コンサル流議事録の書き方完全版!プロレベルに引き上げる作成のコツとテンプレート

「会議の議事録を書くのに、会議時間の倍以上の時間がかかってしまう…。」

「一生懸命メモを取ったはずなのに、後から見返すと何が決まったのか分からないと言われる…。」

「上司から『もっとバリューのある議事録を書け』と指示されたが、どうすればいいか分からない。」

こういった悩みを持っている若手ビジネスパーソンやコンサルタント志望の方も多いのではないでしょうか?

議事録は単なる会議の記録ではなく、プロジェクトを前に進めるための強力な武器です。

特にコンサルティングの現場において、議事録作成は新人コンサルタントが最初に叩き込まれる最重要スキルの一つとされています。

PMIの調査によると、プロジェクト失敗の約3分の1はコミュニケーション不全が主因であると報告されており、議事録による合意形成はリスク管理の観点からも極めて重要です。 https://www.ascertra.com/blog/pmi-study-reveals-poor-communication-leads-to-project-failure-one-third-of-the-time

本記事では、プロのコンサルタントが実際に実践している議事録作成のノウハウ、構造化のテクニック、そしてすぐに使えるテンプレート構成について解説しました。

上場企業をメインにコンサルティング事業を展開している弊社が、社内研修でも伝えている実践的な内容のみをご紹介します。

この記事を読み終える頃には、あなたの議事録は「ただのメモ」から「チームを動かす成果物」へと変わっているはずです。

ぜひ最後までご覧いただき、日々の業務に取り入れてみてください。

なぜコンサルの議事録は「価値」があると言われるのか

ここでは、なぜコンサルティング業界において議事録がこれほどまでに重視されるのか、その本質的な理由について解説します。

  • 一般的な議事録との違い
  • スキルアップにつながる理由
  • 発言録と議事メモの使い分け

これらを理解することで、議事録作成に向き合うスタンスが変わり、作成するアウトプットの質が劇的に向上します。

それでは、一つずつ順に見ていきましょう。

一般的な議事録とコンサル流議事録の決定的な違い

一般的な議事録とコンサル流の議事録の最も大きな違いは、その作成目的にあります。多くの企業で見られる一般的な議事録は、会議で話された内容を記録として残すこと、つまり「過去の保存」を主目的としています。そのため、誰が何を言ったかという発言の羅列になりがちで、後から読み返しても要点が掴みにくいことが少なくありません。

一方で、コンサル流の議事録は「未来の行動」を促すことを主目的としています。会議の結果、何が決まり、次に誰が何をすべきなのかを明確にし、プロジェクトを推進させるための合意形成ツールとして機能させます。コンサルタントにとっての議事録は、クライアントとの約束手形であり、次のアクションへの起点となる重要な成果物です。

目標や決定事項を書面化し進捗を共有することで、単に思考するだけの場合と比較して達成率が大幅に向上するという研究結果も出ています。 https://scholar.dominican.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1002&context=psychology-faculty-conference-presentations

そのため、コンサル流の議事録では、単に発言を書き起こすのではなく、議論の内容を構造化し、決定事項と論点を明確に切り出して記載します。読み手が時間をかけずに会議の全容を把握でき、かつ誤解なく次の行動に移れるように設計されているのです。この「読み手への配慮」と「プロジェクト推進への意思」が込められている点こそが、コンサル流議事録が価値あるものとされる所以です。

ただの記録係ではない?議事録作成が最強のスキルアップになる理由

新人コンサルタントが最初に議事録作成を任されるのは、雑用だからではありません。実は、議事録作成こそが、コンサルタントに必要な基礎能力を網羅的に鍛えるための最強のトレーニングだからです。質の高い議事録を作成するためには、会議の内容をリアルタイムで理解し、論理的に整理し、適切な言葉で表現する必要があります。

まず、議論についていくためには、業界知識やプロジェクトの背景、専門用語を理解していなければなりません。分からない言葉があれば調べ、知識を補完する姿勢が身につきます。次に、飛び交う発言の中から「事実」と「意見」を区別し、何が重要な論点なのかを見極める論理的思考力(ロジカルシンキング)が鍛えられます。

