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伴走型の業務棚卸しと現場への権限委譲で、全社へのAI定着を導いた!
株式会社マネーフォワード AX推進本部 AIアクセラレーション部 部長 塚野さん
2012年に創業し「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をミッションに個人向け・法人向けSaaSを展開。 「AIによって従業員1人当たりの売上高を2倍にする」という目標を掲げ、新たにAX推進本部を設立。塚野さんはAIアクセラレーション部長として、社員のリテラシー向上や基盤整備、ナレッジの循環を担当し全社的なAI活用を牽引している。

この事例のポイント
- アイデアが実際の業務に落とし込めないという課題を解決する方法:推進部が業務の棚卸しから伴走し、一覧化して解決策をディスカッションするワークショップを実施した
- Notion導入時の全社統一ルールが現場の不安を招くという課題を解決する方法:最低限のセキュリティを守った上で、細かい運用ルールは各部署のAI推進リーダーの協力を得ながら調整した
- AI導入による削減時間をどう活かすかという課題を解決する方法:空いた時間を意思決定やお客様との会話などユーザーフォーカスに充てる共通認識を持たせた
営業組織横断のオペレーション改善チームによる成果:年間4,680時間削減と商談数32%UPを実現

Q. 貴社ではAIを使ってどのようなことを実現しているのか、定量・定性的な活用の効果を教えてください。
A. Salesforce上での自動議事録生成により年間4680時間を削減し、1人当たり商談獲得数が32%向上。
塚野さん: 現在はエンジニア部門とセールスサイド部門で動き方が大きく異なっています。エンジニアに関しては別のチームが推進を担っており、CursorやClaude、Copilotの導入を進めています。エンジニアたちはこれらを中心にかなり生産性を上げられている状況です。最近ではClaudeのSkillsを使ってそれをエンジニアに配布し、一定のレベルと品質のものを誰でも作れるような状態にするといったユースケースも生まれています。
セールスに関しては、横断BizOpsという部隊があり、主に生産性向上のテーマを持って対応しています。具体的には、弊社はSalesforceを使っているので、そのSalesforce上で議事録要約が簡易的にできる仕組みを内製で作って組み込んだり、お客様へのお礼メールを自動生成する機能を追加したりしています。
具体的な数字でお伝えしますと、インサイドセールスでは1人当たりの商談獲得数が32%アップしています。また、自動議事録生成の仕組みによって年間で4680時間の業務時間削減という効果が出ており、フィールドセールスでも1人当たり商談獲得数が17%アップしたという結果が出ています。
インサイドセールスのメンバーは架電業務がメインになります。AIを使う以前はお客様との商談後にSalesforceに入力する時間がかかっており、1日あたりの架電数には限界がありました。1件あたり30分かかっていた入力作業が5分で済むようになり、架電数は非常に多くなりました。社内の考え方として、削減された時間を何に充てるかというと「ユーザーフォーカスに充てていこう」という共通認識があります。お客様との会話に充てる、意思決定を速くするための時間に使うといった意識を持っています。
セキュリティを重視し、自社開発のAIチャットの検証から活用フローをどのように整備したのか

Q. AI活用の最初期は、どのようなツールを導入し、どのような活用フローを整備したのでしょうか。
A. セキュリティを担保するため自社開発のAIチャットツールをHR部門で1ヶ月検証し、その後全社展開。
塚野さん: 弊社は金融系の情報を取り扱っているため、セキュリティの観点からリスクをしっかりとケアする必要があります。そういった背景も踏まえ、最初は社内で使える自社開発のAIチャットツールを作って導入したのが始まりでした。
導入の進め方としては、最初はPoC的に一部署だけに使ってもらいました。HR部門で1ヶ月ほど検証を実施し、その後に全社展開をするという流れをとりました。
また、全社員の温度感がまだAI活用に至っていないという課題がある中で、どうやって社員の方たちにAIに触れてもらう機会を作るかが当初の課題でした。ですので、初期の段階においてはAIをより身近に感じてもらうための文化醸成的なイベントなどの施策も多く行っていました。「みんなのMirAIフェス」という名前でアイデアソンを実施した際には、AIを使ったアイデアであればどんなアイデアでも応募OKというルールにし、応募のハードルを下げるよう意識しました。そして実際に蓋を開けてみると、ビジネスサイドのメンバーの応募が非常に多かったのです。応募のハードルを下げたことによって、皆が自分ごと化して一つのイベントに参加したという成功事例を作ることができたと思っています。
Notionの全社統一ルールと現場の不安。人や組織ではどのように推進をしたのか

