提案書作成を最短3日へ。生成AIで工数を削減し、競争力を高めたITコンサル企業の挑戦

ゲスト

AI社員構想を掲げ全社AI推進を牽引!
株式会社クラウディオ 代表取締役会長 石川さん、広報・AIエバンジェリスト 伴さん

中小企業向けに基幹業務システムであるERPの導入支援を中核とし、ITコンサルティングからシステム開発までを一貫して手がける企業。2025年夏から34名の推進チームを中心にAI活用を本格化し、従業員ほぼ全員が生成AIを活用する組織文化を構築している。

▼石川さん

▼伴さん

この事例のポイント

  •     わからないことだけを聞かない」というマインドチェンジ: 部分的な質問から入るのではなく、まずは曖昧でも全体像をAIに投げかけ、自身の理解度を把握する対話手法を徹底した
  •     住宅の注文に例えたプロンプト指導: 難しい形式を教えるのではなく、「ざっくり頼めばざっくりしたものが、細かく頼めば思い通りのものが返ってくる」という住宅の注文のたとえで社員の心理的壁を払拭した
  •     マークダウン変換ツールとRAGによるハルシネーション対策: 自社のエンジニアが、社内資料をAIで扱えるマークダウン形式へ一括変換するツールを内製。クラウド共有ポータル上のRAGに組み込み、正確性を高めた
  •     自動修正の誘惑を断ち切る3フェーズ開発: AIにバグを自動修正させる機能はあえて使わず、設計・開発・テストの各段階で人間の立ち位置を残すことで品質を維持している

提案書作成を最短3日へ。広報業務の1ヶ月も2週間程度に

Q. AIを活用することによって、どのような定量効果が得られたのでしょうか。

A. 営業の提案書作成を最大3週間から最短3日へ短縮。削減できたコスト分を提案価格に反映し、獲得率の向上につなげた

石川さん: 一番効果が大きかったのは営業部門です。蓄積したデータをもとに提案書を作成する際、案件にもよりますが、これまで最大3週間ほどかかっていたものが、早ければ3日程度で完成するケースも出てきました。これにより作成にかかる工数そのものが大きく減り、その削減分を提案価格に反映できるようになりました。結果として、無理な値引きをせずとも競争力が高まり、案件の獲得率向上というビジネスに直結する成果につながっています。開発費に関しても、体感として半分程度にまで削減できている手応えがあります。

Q. 開発現場では、具体的にどのようなフローでAIを活用しているのでしょうか。

A. 設計・開発・テストの3フェーズに分割し、あえてバグの自動修正を行わずに人間の立ち位置を残して品質を担保

石川さん: 私たちは要件定義には直接AIを使わず、設計、開発、テストという3つのフェーズに分けて活用しています。特にテストフェーズでは、設計書とプログラムをインプットして、テストケースやテストデータ、テストシナリオの作成にAIを活用しています。

技術的にはAIにバグを自動修正させることも可能ですが、あえてそこまでは踏み込んでいません。プロトタイプと本番開発を明確に分けず突き進めば、問題発生時に人間が原因を捉えられなくなり、品質担保が難しくなるからです。「人間の立ち位置」を見失わないためにも、フェーズを分けて活用しています。

Q. 開発現場だけでなく、広報やバックオフィスの業務においては、具体的にどのようなフローで効率化を達成したのでしょうか。

A. リサーチから文章作成までの全工程をAIに任せ、プレスリリース作成などの作業期間を1ヶ月から2週間程度へ短縮

伴さん: 私は広報の立場でプレスリリースなどを執筆するのですが、以前はリサーチに1週間、構成に1週間、さらに下書きや社内ヒアリングによるエビデンス確認など、完了までに1ヶ月ほどかかっていました。

それが今では、AIにリサーチと要約を任せ、リード文のルールに従って各メディア向けなど様々な角度で文章を生成させることで、内容にもよりますが12週間程度で完了することも増えてきました。また、人事や経理、総務などのバックオフィス部門でも、目で確認して5日〜1週間かかっていた文書のチェック作業において、チェック項目をAIに的確に指示するフローを組んだことで、正確性を保ちながら1日〜2日で終わるようになりました。