論理的思考と密接な関係にある「言語化能力」をAIで鍛える方法について、プロンプトを交えて詳しく解説しています。 合わせてご覧ください。

さらに、複雑な議論を簡潔かつ分かりやすい文章にまとめるライティングスキルや、要約力も向上します。上司やクライアントが何を求めているかを察知し、それを先回りして文書化する能力は、将来的に提案書作成やプレゼンテーションを行う際にも直結するスキルです。つまり、議事録作成を極めることは、コンサルタントとしての足腰を鍛え、プロフェッショナルとしての基礎体力をつけることに他ならないのです。

発言録(書き起こし)と議事メモ(要約)の正しい使い分け

議事録には大きく分けて、発言を一言一句記録する「発言録(書き起こし)」と、要点をまとめた「議事メモ(要約)」の2種類があります。コンサルティングの現場では、この2つを状況や目的に応じて正しく使い分けることが求められます。

発言録は、主にインタビュー調査や、法的なエビデンスが必要な会議、あるいは人事評価に関わる面談など、ニュアンスや発言の正確性が極めて重要になる場面で使用されます。「言った言わない」のトラブルを防ぐ必要がある場合や、発言者の感情や文脈まで詳細に残したい場合に有効です。しかし、情報量が膨大になるため、要点を把握するのには不向きです。

一方、通常のプロジェクト定例会や意思決定を行う会議では、議事メモ(要約)が適しています。ここでは、発言の正確な再現よりも、決定事項、ToDo、保留事項などの「結論」が重要視されます。コンサルタントが作成する議事録の大半はこの形式です。読み手の時間を奪わず、瞬時に内容を理解してもらうためには、発言をそのまま書くのではなく、情報を取捨選択し、構造化して記載する必要があります。この使い分けを意識せずに、すべての会議で発言録を作ろうとすると、作成者も読み手も疲弊してしまうため注意が必要です。

【そのまま使える】コンサル流議事録の基本構成とフォーマット

ここでは、明日からすぐに使えるコンサル流議事録の具体的な構成要素について解説します。

  • 決定事項(Decision)
  • ToDo(Next Action)
  • 議論の経緯
  • 保留事項・次回の論点(Issue)

これら4つの要素を型として持っておくことで、書き漏らしを防ぎ、誰が読んでも分かりやすい議事録を素早く作成できるようになります。

各項目の書き方のポイントを詳しく見ていきましょう。

構成要素1:決定事項(Decision)こそ最上段に書く

議事録の中で最も重要な項目は「決定事項」です。コンサル流の議事録では、この決定事項を文書の最上段、つまり一番目立つ場所に配置します。なぜなら、多忙な経営層やプロジェクトマネージャーは、議事録のすべてに目を通す時間がないことが多く、まずは「この会議で何が決まったのか」という結論だけを確認したいと考えるからです。

決定事項を書く際は、誰が読んでも解釈が揺れないように、断定的な表現を用います。「~する方向で調整する」といった曖昧な書き方ではなく、「A案を採用することに決定」「予算は○○万円で承認」と言い切る形にします。もし条件付きの決定であれば、その条件も併記します。

また、決定事項に至った背景や理由は、後述する「議論の経緯」に詳しく書きますが、決定事項の欄にも「(理由:コスト削減効果が高いため)」のように、一言添えておくと親切です。最上段に結論があることで、読み手は会議の成果を瞬時に把握でき、プロジェクトの進捗を実感することができます。この「結論ファースト(アンサーファースト)」の姿勢は、議事録だけでなく、コンサルタントのあらゆるコミュニケーションにおいて基本となる考え方です。

構成要素2:ToDo(Next Action)は「誰が・いつまでに」を明確化する

決定事項とセットで必ず記載しなければならないのが、ToDo(Next Action)です。会議で何かを決めても、それを実行に移す人がいなければ、プロジェクトは進みません。ToDoリストは、会議後のアクションを確実にするためのタスク管理表としての役割を果たします。

ToDoを記述する際の鉄則は、「誰が(Who)」「いつまでに(When)」「何をするか(What)」の3要素を必ずセットで書くことです。「来週までに資料を作成する」だけでは不十分です。「担当:鈴木、期限:11/25、内容:競合調査資料のドラフト版を作成し、田中マネージャーに送付」のように具体化します。

特に期限については、「来週中」や「なるべく早く」といった曖昧な表現は避け、具体的な日付を設定します。会議中に期限が決まらなかった場合でも、議事録作成者が仮の期限を設定し、「(仮)」として記載して確認を促すのが、気が利くコンサルタントの動きです。また、ボールを持っている人(担当者)を明確にすることで、責任の所在をはっきりさせ、タスクの宙ぶらりん状態を防ぎます。ToDoが明確であればあるほど、次の会議までの動きがスムーズになります。

