AI-OCRの自治体導入事例13選!業務効率化の実績と失敗しない選び方

「紙の申請書をデータ入力するだけで、毎日何時間も費やしている…」

「AI-OCRを導入して業務効率化したいけれど、本当に効果が出るのか不安だ。」

「他の自治体ではどのような活用事例があるのか、具体的な実績を知りたい。」

日々、膨大な紙書類の処理に追われている自治体職員の方で、このようにお悩みの方も多いのではないでしょうか。

DX推進が叫ばれる中、多くの自治体で導入が進んでいるのが「AI-OCR」です。

特にRPAや生成AIと組み合わせることで、手書き文字のデータ化からシステム登録、内容の点検・要約までを自動化し、年間数千時間の業務削減に成功している事例も少なくありません。

生成AIを企業で活用するメリットや導入の注意点について、こちらの記事で詳しく解説しています。 合わせてご覧ください。

本記事では、AI-OCRの導入を検討している自治体担当者様に向けて、税務、子育て、全庁的な展開など、具体的な13の導入事例と実績を詳しく解説します。

また、失敗しないための選び方や導入メリットについても網羅しました。

数多くの自治体DXを支援してきた知見をもとに、実務に役立つ情報を厳選してご紹介します。

自庁の課題解決のヒントが必ず見つかるはずですので、ぜひ最後までご覧ください。

なぜ多くの自治体がAI-OCRとRPAの連携を進めているのか?【導入事例の背景】

全国の自治体において、業務効率化の切り札としてAI-OCRの導入が加速しています。

こちらは自治体におけるAI活用の手引きとなる総務省のガイドブックです。 合わせてご覧ください。 https://www.soumu.go.jp/main_content/000937479.pdf

単なる流行ではなく、明確な導入理由と背景が存在します。

ここでは、なぜ今、自治体でAI-OCRとRPAの連携が求められているのか、その背景にある構造的な課題と技術的進歩について、3つの視点から解説します。

手書き帳票のデータ化自動化が自治体DXの「一丁目一番地」

自治体の業務は、住民からの申請や届出など、依然として「紙」と「手書き」がベースになっています。

オンライン申請の導入も進んでいますが、高齢者を中心に紙の申請書を好む住民は多く、窓口や郵送で提出される手書き帳票は完全にはなくなりません。

DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する上で、このアナログな情報をいかに効率よくデジタルデータに変換するかが、最初の大きな壁となります。

AI-OCRは、従来の手法では読み取りが難しかった手書き文字を高精度にデジタル化できる技術です。

これを入り口として、その後の処理をRPA(Robotic Process Automation)で自動化することで、業務プロセス全体をデジタルに乗せることが可能になります。

つまり、AI-OCRによる手書き帳票のデータ化は、自治体DXを成功させるための「一丁目一番地」であり、ここを突破しなければ真の業務効率化は始まらないのです。

多くの自治体がまずこの分野に注力するのは、アナログからデジタルへの変換点こそが、最もボトルネックになりやすい箇所だからです。

人口減少・職員減少に対応するための業務時間削減効果

日本の自治体は今、かつてないほど深刻な人手不足のリスクに直面しています。

少子高齢化に伴う労働人口の減少は公務員の採用にも影響を及ぼしており、限られた職員数でこれまでと同等、あるいはそれ以上の質の高い住民サービスを維持しなければなりません。

特に、申請書のデータ入力や確認作業といった定型業務に多くの時間を割くことは、職員のリソース配分として最適とは言えません。

これらの単純作業をAI-OCRとRPAに任せることで、職員は人間にしかできない相談業務や企画立案、複雑な判断を要するコア業務に集中できるようになります。

実際に導入した自治体の多くが、年間で数千時間規模の業務時間削減を達成しており、その効果は数字として明確に表れています。

単に「楽をする」ためではなく、持続可能な行政運営を行うための必須手段として、業務時間の削減とリソースの再配置が進められているのです。

AIやロボットができることは任せ、人は人にしかできない仕事をするという役割分担が、自治体運営の標準になりつつあります。

DXによる業務効率化を実現するための具体的な進め方や成功事例については、こちらの記事で詳しく解説しています。 合わせてご覧ください。

セキュリティ確保と生成AI連携による新たな付加価値の創出

かつて、自治体がAIなどのクラウドサービスを導入する際に最大の障壁となっていたのが、セキュリティの問題です。

自治体の業務システムは、総合行政ネットワーク(LGWAN)という非常にセキュアな閉域網の中で運用されており、インターネット回線を利用する一般的なクラウド型AI-OCRの利用は困難でした。

しかし、近年ではこの課題を解決するサービスが増えています。

LGWAN環境から直接利用できる「LGWAN-ASP」対応のAI-OCRサービスが登場し、セキュリティポリシーを遵守しながら、安全に外部のAIエンジンを利用できる環境が整いました。

また、個人情報をマスキングしてAIに学習させない仕組みや、処理データをサーバーに残さない仕様など、自治体特有のセキュリティ要件に配慮したサービスが標準化しつつあります。

