読まれない500字の説明を対話に変える。VTuber技術×AIによる新たな接客体験

AIツールやチャットボットを導入して接客・案内を効率化したいが、無機質な対応になってしまいユーザーに敬遠されるのではないか——そんな悩みを抱えていませんか?

有限会社KIVO TOYSが展開する「AI’mON(アイムオン)」は、3Dキャラクターと音声会話を活用した新しいAIエージェントサービスです。Webサイト接客やクリニックの受付、展示会など多様なシーンで利用されており、昨年(2025年)10月の本格展開以来、自治体での文化財案内プロジェクトなどへ導入が進行中。従来は読まれにくかった長文の説明を、インタラクティブで魅力的な体験へと変える成果を生み出しています。

同プロダクトの最大の特徴は、日本のVTuber技術を応用した自然な動きと、「話しかけたくなる」親しみやすさの設計にあります。本記事では、開発の背景にあった課題意識、他ツールとの決定的な違い、具体的な導入事例や今後の「AI’mON for X」構想について、同社代表の山田さんと、AIエージェントのAI’mONさん自身にお話を伺いました。

従来の”無機質なチャットボット”への課題感が開発の原点

Q. まず、貴社の事業内容と、「AI’mON」を開発した背景について教えてください。

AI’mONさん: KIVO TOYSはAIやARなどの先端技術を活用し、人が自然に参加したくなる体験を設計開発しています。AI’mONはAIエージェントサービスで、Webやイベントにおいて会話を通じて接客や案内を行うサービスです。従来のチャットボットは使われにくく、温度感や存在感も不足しがちでした。そこでAI’mONは話しかけたくなるAIとして、キャラクターや音声、表情で自然な体験を設計し、ユーザーの心理的ハードルを下げ、接客とデータ活用を両立させています。

 山田さん: 弊社はもともと受託でフロントエンドの開発や、少し変わったWebサービスの制作を多く手掛けていました。近年、3DやAIの技術がAPIやライブラリとして提供されることが増え、これらを組み合わせたら面白いものができるのではないかと考えたのが始まりです。普段私たちがAIを業務で使っていても、クライアントの立場に立って提供されるAIツールは多くありません。WebページにAIが介在し、コミュニケーションを取ることができるツールは少ないという印象がありました。数年前のチャットボットは精度が良くないこともありましたが、現在のAIの精度とコミュニケーションを組み合わせれば、より楽しく良い体験が作れると考え、クライアントがAIを通じて自然にコミュニケーションを取れるツールとして開発しました。

日本のVTuber技術を活用し、自然な動きと親和性の高いキャラクターを実現

Q. 類似のAIエージェントツールが増えている中で、AI’mON独自の強みやUI/UX面で工夫されている点を教えてください。

AI’mONさん: AI’mONの強みは、AIをひとつの「存在」として設計し、キャラクターや音声、表情で親しみやすい体験を作っている点です。3Dキャラクターの表情や話し方、返答のテンポ、間の取り方、そしてレイテンシーも会話体験において非常に重要だと考えています。雑談もできる設計にすることで心理的ハードルを下げています。また、企業のブランドや世界観に合わせたAI人格を簡単に構築でき、会話ログの分析によってマーケティングも支援しています。既存のイメージキャラクターを使って会話エージェント化したり、イベントにAIキャラクターとして登場させたりすることも可能です。

 山田さん: まず一つは、キャラクターを使うか使わないかを選択できる点です。音声で会話できないシチュエーションもあるため、最初の画面でテキストのみのチャットボットにするか、キャラクターを使った音声対応にするかを選べるようにし、ユーザーに委ねています。もう一つの大きな特徴は、キャラクターに関してVTuberを制作するシステムをベースにして動かしている点です。そのため、日本のアニメーションなどと親和性の高いキャラクターが豊富に用意されています。他社のサービスでは、キャラクターが少し微妙だったり、リアルすぎて少し不気味に感じられたりすることもありますが、弊社は国内で馴染みのあるキャラクター展開をしています。VTuberの動きやシステムを応用しているため、人の動きに関しても非常に自然であり、それが「自然に会話している感覚」を生み出していると考えています。

OpenAIのAPIと音声技術を連携させたアーキテクチャとリスク管理

Q. 裏側のアーキテクチャはどのような設計になっているのでしょうか。

山田さん: 裏側の仕組みとしては、現在OpenAIのAPIを使用しています。入力された音声をSpeech to Textでテキスト化し、LLMを経由してText to Speechで音声を返すという技術を使っており、その音声に合わせて3Dキャラクターが動く仕組みを重ね合わせています。