構成要素3:議論の経緯は「事実」と「解釈」を分けて記載する

決定事項やToDoが決まるまでのプロセス、つまり「議論の経緯」を記載する際は、客観的な「事実」と、発言者の「解釈」や「意見」を明確に区別することが重要です。これが混同されると、後で読み返したときに、それが確定した事実なのか、誰かの個人的な感想なのかが分からなくなり、誤った判断につながる恐れがあります。

例えば、「市場規模は縮小傾向にある」という記述だけでは不十分です。「A社の調査データによると市場規模は昨年比90%である(事実)」と、「部長は今後もこの傾向が続くと懸念している(解釈・意見)」というように書き分けます。事実には数字や出典を添え、意見には主語(誰の発言か)を明記するのがポイントです。

また、議論が紛糾したり、二転三転したりした場合は、時系列にすべてを書くのではなく、議論のポイントごとに整理して記載します。「A案とB案の比較検討」という見出しを立て、それぞれのメリット・デメリットについてどのような意見が出たのか、最終的になぜA案が選ばれたのかというロジックの流れ(判断基準)を記述します。これにより、会議に参加していなかった人が読んでも、決定に至るまでの論理構成を追体験できるようになります。

構成要素4:保留事項・次回の論点(Issue)を定義する

会議ですべての議題が解決するとは限りません。時間切れで議論しきれなかった項目や、情報を持ち帰って検討が必要になった項目は「保留事項」として明記します。また、次回の会議で何を話し合うべきかという「次回の論点(Issue)」を定義することも、コンサル流議事録の重要な要素です。

保留事項を書く際は、単に「保留」とするのではなく、「何が不足していて決められなかったのか」という理由と、「次回までに誰が何を準備してくるのか」というアクションを紐づけて記載します。例えば、「システム導入の費用対効果については、見積もりの詳細が不明なため保留。次回までにIT担当がベンダーに追加見積もりを依頼する」といった具合です。

次回の論点を明示しておくことで、参加者は次の会議に向けた準備ができ、会議の冒頭で「今日は何を議論する場なのか」という認識を合わせやすくなります。これは、連続性のあるプロジェクト運営において、議論の脱線を防ぎ、効率的にゴールに向かうためのガイドポスト(道しるべ)となります。議事録の最後に「次回のアジェンダ案」として記載しておくのも有効なテクニックです。

そもそも議事録の正しい書き方がわからないという方は、こちらの記事を合わせてご覧ください。議事録のテンプレートも無料でダウンロードできます。

コンサル流議事録で複雑な議論をスッキリ整理する「構造化」のテクニック

ここでは、発言内容が入り乱れる複雑な会議の内容を、読みやすく整理するための「構造化」のテクニックを紹介します。

  • トピックごとの整理方法
  • MECE(ミーシー)によるグルーピング
  • ピラミッドストラクチャーの活用
  • ビジネス用語への翻訳

これらのテクニックを駆使することで、カオスな議論もスッキリと整理された、美しい議事録に生まれ変わります。

具体的な方法を見ていきましょう。

時系列で書くのはNG?トピック(論点)ごとに整理する方法

初心者がやりがちな議事録の失敗例として、発言を時系列順にだらだらと書いてしまうことが挙げられます。実際の会議では、話があちこちに飛んだり、一度終わった話題が蒸し返されたりすることがよくあります。これをそのまま時系列で記録すると、情報が分散し、結局何について議論していたのかが非常に分かりにくくなります。

コンサル流の議事録では、時系列ではなく「トピック(論点)」ごとに情報を再構成して記載します。例えば、会議の中で「採用計画」と「販促キャンペーン」の話が交互に出てきたとしても、議事録にする際は「1. 採用計画について」「2. 販促キャンペーンについて」というように項目を分けます。そして、それぞれのトピックに関連する発言を、会議中のどのタイミングで話されたかに関わらず、該当する項目に集約します。

このように再構成することで、読み手はトピックごとの議論の深まりや結論を一目で把握できるようになります。議事録作成者は、会議中はメモを取りながら、頭の中で(あるいはメモ上で)タグ付けを行い、後で清書する際に情報を並べ替える編集作業を行う必要があります。これが「編集能力」と呼ばれるものであり、分かりやすい議事録を作成するための第一歩です。

