一人あたりの対応顧客数が最大4倍に。SaaS統合とAIエージェントによる営業変革

ゲスト

AIをビジネス成果につなげる「技術と経営の橋渡し役」!
Workato株式会社 Field CTO 鈴木さん

日本法人設立(2021年)前の2018年から日本市場におけるビジネス立ち上げを主導。現在はField CTOとして、AIをはじめとする最新テクノロジーをビジネス価値へと転換し、お客様の投資対効果を最大化するためのテクノロジーアダプションをリードしている。Workatoは自社内でベスト・オブ・ブリードで導入した300以上のアプリを自社の基盤で連携・統合し、LLM登場時からいち早くAgentic AIへの取り組みを加速させている。

この事例のポイント

  • 全社での「10X Transformation Program」と加点方式の徹底:チームの成果を飛躍的に高める「10X Transformation Program」を掲げ、トライアンドエラーを推奨する文化を醸成。
  • 本社BTチームと現場従業員の連動:米本社のビジネステクノロジー(BT)チームが安全な実行・管理基盤を提供し、現場が自発的にAIエージェントを使い倒す環境を構築した。
  • CSM業務で対応顧客数が3〜4倍に:Salesforce等のデータをAIが分析し、提案ストーリーを自動生成。営業でもGongを使ったAIコーチングで商談改善を図っている。
  • セキュリティとガバナンスの両立:WorkatoのAI Control Planeを使い、ロール(権限)ごとのデータアクセス制御や利用できるMCPサーバーの管理を行なっている。

CSMの対応顧客数が最大4倍に増加し、ISでは15分以内の架電を実現

Q. 現場の業務プロセスにおいて、AI活用で得られた具体的な定量成果や変化について教えてください。

A. 複数SaaSからの情報収集と分析をAIが行い、1人あたりの対応数が3〜4倍に増加

 鈴木さん: 特に成果が出ているのが、カスタマーサクセスマネージャー(CSM)の業務です。以前は、お客様の利用状況を把握するために、GoogleドライブやSalesforceなど複数のシステムから情報を検索して引っ張り出したり、利用状況のデータをBIツールのレポートで確認したりして、資料を作成し打ち合わせに臨んでいました。事前の準備が非常に大変だったのです。

現在は、Claudeがある程度資料を作ってくれます。数字やファクトに基づき、お客様にどんなストーリーが刺さるかというインサイトを出し、社員はAIと壁打ちしながら提案を練り上げます。結果として、一人あたりが対応できるお客様の数が3倍から4倍に増えました。

さらに、属人的だった提案の品質も底上げされました。今までのありきたりな話が、AIのアドバイスによって本質的な分析資料になり、お客様の満足度向上にも直結しています。

Q. インサイドセールス部門(SDR)では、AIエージェントの導入によってどのような壁を越え、成果を出したのでしょうか。

A. 15分以内の即時対応と自動優先順位付けにより、コンバージョンレートが向上

 鈴木さん: SDR部門では、お客様からの問い合わせが入ってからいかに早く、適切にアプローチするかが勝負です。AIが導入される前は、エンリッチ化されたデータを活用して人が考えたロジックで対応していましたが、今ではAIが顧客の導線を分析し、問い合わせ内容をもとに、打ち合わせ前に「このストーリーで話すと効果的だ」とアドバイスまでしてくれます。

ビジネスにおいて、単に「何時間削減できたか」より重要なのはスピードです。資料ダウンロードから5分〜15分以内に連絡できるかどうかで、アポが取れる確率は7倍から10倍変わります。1時間後や翌日になってしまえば、コンバージョンレートは落ちてしまいます。

AIエージェントと自動化の仕組みを組み合わせることで、本当に必要なお客様に対し即座にアプローチできる優先順位付けが可能になりました。かかっている工数自体は変わらなくても、適切なタイミングで高精度なアプローチができるようになったことで、コンバージョンレートは明確に上がっています。

また、営業の打ち合わせも、お客様の許可を得た上でZoomを録画し、Gongというツールを使ってAIに分析させています。

我々にはセールス・メソドロジーがあり、商談のステージごとに「このタイミングでは、これを確認しなければならない」という基準が定義されています。AIは会話をすべて要約して議事録を作成するだけでなく、もし確認すべき内容を聞けていなければ、「こういうことを言い忘れていますよ」「メールでフォローしましょう」「次回はこう伝えましょう」といった形で、具体的にアドバイスをしてくれます。昔であれば、隣で先輩が指導してくれていたような場面を、今はAIが冷静に全ての打ち合わせを分析し、寄り添いながらアドバイスする形で担ってくれています。これは、SDRのスキル向上と商談化確率の向上に間違いなく役立っています。