AI社員の構想と、若手が新領域で第一人者を目指せるという期待

Q. 早い段階からAI導入を進められた背景には、どのような課題や目的があったのでしょうか。

A. 経理などを1人で担う社員を支える「AIアシスタント」との協働体制の構築を目指して着手

伴さん: 弊社はITコンサルティング業や、中小企業向けERP導入支援を中心に事業を展開していますが、社内のバックオフィスは人事や経理、総務が各1名程度という体制でした。そこで、例えば経理担当者をもう1人採用するのではなく、「AI社員」のようなアシスタントを作り、AIとの2人体制で業務を進めていく構想があり、導入を進めていきました。

石川さん: 私自身、週末は新しいAI関連の動画で情報収集を行い、週明けになるたびに「これができるようになった」と社員に共有し、熱心に推進していた時期もありました。

Q. 代替手段ではなく、なぜあえて生成AIという新しい技術に投資されたのでしょうか。

A. 過去の蓄積がないAI領域ならば、若手でも早い段階で第一人者になれるという確信から選択

石川さん: まず直感的に「いける」と思ったことが一番大きいです。弊社は設立から7ほどの若い会社です。従来のプログラミング言語のような技術は何十年も歴史があり、若手が習得しようとしてもすでに多くの先輩が存在します。しかし、AIの領域には過去の蓄積を持つ先輩がまだ少ない世界です。だからこそ今頑張れば、若手でも早い段階で第一人者になれる。その期待感を社員に体感してほしかったのです。

また、AIという新しい技術に対しては、お客様も前向きに捉えてくださる空気があります。若手が経験の少なさを理由に臆することなく挑戦できる可能性に満ちた領域だと感じました。

 マークダウン変換によるRAG構築と、システムプロンプトの共有

Q. 個人利用から全社展開へと進める中で、どのような環境整備やツール選定を行いましたか。

A. オフィスソフトと連携する法人向けAIツールを全社導入し、開発陣にはコーディングに優れたモデル環境を提供

石川さん: 当初はツールにこだわらず、「自分たちが最も適していると思うものを使って評価を共有してくれれば会社が費用を負担する」という形で、希望者による個人契約から始めました。

その後、2024年6月に学習が行われない設定の法人向けAIサービスへ移行し、2025年5月からは主要なオフィスソフトとシームレスに連携できる統合型のAIツールを法人契約して全社導入しました。一方で、開発メンバーの半数ほどはコーディングに特化したAI環境を使ってプログラムを構築するなど、目的に応じて使い分けています。

Q. 導入したAIツールは、実際の業務フローにおいて社員の皆様にどのように使われているのでしょうか。

A. 個人でのカスタマイズ利用に加え、忙しい営業担当者向けにはテスト済みのシステムプロンプトの型を共有

石川さん: 大きく2つのパターンがあります。1つは個人が自身の業務に合わせてプロンプトを自分の言葉で書き、カスタマイズして使う方法です。

もう1つは、私たちがテストして「狙った結果が安定して出る」と確認したシステムプロンプトの型を共有する方法です。例えば、営業担当者は忙しく、自身で試行錯誤している時間がありません。そのため、ERP導入時のフィットギャップ分析などを一から試すのではなく、8割方完成した結果が出るプロンプトの型を社内で共有することで、すぐに実務で使える環境を整えています。

Q. 全社でAIを利用する際、情報漏洩リスクや、誤情報を出力するハルシネーションへの対策はどのように講じましたか。

A. 独自のマークダウン変換ツールを用いてクラウド共有ポータル上でRAG環境を構築し、正確性を向上

伴さん: セキュリティ面では、CTOが監視しつつ「学習されない状態のAIを使うこと」「顧客情報や個人情報は伏せること」を全社に周知し、安全な利用を徹底しています。ハルシネーション対策の軸は、社内資料を検索拡張生成、つまりRAGの正しい情報源として指定し、回答には必ずリンクなどの根拠を提示させることです。そのうえで、プロンプト内に「指定したソースから抽出する」といった補助的な指示を加えています。そして最終的には、人間の目で確認するヒューマン・イン・ザ・ループを徹底しています。この3段構えで正確性を高めています。 