MECE(漏れなくダブりなく)を意識して情報をグルーピングする

情報をトピックごとに整理する際に役立つのが、コンサルティングの基本思考である「MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)」、つまり「漏れなくダブりなく」という考え方です。議事録におけるMECEとは、議論された内容を重複なく分類し、かつ重要な論点が抜け落ちていない状態を作ることを指します。

例えば、課題についての議論をまとめる際、「営業の課題」「商品の課題」「組織の課題」といった大きなカテゴリで分類(グルーピング)します。もし「営業担当の知識不足」という意見と「商品パンフレットが分かりにくい」という意見が出た場合、前者は「営業の課題」、後者は「商品の課題」または「営業ツールの課題」に分類します。

このように情報をグルーピングし、適切な見出しをつけることで、情報の階層構造が明確になります。箇条書きが10個も20個も並んでいるだけの議事録は読みづらいですが、MECEを意識して「現状の課題(3点)」「解決策の方向性(2点)」「懸念事項(2点)」のようにカテゴライズされていれば、情報の全体像が瞬時に伝わります。議事録を書く際は、常に「この情報はどの箱(カテゴリ)に入るのか?」を意識しながら整理することが大切です。

箇条書きやリスト形式は、パラグラフ形式よりも情報の検索性や再認(Recall)において優れているという研究データもあり、適切なグルーピングは読み手の理解を助けます。 https://www.researchgate.net/publication/290470586_How_bulleted_lists_and_enumerations_in_formatted_paragraphs_affect_recall_and_evaluation_of_functional_ext

ピラミッドストラクチャーを用いて結論と根拠を紐づける

論理的な議事録を作成するために欠かせないのが「ピラミッドストラクチャー」です。これは、最も伝えたい「結論(メインメッセージ)」を頂点にし、その下にそれを支える「根拠」や「具体例」を配置する三角形の構造のことです。議事録においては、議論の結論に対して、なぜその結論に至ったのかという理由を論理的に紐づけるために使用します。

具体的には、インデント(字下げ)を活用して階層構造を視覚的に表現します。

・結論:A案を採用する

 ・理由1:初期投資が最も低いから

  ・具体例:B案と比較して約500万円の削減効果がある

 ・理由2:導入までの期間が短いから

  ・具体例:既存システムとの連携が容易で、来月から稼働可能

このように、親(結論)と子(理由)、孫(詳細・事例)の関係を明確にすることで、ロジックの繋がりが可視化されます。読み手は、まず結論を理解し、必要に応じて詳細な理由を確認するという読み方ができるため、情報の処理スピードが格段に上がります。ただ漫然と箇条書きにするのではなく、この縦の論理関係を意識してレイアウトを整えるだけで、議事録の説得力と分かりやすさは大きく向上します。

人間が短期記憶で一度に処理できる情報量(チャンク数)には限界があるため、ピラミッド構造で情報を整理することは認知科学の観点からも有効です。 https://strategyu.co/pyramid-principle-partone/

曖昧な発言をビジネス用語・共通言語に翻訳して記載する

会議の場では、参加者の発言が常に明瞭で論理的であるとは限りません。「なんとなくこっちの方がいいかも」「あそこがちょっとイマイチなんだよね」といった感覚的な言葉や曖昧な表現が飛び交うことも多々あります。これらをそのまま議事録に記載してしまうと、後で読み返したときに意味が通じなかったり、プロフェッショナルさが欠けた文書に見えたりします。

コンサルタントは、こうした曖昧な発言を、文脈を汲み取った上で適切な「ビジネス用語」やプロジェクト内の「共通言語」に翻訳して記載します。例えば、「なんとなく使いにくい」という発言であれば、「UI/UXにおける操作性の課題」や「ユーザー導線の不備」といった言葉に変換します。「やっぱりA社に頼むべきだ」という発言であれば、「実績と信頼性を重視し、A社を選定すべき」と補足します。

ただし、過度な意訳によって発言者の意図を歪めてしまってはいけません。あくまで発言の真意を汲み取り、ビジネス文書として適切な表現に整えることが目的です。この「翻訳」作業によって、議事録は単なる会話記録から、客観性と品格を備えた公式文書へと昇華されます。適切な用語選択は、プロジェクトメンバー間の認識齟齬を減らす効果もあります。

