ゲスト
圧倒的な開発スピードと品質向上の両立を牽引!
カイロスマーケティング株式会社 開発部門長 宮田さん
マーケティングオートメーション(MA)とSFAを両輪で提供し、企業のマーケティング・営業改革を支援するカイロスマーケティング株式会社。社内で最もAI活用が進む開発・企画部門では、既存の「文書化文化」を土台にCursorやCodexを活用。データ抽出にかかる時間を従来の6分の1以下に短縮し、開発パフォーマンスの34%向上を実現するなど、クオリティを重視したAI開発体制を構築している。

この事例のポイント
- データ抽出時間を2時間から10分へ短縮する方法: 過去の商談ログや受注の決め手を詳細に残す社内文化を土台に、契約属性から「似た企業」を即座に抽出するフローを構築。
- AI生成コードのテストが後手になる課題を解決する方法: 開発フローを転換し、「これをクリアしたら完成」という要件(テスト)を事前に定義する仕組みを徹底した。
- 若手エンジニアの「努力が覆る」という危機感を払拭する方法: 1年間かけて「AIで自らの能力を伸ばす」教育を実施し、コードの責任は本人にあることや、顧客体験の微調整は人間が担うという役割分担を明確化した。
- 品質を維持したままPRD(製品要求仕様書)を作成する方法: 社内ルールを守るCodexエージェントを構築し、Cursorと併用して叩き台の作成とチューニングを行う。
トップダウンでのAI導入から、開発パフォーマンス34%向上を達成するまで
Q. そもそもAIを導入した背景と、現在の定量・定性的な成果について教えてください。
A. 「入れていかないと時代についていけなくなる」というトップダウンの決断から始まり、現在は開発パフォーマンスの34%向上などを達成しています。
宮田さん: 導入の最初のきっかけは、「AIを入れていかないとこれからの時代についていけなくなるだろう」という強い危機感からのトップダウンの決断でした。一方で現場の企画側にも、「もっと楽をしたい」「違う仕事に時間を使いたい」という思いがもともと一致して存在していたため、反対意見はほぼなく、導入フローは早い段階で組むことができました。
導入当初はとにかく早く作る全体的なスピードアップを見込んでいましたが、現在はクオリティアップや「品質を整える」という土台作りに力を入れており、大きく2つの成果が出ています。
1つ目は、データ抽出と文書化の圧倒的な時短です。以前は特定のデータから情報を抽出するのに2時間(120分)ほどかかっていましたが、現在は同量のデータを10分程度(約12分の1の時間)で抽出できる仕組みが検証できており、明確な効果が出ています。
2つ目は、全体の開発パフォーマンスの向上です。製品要求仕様書(PRD)を、質を維持したままプロダクトマネージャー(PdM)が誰でも手軽に出せるように取り組んでおり、人数あたりの全体的なパフォーマンスとして34%の向上が見られるという数字が出ています。
AIの活用フローをどのように整備したのか
Q. データの抽出や高品質なPRDの作成をAIで実現するために、具体的にどのようなフローや環境整備を行ったのでしょうか。
A. 既存の「文書化文化」を土台に、社内ルールを守るCodexエージェントを構築してフローを回しています。
宮田さん: 前提として、弊社には昔から「文書をしっかり残す」という規則があります。当社自身もマーケティング・営業活動で「Kairos3」を使っているので、顧客ごとの商談ログや受注・失注の決め手となる属性付きデータが常に揃っていました。そのため、AIに読み込ませるための事前のデータチューニングはほとんど必要ありませんでした。
企画業務においては、このデータを活用して「この機能に似た悩みを抱える企業はどれくらいいるか」「どういうインパクトを残せるか」をAIに予測させています。ビジネスサイドであるPdMも開発上がりのメンバーで構成されているため、エンジニアと同じCursorとCodexを併用し、PRDの叩き台を出力させてから人間がチューニングをかけています。
開発業務においては、スピード重視から品質重視へとシフトするため、社内のルールを全て守り、起きてほしくないことを封じる「ハーネス」と呼ばれる制御の仕組み(エージェント)を土台として用意しました。その上で機能開発を行いながら、エージェント自体を強くしていくサイクルを回しています。
人や組織ではどのように推進をしたのか
Q. AIを導入する際、開発現場ではどのような壁に直面し、それをどうやって乗り越えたのでしょうか。
A. 若手の「危機感」に対し、1年間の教育で「AIで自らを伸ばす」意識を浸透させ、開発フロー自体も転換しました。
宮田さん: 企画側は「手動でやる時間との差」を見せるだけですぐに合意が取れましたが、むしろ開発側の方が苦労しました。特にジュニアエンジニアから「自分が努力して積み上げてきたものが、AIを使える後輩にすぐに追いつかれてしまう」という、今までとは違う危機感の声が上がったのです。
そこで、「AIに丸投げするのではなく、自分の成長や仕事を推進させるために使うポジションに置く」ということを、根気強く1年間かけて教育しました。AIで書いたコードであっても「品質が良ければ個人の評価になるし、不具合が出れば本人の責任である」と明言しています。顧客体験に関わる絶妙な感覚の調整には、人間が時間と頭を使っていくという役割分担を明確にしました。
もう一つの大きな壁は、AIがコードを大量に出力できるため、「検証(QA・テスト)が後手に回ってしまう」ことでした。これに対しては開発フローを大きく転換し、「今から作るものに対して、何をクリアしたらOKなのか」というテスト要件を事前に定義してから開発をスタートする形を徹底しています。
今後の展望:高速なPDCAの実現と、MA・SFAデータ統合によるAIエージェントの基盤構築
Q. 最後に、開発・企画における今後のAI活用の展望と、読者の方々にお伝えしたいことをお願いいたします。
宮田さん: 今後の開発・企画の展望としては、お客様のニーズを聞いたらすぐに試作品が出来上がり、それを実際に触って取り入れるか捨てるかを判断する「スピード感のある機能追加フロー」への移行を目指しています。企画側でも、ボツになっても良いのでアイデアベースで価値あるものをたくさん生み出し、行動量を増やしていくつもりです。
また、当社が提供するマーケティング・セールス製品に順次AI機能を搭載しています。BtoB企業で回数の多い「メルマガの作成」や「名刺の読み込み」をAIで代替できるほか、SFA側ではオンライン商談のデータや打ち合わせメモを投げ込むだけで、商談要約やネクストアクションのタスク登録を行えるAI入力補助機能を提供しています。さらに、弊社の最大の強みは「MAとSFAの両輪を持っていること」です。リード獲得から受注に至るまでの顧客接点情報を網羅的にデータとして貯めることができます。将来的に、この統合されたデータを顧客対応のAIエージェントなどにうまく使わせるためのデータ提供基盤としても、開発をどんどん進めています。
MA+SFA一体型ツール「Kairos3」:https://www.kairosmarketing.net/kairos3