建設業界におけるDXを推進しようとしたものの、「社内の見積書やデータがバラバラで活用できない」「汎用的な生成AIを導入したが、専門用語に対応できず実務で使えない」。そんな課題に直面していませんか?
本記事で紹介するのは、株式会社ゴーレムによる、建設業界特有の散らばった情報を構造化し、AIを活用した独自のデータプラットフォームを構築し、CO2排出量の算定や見積価格の最適化などを実現するソリューションです。大手建設・不動産企業で活用されるなど、業界内で広く活用されています。
単に生成AIを提供するのではなく、建設特有のルールや文脈を理解させた「ファイルアクセスに近い形」でのAI活用を実現している点が最大の独自性です。さらに、導入後にはカスタマーサクセス部門が企業のDX推進担当者に成り代わり、現場への定着まで泥臭く伴走する手厚い支援体制が支持を集めています。
本記事では、同社の代表取締役の野村さんに、開発の背景にあった課題意識、他社ツールとの違い、そして導入企業を成功に導くためのリアルな支援体制について伺いました。

散らばった見積書などのデータを構造化し、専門用語を理解する生成AIを用いて、データプラットフォームの構築を実現
Q. まずは野村さんのこれまでのご経歴と、現在の会社を立ち上げられた背景について教えてください。
野村さん: キャリアの最初は、素材メーカーで、開発された新しい技術を海外の工場に導入し、現地でうまく稼働させるための業務に6〜7年ほど携わっていました。その後、技術系のコンサルタントやスタートアップでの事業立ち上げなど、一貫して技術畑を歩んできました。
昔から技術そのものが好きだったのですが、これまでの経験の中で「せっかくの技術が現場で使われない」という課題に直面することが多くありました。素晴らしい技術であっても、それが世の中に浸透し、人々の生活や業務を豊かに変えられなければ意味がありません。そこから次第に、技術そのものを開発すること以上に、「いかにして技術をビジネスに実装し、業務のやり方全体を変えるか」という領域に強く惹かれるようになり、現在の会社を立ち上げました。
Q. 現在展開されているプロダクトの全体像と、生成AIをどのように活用されているのか教えてください。
野村さん: 最終的な目標は、建設業界統一の巨大なデータベースを構築し、すべてのデータがつながる状態を作ることです。生成AIに限らず、AIというのはそれ単体を使い込んでもあまり意味がないと考えています。どんなAIを作るにせよ、まずは整ったデータベースがあり、それらを組み合わせることで初めて最適な結果を出せるからです。
建設業のデータは非常に複雑で、たとえば10階建ての一般的なオフィスビルでも、使われる材料のデータは3,000から5,000行に及びます。しかもそれらはエクセルやテキスト、PDFといった形で散らばっており、データベース化されていません。我々はそうした情報を整理・構造化してデータベースに変換します。これにより、過去の金額データと比較して今回の見積もりが高すぎる・安すぎるという判定ができたり、概算の段階で工事費用を予測したりすることが可能になります。
生成AIの活用については、建設業界の深い領域の業務をサポートする目的で実装しています。一般的な生成AIに建設関連の質問をしても、業界特有のルールを知らないため、それっぽいけれど間違った回答が返ってきます。しかし弊社のデータを使えば、申請書類の専門用語や文脈をある程度理解した上で、「ここが間違っているのではないか」「ここを検査してください」とサポートできます。また、上位の計画情報を入力するだけで、下流の業者に向けた指示書や計画書を自動生成するといった使い方もしています。
Q. 他社のAIソリューションやツールと比較した際、御社ならではの強みや開発におけるこだわりはどこにあるのでしょうか。
野村さん: ゼネコンさんやデベロッパーさんから実際のデータを集め、それを整理した状態で保有している点が最大の強みです。単純に情報をRAGに放り込むのではなく、ファイルアクセスに近い高い精度で生成AIにデータを渡すことができます。
開発のこだわりとしては、「本当に使えるものを作る」ということに尽きます。昨今は、ただ図面を読み込んで解析するだけのAIツールが増え、誰でも簡単にPoCができるようになりました。しかし、実際の業務では、少々のミスもあってはならず、実務に耐えうる精度の回答が返ってこなければ誰も使ってくれません。
