生成AIの活用は企業にとって不可欠になりつつあります。しかし現場では、「AIが業務プロセスの外側にある」という課題が依然として残っています。多くの担当者は、業務システムを操作しながら別のウィンドウでAIチャットに質問を入力している実情があります。そこで注目されるのが、AIを業務システムの「内側」に組み込むという発想です。誰もがワンクリックで使えるようにできないでしょうか。そんな現場の切実な声から、ワークスアイディ株式会社の新たな挑戦は始まりました。
同社は、Microsoftサービスを軸としたビジネス変革支援や、生成AIチャット「neoAI Chat」の導入支援で豊富な実績を持っています。その知見を結集して開発されたのが、kintoneプラグイン「Works Connect to neoAI Chat」です。今回は、同社でDX事業部を率いる執行役員の奥西さんに、新サービス開発の背景から具体的な活用事例、そしてAIが組織の資産を生み出す未来の展望まで、詳しくお話を伺いました。

業務の「外側」にあるAIという壁。現場のリアルな声が開発の原点に
Q. なぜ「Works Connect to neoAI Chat」を開発しようと考えたのでしょうか。企画が立ち上がった背景を教えてください。
奥西さん: 開発の背景には、まさに現場のリアルな声がありました。多くの企業で生成AIの利用は始まっているものの、その多くが既存の業務プロセスの「外側」での個人利用に留まっていました。また、業務を進めるには、複数のツールやドキュメントを横断して確認する必要があります。
例えば現場では、次のような作業が日常的に行われています。
- kintoneで業務を処理
- 資料を探すためにファイルサーバーを検索
- 契約内容を確認するため別の管理システムを開く
この分断されたプロセスをAIとシームレスに連携できれば、業務はもっと楽になるはずだという声が強く上がっていたのです。
特にkintoneは多くの企業の業務の中心となっています。そこで、そのkintoneの中からAIが社内の膨大なドキュメントやナレッジを直接参照し、資料や契約書の内容を要約したり、あるいは分厚いRFP(提案依頼書)が添付された際に、その概要を自動で把握したりできれば、仕事の効率は格段に高まると考えました。急ぎの案件でも「読むのが大変だから明日にしよう」と後回しにしがちなタスクが、AIによる要約で「いつまでに何が必要か」を即座に把握できれば、初動が格段に早くなります。こうした現場の「早くしたい」「楽にしたい」という切実なニーズが、この企画の出発点となりました。

kintoneにAIモードが追加される感覚。ワンクリックで専門AIを呼び出す手軽さ
Q. 新サービスの具体的な機能や特徴についてお聞かせください。
奥西さん: 「Works Connect to neoAI Chat」は、お客様が普段お使いのkintoneに、業務に特化したAI機能をプラグインとして組み込むサービスです。最大の特徴は、現場の誰もがボタン一つで直感的にAIを活用できる手軽さにあります。
例えば、製造業の不具合報告アプリをkintoneで運用しているとします。現場担当者が品名や不具合内容をフィールドに入力した後、従来は過去の経験と勘に頼って対応策を考えていました。このプラグインを導入すると、kintoneの画面上に現れるボタンをワンクリックするだけで、入力された情報をプロンプトとしてAIが作動します。あらかじめ品質保証部が持つ過去の不具合報告書や技術文書をRAG(検索拡張生成)のデータソースとしてAIに読み込ませておくことで、汎用的な回答ではなく、自社のナレッジに基づいた精度の高い再発防止策が自動で提案されるのです。現場の感覚としては、まるでkintoneにAIモードが追加されたかのように、ごく自然にAIの力を借りることができます。
この仕組みはSFA(営業支援システム)など他の業務にも応用可能です。問い合わせ情報が入力された際にボタンを押せば、自社のソリューションや過去の提案書を基に、AIが商談の進め方や重点的にヒアリングすべき事項を提案してくれます。商談後の議事録を入力すれば、次に取るべきアクションの検討もAIが支援します。これらすべてが、kintoneの画面を離れることなく、ワンクリックで完結するのです。

Q. ユーザーが直感的に使えるように、UI/UXの面でこだわった点はありますか?
奥西さん: 私たちのサービスは、AIの技術起点ではなく、あくまで「業務起点」で設計している点が最大のこだわりです。一つのkintoneアプリの中でも、例えば商談管理であれば「商談前」「商談後」「提案書作成」「提案シナリオ作成」など、フェーズごとに異なるAIの支援が必要になります。私たちのプラグインでは、こうした業務用途に合わせて、一つのアプリに最大5つの業務特化AIアシスタントを接続できるよう設計しました。ユーザーは目的のボタンを押すだけで、その瞬間に最も必要な専門AIを呼び出すことができます。この、業務フローに溶け込むようなUIには、特に力を入れて開発しました。
「質問」が「確認」に変わる。先行導入企業が実感する確かな業務変革
Q. すでに試験的に導入されている企業もあると伺いました。実際の現場からは、どのような声が上がっていますか?
奥西さん: ある製造業様の事例ですが、過去のトラブル事例や膨大な技術文書をAIに読み込ませ、kintoneと連携して活用されています。
これまでは、何か問題が起きるたびに若手がベテラン社員を頼り、解決策を聞いて回るのが日常でした。しかし導入後は、まずAIに問いかけるというステップが定着したのです。その結果、ベテランへの相談が「どうすればいいですか?」というゼロからの「質問」から、「過去の傾向から、この対策が必要と考えますが合っていますか?」という「確認」へと劇的に変化しました。この変化は、技術継承の面でも非常に価値があると評価されています。現場からは「ベテランよりも的確な回答が返ってくることすらある」と、驚きと喜びの声をいただいています。
また、建設会社様では、営業活動の効率化に活用されています。お客様へのヒアリング内容だけでなく、紹介元である金融機関との契約条件や過去の実績などもAIに読み込ませておくことで、上司が商談に同行する際の事前確認がkintone上で即座に完結するようになりました。ほかにも、問い合わせ管理業務では、過去の対応履歴を基にAIが回答案を生成することで、お客様への返信リードタイムが劇的に短縮されたというお声もいただいています。デジタルツールの導入でありがちな「使われない」という課題を乗り越え、確実に業務に根付いている手応えを感じています。
情報管理システムから、知識創造システムへ
Q. 最後に、このプロダクトの今後の展望と、サービスを通じて実現したい未来についてお聞かせください。
奥西さん: 今後のアップデートとしては、より高度なタスクを自動化するエージェント機能との連携を予定しています。kintone上の指示からPowerPointの資料を作成したり、Excelデータを生成・分析したりといった、より発展的な活用を目指して開発を進めています。
そして私たちがこのプロダクトで実現したいのは、人とシステムの新しい関係です。これまでのシステムは、人が情報を入力することが大前提でした。しかしこれからは、AIが会社の過去のナレッジという資産を使ってシステムに情報を入力し、新たな「組織の共有資産」を能動的に作っていくフェーズに入ると考えています。AIを単なる回答ツールで終わらせるのではなく、AIが自社の資産から導き出したアウトプットを組織で共有し、それがまた次のナレッジとして蓄積されていく。私たちの「Works Connect to neoAI Chat」は、そんな「知識創造するシステム」への変革を実現するサービスです。このビジョンに共感いただける多くの企業様と共に、AI活用の新たな形を創造していきたいと考えています。