コンサルタントが実践する議事録の質とスピードを劇的に高める作成プロセス

質の高い議事録を素早く作成するためには、会議が終わってから書き始めるのでは遅すぎます。

プロのコンサルタントは、会議の前・中・後、それぞれのフェーズで明確な動きをしています。

  • 会議前の準備
  • 会議中の立ち回り
  • 会議後の初速

これら一連のプロセスを最適化することで、作業効率は劇的に改善します。

具体的な手順とコツを解説します。

【会議前】アジェンダと仮説を持っておくことが8割

議事録作成の勝負は、実は会議が始まる前に8割方決まっています。何も準備せずに会議に臨み、その場で聞いたことをメモしようとすると、話の展開についていけずパニックになりがちです。コンサルタントは、事前に「アジェンダ(議題)」を確認し、どのような議論が展開され、どのような結論に着地しそうかという「仮説」を持って会議に参加します。

可能であれば、事前に議事録の「骨組み(テンプレート)」を作成しておきます。日付、参加者、アジェンダの項目はもちろん、想定される論点や決定すべき事項の枠をあらかじめ作っておくのです。こうすることで、会議中は作成した枠の中に内容を埋めていくだけの作業になり、余裕を持って議論を聞くことができます。

また、前回の議事録を読み返し、宿題になっていた事項や、今回の会議で確認すべきポイントを整理しておくことも重要です。「今日はこの点について決着をつける必要がある」というゴールイメージを持っていれば、議論が脱線した際にも軌道修正を促すことができ、結果として書きやすい議事録につながります。準備の質が、議事録の質と作成スピードを決定づけるのです。

【会議中】わからないことはその場で確認して論点をクリアにする

会議中、話の流れが早かったり、専門的な内容で理解が追いつかなかったりすることは、誰にでもあります。この時、分かったふりをして適当にメモを取るのは最悪の対応です。後で議事録を書く際に必ず行き詰まり、結局誰かに聞き直すことになって二度手間になります。

コンサルタントは、理解できない点や曖昧な点があれば、その場で「確認」を入れます。「今の点について確認させてください。○○という理解で合っているでしょうか?」「ここでの決定事項は、具体的に○○ということでよろしいでしょうか?」と質問し、認識をすり合わせます。これは自分の理解を深めるためだけでなく、参加者全員の認識を統一し、議論を整理する効果もあります。

会議の終了間際に、決定事項とToDoを復唱して確認するのも有効なテクニックです。「本日の決定事項はAとB、次のアクションは鈴木さんが来週までにCを行う、ということで間違いありませんか?」と宣言することで、その場で議事録の骨子が承認されたことになり、会議後の作成作業が圧倒的に楽になります。勇気を持って確認することが、結果として正確で早い議事録作成につながります。

【会議後】記憶が鮮明なうちに「骨子」だけ即共有する重要性

会議が終わった直後、記憶が最も鮮明なうちに議事録の「骨子」を作成し、関係者に共有することが推奨されます。完璧に整えられた清書版を作るのに時間をかけて翌日や翌々日に出すよりも、会議終了後30分~1時間以内に、決定事項とToDoだけをまとめた簡易版(クイック版)を出す方が、ビジネスのスピード感としては価値が高い場合が多いです。

この「骨子」の共有には、認識齟齬を早期に発見できるというメリットがあります。もし内容に間違いがあれば、記憶が新しいうちに指摘してもらうことで、修正の手間を最小限に抑えられます。時間が経ってから「言った言わない」の議論になるのを防ぐ効果もあります。

手順としては、まず会議終了直後にメモを見返し、重要事項を箇条書きでまとめます。それをチャットツールやメールで「取り急ぎ、本日の決定事項とToDoを共有します。詳細は後ほど正式な議事録にて送付します」として送ります。このスピード対応は、クライアントや上司からの信頼獲得に大きく寄与します。まずは60点の完成度でも良いので、スピードを優先してアウトプットを出す姿勢が大切です。

上司やクライアントのレビュースタイルに合わせて修正するコツ

議事録は、読み手である上司やクライアントが納得して初めて完成となります。そのため、彼らのレビュースタイルや好みに合わせて修正を行うことも重要なスキルです。例えば、詳細な経緯まで知りたいタイプの上司もいれば、結論だけを端的に知りたいタイプのクライアントもいます。

初めて議事録を提出する相手の場合、最初から100%の完成度を目指して時間をかけるのではなく、早めの段階でドラフト版を見せ、「この構成で問題ないか」「粒度はこのくらいで良いか」とフィードバックを貰うのが賢明です。これにより、方向性のズレを修正し、無駄な書き直し作業を減らすことができます。

