ゲスト
「驚き・共感・自走」の3ステップで全社員のAI定着を無風で実現!
AI CROSS株式会社 AIエバンジェリスト 菊川さん
本社における新規事業や、福岡・北九州での地域のAX(AI Transformation)推進を行うAIエバンジェリスト。
「Smart Work, Smart Life」というミッションのもと、社内でAIネイティブな企業を作る全社横断プロジェクトを牽引。前職で千人規模の組織へSlackを導入したコミュニケーションDXの経験を活かし、毎日生成AIを利用する社員が約9割に達する圧倒的な定着率を実現した。

この事例のポイント
- ただツールを配るだけで使われないという課題を解決する方法:勉強会の実施と、Slackで日々最新の活用情報を共有するルーティンを徹底
- 推進時の反発や「仕事が奪われる」という懸念を解決する方法:「驚き・共感・自走」の3ステップで実際のデモを見せ、適切なユースケースで自分ごと化
- 初心者がどう使えばいいかわからないという課題を解決する方法:NotebookLMを推奨し、社内向けFAQや商談のまとめ、資料作成などで意図的に情報共有して推進
- 効率化された時間を利益に直結させる方法:捻出した空き時間を、商談数の増加やコンバージョンレート(CVR)の向上といったトップラインを上げる活動に
社員の約7割が週3時間以上の業務時間を削減。空いた時間で商談数とCVRを向上

Q. 全社的なAI活用の結果として、定量・定性の効果はどのように出ていますか。
A. 100%の社員が効率化を実感し、約7割が週3時間以上の業務削減を達成
菊川さん: 社内の約7割の社員が、週に3時間以上(半日分)の業務時間を削減できていると実感しています。また、アンケート結果を見ると、基本的には100%の方が「生成AIによって業務が効率化された」と回答しています。一人ひとりに対してしっかりと効率化と実際の時間削減の効果が表れています。
空いた時間を売上に直結する活動にどう振り向けるかが重要です。営業部門であれば、捻出した時間で商談数を増やしたり、コンバージョンレート(CVR)を上げたりする動きがすでに始まっています。そこからトップラインや利益を上げていくという取り組みを進めています。
AIの効果をどう証明するかは各ユニットごとに考えていく部分ですが、弊社には数千社以上の顧客企業がいらっしゃるので、新規開拓だけでなく既存のお客様に対するご利用促進を含めたカスタマーサクセスも重要です。そこへのアプローチ数やCVRの向上など、AIによって効率化されたからこそ生み出せる成果を指標として見ていくことになると思います。
AIの活用フローをどのように整備したのか

Q. 現在、社内ではどのような体制で、どんな業務にAIが活用されているのでしょうか。
A. 全業務プロセスにChatGPTやClaudeを組み込み、初心者にはNotebookLMを推奨してFAQや資料作成に活用
菊川さん: 弊社はChatGPT、Google Workspaceと親和性の高いGemini、そしてClaudeという大きく3つのマルチAI環境を導入しています。ポイントとしては、特定の部署だけでなく全社的に幅広く使われているという点です。例えば、通常のメール作成にはGeminiが組み込まれて使われていますし、企業調査や企画のアイデア出し、ブレインストーミングなどにも活用されています。また、社内のエンジニアの割合は全体の約3割ほどですが、彼らも開発環境(IDE)でプログラミングにAIを活用しています。基本的にはすべての業務プロセスにおいて、AIが組み込まれている状態です。
社内向けFAQや商談や記事のまとめ・共有、資料作成などの用途では、NotebookLMをかなり活用しています。私自身がNotebookLMの有用性を感じていたため、意図的に情報共有を行って推し進めました。初心者の方にとって非常に使いやすく、多様なアウトプットが出せる点が素晴らしいです。プレゼン機能もしっかり入っているので、多くの方に使われています。直近ではGemini側から呼べるようになり連携も密になりましたし、PDFから編集可能なドキュメントが作れるようになればさらに最強になるツールだと期待しています。
人や組織ではどのように推進をしたのか

Q. 導入初期のアプローチや、推進していく中で社員からの反発などの壁はありましたか。
A. 勉強会とSlackでの情報共有を徹底し、「驚き・共感・自走」の3ステップでデモを見せて無風で定着を実現
菊川さん: ただツールを配るだけになってしまうことを防ぐため、私を中心に勉強会を実施し、毎月の全社会議でも皆さんの業務に直結するような形でのAI活用法を展開していきました。また、日常的な情報共有としてSlackを活用しています。日々出てくる最新情報の中から皆さんが実際に使えるものを私が選択し、共有していくルーティンがうまく回りました。その結果、毎日1回以上利用する社員が約9割に達するところまで一気に引き上がりました。
推進中の反発は全くありませんでした。要因の一つは、経営層から担当者に至るまで新しいものに柔軟に対応する会社の文化です。そのため「AIが入ることで仕事がなくなるのではないか」といった懸念の声はなく、前向きに使ってくれています。もう一つの要因は、私が前職で千人規模の組織にSlackを導入した経験があり、トップ層の巻き込み方や組織への展開ノウハウを持っていたことです。
推進にあたっては、言葉でしつこく説明するのではなく、デモを見せて直接伝える「驚き・共感・自走」の3ステップを意識しています。まずはデモを見て驚き(Time to Wow)を作ります。次に、実際のユースケースを含めて「自分の業務でもこう使える」と説明し、深い理解と共感を得ます。自分ごととして捉え「使ってみたい」と思わせることで、最後の「自走」へと繋がります。経営層にも現場にも同じように効果的であり、いかに適切なユースケースを選んで自分ごと化させるかが定着の工夫ポイントです。
今後の展望:社内外への導入支援を拡大し、AIエージェントの活用を浸透させる
Q. 今後AI活用をさらにどのように推進していくのか、展望と読者へのメッセージをお聞かせください。
菊川さん: 大きく2つの展望があります。一つは外部向けの支援です。私は福岡や北九州での活動を通じて、地域の企業様の生成AI導入支援を行っています。福岡銀行さんともアライアンスを組み、「生成AIを導入したいが何をすればいいかわからない」という企業様を支援してビジネス化を進めています。実際にある企業の経営層の方は、全く知識がない状態からご自身でClaudeを使ってホームページをどんどん作れるレベルまで成長し、非常に満足していただきました。こういった事例を増やしていきたいです。
もう一つは社内向けの展開です。現在9割の社員がAIを利用する土台ができているため、今後は社内にAIエージェントの活用をさらに推進する予定です。ClaudeなどのパーソナルAIエージェントも増えているので、今後は社内で「AI座談会」を開催しようと計画しています。一方的な情報提供だけでなく、社員の直近の困りごとにフィットした課題解決を行うことで、時間削減にとどまらず売上向上につながるような活用を浸透させていきたいと考えています。
最後にメッセージとして、弊社では「生成AI導入ソリューション」を提供しています。生成AI導入の目的整理やユースケースの設定はもちろん、RAGの開発・運用を行うことも可能です。PマークやISMS認証を取得しており、セキュリティやガバナンスをしっかり担保した仕組みをご提供できます。
もう一つ、『対話型検索エンジン Perplexity仕事術』という書籍を出版しました。プロンプトエンジニアリングやコンテキストエンジニアリング、さらにはマーケティングや事業開発といった幅広い業務領域で、Claudeなどの生成AIをどう使いこなすかを解説しています。生成AI導入の教科書として手に取っていただけると嬉しいです。