現場にAIツールを導入したいが、従業員のITリテラシーに不安があり、定着せずに終わってしまうのではないか——そんな悩みを抱えていませんか?
STAR株式会社が運営するAI学習コミュニティ「AIパレットLab」は、提供開始から会員数500名を突破。並行して展開する企業向けAI研修事業では、介護・福祉業界を中心に約30事業所・100名に対する導入実績を上げています。
同事業の最大の特徴は「デジタルが苦手な層」に徹底的に寄り添う支援体制です。AI以前のパソコンの基本操作から入ることも厭わない丁寧な研修と、2ヶ月にわたる伴走支援により、アナログ文化が根強い現場でも確実にAIを業務に定着させています。本記事では、サービス立ち上げの背景にあった課題意識から、他社との決定的な違い、現場にAIを定着させる具体的なステップまで、同事業を牽引する北澤さんにお話を伺いました。

「AI格差」への危機感から生まれた、初心者のための学習コミュニティ
Q. まず、「AIパレットLab」を立ち上げることになった背景や、その理由についてお聞かせください。
北澤さん: 初心者の方がまずは安心して学べる場を提供していこうというコンセプトの下で生まれたのが、この「AIパレットLab」です。世の中でAIを学んでいる人と学んでいない人の間で格差が広がっていると感じていたため、その「AI格差」を起点にこのコミュニティを立ち上げました。
Q. 会員の方も続々と増えているとのことですが、現在どのような方が多く参加されているのでしょうか?
北澤さん: 40代以上の方が一番多いです。ボリュームゾーンとしては40代から60代までの方々ですね。意外と20代や30代の若い方は少なく、業種に偏りもなく非常に幅広い方々にご参加いただいています。
Q. コミュニティ内には様々なコンテンツがあると思いますが、参加者の方々はどの領域の情報を求めていることが多いですか?
北澤さん: 全体的に満遍なく見られてはいますが、やはり事務業務に関連するページが一番多く見られやすい傾向にあります。
Q. 具体的にはどのようなコンテンツを発信されているのでしょうか?
北澤さん: マニュアル作成の方法や、GASの基礎などですね。また、アンバサダーと呼ばれるインフルエンサーの方々に協力いただき、コラボセミナーなども開催してきました。コラボセミナーの期間が一旦落ち着いた現在は、私の方でNotebookLMのことや、Geminiを活用したスプレッドシートの活用法などを発信しています。現在のAI界隈ではClaudeやAIエージェントなどが非常に盛んですが、ChatGPTやGeminiといった基礎的なAIを十分に使いこなせていないオフィスワーカーの方々のほうが圧倒的に多いと感じており、AIを仕事で使い始める人の裾野を広げたいと思っています。そのため、基本的にはそうした基礎的な内容に絞って発信しています。
アナログ文化が根強い介護業界こそ、AI導入の伸びしろがある
Q. コミュニティ運営と並行して企業向けの研修支援もされていますが、特に介護業界で導入や活用が進んでいる背景について教えてください。
北澤さん: 当初は様々な職種に合わせてAI研修を提供するというコンセプトで始まり、営業職なら営業職向けといった形で進めていました。その中で、たまたま親しくさせていただいている経営者の方で、規模の大きな介護事業を展開されているクライアントからご依頼をいただいたのがきっかけです。そこから介護業界における知見が蓄積され、会社としても介護分野に力を入れていく方針になりました。
福祉や介護全般はDXが遅れており、アナログ文化が根強い業界です。逆に言えば、そこに大きな伸びしろがあると考えています。ただ、デジタルに対して苦手意識を持っている方が多いのも事実です。研修を実施する際も、AIの話の前に、パソコンの操作方法から入らせていただくことも珍しくありません。しかし、そうしたITリテラシーがそれほど高くない方々に対しても、丁寧な研修を提供し、実際に使っていただける仕組みを作れることこそが、私たちの強みだと思っています。