また、修正指示を受けた際は、単に言われた箇所を直すだけでなく、「なぜ修正されたのか」という意図を考えることが成長につながります。「ここは主観が入っていたから削除されたのか」「ここは論理が飛躍していたから補足されたのか」と分析し、次回の作成に活かします。相手の「OKライン」を把握し、それに合わせたチューニングを行う適応力が、プロの議事録作成者には求められます。

新人コンサルがやりがちな議事録の失敗と対策

どんなに優秀な人でも、最初は議事録作成で多くの失敗を経験します。

ここでは、新人コンサルタントが陥りやすい典型的な失敗パターンと、その具体的な対策について解説します。

  • メモが追いつかない
  • 専門用語が分からない
  • 何が言いたいか分からない

これらの壁を乗り越える方法を知っておくことで、挫折することなくスキルアップしていくことができます。

それぞれの対策を見ていきましょう。

議論のスピードについていけずメモが追いつかない時の対処法

議論が白熱してくると、会話のスピードが上がり、タイピングが追いつかなくなることがあります。全てを記録しようとすると、思考が停止し、議論の内容自体が頭に入ってこなくなるという悪循環に陥ります。

対処法としては、まず「一言一句すべてを書き留めようとしない」ことです。重要なキーワード、数字、決定事項、論点の転換点だけに絞ってメモを取ります。文法やてにをはを気にする必要はありません。自分が後で見て思い出せる程度のキーワードの羅列で十分です。

また、PCの辞書登録機能を活用して、よく使う単語やフレーズを短縮入力できるようにしておくのも有効です。例えば、「ぎ」と打てば「議事録」、「け」と打てば「決定事項」と出るように設定しておきます。さらに、どうしても追いつかない場合は、ICレコーダーや録音アプリを(許可を得て)併用し、聞き逃した部分を後で補完できるように保険をかけておくことで、精神的な余裕が生まれます。あくまで「理解すること」を最優先し、メモは記憶のトリガーとして使う意識を持ちましょう。

専門用語がわからず内容が理解できない時の勉強法

コンサルティングのプロジェクトでは、業界特有の専門用語や社内用語が頻出します。これらが分からないと、議論の内容が呪文のように聞こえ、議事録を書くどころではありません。

対策としては、会議前のインプットが不可欠です。プロジェクトの過去資料や関連する業界ニュース、競合他社の情報を読み込み、頻出用語をリストアップして意味を調べておきます。分からなかった単語は会議中にカタカナでも良いのでメモしておき、会議後すぐに調べて自分だけの「用語集」を作ります。

また、文脈から意味を推測する力も養う必要がありますが、どうしても分からない重要なキーワードについては、会議の休憩時間や終了後に、先輩や詳しいメンバーに恥ずかしがらずに質問することが大切です。「勉強不足で申し訳ありません、先ほどの〇〇という言葉はどういう意味でしょうか」と素直に聞く姿勢は、知ったかぶりをして間違った議事録を書くよりも遥かに評価されます。知識の空白を埋める地道な作業が、議事録の精度を高めていきます。

書いてあることは正しいが「何が言いたいか分からない」と言われる原因

事実は書かれているのに、「結局、何が言いたいの?」「読んでいて頭に入ってこない」と指摘されることがあります。この原因の多くは、文章の構造化不足と、一文の長さ(冗長性)にあります。

まず、一文が長すぎると主語と述語の関係が分かりにくくなります。「~であり、~だが、~なので、~する」といったように、接続詞でつないでダラダラと続けるのではなく、一文を短く切り、「~である。しかし~だ。したがって~する」と簡潔に言い切る形にします。

文章構成の課題を解決する手段として、ChatGPTによる文章添削・表現改善のプロンプト集をまとめた記事があります。 合わせてご覧ください。

また、情報にメリハリがないことも原因です。すべての情報が同じ粒度で並んでいると、どこが重要なのかが伝わりません。前述したピラミッドストラクチャーや見出しを活用し、情報の親子関係を明確にすることで、読み手が情報の重み付けをしながら読めるように工夫します。さらに、指示語(これ、それ、あれ)を多用しすぎると、指している内容が不明確になるため、極力具体的な名詞に置き換えるように意識しましょう。「正しさ」だけでなく「伝わりやすさ」を追求することが、脱・初心者への鍵となります。

