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非エンジニア集団で約900個のユースケースを現場に定着させた!
株式会社武蔵野 AI事業部 山崎さん、菊池さん、二見さん、井口さん
株式会社武蔵野では、手入力業務をOCRで代替し年間30万円のコスト削減を実現したほか、1日かかっていた資料作成を1時間に短縮するなど、約900個もの独自のユースケースを現場に定着させている。非エンジニア集団である同社が、いかにして「AI社長」という画期的な突破口を見つけ、全社員がAIを使う組織へと変貌を遂げたのか。そのプロセスと成功の裏側を牽引するAI事業部のメンバー。

この事例のポイント
- 約900個のユースケースを生み出す方法: DX推進部署で小さく始め、うまくいった営業トークなどの正解データを地道に学習させて横展開した。
- 全社浸透の壁を突破する方法: 厳しいダメ出しを防ぐため、事前に壁打ちができる「AI社長」を作成し、「使わざるを得ない」かつ「役立つ」環境を作った。
- 顧客のAI定着を支援する方法: 経営者を週1回のサポート時間に参加させ、トップダウンと他社事例の共有によって半強制的に推進する仕組みを構築した。
- 非エンジニア集団の強み: エンジニア中心の企業とは逆の角度から、「技術」よりも業績向上に直結する「活用術」の提供にフォーカスしている。
1日の資料作成が1時間に短縮。現場から生まれた900のユースケース
Q. AI社長やその他のユースケースが広がるにつれ、どれくらいの定量的な成果が得られましたか?
A. 1日かかった資料作成が1時間になり、900の事例が誕生
菊池さん: 一番成果が出ているものであれば、資料作成に1日かかっていたものが1時間ほどでできるようになりました。また、生成AIのOCR機能を使うことで、手打ちで入力していたデータ業務が、抽出したものを貼り付けるだけで終わるようになり、年間30万円ほどのコスト削減をしている事例もあります。現状、現場に落とし込んで使っているユースケースは900近く存在します。30分ほどの業務が5分ほどに短縮したものも複数あり、全て合わせると多大な業務時間削減につながっていると感じています。
ゼロイチの思考時間を削減するためDX推進部署から小さく使い始め

Q. どのような背景で生成AIを業務に活用しようと決められたのでしょうか?
A. ゼロイチの思考時間を削減し対顧客の質を上げるため
菊池さん: 当初はピンポイントで「こういう活用をしよう」といった明確なイメージがあったわけではありません。しかし、生成AIは人がゼロからイチを考える時間を削減することによって業務改善を図れます。空いた時間をお客様へのクオリティを上げるための時間として使えると考えました。もともと弊社はコンサルティング事業を行っていたこともあり、そういった領域で生成AIが活用できるのではないかと考えたのが導入の背景です。
Q. 導入を決めた後、最初はどのような形で活用を開始されたのでしょうか?
A. DX推進部署で小さく始め成功事例を横展開
二見さん: まずは社内外問わずDX推進をしている部署がもともとありましたので、そこで使い始めました。文章に見出しをつけたり、内容を要約したりといったレベルから一部の部署で使い始め、そこで成功事例ができたら逐一横展開していくという流れで活用を進めていきました。
Q. 具体的に各部署ではどのようなデータをAIに学習させていったのでしょうか?
A. うまくいった営業トークを地道に集め正解データ化
二見さん: 実際にコンサルタントが作成したレポートや提案資料、現場でうまくいった営業トークなどを地道に集めていきました。そして、それを正解データとしてどのようにAIで使っていくかという取り組みを進めてきました。ツールとしては弊社はGoogle Workspaceを契約していますので、Geminiを活用しています。
社長のダメ出しを事前に防ぐ「AI社長」が浸透の最大の突破口に

