効果証明の壁を越え、開発工数30%削減を実現。全社一斉展開を成功させた推進の裏側

ゲスト

「作る」から「使う」へ方針転換し、全社規模のAI定着を実現した牽引者!

株式会社ラキール 基盤開発本部 執行役員 李さん

株式会社ラキールは、AIが自律的にシステムを開発・運用できる基盤を提供し、企業のDXを加速させるプラットフォーム企業。
以前からPoCを進めていたが、ChatGPT-3.5の登場を機にビジネスでの実用性を確信。2024年から製品と一般業務へのAI活用を本格化させ、全社一斉展開を成功させた。

この事例のポイント

  • AI導入初期における効果証明や責任所在の反発という課題を解決する方法:自社製品へAI機能をどんどん実装していく過程を見せることで、社員の意識を一気にAIへ向けさせた
  • 機密データやセキュリティの懸念という課題を解決する方法:情報セキュリティ委員会でツールと使用データの審査基準を明確にし、申請と承認のプロセスを確立
  • 日々の業務スピードと生産性を向上させる方法:全社配布の汎用AIと並行して、動画制作やプレゼン資料作成など各業務特性に合った特化型AIサービスを使い分ける環境を構築
  • 技術の陳腐化という課題を解決する方法:過去の自社開発の失敗から学び、AIのコア機能は作らず外部の優れたサービスを利用し実務への活用に特化するという方針へ転換

開発工数の30%削減を達成。マーケ・人事領域でも圧倒的なスピード向上を実感

Q. AI導入によって、定量・定性的にどのような効果や成果が得られましたか?

A. 開発エンジニアの工数を30%削減し、マーケティングの外注費削減や人事の問い合わせ対応を高速化

 李さん: 弊社は70%の社員が開発のエンジニアです。その多くのエンジニアにとって、普段の開発業務やシステムの運用保守に対するAI活用が一番比重が高くなっています。ここに関してはしっかりとプロジェクトを立ち上げて効果測定の数字を取っており、2025年の11月にPoCが終わった時点で、およそ30%の工数削減という明確な数値が確認できています。
開発部門以外のバックオフィスや他部署でも成果が出ています。例えばマーケティングコンテンツ制作の領域では、今まで外部に委託していた業務をAIに任せることで、外注費などのコスト削減に成功しているだけでなく、業務の精度自体も向上しています。また人事部門では、社内規程などを参照するRAG的な技術を活用することで、社員からの問い合わせに対するレスポンスが格段に速くなりました。部署ごとに使い方が多様なので一概に説明するのは難しいのですが、全体を通してどの部門も口を揃えて言っているのは「圧倒的にスピードが上がった」ということです。どの分野でも業務スピードが向上しているということは、それがそのまま全社の生産性向上に直結していると確信しています。

汎用AIと特化型AIを使い分ける環境をどのように構築したのか

Q. 現在、全社員で一気に足並みを揃えて導入をスタートされていますが、どのようなツールを使い分けているのでしょうか。

A. 全社配布の汎用AIに加え、動画制作やプレゼン資料作成などの特化型AIを業務ごとに使い分け

 李さん: 現在は用途に応じてツールを使い分けています。単純な文章生成や日々の分析業務など、大規模言語モデルとしての汎用的な使い方をする際は、全社に配布したAIを使ってもらっています。一方で、それ以外の業務特化型のAIもいくつか導入しています。動画の制作、プレゼンテーション資料の作成、あるいは特定のデータの分析など、それぞれの業務特性に合ったAIサービスを仕事ごとに使い分けるというのが現状です。
普及できた最大の理由としては、自社製品の中に実際にAIを活用した機能をどんどん実装していったことが挙げられます。自社製品にAIが組み込まれていく過程を目の当たりにしたことで、社員の意識が「一気に、パッと」AIに向けられたのです。それが全社展開への大きな推進力になりました。

効果証明とセキュリティの壁を、どのように乗り越えたのか

Q. 全社一斉での推進において、社内から反発の声やセキュリティへの懸念といった壁はありましたか。

A. 情報セキュリティ委員会でツールとデータの明確な審査基準を設け、申請と承認のプロセスを確立して不安を払拭

 李さん: 導入の初期段階では、AI活用の効果を証明するという点で非常に苦労しました。社内からは「定量的な数字を出せ」と求められたり、「もし問題が起きた時にその責任はどこへ行くのか」といった厳しい声が上がったりもしました。新しい技術であるがゆえに、こうした反発や懸念を払拭するのは本当に難しい壁でした。しかし、推進メンバーや各部署のキーマンたちが粘り強く活用を続けた結果、現在ではマーケティングから人事、総務に至るまで、AIを使っていない部署はないという状態にまで定着しています。

 機密データやセキュリティの懸念という壁については、弊社には以前から「情報セキュリティ委員会」という組織がありますが、そこでAI活用のための申請と承認のプロセスを明確に確立しました。この委員会では、ツールそのものだけでなく、AIに読み込ませて使用するデータについても審査を行っています。情報のやり取りの安全性に関する明確な審査基準を設け、それをクリアできれば現場に利用許可が下りるという仕組みを作ることで、セキュリティに対する不安を払拭しました。

今後の展望:コアな機能は自社で作らず、優れたAIを実務で使うことに徹する

Q. 過去の推進経験から得た教訓と、今後社内でAIを活用していく上での展望を教えてください。

 李さん: 私たちはかなり昔からAIの活用を検討してきたのですが、当時はAIで何ができるかが手探りの状態だったため、自社で色々なものを独自に開発していました。しかし、苦労して作っても半年もしないうちに新しい技術や外部サービスが次々と登場してきます。技術の進化スピードがそれほどまでに速いということを、身をもって経験してきたのです。
だからこそ、今ゼロから始めるのであれば、AI関連のコアな機能は自社では作らないと思います。自社開発へのこだわりを捨て、世の中にある優れたAIサービスを徹底的に利用し、それをどうビジネスの実務に活用するかという部分に重点的に力を入れていきます。この「作るのではなく使うことに徹する」という方針転換こそが、現在の全社活用の成功に繋がっているのだと思います。

 今後の展望としては、まるで優秀な秘書が常に隣についているような、高度な知性を持ったAIの活用へと進化していくのだろうと考えています。今後はそうした高いレベルでの業務アシスタントとしての定着を目指していきたいです。

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