システム開発を請け負う中で、「見積もりできる技術者が足りない」、「商談対応が追いつかない」といった課題を抱えている企業は少なくないのではないでしょうか。
株式会社ジェイテックが開発する「CLOUD DESIGN ASSISTANT AI」と「AIコンシェルジュ」は、AIを活用してAWSのアーキテクチャ設計や、チャットツール上で勤怠・プロジェクト管理を自動化するプロダクトです。展示会等で先行利用した同業のSIerからは「商談中に構成案のたたき台ができる」と高い評価を得ており、提案業務のプロセス加速と管理工数の大幅な削減を実現しています。
非エンジニアでも直感的に扱えるシンプルな操作性と、自社の切実な課題から生まれた「現場目線での圧倒的な実用性」が最大の強みです。本記事では、プロダクト開発の背景にあった課題意識、類似ツールとの決定的な違い、そして全社的なAI基盤の構築に向けた展望について、同社の執行役員の堀岡さん、戦略推進部の田中さん、古川さんにお話を伺いました。

多忙な現場の課題感が開発の原点
Q. 貴社の事業内容と、今回の生成AIプロダクトを開発された経緯について教えてください。
田中さん: ジェイテックはこれまでSIerとして様々なお客様の課題を解決してきました。近年はAWSの推進にも力を入れており、AWSのアドバンスドティアパートナーとして活動しています。これらのAWSの知見とAIの知見を組み合わせて新しい展開を進めようと取り組んでおり、その一環として「AIコンシェルジュ」と「CLOUD DESIGN ASSISTANT AI」という2つのプロダクトを開発しました。
堀岡さん:開発のきっかけは、自社が抱えていた切実な課題です。受託開発やSES事業を展開する中で、ありがたいことにお仕事の依頼がかなり増えていたのですが、多忙を極め、上長たちのマネジメント負荷が非常に高い状況が続いていました。システムソリューション本部では、これまでエンジニアが直接お客様と伴走し、ヒアリングから提案までを一貫して担うスタイルを継続してきました。技術者が直接対話することで生まれる「精度の高い提案」を何よりも大切にしてきた結果ですが、ありがたいことにご相談いただく案件が急増したことで、これまでの体制が限界を迎えつつありました。
専門的な知見が求められる提案書や見積もりの作成を、現場のエンジニアが一つひとつ丁寧に進めようとするあまり、どうしても物理的な工数が逼迫し、対応のスピードが追いつかない場面が増えていたのです。「質は落としたくない、けれどスピードも求められる」というジレンマの中で、本来であればお力添えできたはずのご縁を形にできないこともあり、組織として大きな葛藤を抱える時期が続いていました。
ちょうどその頃、AWSの担当者から生成AIコンテストや、ハッカソンイベント「AWS DEVCRAFT」のお誘いをいただき、2チームで参加することになりました。そこでAWSのサービスの使い方を学ぶ中で、「この生成AIの技術を使えば、自社の多忙な現場を支援できるのではないか」という発想に至り、ソリューションとして形にしていきました。現在はお仕事の引き合いも増えており、正式にソリューションとして展開を進めているところです。
複数ツールを横断して要約・提案を行う「AIコンシェルジュ」
Q. まず「AIコンシェルジュ」のプロダクト概要と機能について教えてください。
古川さん: 「AIコンシェルジュ」は、チャットツールのSlackに常駐するチャットボットのようなAIエージェントです。ユーザーがチャットでメッセージを投げかけることで動作します。
本来であれば、ユーザーが勤怠管理ツールや社内ナレッジ、プロジェクト管理ツールなど複数のツールを往復して情報を集め、集めた情報をもとに改善策を考えていく必要があります。AIコンシェルジュは、そうした情報収集、要約、改善提案までの一連の作業を一気通貫で高速化する仕組みです。タスクが誰かに偏りすぎていないか分布をチェックしたり、プロジェクトの遅延状況を把握したりと、情報ソースさえあればAIコンシェルジュが処理してくれます。これにより、エンジニアが本来注力すべき設計や開発のタスクに集中できる環境づくりを目指しています。
Q. 現在、自社内ではどのように活用されているのでしょうか?
古川さん: 現在は開発中ということもあり、一部の機能に限定して社内でテスト運用をしている段階です。例えば、社員が提出している月報をAIコンシェルジュが分析し、アラートの傾向が見られる場合に上長へ連絡するような仕組みの実現を目指しています。また、稼働時間をチェックして、法的な残業時間の上限を超過してしまいそうな場合に、傾向を含めてアラートを通知する機能もテストしています。
将来的には、ユーザーからのアクションに対して回答するだけでなく、時間設定や特定のイベントが発生した際に自動で通知が来るような、イベントドリブンで動くシステムへと進化させていきたいと考えています。