コンサル業務の議事録作成をAIやツールで効率化する方法

近年、AI技術の進化により、議事録作成をサポートするツールが数多く登場しています。

生成AIツールの活用により、会議に関連する時間が大幅に削減できるという調査結果も発表されており、ツール導入は生産性向上の鍵となります。 https://www.nysscpa.org/article-content/survey-ai-tools-can-boost-productivity-by-reducing-time-spent-in-meetings-041024

これらを賢く活用することで、作成時間を大幅に短縮し、より本質的な業務に時間を割くことが可能になります。

  • 録音・文字起こしツールの活用
  • ChatGPT等による要約・構造化

ただし、ツールはあくまで補助であり、最終的な品質担保は人間の役割です。

最新のAI事情も交えながら、効率化のポイントを解説します。

録音・文字起こしツールを活用する際の注意点とコツ

Microsoft Teams(Copilot)やZoom AI Companionなど、Web会議ツール標準搭載の文字起こし機能は、いまやビジネス実用レベルに達しています。また、専用のAI文字起こしツール(Notta、CLOVA Noteなど)も引き続き精度が向上しています。

ChatGPTを活用し、会議の文字起こしテキストから効率的に議事録を作成する具体的な方法とプロンプト例については、こちらの記事で詳しく解説しています。 合わせてご覧ください。

しかし、AIによる文字起こしは完璧ではありません。専門用語の誤変換や、複数人が同時に話した際の話者分離のミスなどは頻繁に起こります。そのため、出力されたテキストをそのまま議事録として使うことはできません。あくまで「発言録のドラフト」として捉え、そこから不要なフィラー(「えー」「あー」など)を削除し、文脈を整える作業が必要です。

AIと人間の文字起こし精度を比較したデータによると、AIの精度は向上しているものの、人間による記録と比較するとまだ完全ではないことが示唆されています。 https://www.dittotranscripts.com/blog/ai-vs-human-transcription-statistics-can-speech-recognition-meet-dittos-gold-standard/

コツとしては、マイクの環境を整え、できるだけクリアな音声を録音することです。また、会議中に「ここ重要です」と意図的に発言したり、結論を復唱したりすることで、後でテキストを見返したときにポイントを見つけやすくする工夫も有効です。ツールに依存しすぎず、自分のメモと併用することで、相互補完的に活用するのがベストです。

ChatGPT等の生成AIに要約・構造化をサポートしてもらうプロンプト例

ChatGPTなどの生成AIは、雑多なテキストを要約したり、指定したフォーマットに構造化したりする作業が非常に得意です。文字起こしされたテキストをプロンプトに入力し、整形させることで、議事録作成の初稿を数秒で作成できます。

ただし、AIによる要約には情報の欠落やハルシネーション(事実と異なる生成)のリスクが含まれるため、必ず人間によるファクトチェックが必要です。 https://arxiv.org/abs/2407.11919

例えば、以下のようなプロンプトを活用します。

「以下の会議の文字起こしテキストから、決定事項、ToDo(担当と期限)、議論の要点を抽出し、マークダウン形式で構造化して出力してください。重要な論点は箇条書きでまとめてください。」

また、2025年8月にリリースされた「GPT-5」や、11月に発表されたその改良版では、思考時間の自動切替機能がさらに強化されています。これにより、複雑な議論が含まれる議事録の作成においても、文脈を深く推論し、非常に精度の高い要約と構造化が可能になっています。以前のモデルでは見落としがちだったニュアンスも汲み取ってくれるため、コンサルタントの壁打ち相手としても強力なツールとなります。

ただし、機密情報の取り扱いには十分な注意が必要です。社外秘の情報をそのまま入力せず、固有名詞を伏せるか、学習に利用されない設定(オプトアウトやエンタープライズ版の利用)を確認した上で活用しましょう。AIを「優秀なアシスタント」として使いこなし、最終的なファクトチェックと仕上げを人間が行うことで、議事録作成の生産性は飛躍的に向上します。

ChatGPTを企業で安全かつ効果的に利用するための導入方法、活用事例、セキュリティに関する注意点をまとめた完全ガイドです。 合わせてご覧ください。

生成AIで思考力が低下する?「依存する人」と「活用する人」の決定的な差

ChatGPTをはじめとする生成AIの普及により、業務効率は飛躍的に向上しました。しかし、その利便性の裏で、私たちの脳が密かに「退化」の危機に晒されていることをご存知でしょうか。マサチューセッツ工科大学(MIT)などの研究機関が示唆するのは、AIへの安易な依存が人間の認知能力に及ぼすネガティブな影響です。ここでは、AIを使って「思考停止に陥る人」と、逆に「知能を拡張させる人」の違いを、科学的根拠と具体的な活用法に基づいて解説します。

