ChatGPTやCopilotを導入したものの、「操作やプロンプト作成に時間がかかり、かえって現場の業務が溜まってしまう」と悩んでいませんか?
株式会社B-Steepは、非エンジニアの社員自らがAIシステムを構築する「AI市民開発組織」の構築コンサルティングを提供しています。同社の支援により、月平均10時間の業務削減や、1.3万件に及ぶ営業リスト作成の完全自動化といった具体的な成果が次々と生まれています。
特筆すべきは、ベンダーに開発を丸投げするのではなく、自然言語で構築できるツールを活用し、現場の担当者が自らAIエージェントを作れるように教育・伴走している点です。開発者がずるずると居座らず、AIシステムだけを残して潔く撤退する「出口戦略」も同社ならではの特徴です。本記事では、AI導入の壁を突破する独自の支援アプローチや、つまずきやすい周辺課題の解消法、そして今後の展望について、同社代表の武藤さんにお話を伺いました。

ChatGPT導入で逆に仕事が増える?「AI市民開発」が求められる背景
Q. まずは貴社の事業内容と、その中でAIコンサルティングサービスを展開されている背景について教えてください。
武藤さん: 株式会社B-Steep代表の武藤と申します。元々KPMGコンサルティングに所属しており、DXに関わるコンサルティングサービスを4年間提供しておりました。その後、「大きな挑戦への小さな一歩を提供する」というビジョンを掲げ、B-Steepを創業しました。
現在は主にto Bとto Cでサービスを分けて展開しています。to Bに関しては、クライアント様の社員自らが、会社に必要なAIシステムを構築する「AI市民開発組織」を作るためのコンサルティングサービスを提供しています。to C向けでは、登録者数1.3万人を超えるYouTubeチャンネル「AIワークフロー解説のトモ」の運営や、600〜700名が参加するAI市民開発コミュニティ「トモラボ」の運営を行っています。
コンサルティングサービスを始めた大きな出発点は、ChatGPTやCopilotの操作時間がどんどん増えてはいるが、結局業務が減っていないという現状に対する課題意識です。便利である一方で仕事が溜まってしまい、働き方が変わらないケースが多く見られます。
これを解決するためには、ニュースレターの自動配信や営業メールの自動送信など、対象業務に特化したAIエージェントを設定し、その業務を完全に自動化することが重要です。ただし、それをベンダーに任せてしまうと、期待と異なるものが出てきたり、要件と実装がずれたりして、何を作ったのかがブラックボックス化してしまいます。だからこそ、現場の業務を一番よく分かっているクライアント様の社員(非エンジニア)の方自らが、AIエージェントを開発することが最も効果的なのです。
非エンジニア自らがシステムを作る。ツール選定から教育まで一貫伴走
Q. 提供されている「AI市民開発組織を作るコンサルティングサービス」の具体的な支援内容や、活用しているツールについてお聞かせください。
武藤さん: 基本的には、経理や法務などの繰り返し業務が多い部門を中心に、どのような業務を自動化すべきかというユースケースの選定や部門選定から一緒に入らせていただきます。その上で、自動化に最適なAIツールを選定し、実際にクライアントの社員さんにシステムを構築していただきます。エンジニアを派遣して私たちが代わりに作るのではなく、お客様自身で作っていただくのが大きな違いです。
それを実現できるように、AIシステムを開発するための教育コースを提供し、システムの作り方をサポートしています。
ツールの具体例としては、Y Combinatorに採択されたCarnot社さんが提供している「Jinba」や「n8n」といったツールをはじめ、複数のAIエージェント構築ツールの中から、クライアント様にあった最適なツールを選定します。例えばJinbaは、「最新トレンドを抽出して、X投稿の下書きを作る」といった自然言語の文章を打ち込むだけで、実際にAIシステムを作り上げてくれます。自然言語でAIシステムが作れる時代になっているからこそ、こうしたツールを導入し、非エンジニアの方でも簡単にシステムを構築できる環境をご提供しています。
最終的にAIエージェントを残す「出口戦略」
Q. コンサルティングサービスを提供する他社と比較して、貴社ならではの強みや独自性はどのような点にあるのでしょうか。
武藤さん: 大きく3つあります。1つ目は、先ほどお伝えした通り「市民開発」に完全にフォーカスしている点です。エンジニアを雇ってシステム開発を代行する方が単価が高くなりやすい側面はありますが、私たちはお客様ご自身で作られることに本質的な意味があると考えています。
2つ目は、出口戦略を明確に規定している点です。開発会社の保守運用が3年も5年もずるずる続くのは弊社が目指している理想像とは異なります。私たちは、今まで人が受けていた質問対応などを徐々にAIエージェントに切り替え、最終的には私たちが抜けてもAIエージェントがうまく業務を回してくれる状態にして終わります。
3つ目は、教育に熱心であり、人に教えることを得意としている点です。私たちの社内にナレッジを溜め込むのではなく、YouTubeやトモラボのコミュニティ運営で培った「教える力」を通じて、クライアント自身がシステムを作れるように成長していただきます。成長すれば開発支援やコンサルタントによる支援は不要になり、感謝されてプロジェクトを終えることができます。
人の派遣から始めてAIに置き換える。現場の不安を取り除く独自の導入支援
Q. AIツールの導入に対して、現場が後ろ向きだったり不安を抱えていたりする企業様には、どのようにアプローチされているのでしょうか。
武藤さん: 「AIに任せるのは厳しい」「AIエージェントで自動化したくない」という方も多くいらっしゃいます。そうした場合は、まず私たちがコンサルタントや業務委託として入り、人の手で業務を代替します。例えば「問い合わせ対応は私たちが人材を派遣して行います」といった形からスタートするのです。
そして、その裏側でAIエージェントを作り、私たちが手作業でやっていた業務を徐々にAIエージェントに置き換えていきます。最終的に「実はこの問い合わせ対応は、AIを使えばこれくらい安く済むんですよ」とご紹介するような形でご提案します。最初は人から始めることで安心感を持ち、裏側でAIがしっかり機能している実績を見れば、「AIエージェントに任せても問題ないね」とご納得いただけます。