要件入力から構成案・コスト算出までを自動化する「CLOUD DESIGN ASSISTANT AI」
Q. もう一つのプロダクトである「CLOUD DESIGN ASSISTANT AI」はどのような仕組みなのでしょうか?
堀岡さん: こちらは、AIを活用してAWSのアーキテクチャ設計を支援するサービスです。具体的な利用事例として、社内で開発依頼の引き合いがあった際の活用が進んでいます。
お客様からの要件をまとめてサービスに入力すると、AIがAWSを利用したシステム構成案を作成してくれます。さらに、そのシステムを運用した場合のランニングコストの算出や、AWSのベストプラクティスに準拠した構成になっているかどうかのレビューまで行うことができます。これを何回か回して精度を高め、実際の提案に踏み込んでいます。
Q. 展示会などで先行してお試しいただいた企業様からは、どのような反響がありましたか?
田中さん: 最もわかりやすい成果として、「0からのスタートダッシュ」が劇的に速くなるというお声をいただいています。見積もりができるエンジニアのリソースが足りない中で、たたき台を一瞬で作れるスピード感は大きな強みです。
また、同業のSIerの方々からは、AIによる構成のレビュー機能が大変好評でした。本来、レビュー作業にはかなりの工数がかかりますが、AIに任せることである程度のレベルまで一気に仕上げてくれます。さらに、「商談中にこのツールを使えば、アイスブレイクで話をつなぎながら、その場で本当のたたき台を作成できるので非常に心強い」といったフィードバックもいただいており、営業プロセスの加速に大きく貢献できると実感しています。
非エンジニアでも使える操作性と「営業支援特化」が最大の強み
Q. 類似のAIツールが数多く登場している中で、貴社のプロダクトならではの強みや独自性はどこにあるのでしょうか?
堀岡さん: AIコンシェルジュに関しては、非エンジニアの方にいかに恩恵を受けていただけるかを最も重視しています。複雑なプロンプトを設定しなければ使えないツールでは、現場に定着しません。いかに簡単な設定で、基幹システムなしでも導入でき、それぞれのユーザーの悩みに合わせて柔軟にカスタマイズできるかという点を追求しています。SMB(中堅・中小企業)領域のお客様にも手軽に使っていただけるプロダクトを目指しています。
CLOUD DESIGN ASSISTANT AIの強みは、「営業支援に特化」している点です。本来であればプリセールスのエンジニアが対応しなければならない領域を、営業担当単体でもこのツールを使うことで提案書作成まで完結できてしまいます。競合ツールも出始めてはいますが、我々はお客様の要求をAIが解釈し、アーキテクチャの提案からレビューまでを行うことで、営業プロセスを劇的に加速させるという明確な優位性を持たせています。
マルチクラウド対応と全社的な生成AI基盤構築に向けた今後の展望
Q. 最後に、今後のプロダクトのアップデートや、会社全体としての生成AI活用に向けた展望を教えてください。
田中さん: プロダクトに関しては、CLOUD DESIGN ASSISTANT AIの精度をさらに上げていくとともに、現在はAWSに特化しているものを他のプラットフォームにも広げる「マルチクラウド対応」を進めていきます。また、個人単位での利用から、チームや組織全体での活用強化にも取り組んでいきます。将来的には、提案書自体のフォーマットを登録して完成品を出力したり、開発の初期フェーズにおいてプロトタイプ(画面のソースコード)まで自動生成したりするような機能拡張も視野に入れています。AIコンシェルジュについては、連携できる外部サービスを拡充し、Slack以外のチャットツールにも対応していく予定です。
CLOUD DESIGN ASSISTANT AIやAIコンシェルジュによってAI推進を図っている当社ですが、その根幹にあるのは、長年培ってきた受託開発です。単にシステムを構築するだけでなく、お客様のビジネス課題を深く理解し、最適なアーキテクチャ提案から開発、運用まで一貫してサポートしています。
堀岡さん:会社全体の戦略としては、SES事業が全体の7割を占める中で、AIの波をさらなる成長のチャンスと捉え、積極的に挑戦していく必要があると考えています。そのため、エンジニアに限らずバックオフィスのメンバーも含めた全従業員に対して、AIを業務プロセスに浸透させることを目標としています。
具体的には、官公庁や製造業といったセキュリティ要件が厳しいお客様の案件でも安心して使えるよう、NISTなどの基準を満たし、「学習されない」生成AIプラットフォーム基盤の構築を今年から進めています。この基盤の上で全従業員への教育を行い、営業の競争力として高めていく。そして、最新のAI環境で働きたいと考えるエンジニアの採用活動にもつなげ、原動力としていくサイクルを回していきたいと考えています。生成AIはもはや必須のトレンドですので、こうした取り組みに興味を持ち、一緒に挑戦してくださる求職者の方々にもぜひ来ていただきたいですね。