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手挙げ方式の実証から全庁展開へ。自治体の生産性向上を導いた!
広島県三原市 デジタル化戦略課 髙浦さん
三原市は、市民の利便性向上と行政運営の効率化を目指し「デジタルファースト宣言」を掲げている。
2022年3月に実行計画を策定し、デジタル化戦略課を新設。2023年の手挙げ方式による実証実験を経て、2024年11月より全職員へ「exaBase 生成AI」を導入し、実務に根差した生産性向上に取り組んでいる。

この事例のポイント
- いきなりの全庁導入による混乱という課題を解決する方法:まずは「手挙げ方式」で無料アカウントを配布し、可能性を肌で感じる実証実験から段階的に展開した
- 全員が使いこなせないという課題を解決する方法:「あなたは三原市役所の職員です」といった役割指定や条件付けなど、具体的なプロンプトの型を学ぶハンズオン研修を実施した
- 国からの通知文書や条文確認の処理という課題を解決する方法:AIに読み込ませて要約や改定前後の比較を行わせ、手作業の時間を大幅に短縮した
- セキュリティと利便性のジレンマという課題を解決する方法:入力データは「機密性2(公開前の内部会議資料等)」までとし、AIの回答は必ず人間が確認する独自のガイドラインを定めた
全庁のダッシュボードで効果を確認。原稿作成2.7週間分、要約業務3.4日分の工数削減を達成
Q. 生成AIを導入したことによる成果については、どのように把握されていますか?
A. 職員の6割が利用し、全庁で要約業務3.4日分、原稿作成2.7週間分の大幅な工数削減を実現
髙浦さん:現在は、全職員の6割が生成AIを使用しており、exaBase内のダッシュボード機能で全庁の利用状況や削減効果を確認しています。直近の全庁の数値では、要約業務で3.4日分、原稿作成で2.7週間分といった形で、分野ごとに大きな工数削減が確認できています。生産性の向上は着実に数字として表れてきていると感じています。
また定性的にも、研修の募集に対する職員の関心は非常に高く、業務を改善したいという前向きな意欲の醸成にも繋がっているようです。
役割指定と条件付けで精度を向上。AIの活用フローをどのように整備したのか
Q. 現場では具体的にどのようなツールやプロンプトを用いて、業務の効率化を図っているのでしょうか。
A. 「exaBase 生成AI」を導入し、明確な条件指定で通知文書の要約や条文比較、校正作業を行っている
髙浦さん:製品の選定にあたってはプロポーザルを活用し、現在は「exaBase 生成AI」を採用しています。最も多いのは、イベントの企画案やキャッチコピーなどのアイデア出し、そして式辞や挨拶文といった文章の作成です。
行政特有の業務としては、国から届く膨大な通知文書の要約や、条例等の改定前後の文章比較に活用されています。これまで複数の資料を見比べて手作業でまとめていた作業も、AIに読み込ませることで短時間で終わるようになりました。事務職だけでなく技術職の職員も、画像データからExcelの複雑な関数や手順を生成させるなど、活用の幅は非常に多岐にわたっています。
こうした実務での精度を上げるため、研修では具体的なプロンプトのテクニックを教えています。例えば通知文の要約では、「あなたは三原市役所の職員です」と役割を指定した上で、「人事・労務担当が押さえるべきポイントを5つ以内に箇条書きする」「各ポイントは1文で簡潔に書く」といった具体的な条件を与えます。また、住民向け文章の校正では、「丁寧な表現への変換」や「修正箇所の詳細な説明」を指示するなど、明確な型を使うことで期待通りのアウトプットを引き出しています。
手挙げ方式からの展開とセキュリティの壁。人や組織ではどのように推進をしたのか
Q. 生成AIを導入した背景と、全庁への定着やセキュリティのリスク管理に向けて工夫されたことを教えてください。
A. 手挙げ方式の実証を経て全庁へ展開し、機密性2(公開前資料等)までの入力制限とハンズオン研修を実施
髙浦さん:三原市では、以前から様々なデジタル技術を活用した業務効率化を進めてきました。その流れの中で生成AIという新たな技術が台頭し、2023年8月から「手挙げ方式」で意欲のある職員にChatGPTの無料アカウントを配布し、限定的に実証実験をスタートさせました。実際の現場でどのような使い方ができるのか、まずはその可能性を肌で感じてもらうことが重要だと考えたからです。約1年間の実証期間を経て手応えを感じられたことから、2024年11月からは全職員にアカウントを付与する形で本格運用を開始しました。
全職員に配布したとはいえ、全員がすぐに使いこなせるわけではありません。そこで私たちは、導入当初からハンズオン形式の研修を継続して実施しています。座学だけでなく、実際にPCを操作しながら具体的なプロンプトを学ぶ機会を設けています。
ガイドラインは全庁導入に合わせて策定し、周知を行いました。自治体として情報を扱う以上、安全性は欠かせませんが、ルールを厳しくしすぎるとかえって利便性を損ない、活用が進まないというジレンマがあります。そこで三原市では、最低限守るべき「遵守事項」を明確に定めることにしました。具体的には、入力データは情報の格付けにおける「機密性2(公開前の内部会議の資料や、個人情報を含まない統計データなど)」までとし、機密性の高い情報は決して入力しないこと。そして、AIの回答をそのまま鵜呑みにせず、必ず担当者が責任を持って内容を確認し、個人情報や他者の権利侵害がないかをチェックすることを徹底しています。
今後の展望:AIで生まれた時間を、質の高い行政サービスと市民への価値提供に集中する
Q. 今後、生成AIを活用してどのような展開を考えておられますか。また読者へのメッセージをお願いします。
A. 未利用者への普及と地域課題への実用化を進め、生まれた時間を市民サービスに還元
髙浦さん:まずは、まだAIに触れていない職員に対して利用機会を増やしていくという「広さ」の追求。そしてもう一つは、それぞれの部署が抱えている具体的な地域課題や行政課題に対し、AIをどのように活用して解決に結びつけるかという実用化の追求です。AIを使うこと自体が目的ではなく、それによって生まれた時間を、より市民の方々への価値提供や質の高い行政サービスに繋げていくことが、私たちの目指すゴールです。
デジタル化は組織のあり方を変える挑戦です。まずは一歩を踏み出し、失敗を恐れず試行錯誤を重ねることが重要です。特に生成AIの活用においては、自治体が互いに成功事例を共有し、切磋琢磨しながら知見を広げていくことが、住民サービスの向上と業務効率化の大きな鍵となります。技術をツールとして使いこなし、現場の声を大切にしながら、共に前向きな変化を生み出していきましょう。