【警鐘】AIへの「認知オフローディング」が招くリスク

わからないことをすぐに検索したり、AIに答えを求めたりする行為は、心理学で「認知オフローディング(思考の外部化)」と呼ばれます。これは脳のエネルギーを節約する効率的な行動ですが、過度に行うと「自ら考える力」そのものが低下する恐れがあります。

MITの研究チームが行った調査では、生成AIを利用してタスクを行ったグループは、利用しなかったグループに比べて、タスク完了後の記憶定着率や、そのトピックに対する深い理解度が著しく低い傾向が見られました。

つまり、AIに「正解」を求め続ける使い方は、脳をサボらせ、批判的思考力(クリティカルシンキング)や創造性の減退を招く可能性があるのです。

引用元:

MIT Sloan School of Managementの研究において、生成AIの使用が労働者のパフォーマンスと学習に与える影響が調査され、AIへの過度な依存が人間の独自の判断力やスキル習得を阻害する可能性が指摘されています。(Brynjolfsson, E., Li, D., & Raymond, L.R. “Generative AI at a College Level: The Impact on Grades and Future Job Prospects” 2023年 関連研究より)

思考停止を脱却しAIを「知的パートナー」にする具体策

賢いユーザーは、AIを「検索エンジン」の代わりではなく、「思考の壁打ち相手」として扱います。脳を活性化させ、AIを使いこなすための3つの実践的アプローチを紹介します。

アプローチ1:AIを「論敵」として設定する

自分の意見をAIに肯定させるのではなく、あえて批判させます。

プロンプト例:

「私は〇〇という企画を考えています。あなたが辛口な投資家だとしたら、この企画のどの部分にリスクを感じ、出資を拒否しますか?論理的な欠点を3つ指摘してください。」

これにより、自分では見落としていた視点に気づき、論理構築力を鍛えることができます。

アプローチ2:ファインマン・テクニックの応用

物理学者リチャード・ファインマンが提唱した「誰かに教えることで理解を深める」手法をAI相手に行います。AIを「初心者」に設定し、あなたが専門的な内容を噛み砕いて説明するのです。

プロンプト例:

「これから〇〇の概念について説明します。あなたは知識のない中学生として聞いてください。もし説明が難しかったり、論理が飛躍していたりしたら、容赦なく質問してください。」

AIからの鋭いツッコミに答える過程で、曖昧な知識が整理され、真の理解力が身につきます。

アプローチ3:AIを「発想の触媒」として使う

「良いアイデアを出して」と丸投げするのではなく、異質な要素をぶつけて化学反応を狙います。

プロンプト例:

「現在の課題はAです。これに対し、全く無関係に見える業界Bの成功事例やビジネスモデルを応用して、3つの解決策を提示してください。」

AIが提示する意外な組み合わせをヒントに、最終的な答えを人間が出すことで、創造的な思考回路が強化されます。

まとめ

多くの企業がDXの推進や業務効率化を急務とする中で、生成AIの導入は避けて通れない課題となっています。

しかし、現場では「どのツールを選べばいいかわからない」「使いこなせる人材が不足している」といった悩みが尽きません。

そこでおすすめしたいのが、Taskhub です。

Taskhubは、日本初のわかりやすいアプリ型インターフェースを採用し、ビジネスの現場で即戦力となる200種類以上のAIタスクをパッケージ化したプラットフォームです。

今回のような「質の高い議事録作成」はもちろん、メールの自動生成、多言語翻訳、資料の要約など、あらゆる業務をアプリを選ぶだけの直感操作で完結できます。

セキュリティ面でも、Azure OpenAI Serviceを基盤としているため、機密情報が外部に漏れる心配がなく、企業利用に最適です。

さらに、プロのAIコンサルタントによる導入サポートも充実しており、ITリテラシーに不安がある企業でもスムーズに運用を開始できます。

高度なスキル不要で、導入初日から業務時間の削減を実感できるTaskhubは、まさに企業の生産性を底上げする切り札と言えるでしょう。

まずは、具体的な機能や成功事例を掲載した【サービス概要資料】を無料でダウンロードして、その実力を確かめてください。

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