投資対効果の事前検証を捨て、チーム全体の成果を最大化する挑戦へ

Q. 全社で掲げている「10X Transformation Program」について教えてください。

A. チーム成果の最大化を目指し、ROIの事前検証を捨ててAI活用を推進

鈴木さん:「10X Transformation Program」とは、単なる業務時間の短縮やコスト削減を目的としたものではありません。AIを活用して創出した時間で新しい価値を生み出し、チーム全体でより大きな成果を追求しようという取り組みです。今年(2026年)に入って、CEOやCOOもこのメッセージを強く発信しています。

こうした取り組みを迅速に進められる背景には、当社にはAIを実行・管理する基盤であるWorkatoが既にあるからです。Workatoはミドルウェアという特性上、社内ですでに300以上のアプリを連携させ、オーケストレーションしていました。そのため、ChatGPTやClaudeなどのLLM(大規模言語モデル)への接続は容易で、即座に社内システムとMCPサーバーを経由して接続できる環境が整っていたのです。

また、このプログラムを推進するにあたり、私たちは「AI投資のROI(投資対効果)は何倍か」を最初に問う発想を捨てました。日本企業では導入前にROIを気にしがちですが、AIは作って終わりではなく、人と同様にスキルをレベルアップさせていくものです。初期の投資額に対するROIを机上で議論するよりも、いち早く環境を整え、トライアンドエラーを重ねながらAIエージェントの価値を最大化していくことこそが本質だと考えています。とは言え、トークンコスト問題やアウトプットの精度は課題になるので、MCPサーバー側で最適化する工夫をWorkato上で行っています。

Q. 最初からROIを求めないという方針の裏には、どのような背景があるのでしょうか。

A. 早期に失敗を経験した企業と躊躇する企業で、成果の格差が劇的に拡大するKカーブの存在

 鈴木さん: アメリカでは「Kカーブ」という概念が報告されています。これは、早くからAIを試して経験値を溜めた人はベネフィットの曲線が急激に上がっていく一方で、利用を躊躇している人は成果が上がらず、両者のギャップがどんどん広がっているという状況がレポートで報告されたのです。

日本でもいずれ、AIへの取り組み度合いによって、明確に成果が分かれるでしょう。これはゼロイチの話ではありません。現時点で、AIエージェントに業務の目的や役割を定義し、スキルを向上させ、そのAIエージェントを管理するのは人間だけです。

例えば10人のチームが、1人の人間と9人分のAIエージェントと協働し、より大きな成果を創出する。そんな世界を私たちは目指しています。企業風土として「新しいテクノロジーを禁止しない」ことが大前提です。「使っちゃダメ」と言えば何の経験値も溜まりません。Workatoがあることにより、社内BTチームは新しいテクノロジーの活用を後押ししており、社員は成果を最大化させるために貪欲にAIを仕事に取り入れています。

ロール設定とAI Control Planeで野良AIを防ぐ

Q. AIエージェントにSFAや各種ツールの情報を読み込ませる際、データの整備やガバナンスの壁にはどう対応しているのでしょうか。

A. AI Control Planeを活用し、権限に応じたデータ制御を徹底

鈴木さん: SaaS同士をつなげる部品は元々あるため、つなぐことは簡単です。しかし、誰もが好き勝手にデータをつなげる状態にしては危険です。Workatoは「AI Control Plane」と呼ばれる機能を持つWorkato Enterprise MCPを使い、ガバナンスを効かせています。

例えば、人事担当者の中でも、アナリストとオペレーション担当者では与えられるロール(権限)が異なります。AIが利用できるデータの種類や内容はVerified User Access(VUA)機能により、適切なロール権限を持つ人にしか扱えないように制限することが可能です。

また、AIに任せていい領域とそうでない領域を分けることができ、誰が何をして、AIがどんな結果を出したかのログもすべて一元管理することができます。社内データへはMCPサーバー経由でのアクセスを徹底することで、「野良AIエージェント」のようにあちこちで好き勝手な処理が走ることもなく、制御することが可能です。

Q. AI活用に躊躇している企業は「AIは信用できない」という不安を抱えがちですが、どう払拭していくべきとお考えですか。

A. 正しい情報、コントロール、ディープアクションの3要素で安心安全な基盤を提供

 鈴木さん: 我々のお客様の中でも、経営者主導で前のめりに進む企業と、様子見の企業に二極化しています。躊躇している企業からよく聞くのは「AIは信用できない、思ったより精度が悪い」という声です。4年前ならいざ知らず、今は技術的に安全にコントロールする手法が確立されているのに、それに気づいていないケースが多いのです。