Q. AI活用を全社に推進する上で、壁を感じた瞬間や大変だったことはありましたか?
A. 地道な呼びかけや各部署でのサポート体制の構築
二見さん: まったく触っていない人がいない状態にするまでは、本当に草の根活動のような苦労がありました。まずは代表である社長からの「これを使え、あれを使え」といった声掛けに助けられましたし、推進側からも社員が集まる会議の場などで「こういう風に使います」と発表するなど、地道に呼びかけを行っていったのが大変でした。その後、社内推進チームを発足し、営業部隊やコンサル部署、DUSKINの事業部署などそれぞれに推進担当を配置して、各部署での活用をサポートしていく体制にしました。勉強会なども開催しながら、徐々に解決していきました。
Q. プロジェクトが前進したきっかけや、浸透の突破口となったキーマンはいましたか?
A. 社長をAI化したシステムでの壁打ちが利用を促進
菊池さん: 今、弊社で一番使われているユースケースが、弊社の社長をAI化した「AI小山」というものです。もともと弊社の社長は書籍の出版や、定期的な社内での勉強会など発信の場がとても多く、それぞれのデータを保持していました。そのデータを裏側にまとめたものとして、AI事業部で「AI社長」を作成しました。その回答精度がとても高く、社員の資料の壁打ち相手として大いに活用されています。
うちではよく社長に対して資料の報告を行う機会があるのですが、ダメ出しをされることが多かったのです。そこで「事前に確認できないか」と考え、まずは聞きやすいAI社長の方に壁打ちを行い、しっかりと内容の裏が取れてから社長に報告するようになりました。その結果、ダメ出しが減ったという声が上がり、そこが社内への浸透が進んだ一つの突破口になり、今一番使われているユースケースになっています。
偶然の縁で開発した「MRAG」と経営者を巻き込む顧客支援の極意
Q. 社内で蓄積したナレッジをもとに「MRAG」というソリューションを提供されていますが、その開発背景を教えてください。
A. AIを学ぶ海外人材の採用と自社事例提供の強みが合致
井口さん: 弊社は経営コンサルティングを行っていますが、大手のファームとは異なり、自社で実際に行ったことで成果が出なかった事例もお客様に失敗させないようさらけ出し、成功した事例展開を落とし込んでいるのが特徴です。AI活用においても、技術よりも活用事例を販売し、お役に立つという方針で進めています。
開発のきっかけは非常に偶然でした。ある時期に外国人採用をしていた事業部トップがベトナムから採用した人材が、実はハノイ工科大学でAIの勉強をしていた人間だったのです。RAGというツールが非常に便利でこれに乗っていかないと置いていかれるとなった時に、そのメンバーが「私、開発できます」と手を挙げてくれたのが一番最初のきっかけです。そして開発を行い、自社でスモールスタートしてある程度ユースケースができたところで、お客様への提供を開始しました。
Q. お客様先ではどのような業務に活用され、どのような成果が出ていますか?
A. 営業の粗利益が6倍になり新人教育の期間が大幅短縮
二見さん: 最初は規定書やマニュアルの検索、報告書の作成といったスモールスタートからご案内しています。活用が進むと「自分の業務のこういったところが解決できるのではないか」というマインドになり、注文書から情報を読み取ってコピペだけで済むようになった事例などが出てきます。
特に多いのが、従業員やお客様対応のトレーニングとしての活用です。クレーム対応のロープレや営業のトレーニングなど、今まで人間が2人以上いないとできなかった練習が、AIを使えば24時間365日可能になります。その結果、オペレーションの質が上がり、営業の粗利益額が6倍以上に跳ね上がったお客様や、新人の方が現場で一人前になるまでの時間を3分の1以下にできた事例などがあります。