パソコンの基本操作から始める、現場目線のAI定着ステップ
Q. 介護現場などでは、全員が自分用のパソコンを持っているわけではない環境も多いと思います。そうした現場で、どのようにAIを日常業務に組み込み、定着させているのでしょうか?
北澤さん: 私たちの研修は約2ヶ月間かけて実施し、その後さらに2ヶ月間を伴走期間として定着のお手伝いをしています。
パソコンの台数が限られている環境では、まずパソコンを触る頻度が高い方を中心に研修を受けていただきます。そして、自身の作業をしている間にAIを開いて触ってもらえるような環境を整えるところから始めます。まずは「AIに慣れる」というフェーズですね。最初はとにかく触り続けて、習慣にしていただくしかありません。そのため、こちらから課題を出して継続的に提出していただくようなフローを作り、習慣化に向けた工夫をしています。そこから段階的に業務の中に取り入れていき、最終的には手放せない状態にしていくことを心がけています。
Q. 日常の業務フローを変えることに対し、現場の負担や抵抗感もあるかと思います。現場の方々をどのように巻き込みながら推進されているのでしょうか?
北澤さん: まずは始めやすいところから、取り組みやすいタスクからAI化していくことが重要です。業務フローを大きく変えるのではなく、既存の業務フローの中にAIを組み込む提案を心がけています。「今まで手作業でやっていた部分を、少しAIに置き換えてみましょう」という形ですね。
導入にあたって手間がかからず、優先的に取り組めて効果を実感しやすい業務を選んでいただきます。そこで効果を実感してもらい、そこから徐々に広げていくというイメージで進めています。
2ヶ月の研修と2ヶ月の伴走で、定量的な成果にコミットする
Q. AI研修を提供する事業者が増えている中で、御社のサービスが選ばれる理由や、他社との決定的な違いはどこにあるとお考えですか?
北澤さん: 大きく3つの強みがあると考えています。
1点目は、介護や福祉業界のようなデジタルが苦手な方々に対する導入実績と定着ノウハウです。ただ教えるだけでは定着しません。そこをやり切るためのノウハウは他社よりもあると自負しています。
2点目は、手厚い伴走支援です。研修をして終わりではなく、その後2ヶ月間伴走してしっかりと定着させ、最終的にどれだけの効果が出たのかというインパクトを定量的に可視化しています。「結果を出す」ことにコミットしたプログラムを組んでいるのが特徴です。
3点目は、コミュニティを基盤にしている点です。私たち自身が「AIパレットLab」という500名規模のコミュニティを運営し、継続的に情報提供を行っているため、そのブランドとしての安心感や信頼感も選ばれる理由の一つになっていると思います。
AI学習のハブとなり、自ら「日本一生産性の高い介護事業所」を創る
Q. 最後に、今後の展望についてお聞かせください。まず、「AIパレットLab」としては今後どのような展開を考えていますか?
北澤さん: 3年後を目処に、規模や提供するコンテンツの質において、日本一と言えるようなコミュニティにしていきたいと考えています。私たちが、これからAIを学び始める人たちの「ハブ」や「プラットフォーム」のような存在になれたらと思っています。「AIを学び始めるなら、まずはAIパレットLabから」と言われるような場所ですね。
世の中には素晴らしいコミュニティがたくさんあるので、「ここを深く学ぶならこういうコミュニティがあるよ」と他のコミュニティをどんどん紹介し、連携していくことで、私たち以外のAIコミュニティの活性化にも繋げていきたいです。AI界隈の入り口としての役割を果たしながら、規模もしっかりと追いかけていきます。
Q. もう一つの柱であるAI研修事業については、どのような未来を描いていますか?
北澤さん: やはり介護・福祉業界に力を入れ、この分野におけるAI導入のリーディングカンパニーを目指していきます。
来年末に向けて一気に規模を広げ、2年後の段階では確固たる実績を積んだ上で、将来的には介護事業所のM&Aなども視野に入れています。最終的には、私たち自身が「日本一生産性の高い介護事業所」を実際に運営する計画も持っています。そうすることで、介護・福祉業界のお手本となるような働き方や仕事の進め方を提示できる事業へと成長させていきたいと考えています。