「自社のWeb集客を強化したいが、慢性的な人手不足でブログやコラムを更新する時間が確保できない」そんな悩みを抱える不動産会社は多いのではないでしょうか。
全国の不動産会社の98%が中小零細企業と言われる中、株式会社いえらぶGROUPが提供するSaaS「いえらぶCLOUD」の「AIコンテンツ生成機能」が、利用回数5万回を突破し注目を集めています。
本記事では、同社のAI戦略責任者であり、開発部門の執行役員を務める和田さんにお話を伺いました。プロンプトの一発出しではなく「分割ワークフロー」を用いてSEOに強い記事を生み出す技術的な裏側や、競合とのキーワード重複を防ぐ伴走支援、そして不動産会社を「人対人のコア業務」へ集中させるためのSaaS全体のAI戦略に迫ります。Web集客の工数削減と品質担保を両立させる実践的なヒントが詰まった内容です。

“中小零細企業が98%”という不動産業界の慢性的な人手不足が開発の原点
Q. はじめに、和田さんのご担当領域について教えてください。
和田さん: 開発部の執行役員として、開発現場の参画メンバーのキャリアアップにつながる形で様々なサービスを展開し、プロジェクトへのアサインなどを行っています。また、AI領域は私の得意分野でもあるため、推進の責任者として動いています。弊社は生成AIのサービスが出るか出ないかくらいのタイミングから取り組みを始めており、業界内でもかなり早い段階からAI活用を進めてきたと実感しています。
Q. 今回お話を伺う「AIコンテンツ生成機能」の開発背景には、どのような課題意識があったのでしょうか?
和田さん: 全国に不動産会社は約13万社ありますが、そのうちの98%ほどは中小零細企業です。「一人親方」や「数名のスタッフで店舗を回している」という会社が多いのが実情です。そうした中で「Web集客に力を入れたいけれど、とにかく人が足りない」という深刻な課題がありました。
日本全体が高齢化と少子化で縮小均衡の流れにある中、不動産業界は核家族化などの影響もあり、人口減少に対して世帯数があまり減っていません。そして実は、不動産会社の数自体も減っていないのです。今までと同じやり方のままでは、人が減り高齢化が進む中で業務が回りません。だからこそ、不動産会社の方々が本来注力すべき「オーナー対応」や「入居者対応」といった”人対人”のコア業務に集中できるよう、Web集客などの業務をSaaSやAIで効率化する必要がある。これが私たちの根底にある考え方です。
自社構築の分割ワークフローで「SEOに効く濃厚な記事」を実現

Q. AIコンテンツ生成機能の具体的な仕組みや、出力できる内容について教えてください。
和田さん: ターゲットの読者を指定すると、メインとなるSEOキーワードが設定されます。そのキーワードを自然な形で散りばめながら記事を生成していきます。テキストだけでなく、各不動産会社様のサイトに合わせた形での装飾や書き出し、アイキャッチ画像の複数パターン生成、最新版では人物画像の生成まで対応しています。
Q. AIによる記事生成では内容の正確性や質が問われますが、SEO対策としてどのような工夫をされていますか?
和田さん: AI特有のハルシネーション(もっともらしい嘘)のリスクがあるため、チェックする機構を実装しています。また、SEOに効果的な記事にするためには、ノウハウがしっかりと含まれた文脈や、情報整理が欠かせません。検索エンジンの評価対象になる表形式の出力なども含め、かなり濃厚な記事を作ることを念頭に置いています。
Q. 技術的に特にこだわったポイントや、開発の裏側について教えてください。
和田さん: 裏側のシステムにおける最大の工夫は、記事を「1つのプロンプト(指示文)」で一気に生成していない点です。まず記事の構成を作るプロンプトを投げ、その構成を「序文」「本論」「展開」「結論」といった形で4〜5分割します。そして、それぞれの展開ごとに個別のプロンプトを投げて記事を作成させ、最後に整合性が合っているかのチェックと修正を行っています。一発でプロンプトを投げるよりも、このワークフローを組むことではるかに濃厚な記事が書けるようになっています。
Q. その裏側のワークフローは、既存のツールを活用しているのでしょうか?
和田さん: すべて自社で構築しています。細かいパラメータチューニングなどは、外部ツールを使うよりも自社で実装してしまった方が、丁寧なメンテナンスができると判断したためです。不動産業界に特化してより質の高いものを作るためには、自社でゼロから構築することが最善の選択でした。