Q. ツールが使えるようになっても、基幹システムとの連携やデータ整備、セキュリティなど、周辺の課題が浮き彫りになる瞬間があると思います。そうした壁にはどう対応していますか?
武藤さん: まさにそうした周辺課題はよく発生します。その際は、コンサルタントとして組織の課題を泥臭く潰していく役割を担います。私たちの会社にはアクセンチュアの戦略コンサルタント出身メンバーやKPMGコンサルティングのDX戦略部隊出身のメンバーがおり、コンサルティング能力に強みを持っています。
課題が浮き彫りになった時は、組織を巻き込んで調整を図ったり、セキュリティ上問題ないことを証明するための規約を作ったりします。他にもマニュアルの作成や、セキュリティ規約に同意してもらうための同意フォームの作成など、ツール導入の周辺には多くの雑務が存在します。そうした壁となる要素を全部洗い出し、片っ端から潰していくような動きをとっています。
月10時間削減と1.3万件のリスト自動化。現場だからこそ生まれる付加価値
Q. 実際に支援された企業様の中で、どのような成果や定量的な効果が出ているか、事例を教えていただけますか。
武藤さん: ある企業様に対して、ChatGPTやCopilotといった一般的なAIツールの教育と同時に、Jinbaやn8nなどの市民開発ツールの教育と構築支援を行いました。その結果、社員の業務時間を月平均で10時間/人ほど削減できた事例があります。
また、薬局に特化したコンサルティングファームのお客様の事例では、薬局の営業リスト作成にかなりの時間をかけていらっしゃいました。毎回手作業で薬局の情報を調べ、そこに電話をかけるという業務です。これに対し、n8nを使ってネット上から公開情報を取得する仕組みを構築した結果、1.3万件の薬局すべての情報をデータとして自動で取得できるようになりました。
さらに面白いのは、AI市民開発ならではのアイデアが生まれたことです。私たちコンサルタントだけでは思い浮かばなかったのですが、ある社員の方が「薬局の○○のような情報も取得したい」とご自身でAIエージェントを開発。結果的に公開情報をもとに、問い合わせ先・公式サイトURLなどを営業リストに整理できるようにしました。
今の時代、AIをうまく活用するためにはユースケースをどれだけ溜められるかが勝負になります。そのため、600名以上が参加するコミュニティ「トモラボ」を通じて、データベースとして多くのユースケースを蓄積し、お客様がシステムを作りやすい環境を整えていることも大きな成果につながっています。同時に、ClaudeやChatGPTを真に使いこなせる専門的な人材を集めることが重要であり、YouTubeなどの情報発信もそこに効いてきています。
AIワークフローから「AIエージェント」の時代へ。全社展開を見据えた今後の展望
Q. 今後、企業のAI推進をどのようにサポートしていきたいか、また技術進化に伴ってサービスをどう展開していくか、展望をお聞かせください。
武藤さん: まずは、AI市民開発という概念をひたすら押し出していく形になります。市民開発の素晴らしいところは、ある部署で自動化した業務システムを他の部署にも横展開できる点です。現在は大きな規模の企業様にも導入いただいていますが、1つの部署で作ったユースケースを、組織内の他部署へどう展開し使ってもらうかを重要なKPIとして設定しています。今後は部署内にとどまらず、全社展開していくことにしっかりと向き合っていきたいと考えています。
また、提供するサービスの形としても進化を予定しています。これまでは企業の活動を細かく分解し、適用しやすい部分を見つけていく「AIワークフロー」との相性が良かったため、そこを中心に支援してきました。しかし、ClaudeをはじめとするAIの能力値が上がり、アウトプットのブレも少なくなってきたため、今後は完全に「AIエージェント」の方へシフトしていくつもりです。それに合わせて、私自身のYouTubeチャンネルも「AIエージェント解説」という名前に変える予定ですし、ワークフロー構築ではなく「AIエージェントを作る市民開発組織を作りましょう」というメッセージがメインテーマになっていくと思います。
Q. 最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。
武藤さん: 私は「大きな挑戦への小さな一歩を提供する」というミッションを本気で掲げています。世の中には「こういうシステムを作りたい、こんな自動化ができたらいいのに」と思いながらも、非エンジニアで知識がないからできないと諦めている方が数多くいらっしゃいます。
私たちが市民開発に特化しているのは、私たち自身がお客様の欲しいシステムを作ることにはあまり価値がないと考えているからです。「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」という言葉があるように、システムを作れる状態にしてあげること、そして教育の場を提供することにこそ大きな価値があります。だからこそ、AI市民開発組織の構築に注目しています。
また、弊社はY Combinator採択のJinbaを提供するCarnot社さんとの協業や、市民開発ツールとして非常に影響力のあるn8nにおいて、日本初かつ現時点で日本唯一の公式アンバサダーを務めています。そのため、ツール選定力やツールへの深い理解には絶対の自信を持っています。YouTube等でも情報を発信しておりますので、ぜひそちらもご覧いただければ嬉しいです。