今回は、時系列解析に特化したAI技術で、企業の設備故障予測や需要予測の課題解決を支援する株式会社メロン 共同創業者・取締役CTO 本田さんにお話を伺いました。研究者としての知見を社会実装へと繋げ、独自の特許技術を搭載したAIアプリケーションを開発・提供する同社。そのプロダクトの強みや開発背景、そして今後の展望について詳しく伺いました。

研究者としての知見を社会実装へ。時系列予測AIで企業の課題を解決
Q. まずは、貴社の事業内容をお願いいたします。
本田さん: 株式会社メロンでCTOを務めております、本田です。弊社の事業は、AIの中でも特に「時系列解析」という、時間とともに変化するデータを扱う分野を専門としています。具体的には、センサーデータから設備の異常予兆を検知したり、製造コストや商品の販売実績の推移を予測したりと、時系列データから「その先、何が起こるのか」を検知・予測する技術開発が中核です。その技術を活用したアプリケーションの提供と、お客様ごとの課題に合わせた受託開発の両軸で事業を展開しています。
私自身はもともと、この時系列解析分野の研究者でした。博士号を取得した後、助教としてAI関連の研究を続けていましたが、研究で培った技術を直接的に社会へ実装し、役立てたいという思いが強くなり、創業したのが株式会社メロンです。
アップロードするだけで未来が見える。専門家でなくても使えるAIアプリケーション
Q. 貴社が提供されているプロダクトの概要や開発背景について、詳しくお聞かせいただけますでしょうか。
本田さん: 弊社のプロダクトは、時系列解析を手軽に、そして高精度に行うためのAIアプリケーションです。製造業や小売業などでは、予測しなければならない物事が非常に多く存在します。しかし、その一つひとつに対して個別にシステムを構築するのは大変なコストと時間がかかります。そこで、既存の社内システムと簡単に連携したり、あるいはデータをアップロードするだけで、誰でもすぐに精度の高い予測結果を得られるようなものを作りたい、という思いから開発がスタートしました。
実際の操作画面を例に挙げますと、商品コードや販売日、販売実績数といったデータを取り込み、予測したい項目と日付の列を選択して実行するだけで、予測が開始されます。専門的な設定をせずとも、全ての商品の将来の販売数を週単位で予測するといったことが可能です。
画面に表示される青い線が過去の実績データで、オレンジ色の線がAIによる予測値です。人が予測するよりも高い精度で、かつ時系列データが持つ周期性やトレンド(例えば、特定の季節に売れる商品や、年々売上が伸びている商品の傾向など)を自動的に抽出し、予測に反映させることができます。
▼「mellon」の実際の操作イメージ



また、特徴的な機能として「アダプティブダッシュボード」があります。これは、裏側でAIが動作し、ユーザーが見たい分析軸を指示するだけで、分析用のプログラムコードと結果を可視化する画面を自動で生成するものです。
データサイエンティストのような専門家でなくても、直感的な操作だけで深いデータ分析が可能になります。さらに、時系列解析とLLMを組み合わせたアシスタント機能も搭載しており、チャット形式で「この予測結果について教えて」と質問すれば、予測の根拠などを文章で説明してくれます。
Q. 非常に直感的なUIで、データサイエンスに詳しくない私でも迷わず使えそうだと感じました。
本田さん: ありがとうございます。専門家でなくても使いこなせる手軽さを意識しつつ、予測期間を週ごと・日ごとに変更したり、特定の商品だけを予測したりといった細かい設定も可能になっています。私たちの強みは、私が論文に書いた研究成果を基にした特許技術をしっかりと製品にパッケージングしている点です。これにより、ただ使いやすいだけでなく、非常に高精度な予測を実現しています。
独自特許技術による「圧縮予測」と「解釈性」が競合優位性
Q. 他の予測AIと比較した際の、御社プロダクトの競合優位性について教えてください
本田さん: ありがとうございます。優位性は大きく2つあります。1つ目は、「精度」と、「速度」です。例えば、1万種類の商品を扱うアパレル企業で需要予測を行う場合、通常の技術では1万回予測を実行する必要があります。しかし、私たちの技術は、その1万商品の情報を一度「圧縮」し、その圧縮された状態で予測を行います。そして予測結果が出た後に、個別の1万商品の結果へと「展開」するのです。これにより、計算処理が格段に速くなります。
さらに、この「圧縮」は精度向上にも貢献します。データというのは基本的に欠損値が多く、例えばたまに1点売れるか売れないか、というような商品のデータから未来を予測するのは非常に困難です。しかし、私たちの技術は、似たような売れ方をする商品のデータをまとめて圧縮するため、分散していた個々のデータが集約され、予測しやすい状態になります。結果として、生のデータでは難しかった予測の精度も向上するのです。
2つ目の優位性は、「なぜこの予測結果になったのか」という根拠を説明できる「解釈性」の高さです。特に製造業などでは、この説明ができないと生産計画などの重要な意思決定にAIの予測結果を組み込むことができません。私たちのプロダクトは、例えば「下降トレンドを読み取ったため、このような予測値になっています」といった形で、予測の背景をアダプティブダッシュボードやチャットアシスタントを通じて明確に説明できます。この性能面と解釈性の両方を高いレベルで両立している点が、私たちの最大の強みだと考えています。
大手企業での導入実績と、技術を社会に還元する今後の展望
Q. 実際にどのような課題をお持ちの企業がプロダクトを導入し、成果を上げているのでしょうか。
本田さん: 自動車向けの電線を製造されている矢崎総業様や、私たちの親会社であり、アプリケーション間のデータ連携基盤を提供する株式会社データ・アプリケーションズ様などでご活用いただいています。データ・アプリケーションズの例では、システムを流れるデータのトラフィック量を予測し、異常を検知する技術を提供しています。その他にも、広告代理店のCARTA MARKETING FIRM(現:CARTA 0)様や、大手自動車メーカー様を中心とした製造業、小売 / ECといったリテール系の企業様などで、私たちの技術やアプリケーションが導入されています。
Q. 今後の展望についてお聞かせいただけますでしょうか。
本田さん: これからも、自社の強みである時系列解析とAIエージェントを組み合わせたアカデミックな技術の追求に特化し、論文になったり特許化されたりするような新しい技術を社会に実装して、他の会社や人が解けなかった課題を解決できる存在であり続けたいと考えています。
また、もう一つの柱として、OSS(オープンソースソフトウェア)への貢献にも力を入れていきます。時系列解析は、データの前処理や後処理など専門的な工程が多く、一般的に難しい分野とされています。そこで、私たちが社内で活用している便利な前処理ツールなどを積極的にOSSとして公開し、業界全体の技術レベルの底上げに貢献していきたいと考えています。
Q. 最後に、メッセージがあればお願いいたします。
本田さん: プロダクトとしては予測技術が中心ですが、私たちは時系列データの扱いに特化した専門家集団です。「時系列データを取り扱っているが、その難しさから思うような分析結果が出せていない」といった課題をお持ちの企業がいらっしゃいましたら、ぜひメロンにご連絡ください。個別の課題に合わせたアルゴリズムの開発からアプリケーションの構築まで、カスタムでご支援させていただきます。皆様からのご相談を心よりお待ちしております。