プレビューUIの工夫と、コンサルタント伴走によるカニバリズム回避
Q. ユーザーが実際に利用する際の使い勝手(UI/UX)において、工夫された点はありますか?
和田さん: 記事を作成する画面において、作成後の記事がどのように表示されるのかを臨場感を持って確認できるよう、プレビュー画面を作った点です。単にテキストを生成するだけであればヘッダーやフッターは不要ですが、「なるほど、実際のサイトではこういう風に見えるんだな」ということが直感的にわかるUIにこだわりました。また、生成された記事は弊社のブログ作成機能に連携されるため、ユーザー自身で簡単に中身の編集や修正ができるようになっています。
Q. 「いえらぶCLOUD」は非常に多くの不動産会社に利用されています。同一エリアの競合企業が同じ機能を使った場合、似たような記事が生成されてしまう「カニバリズム」のリスクはないのでしょうか?
和田さん: おっしゃる通り、何の対策もしなければ同じようなテーマで記事を書いてしまいます。そのため弊社では、専任のコンサルタントが各不動産会社様に寄り添って支援を行っています。その会社が持つ独自の強みを推し出した記事になるよう調整したり、キーワード選定が重複しないように適切に運用をサポートすることで、カニバリズムを回避しています。
サイト全体の評価向上に直結。現場の工数削減と品質担保のリアル
Q. 実際に導入された企業では、どのような成果や変化が生まれていますか?
和田さん: 単発の記事が評価されるというよりも、継続的に記事を作成してサイトのボリュームが増えることで、サイト全体の評価が上がるという効果が一番大きく表れています。先ほど申し上げた通り、人が足りなくてやりたくてもできなかったWeb集客が、効率よく進められるようになっています。AIコンテンツ生成機能の利用回数は5万回を超えました。それだけ現場からの強いニーズがあるのだと感じています。
Q. AIを活用して記事を運用する上で、導入企業が気をつけるべきポイントはありますか?
和田さん: 検索順位に関して言えば、AIで作った単発の記事が必ずトップに上がるわけではありません。重要なのは、AIが生成したベースをもとに、最終的に人が確認し、人が持っているノウハウをしっかりつぎ込んでコンテンツとして仕上げることです。ゼロベースで人間が書いていた時に比べれば、関わる工数は圧倒的に減っています。しかし、手を抜いて適当なものをそのまま公開してしまうと、本当に「ゴミコンテンツの量産」にしかなりません。そこは非常に気をつけてケアをしているポイントです。
100超のサービスにAIを実装し、人対人のコア業務に集中できる環境を
Q. 今後のプロダクトの戦略や展望についてお聞かせください。
和田さん: 実は、今回お話ししたWeb上のコンテンツを作るAIエージェントは、完全に第一歩目に過ぎません。私たちは10年以上にわたってクラウドを運用しており、「いえらぶCLOUD」の中には100を超える機能・サービスがあります。それらすべてに対して何かしらの形でAIエージェントを盛り込み、1段階レベルアップさせる企画を現在進めています。
例えば昨年(2025年)末にリリースした「AIエージェントLINE対応」もその一つです。夜間や定休日のタイミングでも、お客様の希望条件をAIが自動でヒアリングし、来店を促すというもので、こちらも非常に良いペースでオプション利用が増えています。
Q. AIO(AI検索最適化)などの最新のトレンドに対しては、どのような対応を計画されていますか?
和田さん: 大きく2つの対応を計画しています。1つ目は、AIがコンテンツとして好む「Q&A形式(FAQ)」のコンテンツを生成できるようにすることです。2つ目は、人間の目には見えなくてもAIが読み取りやすい「情報構造化データ」と呼ばれるテキスト情報を記事内部にしっかりと盛り込むことです。人間にとって見やすく、かつAIにも読み取られやすいコンテンツ生成を目指しています。
Q. 最後に、今後の事業展開を通じた目標を教えてください。
和田さん: 弊社は、AIコンテンツ生成をあくまで各機能の進化の1つと捉えています。株式会社いえらぶGROUPとして、不動産業務を一気通貫で支援する中で、自然とAIエージェントを挟み込み、より便利に活用いただけるSaaSを目指しています。
管理会社は本来、オーナー様や入居者様への対応に時間を使わなければなりません。しかしこれまでは、契約処理や物件の空き確認といった業務でパソコンの前に張り付かざるを得ませんでした。そうした業務をWeb化・SaaS化、さらにはAI化していくことで、パソコンに張り付いていた人がリアルで顧客と向き合えるようになる。それこそが不動産会社にとっての真の業務改善だと考えています。AIはそのための手段でしかありませんが、この業務改善の波を業界全体にもっと広げていきたいと思っています。