ですから、我々は安易なツール提供には走りません。ITのプロでなければ構築できない巨大で精緻なデータベースを提供することや、現場の人たちが本当はやりたいけれど面倒で手をつけていない業務改善を泥臭くやり切ること。生成AIによってプロと素人が出せる成果の差が縮まっている今だからこそ、我々にしか提供できない本質的な価値にこだわって、各企業とじっくりと本当に使えるものを作り上げています。
CO2排出量算定システムを裏側で支える「データ整理」に特化
Q. 実際の導入事例として、企業が抱えていた課題と御社が提供した解決策について教えてください。
野村さん: 最も多い事例としては、建設時のCO2排出量を算定するソリューションの導入です。建設業界におけるCO2算定ツールとしては、先行サービスが存在します。しかし、建設業界のお客様からは「工事や材料といった細かい単位まで精緻に計算したい」という強いニーズがありました。
CO2を計算するプロセスにおいて、実は最も大変なのは計算そのものではなく、その手前にある「データの整理」です。建設用のデータはそのままではCO2算定に使えないため、集計し直したり数字を変換したりする膨大な作業が発生します。計算を行うフレームワークは存在しても、この一番大変なデータ整理を解決するソリューションが世の中にはありませんでした。
そこで我々は、「本当に大変なデータ整理の部分を我々が引き受けます」という立ち位置をとりました。実際の事例として、清水建設さんの「SCAT」や、竹中工務店さんの「Z-CARBO」といったCO2算定システムが活用されていますが、そのバックエンドには我々のソリューションが入っています。我々が散らばったデータを整理して算定可能な状態にし、最終的なアウトプットの形は各社が使いやすいソフトウェアを選んでいただく。これが現在の広がりにつながっている理由だと考えています。
DX推進部に成り代わり、マニュアル作成から現場の問い合わせまで伴走
Q. エンタープライズ向けの複雑なツールとなると、現場への定着が大きな壁になるかと思います。導入後はどのような支援を行っているのでしょうか。
野村さん: エンタープライズ向けの業務アプリケーションは、1回パッと作っただけでは「少し試したけれど結局何にもならなかったね」で終わってしまいます。そのため、弊社ではカスタマーサクセスの人員を社内で最も厚く配置しています。
導入後は、お客様の企業のDX推進部やIT推進部の方々に成り代わるレベルで伴走します。具体的には、我々のソリューションを使っていただいている間は月2回程度のミーティングを継続して行い、各拠点向けのマニュアル作成まで我々がやり切ります。
さらに、現場の担当者からの直接の質問や問い合わせにも我々が対応し、操作説明会なども実施しています。社内のIT担当者が全国の拠点からの問い合わせ対応に追われて疲弊してしまうと、プロジェクト自体が推進力を失ってしまいます。ツールは使い方がわからなければ絶対に定着しませんから、現場が迷わず使えるようになるまでの泥臭いサポートを徹底してやり切る体制を敷いています。
データに基づく建設の自動化と海外展開へのアシストで、日本の建設業を救う
Q. 今後の事業展開やプロダクトの展望について教えてください。
野村さん: まずは、何を買ってどういう契約で何を作るのかといった、建設プロセスの根幹をデータとソリューションで提供できる会社になりたいと考えています。データが蓄積されれば、「この建物を半分の工期で作るにはどうすべきか」「コストを半分にするにはどういう計画を立てるべきか」といった具体的な提案が可能になります。
また、建設業界では古くから自動化や工場化へのニーズが強いものの、現場ごとに毎回話し合って決める今のやり方では生産ライン化は不可能です。しかし、データとロジックが整えば、「こういう設計ならこう作るべきだ」というプレハブ化や自動化の道が開けます。
さらに、このデータドリブンな建設ノウハウは言語の壁を越えられます。日本の職人さん全員を海外に連れて行くことはできませんが、データに基づいた建設手法であれば翻訳して海外に展開できます。少子高齢化と人手不足に直面している日本の建設業において、抜本的な工数・コスト削減を実現し、海外事業展開のお手伝いをすることで、建設業界全体を支援していきたいと考えています。
Q. 最後に、読者へ向けてメッセージはありますか。
野村さん: 現在、我々は建設業界のメインプレイヤーのほぼ全社と一緒に仕事をさせていただいている状態です。AIエンジニアとしてもコンサルタントとしても、非常にダイナミックで面白い挑戦ができる環境が整っています。一緒に業界を変革していく仲間を随時募集していますので、興味を持っていただけた方はぜひご応募いただければ幸いです。