石川さん: 実務ではやはりRAGがベースになります。プラットフォームの仕様や、私たちがこれまで蓄積してきた社内資料を正しい情報源として指定しています。

伴さん: そのため、社内資料をマークダウン形式に一括変換するツールを自社で開発し、変換したデータをクラウドの共有ポータルに蓄積して、RAGで活用するフローを確立しています。

「どう活用すればいい?」の戸惑いを、社内チャットでの情報共有と実演で突破

Q. 推進する中で、現場からの反発や壁にぶつかることはありましたか。

A. セキュリティへの不安や用途の不明確さから生じた心理的抵抗を、チャットツールでの発信と個別実演で突破

伴さん: セキュリティを気にして「情報を入力するのが不安だ」という声や、「一体何をどう入力して業務効率化すればいいのか分からない」という戸惑いはありました。特に慎重な姿勢を持つ社員の中には、「難しそうだから触りたくない」という心理的な壁がありました。

そこで、社内チャットツールにAIチャンネルを作り、推進メンバーで「このような使い方ができた」と実例を発信し続けました。同時に、私が個別にお声がけして実際の画面を見せながら実演することで、「こんなに便利になるならやってみたい」と壁を突破でき、少しずつコミュニティが活性化して、今ではほぼ全員が積極的に活用する状態になりました。

Q. 心理的な壁を乗り越えた社員が、実際にプロンプトを使いこなせるようにするため、どのような指導や工夫を行いましたか。

A. 住宅を注文する際のたとえで希望条件を言語化させ、文字数やケース数などの数字による出力制御を徹底

伴さん: 難しいプロンプトの形式を教えるのではなく、住宅を注文するときをイメージしてもらいました。「ざっくり頼めばざっくりしたものが、細かく頼めば思い通りのものが返ってきます。AIへの指示も同じで、自分が欲しいと思う条件をすべて言葉にすることがコツです」と伝えました。これにより、ただ単に「これをして」と投げて失敗していた社員も、細かな条件を言語化できるようになりました。

石川さん: 出力のコントロールにおいては、数字を使うことが非常に有効だと体験から学びました。「詳細を教えて」「概要を教えて」といった曖昧な指示ではなく、「何文字で教えて」「何ケースくらい作って」と数字を指定させることで、AIの出力品質が格段に安定するようになりました。

Q. そもそもAIを自分の業務のどこに適用すればいいか分からない社員に対しては、どうアプローチしましたか。

A. 最初から部分的な質問をするのではなく、全体像をAIに投げかけて自身の理解度を把握する対話手法を指導

石川さん: 現場のプロジェクトメンバーには、「わからないことだけを聞くな」と強く伝えています。例えば要件定義で業務フローを作る際、最初から「フローの作り方を教えて」と部分的な質問をするのではなく、まずは曖昧でもいいから「そもそも要件定義とは何をすることですか?」と全体像を聞きなさいと指導しています。

そうすることで、自分が理解していることと不足している知識が明確になります。コンサル業務においても、知識がない業界の顧客にヒアリングする前に、顧客の実名などは伏せ、セキュリティに配慮したうえで「この業界の今の課題は何ですか?」とAIと対話します。そうしたスコープの大きなやり取りから始めることで、AIのユースケースが自ずと見えてくるようになります。

AIエージェントの顧客展開と、未開拓領域のDX推進

Q. 今後の展望として、どのようなビジョンを見据えているのでしょうか。

伴さん: 社内で蓄積したユースケースやテスト結果をもとに、今後は私たちのメイン事業であるERP導入ソリューション「Claudio Neo」にAIエージェントを掛け合わせ、お客様に展開していきます。特に人手不足に悩む中小企業の皆様に対し、手間のかかっていた業務を自動化できるサービスとして、今年の夏頃の提供開始を目指しています。

石川さん: さらに先の展望として、先進的なAIエンジンによって「やりたいことを言語化すればシステムができる」という世界観が見えてきました。これにより、これまでコストに見合わずデジタル化が遅れていたスポーツテックや農業分野の技術であるアグリテックといった領域へも、私たちの手でデジタルトランスフォーメーションを進めることができると考えています。AIが人に寄り添うことで、デジタル技術が進歩するだけでなく横に大きく広がっていく。その未来に、今とても面白さを感じています。

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