訪問看護の現場に月23.3時間の時間創出。データ×生成AIで在宅医療を支える「eWeLL」の社会課題解決

訪問看護の現場が抱える深刻な課題を「生成AI」が解決します。株式会社eWeLLが提供する訪問看護専用電子カルテ『iBow(アイボウ)』は、プロンプト不要で1ステーションあたり月平均23.3時間の業務時間創出(削減)につながったというユーザーアンケート結果も出ています。効率化で空いた時間を「より手厚いケア」へと還元し、在宅療養者のQOL(生活の質)を向上させる好循環の仕組みについて、同社の楠見さんに伺いました。

看護師不足という社会課題に、蓄積データと生成AIで挑む

Q. なぜ『iBow(アイボウ)』に生成AIを組み込もうと考えたのですか?

楠見さん: 弊社、株式会社eWeLLは、在宅医療領域、特に訪問看護事業に特化したDX支援を行っている会社です。その取り組みの背景には、日本が直面する大きな社会課題があります。ご存知の通り、日本の高齢化率は29.4%で世界トップ(2025年9月15日現在推計。出典:総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者(統計トピックスNo.146)」)で、今後も加速し、2070年まで上がり続けると予測されています。増え続ける高齢者や療養中の方々を誰が支えるのか、という問題は深刻です。在宅での療養を支える訪問看護を含む在宅医療の担い手不足は構造的な課題であり、限られた人材で必要なケアを支える仕組みづくりが重要だと捉えています。このギャップを埋め、少ない人材でも多くの在宅療養者をケアできるようにするためには、DXによる生産性の向上が社会的に非常に重要なポイントになると考えます。

その中で、昨今目覚ましい進化を遂げている生成AIは、これまで看護師や専門職の皆さまが多くの時間を充てていた書類作成などの間接業務の効率化に加え、作成者個人の経験値にかかわらず看護計画書や月次報告書の品質を一定水準以上に保ち、次のケア、すなわち看護の質を高めることにも貢献可能です。これをサービスとして具現化したいと考えたのが、開発の大きなきっかけです。

もう一つの重要なポイントが、弊社が2014年から提供し続けている訪問看護専用電子カルテ『iBow』の存在です。このサービスを通じて、全国の訪問看護の現場で行われたケアの記録は、膨大な医療データとして電子的に蓄積・管理してきました。その数は累計で9,400万件以上(2025年末時点)にのぼります。この蓄積されたデータを、生成AIと組み合わせて活用することで、これまでにない新たな価値を提供できると考えました。我々は貴重な医療データを蓄積するとともに、それをさらなる社会課題解決に役立てたい、その思いから『iBow』の開発・実装に至りました。

プロンプト不要でベテラン級の書類を自動生成。月23.3時間の時間創出を実現

Q. 『iBow AI訪問看護計画書・報告書』の概要と、開発の経緯を教えてください。

楠見さん: 訪問看護師をはじめとする専門職の皆さまは、在宅療養者への直接的なケア以外にも、非常に多くのバックオフィス業務を抱えています。訪問看護は医療保険と介護保険の両方を扱う複雑な制度下にあり、他の医療・介護職種と比較しても、特に複雑で量の多い書類作成業務が発生します。この負担をいかに効率化するかが、我々にとって一つの大きなテーマでした。

そこで開発したのが、今回ご紹介する『iBow AI訪問看護計画書・報告書』です。このサービスは、看護師が月に一度作成する「訪問看護計画書」と「月次報告書」という二つの重要な書類を、生成AIが自動で生成するものです。

このサービスの特長の一つは、現場での運用において専門的なプロンプト入力が一切不要である点です。電子カルテ『iBow』には、対象となる在宅療養者一人ひとりの詳細なデータはもちろん、類似の疾患を持つ他の在宅療養者の情報も豊富に蓄積されています。AIはこれらの潤沢なデータに基づいて、その方に最適な看護計画書や、これまで提供してきた看護記録を要約した月次報告書を、極めて高い精度でアウトプットします。

さらに、AIが生成した案は、最終的に医療の国家資格を持つ看護師が内容を確認し、必要に応じて修正した上で確定します。この看護師による確認・修正結果がさらにAIの学習データとして蓄積されていくため、使えば使うほどシステムの精度が向上していくという好循環が生まれます。これにより、ハルシネーション(AIが事実と異なる情報を生成してしまう現象)のような不確実性は低減され、例えば経験の浅い看護師さんでも、まるで熟練の方が作成したかのような個別性に即した質の高い看護計画を短時間で作れるようになります。結果として、計画の精度や網羅性が高まり、ケアの質を高めることにも寄与すると考えています。

また、弊社がリリース後に行ったアンケートでは、報告書の作成時間が1ステーションあたり平均で月23.3時間削減されたという集計結果も出ています。『iBow AI訪問看護計画書・報告書』は、2025年末の時点で、1,200カ所以上のステーションに導入いただいており、大変ご好評をいただいています。

サービス名 iBow AI訪問看護計画書・報告書
対象業務 訪問看護における「訪問看護計画書」「月次報告書」の作成
主な特長 ・プロンプト入力不要で書類を自動生成

・AI学習による有資格者の確認・修正を踏まえた継続的な品質向上

・経験にかかわらず、一定水準の書類作成を支援

導入効果 ・書類作成時間を1ステーションあたり月平均23.3時間削減

・創出された時間で、より手厚いケアや訪問増が可能に

・質の高い報告書による関係機関との連携強化、ステーションの信頼度向上

導入実績 全国の訪問看護ステーション1,200カ所以上で導入(2025年末時点)

