ゲスト
小さな成功体験の積み重ねで社内のAI活用を文化として根付かせた立役者!
株式会社ダイサン デジタル経営戦略本部 本部長 小林さん、エキスパート 小倉さん
株式会社ダイサンは、足場施工サービス、足場・仮設資材の製商品販売及び海外事業をコア事業とし、新たな収益事業としてデジタル事業を開始、建設業における現場起点の課題解決と、インドネシアでの海外人材教育・育成事業を展開。現場のブルーカラー層を支え、日々の業務時間削減や効率化という切実な課題を解決するため、デジタル経営戦略本部が先陣を切って社内での生成AI活用を開始。一斉導入ではなく小さなPoC(概念実証)からスタートし、現在では全社的に時間効率を上げる気運が高まっている。
▼小林さん

▼小倉さん

この事例のポイント
- 14日かかっていたBIモック開発の期間を短縮する方法:要望を言語化してAIエージェントにコード作成を指示し、2日以内で完了させた。
- レビュー完了までの膨大なコミュニケーションコストを削減する方法:ミーティング中にAIへリアルタイムで要件を指示し、即座にコードを出力させて持ち帰りの反復を廃止した。
- 「本当に業務で役立つのか」という現場の不安を払拭する方法:「AIは人との掛け算である」と定義し、小さなPoCを重ねてプロンプトでの明確な指示と役割分担を社内に浸透させた。
- バックオフィス(管理部門)をフォワードオフィスへと転換する方法:ルーチンワークをセキュアなAIに任せ、人間は最終チェックと新規事業の企画立案に集中させた。
14日かかっていたBIツールのモック開発期間を2日以内へ削減

Q. 現場の社員の方が現在どのようなユースケースでAIを仕事に使われており、どのような定量的な成果が出ているのしょうか?
A. 要件を言語化してClaude Code等に作成を指示し、BIツールのモック開発を14日から2日以内へ短縮
小林さん: 最も大きな効果を感じているのは、開発における人月コストの削減です。従来は非常に大きなコストと手間がかかっていた部分ですが、AIを用いて開発する手法を取り入れたことで、大幅な簡素化が実現できました。
小倉さん: 開発現場の肌感としては、実際に自分でコードを書く時間がほとんどなくなった状態です。AIから出力されたコードに問題がなければ、すぐに次の工程へ進める形へシフトしています。具体的な定量効果の例として、BIツールの画面開発が挙げられます。以前であれば、画面のデザインを作成し、そこからHTMLなどのコードを記述してモックが出来上がるまでに約14日間かかっていました。しかし現在は、「どのようなものを作りたいか」という要件を最初に言語化し、そのイメージをもとにAIにコードを書いてもらうようにしました。これにより、およそ2日以内でモックが完成するようになり、期間を約7分の1まで削減できています。
Q. AIを使う前と現在とで、モックが完成するまでの工程においてどのようなコミュニケーションの変化があったのでしょうか?
A. AIエージェントにミーティング中の要望をリアルタイムで指示し、即日でHTMLコード等を出力してレビューを完了させるようにフローを変更
小倉さん: 以前の工程では、要望をヒアリングして一旦持ち帰り、作成してから再度ミーティングを実施してレビューに入るという繰り返しでした。この方法ではコミュニケーションコストが非常に大きく、変更をすぐに反映できないという壁がありました。現在は、最初のベースとなるものをAIですぐに作成し、その場で見てもらいます。そして、具体的な話をしている間に新たに出てきた要望を、リアルタイムでそのままAIエージェントに指示して反映させています。結果として、レビューが完了するまでのサイクルが劇的に速くなりました。
小林さん: モデルが進化するにつれてパフォーマンスが飛躍的に向上し、現在ではAIエージェントを単なるツールではなく、相棒のように位置づけています。日々のタスクをこなす中で意識しているのは、単一の生成AIに依存しないことです。ジョブの特性に合わせて最適な生成AIを柔軟に使い分けることで、我々の活用の柔軟性を高めています。
導入時の懸念を払拭し、人や組織ではどのようにAI活用を推進をしたのか?

Q. 導入初期の「うまく使えるのか」といった懸念の声に対して、どのように調整を行い、AI活用を推進してきたのでしょうか?
A. 現場の不安という壁に対し、丸投げを禁止してプロンプトでの明確な指示を規定し、小さなPoCを重ねて成功体験を積んだ
小林さん: 導入当初は、AIに対して「本当に自分たちの業務で役に立つのか」という未知数な部分もあり、懸念の声が上がっていました。そのため、最初から全社一斉にツールを導入して推奨するのではなく、小さなPoCからスタートしました。我々は業務の全てをAIに委ねるのではなく、「AIは人との掛け算である」という考え方を大切にしています。生成AIは便利ですが、全てを丸投げして人間の関与がゼロになれば、時間効率は確かにあがりますが、それだけでは新たな価値を生み出したとは言えず、ゼロのままです。そこで、削減した時間の中でどのような価値を提供するかという考え方を徹底的に落とし込みました。そして同様に、AIに明確な指示を出し人間がコントロールするという、人とAIの役割分担をPoCの中でしっかりと育みました。実際に業務時間を短縮でき、新たな価値を創出したという小さな成功体験を少しずつ積み上げることで、「生成AIは我々の業務で実際に使えるツールだ」という認識が社内の文化として確固たるものになりました。
今後の展望:バックオフィスをフォワードオフィス化し、新しい企画を生み出すことに集中する
Q. 直近1〜2年のスパンで着手すべき課題や、今後の展望についてお聞かせいただけますでしょうか?
小林さん: 今後の大きな方針として、いわゆる「バックオフィス」という言葉をやめ、「フォワードオフィス」という概念を打ち出しています。バックオフィス部門は直接売上を立てないと思われがちですが、ここにこそ生成AIの価値を最大化させる最大のポイントがあります。以前はRPAやマクロでしかできなかった管理業務の視覚化や自動化も、今ではプロンプトを書いておくだけでAIエージェントが自動実行してくれます。
例えば、人事領域の給与計算といったルーチンワークは、セキュリティがしっかりと担保された閉じられた環境の生成AIに任せ、人間は最終的なチェックを責任を持って行うだけでよいのです。AIを活用してルーチンワークをなくすことで、ブルーカラーの現場を支えるための膨大なコミュニケーションコストを削減し、自分のジョブに埋もれてしまっている社員のアイデアを引き出します。今後は優秀な秘書のようなAIで生産性を上げ、新しい企画や事業を生み出す起点となる攻めの考え方を浸透させていきます。
また、我々は建設業をコア事業とする新規事業部門として「現場起点の課題をデジタルの力で解決する」サービスを展開しています。AIの活用が進まない、安全対策にデジタルを使った打ち手が欲しいといった他企業様のお困りごとに対しても、現場目線で伴走支援を提供していく所存です。