ゲスト
より良い候補者体験(CX)のために採用領域のAI活用を牽引!
株式会社エーピーコミュニケーションズ 人事本部 Talent Acceleration部 部長 小山さん
ネットワークやサーバー、セキュリティ分野を中心としたSIer事業を展開し、今年で31年目を迎える株式会社エーピーコミュニケーションズ。会社として「インフラ×AI」を掲げる中、コーポレート部門のAI活用として、採用領域に生成AIエージェント「exaBase 採用アシスタント」を導入。「社内にエンジニアがいるのだから内製すべき」という声に押されず外部ツールを選択し、24時間対応のチャットボットを構築して候補者の体験向上を実現している。

この事例のポイント
- 自社開発(内製)を見送った理由: 運用保守にかかる自社エンジニアのリソース(見えないコスト)と売上機会の損失を回避するため、外部ツールを採用した。
- タイムラグによる機会損失を防ぐ方法: 24時間365日即座に回答できるAIチャットボットを構築し、土日などの問い合わせ対応を自動化した。
- 導入3ヶ月で質問傾向を可視化する方法: ボットを通じて候補者の質問を分析し、「選考のポイント」「企業文化」「給与」などの傾向を把握し採用広報へ活かしている。
- 効率化の追求が招く「AI活用の落とし穴」の回避: AIによるスカウト文面作成など効率化偏重によるCX低下を危惧し、捻出した時間は「人対人」の関係構築に充てている。
導入3ヶ月で候補者の質問傾向を可視化。タイムラグを解消しCXを向上

Q. 採用領域でAI活用プロジェクトを始められた背景と、導入によって得られた具体的な成果について教えてください。
A. 機会損失を防ぐチャットボットを構築し、導入3ヶ月で候補者の質問傾向の可視化を実現しました。
小山さん: 当社は会社として「インフラ×AI」を打ち出しており、我々コーポレート部門も業務にAIを活用していく方針を掲げています。スカウト文の生成といった『我々スタッフの業務効率化』に留まらず、『候補者との接点』や『採用体験(CX)の向上』に直接AIを活用できないかと考えたのが導入の背景です。
採用において非常に重要なのは「スピード」と「タイムラグの解消」です。例えば、土日の間に情報があれば意思決定できたのに、回答が遅れたことで違う方向に進んでしまうといった機会損失を防ぐため、必ずしも人間が答えなくてもよい質問は自動化し、24時間365日即座に回答できるチャットボットを導入しました。
チャットボットを導入して3ヶ月が経ち、候補者の方々が当社に対して何を気にしているのか、その傾向がデータとして見えてきました。具体的には、1位が「選考通過できるか・面接で重視されるポイント」、2位が「長く続けられるかといった企業文化や働き方」、3位が「給与や昇給など転職のメリット」という順位になっています。このデータをもとに、求人票や採用ページでの情報の出し方を変えていく動きを、これから本格化させるところです。
「内製できるのでは?」という社内の声を覆した、運用コストと実績の比較

Q. exaBaseの導入を進めるにあたって、社内から懸念の声はありましたか。また、「内製できるのでは」という声に対して外部ツールを選んだ理由を教えてください。
A. 「見えないコスト」の回避と本来の目的に立ち返り、確かな実績を持つ外部ツールの導入を推進しました。
小山さん: 全社的にAI活用の気運が高まっていたこともあり強い反発はありませんでしたが、リスク面での懸念はありました。個人情報保護のための規程周りの整備や、「生成AIが変な回答をしてしまう」というレピュテーションリスクについては、exaBaseの設計仕様を説明し納得してもらいました。
一つ特徴的だったのは「これって内製でできるんじゃないですか?」という声が挙がったことです。それに対して外部ツールを推進した理由は大きく3つあります。
1つ目は、確かな実績です。ゼロから内製する場合のリスクを避け、すでにエクサウィザーズが1年間運用し成果が実証されているツールを使う方が確実だと判断しました。
2つ目は、運用保守のコストとリソースです。社内システムの保守に自社エンジニアのリソースを割くことは、本来得られるはずの売上機会の損失や現場への負担増に直結します。その『見えないコスト』と外部ツールを利用するコストを天秤にかけた結果、圧倒的に外部ツールを入れた方が良いという結論になり、運用保守コストを0.5人月に抑えることができました。
3つ目は、本来の目的に立ち返ることです。今回の目的は、候補者の質問傾向を分析し採用全体の歩留まりを改善することであり、「作ること」が目的になってはいけないと考えました。
エージェントとの連携強化と、AI時代にこそ求められる「人対人」の視点

Q. チャットボットの運用を通じて、エージェント様との連携や、AIを活用する上で気をつけるべき点についてどのように考えていますか。
A. エージェント様との連携を深める一方、効率化だけを追求して候補者の体験を損なわないよう注意しています。
小山さん: 日頃から密に連携させていただいているエージェント様向けに、専用のアカウントをお渡ししています。エージェント様が候補者対応などで困った際、即座に疑問を解消できる体制を整えることで、当社の魅力や方針に対する理解をより深めていただき、より強固なパートナーシップの構築に繋がることを期待しています。
AIを活用する上で気をつけるべき点として、採用においてAIを合否などの「判断」に使うことはまだ難しいと感じています。また、最近増えている生成AIによるスカウト文面の作成には危機感を持っています。作業時間の削減という「こちら側だけのメリット」に注目されがちですが、テンプレートのような文面は候補者にも「AIで送っているな」とバレてしまい、かえって候補者の体験(CX)を損ねてしまう逆効果が生じています。
24時間365日対応できるチャットボットは便利ですが、それに甘んじて「人対人」のコミュニケーションを忘れてはいけません。効率化で捻出した時間は、候補者へより良い体験を提供するための試行錯誤や、エージェント様との密な関係構築などに使うべきだと考えています。AIに頼りきりになると、思考体力や思考力が確実に落ちてしまうため、使う側のリテラシーと相手側の視点を養うことが不可欠です。
今後の展望:コーポレート部門のAI活用と「インフラ×AI」の推進
Q. 最後に、今後の生成AI活用に向けた展望と、読者へのメッセージをお願いします。
小山さん: これからはエンジニアだけでなく、コーポレート部門においてもAI活用を進めていくことが全社的な方向性です。コーポレート部門でもいかにAIを組み合わせ、他社との差別化を図っていくかが重要になります。
コーポレート部門のAI活用には懐疑的な声もありますが、今回の取り組みは国内SIerとして初めてexaBaseを活用したチャットボット実装であり、我々にとって大きなチャレンジでした。リスクに配慮しつつも大胆に活用し、業務効率を上げ、そこで生まれた時間をさらなる採用活動に繋げていきたいと考えています。
また、当社では「インフラエンジニアのキャリア術」という文脈でPodcast「インフラエンジニアのホントのところ」の配信も行っており、現在はシーズン2として「AI時代のキャリア」をテーマにお話ししています。業界理解や、インフラエンジニアとしてAI時代の中でどうキャリアを築いていくかについて発信していますので、こういったテーマにご関心のある方はぜひ聴いてみてください。