「時間に余裕ができた」だけじゃない。要点のわかりやすい報告書がもたらすステーションの信頼向上

Q. 実際にサービスをリリースされて、現場からはどのような反響がありましたか?

楠見さん: 定量的な効果としては、先ほど申し上げた月23.3時間の削減に加え、現場からは「これまで、1件あたり平均約30分かかっていた書類作成が、チェックや修正を含めてもおよそ半分の時間でできるようになった」といったお声を数多くいただいています。

しかし、反響はそれだけではありません。生まれた時間を活用して、在宅療養者に対してできることが増えた、という喜びの声も多く寄せられています。例えば、忙しくて従来は十分に時間を割きづらかったけれど、少しできた時間を使って在宅療養者に贈るバースデーカードを作成している、といったお話も伺いました。看護師の皆さまは、強い想いを持って業務にあたっている方が非常に多いです。その「想い」を形にするための時間を、日々の慌ただしさの中で少しでも捻出できるようになり喜んでいただけていると感じています。

看護師不足は社会課題となっていますが、ケアの質を落とすことなく、DXによって時間を生み出し、むしろより手厚く、一人ひとりの在宅療養者に寄り添ったケアを実現する。これは、ケアを受ける側にとっても、心からサポートしたいと願う看護師側にとっても、非常に価値のある取り組みであると考えています。

Q. 生産性の向上以外に、どのような効果が生まれていますか?

楠見さん: 実は、生産性向上と同じくらい大きな効果として、関係者間の情報共有と合意形成がスムーズになるという点があります。例えば月次報告書は、一人の在宅療養者に対して複数人のスタッフが入れ替わりで訪問した記録を、誰か一人が月末にまとめる、というケースが少なくありません。その際、日々の業務に追われる中で、記憶に頼った振り返りは、内容に偏りが生まれやすいという課題がありました。しかしAIにはそういった偏りがほぼなく、1カ月を通じて本当に重要なポイントを客観的に要約してくれる点で非常に優秀です。

AIが生成する報告書の下書きは、簡潔で分かりやすく、読み手にとっても非常に理解しやすいものになります。これにより、看護師が記録を見返したり文章を考えたりする時間が短縮されるだけでなく、その報告書を受け取る主治医やケアマネジャーといった他の関係者に在宅療養者の状況が明快に伝わり、次のケアに有機的に繋がっていくという優れた側面があるのです。

また、報告書の自動生成では、読み手やシチュエーションに応じて「簡潔に記述」するか、「詳細に記述」するかを選択できる機能を備えており、現場のニーズに適した使いやすいUI・UXを追求しバージョンアップを重ねています。

実際に、小児訪問看護の現場では、AIが自動生成して看護師がチェックした報告書を学校関係者との打ち合わせに持参し、「この1カ月でこの子に何があったのかが一目で分かる」と高く評価されているという事例も聞いています。質の高い報告書は、その訪問看護ステーションがどのような方針でケアを行っているかを示すことにも繋がり、結果として周囲からの信頼を高めます。いわば関係機関との連携を深めるツールとして機能し、新たな在宅療養者の紹介に繋がるなど、ステーションの経営にも良い影響を与えているケースもあります。生産性を高めるだけでなく、アウトプットの質そのものが、さらに良い循環を生み出している好例といえます。

在宅医療のプラットフォーマーとして。データとAIで社会課題の解決を加速する

Q. 長年の研究開発を経てサービスを進化させてこられましたが、今後の展望についてお聞かせください。

楠見さん: 弊社は2017年から訪問看護領域でのAI活用を研究しており、2024年4月には業界でも比較的早い段階で本サービスを開始できました。今後も、蓄積し続けている訪問看護の慢性期医療データをフル活用し、社会課題を解決していきたいという強い思いがあります。データと非常に相性の良い生成AIをしっかりと活用し、これまで世の中になかった価値を提供してまいります。業界の課題に対し、テクノロジーの力で新たな手を講じることで、現場の皆さまがより働きやすくなり、在宅療養者のQOLをさらに向上させていきたいと考えています。

Q. 最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

楠見さん: 私たちは「在宅医療のプラットフォーマー」として、日々記録されている貴重な医療データを、社会をより良くしていくために活用し、適切な形で還元していくことは、我々の重要な使命だと考えています。社会に対する私たちの取り組みを、今後ますます加速させていきますので、ぜひご期待ください。

<ユーザーの声>

①文章生成ではなく「時間創出」:生成AIを活用する看護師の声(動画)

動画後半では、生成AIを活用した『iBow AI訪問看護計画書・報告書』について、実際のユーザーが「どの業務がどれだけ楽になり、何に時間を使えるようになったか」を具体的に話しています。

▼動画はこちら(約9分):
https://youtu.be/zHfpe3v4zeU

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②AI報告書で「看護の見える化」を促進。信頼構築のツールとして(動画)

動画後半では、『iBow AI訪問看護計画書・報告書』で下書きを自動生成した報告書を、月1回の関係者会議に持参して活用しているという具体的な運用が語られています。要点が整理されて関係者に伝わりやすくなり、地域連携の質が上がるという実感の声をご覧ください。

▼動画はこちら(約9分):
https://youtu.be/RCjFxs-yFcU

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