Q. お客様へツールを提供する際、定着させるための伴走支援で工夫されていることは何ですか?
A. 経営者のサポート参加と他社との交流で活用を後押し
菊池さん: MRAGをご契約いただいた際、最初の3ヶ月間は必ず推進役の方々と経営者の方々を交えてサポートさせていただく体制をとっています。社内浸透を成功させるには、弊社でうまくいった事例の通り、経営者のトップダウンと「使わざるを得ない仕組み」が必要です。そのため、経営者の方には週に一度のサポート時間に必ず参加していただき、推進役の「こういったことを生成AIで活用したい」という提案に対してチェックと決定を下していただいています。
それでも活用が進まないお客様には、次回までに簡単なものでもいいから作って発表していただくという、半強制的な外圧をかけて推進していただくこともあります。また、現在100社以上の企業に導入いただいていますが、3ヶ月から4ヶ月に一度、うまくいっている企業様に活用事例や進め方をご相談いただける機会を設けています。活用がうまくいっていないお客様をそこにご招待し、他社の事例を学んでいただくことで浸透のサポートをしています。
非エンジニア集団だからこそできる「技術より活用術」の提供を続ける
Q. 今後、社内での活用推進とお客様へのソリューション提供の2つの軸で、どのような展望を描いていますか?
A. 自社での成功事例を増やし、「技術より活用術」をお客様へ提供し続ける
菊池さん: 社内向けとしては、自社開発であるMRAGのアウトプットの形や外部ツールとの連携など、まだまだ発展途上の部分を開発側と強固に連携しブラッシュアップしていきます。社内で使って成功事例を集めることが、お客様へ発信できる部分を増やすことにつながります。お客様に対しては、RAGツールだけでなく、社長のAI作成代行やアバター動画作成代行など、日々刻々と変わる生成AIの最新情報をいち早くキャッチし、最適なタイミングでご提案することがコンサルティングとしての最優先事項だと考えています。
二見さん: 日進月歩で技術が進歩する中、業界のトレンドにアンテナを張り、どの場面で活用できるかをお客様にしっかりお伝えしていきます。いきなり何でもお伝えするのではなく、弊社が進めてきたように、まずは目の前の10分、15分の業務を削減するスモールスタートを提案します。その上で、伴走支援を通してお客様の業務改善のお役に立っていくことが一番のミッションです。
山崎さん: ユーザーからの要望をダイレクトに開発に伝え、アップデートに活かせるのが我々の強みです。また、日進月歩の情報をしっかりキャッチし、特に社長の小山に対して、どんな技術が出てきて我々にどう活用できそうかを伝え、意思決定に役立ててもらうことも大事なミッションです。これをしっかりやり続けていきたいと考えています。
井口さん: 我々のAI事業部にいるメンバーは、全員が元々弊社のフランチャイズ事業である清掃用品のリースレンタルの営業マンなどから入社した人間です。いまだに私の両親がそんな仕事をやっていると信じてくれないくらい、非エンジニアだけでほぼやっている事業体です。エンジニア中心の企業様とは真逆の角度から、中小企業のお客様に絞り、技術というよりも活用術をどれだけお伝えして業績向上に貢献できるかというところをやっていきたいと思っています。新しいツールが出てきても、それをどう活用して業績に落とし込めるかというサービスを展開していきます。
Q. 最後に、自社ツールや提供している支援について、他社との違いやはどこにありますか?
菊池さん: 生成AIを取り入れたものの、活用や浸透ができていない企業様がすごく多いのが現在の課題だと考えています。私たちは自社開発したツールの提供だけでなく、圧倒的なスピードで成果を出す仕組み自体をお客様に提供できる点が強みです。現状で100社以上のお客様にMRAGを使っていただいており、多種多様な業界での成功事例がございます。この成功事例をベースに、横展開可能なノウハウでお客様のサポートや浸透ができる点が、他のRAGツールと比べた差別化になると考えています。
二見さん: 他社様のツールと一部比較すると、細かい部分ですが回答にかかる時間が速かったり、一括でデータを多く入れられたりといった強みがあります。また、UIの改善や使いやすさについても自社開発しているため、お客様や我々から「ここはこうした方がいい」という意見が出た際、大手のツールと比べても身動きが取りやすく、迅速に改善できるところが他社と比較してより良い部分だと思っています。