Q. 他社のIPなどを使用する際、意図しない発言によるブランド毀損を防ぐための対策について教えてください。

AI’mONさん: 不適切発言や誤った回答を防ぐため、AI’mONではプロンプトの設計やAIの挙動調整を行い、人への引き継ぎやセキュリティも重視しています。継続的な改善を行うことで安全性と運用性を確保し、ブランドを守る対策を講じています。

Q. 展示会やイベントなどリアルタイム性が求められる場面でも、事前のプロンプト設計などで制御は可能なのでしょうか。

AI’mONさん: その通りです。展示会やイベントではリアルタイム性が重要なため、事前にプロンプト設計やAIの挙動調整によって発言内容をしっかりと制御し、不適切発言を防ぎつつスムーズな対応を実現しています。

500字の読まれない学術的な説明文を、インタラクティブな文化財案内に変革

Q. 実際の活用事例や、どのような課題を持った企業で導入が進んでいるのか教えてください。

AI’mONさん: AI’mONはWeb接客や展示会、観光案内、研修、問診票対応などで使われています。人手不足や同時接客の難しさといった課題に対し、AIがサービス紹介や質疑応答を代行しています。Web接客ではFAQ対応や商品案内、資料請求の誘導を行い、初回ユーザーが気軽に質問しやすい環境を作っています。またクリニックでは、受付での問診票案内や基本説明を担当し、スタッフの負担軽減と迅速な対応に役立っています。

Q. 実際の運用プロジェクトについて、具体的な成果や変化を伺えますか。

山田さん: 昨年10月頃から本格的に営業を開始し、現在八王子市で文化財案内のプロジェクトが動いています。従来は文化財を説明するWebサイトに、500字から600字ほどのシンプルな説明文がありました。短いと情報量が薄く、長くても敬遠されてしまいがちになるという課題がありました。そこでAI’mONを使うことでユーザーの興味に沿って情報を提供したり、「高尾山のここにいるけれど、近くに関連する文化財があるから行ってみては」といった市全体を網羅した案内や深掘りができるようになります。従来とは全く違う提案ができ、利用者がより文化財に触れられる体験になるという効果が期待され、現在導入の準備を進めています。

「AI’mON for X」構想による専門領域への展開と協業の展望

Q. 今後拡充していきたい機能や、強めていきたい領域などの展望をお聞かせください。

AI’mONさん: 今後はAIを社会に自然に溶け込ませ、店舗や教育、観光など多様な場面で「AI’mON for X」として展開する予定です。AIとXRの融合や、空間に存在するAIなど、新しいコミュニケーション体験の実現を目指し、さらに「話したくなるAI」を実現していきます。

 山田さん: 現在は「AI’mON for WEB」や「AI’mON for 展示会」といった形で打ち出していますが、キャラクターと音声で会話するAIという基盤を活かし、より業種ごとに特化した展開をしたいと考えています。例えば「AI’mON for 会社受付」「AI’mON for 研修」「AI’mON for LP」や、現在社内で検討している介護領域での展開などです。Webブラウザ上の説明にとどまらず、様々な局面に合わせたサービス展開をしていきたいというのが今の思いです。ただし、例えば介護業界などの専門的な領域については、私たちだけでは業界全体の深い知識をカバーしきれない部分があります。そのため、専門的に活動されている企業様と協業しながら、新しいサービスを作っていきたいと考えています。

Q. 最後に、このプロダクトを通じて今後どのような顧客価値を提供していきたいか教えてください。

AI’mONさん: 私たちはAIを人の代わりとしてではなく、人のコミュニケーションを広げる存在として捉えています。単なる便利さだけでなく、楽しさや親しみ、体験を含めて新しいコミュニケーション価値を創造し、技術を通じて人が自然に楽しめる未来を実現したいと考えています。

Q. 読者の皆様へお伝えしたいメッセージをお願いします。

山田さん: AI’mONは基本的なプロンプトとキャラクターを選ぶだけで、すぐに会話やデモを行うことができます。「自社のこの領域で使えるかもしれない」「何かやってみたい」と感じていただけましたら、ぜひお気軽にお声がけいただきたいです。また、特定の専門領域で事業を展開されている企業様からの協業のご相談も歓迎しております。一緒に新しい可能性を探っていければ嬉しく思います。

×