー自体をAIネイティブに考えていきましょう、というのが今回の「Image to Multichannel」の提案の意図になります。

Q.どのような開発体制で、どのようにクオリティを担保しているのでしょうか?
大熊さん:この「Image to Multichannel」は「AIとリアルのハイブリッド体制」でクオリティを担保した制作フローです。例えばアウトドアブランドの広告制作では、背景はAIで生成しますが、モデルはブランドの世界観を体現する方を実際に起用し、ヘアメイクやスタイリストを付けて撮影します。
ここで重要になるのがプロの技術です。AIが作った背景の光の当たり方に合わせて、スタジオで完璧なライティングを再現して撮影し、最後に一流のレタッチャーが合成・仕上げを行います。AIの利便性と、熟練の職人技を掛け合わせることが、アマナの強みです。
高橋さん:こうしたアプローチの背景には、クライアント様の切実なニーズがあります。現状、アパレル業界では「モデルはAIに置き換えたくない」、メーカーでは「プロダクトはAIで生成させたくない」というご意向が非常に強いです。フルAIではまだ難しい「ブランドの信頼性」を守るために、AIクリエイターだけでなく、カメラマンやCGクリエイター、レタッチャーといった各分野のスペシャリストがチームを組み、各工程でプロの目を光らせています。
大熊さん:誰もがAIで画像を作れるようになった今、世の中には低クオリティなAI画像も溢れています。だからこそ、プロの「審美眼」が重要になるんです。微細なポージングや写真全体の空気感など、AIだけでは到達できないクオリティを私たちが担保する。この「Image to Multichannel」という手法は、まさに今の時代の広告制作における最適解だと考えています。
コンセプト策定から未来像の可視化まで。アマナのAI活用事例
Q.「Image to Multichannel」以前には、どのようなAI活用をされてきたのでしょうか?
高橋さん: 例えば、アサヒグループジャパン様が新しい植物性ミルクを発売する際のプロジェクトが分かりやすい事例です。酵母由来の新しいミルクで、どのようなコンセプトやパッケージであれば消費者に受け入れられるかを模索する段階でAIを活用しました。様々な方向性のビジュアルをAIで大量かつ高速に生成し、クライアント様にご提案しました。
従来であればデザイン案の提出に3週間ほどかかっていたところを、AIを用いることで翌週には多彩なバリエーションを高いクオリティでお見せすることができました。これにより、初期段階で多くの選択肢を検討でき、最終的なパッケージとWebサイトの完成に至りました。コンセプト策定という最も時間を要する工程を、まるで壁打ちのように高速でサイクルを回せたのは、AIの生成力が活きた好例です。肌感覚ですが、スピード感としては従来の半分程度の期間でキービジュアルを固められたように思います。
| 比較項目 | 従来の制作プロセス | AIを活用した制作プロセス |
| 期間 | 約3週間 | 約1週間 |
| 提案の量 | 限定的な案数(例:A/B/C案) | 多数のバリエーションを網羅的に提示 |
| 提案の質(初期段階) | ラフなスケッチや方向性の提示 | 完成形に近い高精度のカンプ(完成見本) |
| 合意形成 | 複数回のやり取りで徐々に具体化 | 初回提案で具体的なイメージを共有し、認識齟齬を低減 |
| 全体スケジュール | 長期化しやすい | 大幅な短縮を実現(本事例では約半分) |
大熊さん: AIで非常に精度の高いカンプを作れる点が、大きな価値です。クライアント様が制作の全ステップを詳細に理解されているとは限りません。最初から完成形が想像できるレベルのビジュアルをカンプとしてお見せすることで、ブランディングの方向性を確実に共有できます。従来は「少し想像できないので、もう一度」といった手戻りが多かったのですが、その課題を解決できるのがAI活用のメリットです。
高橋さん: その他にも、成田国際空港様の未来像を描く「フューチャー・ビジュアライゼーション」という案件も印象的でした。「2040年の旅行体験」という抽象的なビジョンを、ワクワクするようなビジュアルで表現してほしいというご要望に対し、AIを用いて制作しました。CGでも不可能ではありませんが、膨大な時間とコストがかかります。AIを用いることで、高速かつ高品質に実現できました。このように、まだ世の中にないものを可視化して関係者の合意形成を図るという点も、AIの非常に強い領域だと考えています。
小さなテストから伴走支援まで。AIクリエイティブの導入をあらゆる角度からサポート
Q.「Image to Multichannel」の今後の展望についてお聞かせください。
高橋さん: 10社限定のトライアルプランをご用意しています。「今ある素材で何ができるか試してみたい」というご相談も多くいただくため、例えば既存の食品パッケージビジュアルに湯気を加えるといったAI活用で魅力を感じていただくところからスタートすることも可能です。「リスクがあるのでは」と不安を感じているクライアント様も多いかと思いますので、まずは小さな一歩から一緒に検証していけたらと考えています。ブランド担当者の負荷を抑えながら、「ブランドらしさを保ったクリエイティブをいかに実現するか」その難しい部分こそ、ぜひ一緒に取り組ませてください。
大熊さん: 特に化粧品会社様など、美意識が非常に高くこだわりの強いご担当者様でも、グローバルに展開するデジタル広告の大量のリサイズ作業などでは、クオリティ面で妥協せざるを得ないという実情をよく伺います。ブランディングを何よりも重視されるからこそ、そうしたお悩みを解決するお手伝いができればと考えています。
Q.最後に、読者の方々へのメッセージをお願いします。
大熊さん: AIの活用は企画段階では進んでいますが、それを実際の施策として世に出すアウトプットの段階では、まだハードルが高いのが現状です。権利面などの課題はありますが、長年の広告制作の実績と経験を活かし、私たちはアウトプットの段階でもAIで同等の水準を実現できる可能性を広げていきたいと考えています。
高橋さん: 組織としてAIへの期待が高まる一方、「具体的に何から手をつければよいか模索している」そのような企業様からも、勉強会やワークショップのご依頼を数多くいただいています。私たちが実際に活用しているツールやノウハウを、企業のデザイナーの皆様と手を動かしながら学んでいただける機会を提供しています。本格導入に踏み切れない企業様には、勉強会でのサポートや小規模なリサーチ、案件への伴走支援といった形でもご対応できます。AIをまだ本格的に導入できていない企業が大半かと思いますので、どのようなご相談もお気軽にお寄せください。
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