AIの単発出力をどう事業化する?海外20サービスで展開するAI音楽レーベル

生成AIを活用してコンテンツを作ってみたものの、単発のアウトプットで終わってしまい、継続的なビジネスやIPとしてどう昇華させるべきか——そんな悩みを抱えていませんか。

LONZ株式会社が昨年(2025年)12月に立ち上げた「SHIFT – ENTER – MUSIC」は、所属アーティスト全員がAI生成されたバーチャルな存在というAI専門のミュージックレーベルです。現在6名のアーティストが活動し、Spotifyなど主要4大プラットフォームをはじめ、海外20以上のサービスへ楽曲を展開。再生回数に応じた収益化を実現しています。

単なるAIによるカバー曲などではなく、ワークアウト専用や日本史学習用など、「1つの体験ができるアーティスト」として独自のコンセプトを持たせているのが最大の特徴です。本記事では、同社の共同創業者の鈴木さんに、新規事業立ち上げの背景にあった試行錯誤、他コンテンツとの決定的な違い、そしてリスナーからのリアルな反響について伺いました。

生成AIの強みである「数」を活かし、点と点を繋ぐ新規事業を模索

Q. 貴社の事業内容とAIアーティスト専門レーベルの概要、そして立ち上げの背景について教えてください。

鈴木さん: LONZ株式会社を2020年に共同創業者の田中と2人で立ち上げました。主にSNSのコンテンツ制作や運用代行、Webコンテンツの制作などを行っています。田中が営業担当として課題をヒアリングし、2人でアイデアを出して私が制作を担当する形で、マーケティング支援の受託事業が8割方を占めています。

その中で新規事業として、所属アーティスト全員がAIで生成されたバーチャルな存在という専門レーベル「SHIFT – ENTER – MUSIC」を昨年(2025年)12月に立ち上げました。現在、表に出ているアーティストは6人で、7人目も準備中です。レーベルのミッションは、AIによって音楽の可能性を今まで以上に広げていくことです。AIと共同で作業することで、楽曲制作から配信、マーケティングまでを効率化しています。

立ち上げの経緯としては、2025年3月頃からChatGPTや画像生成AIに触れる中で、AIの単発のアウトプットだけでは意味を持たないと感じたことが出発点です。AIの最大の強みである「数を出せること」を活かし、トライアンドエラーを繰り返し、点と点を繋げれば面白いビジネスになるのではないかと考えました。

当初はAIを用いたタレントを作り、SNS運用で実験を繰り返しましたが、コンセプトが曖昧で想定したような反響が得られませんでした。しかし、その中で唯一「音楽」を用いた発信の反応が良かったのです。それを手掛かりに「一貫性のあるタレント性×音楽」という方向へ舵を切ったところ大きな反響を得られ、同年の9月に方向性を定めて12月のレーベル設立に至りました。

Q. アーティストの姿や音楽は、すべて貴社内でAIを活用して制作されているのでしょうか?

鈴木さん: はい。音楽やアーティストの画像などは、各ツールの商用利用規約を遵守し、権利侵害リスクをクリアしていることを確認した上で自社内で生成しています。

画像に関しては、出力に極力著作物が入らないようにすることや、リファレンス画像に問題がないかをチェックするフローを組んでいます。プロンプトを通す際にもNGチェックの指示を入れています。基本的に有償ツールを使用し、ルールに則って安全に運用しています。

「1つの体験ができる存在」として独自のコンセプトを持たせる

Q. アーティストの活動やメディア展開はどのような形で行われているのでしょうか?

鈴木さん: メディアやプロダクトへの展開というよりは、一人のアーティストをプロデュース・運用している感覚です。素顔を明かさずに熱狂を生むトップアーティストのような存在を生み出せたらと考えています。今はまだ無名の段階ですが、将来的には誰もが耳にするヒットチャートにランクインするようなアーティストに育てたいです。

マネタイズは通常の音楽アーティストと同様に、再生回数に応じた収益が発生するモデルです。配信先はSpotify、Apple Music、YouTube Music、Amazon Musicというメジャーな4つのプラットフォームがメインとなります。そこを経由して海外の細かい音楽サービス約20箇所にも展開されていますが、収益の大部分は主要4プラットフォームが占めています。

Q. AIを活用した音楽コンテンツは他にもありますが、貴社のレーベルならではの差別化ポイントはどこにあるのでしょうか?

鈴木さん: アーティスト性を明確に立たせている点です。メジャーシーンを席巻するトップアーティストの多くは、ポップスやロックなど多様なジャンルを歌いこなしますが、当レーベルの所属アーティストは「1つの体験ができる存在」として位置づけています。

例えば、現在最も反響がある「ReDia(リディア)」というアーティストは、ワークアウトミュージックを専門としています。「あなたのもう一歩を引き出す存在」というコンセプトを持たせ、彼女の曲を聴くとジムでのランニングや人生の勝負どころで心が熱くなり、自然と体が動くような体験を提供しています。

他にも、日本史を楽しく覚えるための楽曲を配信し、聴くだけで学習体験ができる「歴丸先生」や、ソウルフルなバラードのみに特化した「Ceris Wren(セリス・レン)」などがいます。このように、各アーティストが特定の体験を提供できる設計にしているのが最大の特徴です。

AI音楽だからこそ生み出せる新たな価値とグローバルへの挑戦

Q. 今後、一般ユーザー向けだけでなく、企業とのコラボレーションなども見据えているのでしょうか?

鈴木さん: はい、積極的に取り組みたいと考えています。例えばReDiaはワークアウトミュージック専門ですので、フィットネスジムやスポーツウェアブランドとのコラボレーションなどを想定しています。現在は再生数に応じた収益がメインですが、アーティスト性が確立されIPとして認知されれば、toB向けのさまざまな展開に繋げられるはずです。まだ立ち上がったばかりの段階ですが、ゆくゆくは実現したい目標です。

Q. 今後の展望として、世の中にどのような価値を届けていきたいとお考えですか?

鈴木さん: 現在、AI音楽はまだ浸透しきっていない過渡期にあります。しかし将来的には、ヒットチャート100曲のうち20〜30曲にAI音楽がランクインする時代が必ず来ると予想しており、私たちはそのトップランナーを目指しています。音楽は言語の壁が低く、グローバルに挑戦しやすい領域ですので、世界中で聴かれるメジャーなアーティストに育てていきたいです。

世間ではAI音楽に対して懐疑的な意見もありますが、AIだからこそ生み出せる価値が必ず存在します。まだ誰もその本当の価値に気づいておらず、言語化できていない状態です。私たちは検証を繰り返しながら、それを一つ一つ証明していきたいと考えています。

実際にReDiaのリスナーからは、「音楽を聴いて力をもらえた」「入院中の支えになった」「朝聴くとやる気が出る」といったコメントを多数いただいています。これは、このアーティストのコンセプトだからこそ生み出せた体験です。こうした実績を積み上げ、AI音楽ならではの新たな価値を開拓していきたいです。

先述の「歴丸先生」のような学習特化型のアプローチも、人間のアーティストがあまり参入しない独自の領域です。AI音楽だからこそ可能なジャンルや形を開拓し、挑戦し続けます。まずはぜひ、1曲聴いてみてください。

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