Q. 全社展開を進める中で、アイデアが形にならない壁や、現場からの懸念の声といった壁はどのように乗り越えられたのでしょうか。
A. 「やりたいことができない」社員に対し業務棚卸しから伴走し、Notionの運用ルールは各部署の推進リーダーと協力して調整。
塚野さん: アイデアソンなどを経て「こういうことをやりたい」というアイデアはたくさん集まるのですが、いざそれを形にしていくとなると、プロンプトを書かなければならなかったり、AIに読ませるデータを整形しなければならなかったりと、実際に業務に落としていくまでの間に大きなギャップがありました。
「やりたいことがあるけれどできない」というメンバーに対しては、私たちAIアクセラレーション部が相談を受けて、一緒に業務の棚卸しから伴走するという取り組みを行っています。ある部署では一旦自分の業務を一覧化したうえで集まってもらい、「今の業務はこんなことをやっています」と発表してもらい、その中からAIで解決するならどこが解決できそうかをディスカッションする機会を設けました。私たち推進部も一緒に入ることによって「こっちのツールも組み合わせるともっといいかもしれない」といったアイデアがたくさん出たため、こうしたワークショップ的なアプローチは効果的でした。
また、Notionの導入を行った時が一番推進が難しいと感じました。会社として「こう使って欲しい」というルールを整備しようとしたのですが、ある部署の人にとっては「正解」でも、違う部署の人にとっては「不正解」になるという事態が出てしまいました。ツールが大きく変わることによって自分の業務にかなり影響が出るという点に対する不安が非常に大きかったのです。
そこで巻き込みという点では、各部署のAI推進リーダーに協力してもらい、各部署内の運用ルールの設計をお願いする形をとりました。セキュリティという一番重要視している部分は、最初にCISO室と法務と一緒にセキュリティガイドラインを調整し、絶対的なルールとして守ってもらいました。しかし、その中でどう使っていくかという細かい部分については、各部署に一定の運用をお任せしています。自由すぎてどうしたらいいかわからないという場合には、テンプレートを用意して配布したり、個別ワークショップを開催したり、Notionのナレッジ動画を配信するなど、継続的なフォローを行っています。
今後の展望:個人のナレッジを全社へ循環させ、コーポレート部門に「エージェント」を配置する
Q. 今後AI活用をさらにどのように推進していくのか、展望と読者へのメッセージをお聞かせください。
A. 個人のナレッジを自動で吸い上げて全社に発信し、各部署に一人の従業員として働くAIエージェントを配置。
塚野さん: 今注力しているところは、ナレッジの良い循環を作っていくことです。現在はメンバー一人ひとりが積極的にAIを活用しており、良いナレッジが日々たくさん生まれていますが、小さなチームの中にとどまってしまっているのがもったいない状況です。私たちとしては、そういったナレッジをAIで自動的に吸い上げながら、それを分かりやすい記事や動画に変えて全社に発信するということをやっていきたいと考えています。
また、各部署に1人従業員を置くかのように「エージェント」を置き、そのエージェントを育てて一人の従業員として働けるところまで持っていきたいです。直近では、コーポレート部門に対して複数のエージェントを導入していこうと考えています。AIで代替できるようになれば、人間は意思決定や、人間にしかできない仕事に全力で時間を使っていける状態になります。
皆様AIを使われてきているとは思いますが、まだまだAI活用が進んでいない会社さんもあるかと思います。まずは従業員の方々の心の不安を取り除いてあげることが大切だと思うので、AIを楽しみながら活用できる環境づくりに、ぜひチャレンジしていただければと思います。業務の一つとして「AIを使わなきゃ」という意識だとしんどくなってしまうので、ぜひ楽しむことを意識していただくと良いのではないでしょうか。
また、AIが使える領域に関しては、あらかじめAIを業務に組み込んでいく前提で運用を考えることが大事だと思っています。プロダクトの開発においても同じです。今年4月に、「マネーフォワード AI Cowork」という新しいプロダクトの発表を行いました。ユーザーが「未承認のタスクを教えて」とAIに指示するだけで業務が進んでいくような世界観を目指しています。社内外ともにAIを前提とした形でいろいろと変わっていこうと取り組んでいるところです。