安心安全に使うためには、3つの要素が必要です。1つ目は「正しい情報」。日本のようなハイコンテキストな文化では、単一のソースだけでなく、社内の複数ソースをAIに学習させ文脈(コンテキスト)を理解させるためのデータが必要です。2つ目は「コントロール」。AIコントロールプレーンなどを通過させて制御することです。全ての意思決定をAIに委ねるのではなく、明らかに決まっている業務は従来の人が作成したロジックをAIに使わせることで、アウトプットの精度を上げることが可能です。そして3つ目が「ディープアクション」です。RAGのような使い方では、利用者レベルでは便利にはなったと感じられても、ROIの観点からは全社レベルでの効果はイマヒトツと評価されてしまいます。Agentic AIの利用を前提にすることで、複数のアプリケーションにまたがって目的に応じ自律的に深く複数のタスクを実行(ディープアクション)するAI同僚が活躍して初めて、ビジネス的な費用対効果が生まれます。

Q. 社内では、ClaudeやChatGPT、Geminiといった複数のモデルをどのように使い分けているのでしょうか。

A. 全社でClaudeの利用が爆発的に増加し、用途に合わせてChatGPT等と使い分け

 鈴木さん: 昨年11月頃、全社的にChatGPTとClaudeのライセンスが付与され、GCP上で複数のMCP(Model Context Protocol)サーバーが立ち上がり、社員はAI Agentとチャットしながら作業ができるようになりました。 Agentic AI機能を備えたAI Agentは、自律的に動き、同僚のように協働しゴールに向かって複数のタスクを遂行してくれる頼もしい存在になっています。 最初はChatGPTを使う人が多かったのですが、ClaudeのSonnetモデルが登場してからは一気に利用が爆発しました。 現在では圧倒的にClaudeの利用率が高いです。でも、Claude一択というわけではありません。

複雑な可視化やスライド作成はClaudeに任せ、ちょっとした作業や画像生成にはGeminiを使うなど、目的によって使い分けています。ガバナンスが統制されている環境で、社員が自由にモデルを選んで試せるからこそ、こうした使い分けの知見が蓄積されているのだと思います。

専門性の高いスキルを作り込む日本の強みを活かし、ビジネス成果を生み出すAI支援

Q. 日本企業におけるAI活用の課題と、今後の可能性について、ご見解をお聞かせください。

A. 減点主義を捨て加点方式を根付かせ、日本特有の品質追求文化でAIエージェントを磨く

鈴木さん: 日本特有の壁は「減点主義」と「PoC(概念実証)の罠」です。日本企業は真面目で勤勉なため、ビジネスのアウトカムではなく、テクノロジーの機能テストとしてのPoCばかりやりたがる傾向があります。社内でも、日本法人の新しいメンバーは最初、短期間でトライアンドエラーを回すスピード感や文化に戸惑うことが多いです。減点ではなく「加点方式」で新しいアイデアを生み出す循環を日本に根付かせることが必要だと私は考えています。

しかし、弊社のCEOも言っていますが、日本は世界で最もAIを活用できる能力が高い国になる可能性を秘めています。製造業の国である日本は、80点で満足するのではなく、100点、120点の品質を追求する文化があります。巨大な汎用LLMを一から作る力はなくても、専門性の高いスキルを持った高品質なAIエージェントを育て、業務をブラッシュアップしていくことにかけては、日本は非常に強いはずです。この数年で停滞せず、国全体で早く動くことができれば、日本がAI活用の先進国になるチャンスは十分にあると期待しています。

AI活用は、「導入して終わり」ではありません。本当の価値は、実運用が始まってから生まれます。アウトプットの精度を高めるためのプロンプト改善、AIモデルの進化に合わせた継続的なチューニング、コスト最適化、ガバナンスの確保など、AIを業務で成果につなげるためには、運用しながら改善を続けることが不可欠です。

Workatoでは、BT(Business Technology)チームと連携し、ビジネスゴールを最も理解しているユーザー部門のメンバー自らが日々改善を行う文化を育んでいます。また、その改善活動を支える「GEARS」フレームワークを活用することで、AIエージェントだけでなく業務プロセス全体の品質向上を実現しています。

さらに、AIエージェントの品質は、自身の業務成果や生産性に直結します。そのため社員一人ひとりが主体的にAIエージェントを磨き込み、継続的な改善を当たり前のものとして実践しています。こうした改善文化を後押しする取り組みの一つとして、社内では毎年AIハッカソンも開催しています。

今年は、こうした挑戦の場を社内だけでなく、より多くの企業の皆様にも体験していただきたいという思いから、本年11月に「Workato Agentic AI Hackathon 2026」を社外向けにも開催することにしました。参加費は無料です。AIを活用した業務変革にご興味のある方は、ぜひご参加ください。

今後は、「10X Transformation Program」の成果をさらに最大化するため、既存の業務プロセスにとらわれるのではなく、「何を実現したいのか」という目的から逆算し、AIを前提とした大胆な業務変革に挑戦していきます。

こうした取り組みをより多くの企業の皆様にも体験していただきたいという思いから、本年11月に「Workato Agentic AI Hackathon 2026」を開催します。参加費は無料です。AIを活用した業務変革にご興味のある方は、ぜひご参加ください。

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