技術的な障壁とセキュリティ面の懸念が払拭されたことで普及が定着し、現在はシステム標準化や生成AI活用を見据えた導入が加速しています。

法人・企業が生成AIを導入・活用する際の具体的なガイドラインや注意点については、こちらの記事で網羅的に解説しています。 合わせてご覧ください。

【税務・窓口業務】大量の申請書処理をAI-OCRで効率化した自治体事例

ここからは、実際にAI-OCRを導入して成果を上げた事例を具体的に見ていきましょう。

まずは、最も紙の書類が多く、導入効果が出やすい税務や窓口業務の事例です。

繁忙期に業務が集中しがちなこれらの部署で、どのように効率化が図られたのか、5つの事例を紹介します。

【群馬県】RPAとの連携で入力業務を完全自動化し工数を削減

群馬県では、県庁全体の業務改革の一環として、AI-OCRとRPAを組み合わせた業務自動化に積極的に取り組んでいます。

特に、税務課における自動車税などの課税資料の入力業務は、膨大な量の手書き数字を扱うため、職員の大きな負担となっていました。

導入前は、職員が紙の資料を見ながら基幹システムへ手入力を行っていましたが、単純な入力ミスや長時間の作業による疲労が課題でした。

そこで、AI-OCRを活用して手書きの課税資料をCSVデータ化し、そのデータをRPAロボットが自動でシステムに入力するフローを構築しました。

この取り組みにより、入力業務にかかる時間が劇的に短縮されただけでなく、入力ミスの削減にもつながりました。

また、群馬県の特徴的な取り組みとして、県が主導して市町村への普及啓発も行っており、県内全体の自治体DXを底上げしています。

単なるツールの導入にとどまらず、業務フローそのものを見直し、人間が判断すべき工程とデジタルに任せる工程を明確に分けたことが、成功の大きな要因と言えるでしょう。

【大阪府八尾市】市民税申告書などの入力負担を大幅に軽減

大阪府八尾市では、市民税・府民税の申告書処理業務においてAI-OCRを活用し、大きな成果を上げています。

毎年2月から3月にかけての申告時期には、数万件に及ぶ申告書が提出され、短期間で集中的にデータ入力を行う必要がありました。

これまでは、非常勤職員を多数雇用して入力作業を行っていましたが、手書き文字の判読や入力精度の確保に苦労していました。

また、採用難により十分な人員を確保すること自体が難しくなっているという背景もありました。

八尾市が導入したAI-OCRは、クセのある手書き文字でも高い精度で認識することができ、読み取り結果の確認作業もスムーズに行えるインターフェースを備えていました。

導入の結果、入力作業にかかる時間を大幅に削減できたほか、職員が繁忙期の残業を減らすことができ、働き方改革にも寄与しています。

さらに、削減できた時間を活用して、申告内容の精査や市民への丁寧な窓口対応など、より質の高い業務に注力できるようになった点も高く評価されています。

こちらは八尾市の導入事例について詳細にまとめられたインタビュー記事です。 合わせてご覧ください。 https://www.tegaki.ai/use-case-yao-city/

【福岡県福岡市】繁忙期の大量の申請書類をスピーディーに処理

DX先進都市として知られる福岡市でも、AI-OCRは重要な役割を果たしています。

福岡市では、引越しシーズンなどの繁忙期における住民異動届や、各種福祉手当の申請など、季節によって業務量が大きく変動する窓口業務を抱えています。

これらの業務では、特定の時期に大量の書類が殺到するため、通常の人員体制では処理が追いつかず、市民の待ち時間発生や処理の遅延が課題となっていました。

そこで福岡市は、AI-OCRを活用して申請書の情報を即座にデータ化する仕組みを構築しました。

特に効果を発揮したのが、定型的な申請書の処理です。

スキャナーで読み取った画像をAIが解析し、必要な情報を抽出して一覧化することで、職員は画面上で確認を行うだけで済みます。

これにより、1件あたりの処理スピードが格段に向上し、繁忙期であっても滞りなく業務を遂行できるようになりました。

また、福岡市では実証実験の結果をオープンに公開しており、AI-OCRの識字率の高さや費用対効果の実績が、他の自治体が導入を検討する際の貴重な判断材料となっています。

こちらは福岡市における行政事務のDX推進状況が分かる資料です。 合わせてご覧ください。 https://www.city.fukuoka.lg.jp/gikaizimukyoku/giji/shisei/documents/20230306-somu-betten1-1.pdf

【石川県七尾市】転入手続きなどの窓口業務を効率化し待ち時間を短縮

石川県七尾市では、「書かない窓口」の実現に向けた取り組みの一環としてAI-OCRを活用しています。

従来の窓口業務では、市民が手書きで申請書を記入し、職員がそれをシステムに入力するという二度手間が発生していました。

七尾市の取り組みでは、提出された書類をその場でスキャンし、AI-OCRで読み取ることで、入力作業の省力化を図っています。

これにより、転入や転居の手続きに来庁した市民の待ち時間を短縮することに成功しました。

また、職員側のメリットとして、システム入力時のプレッシャー軽減が挙げられます。

手入力ではどうしてもタイプミスが発生する可能性がありますが、AI-OCRが下書きデータを作成してくれるため、職員はあくまで確認と修正を行うだけでよくなります。

精神的な負担が減ることで、窓口での市民対応により余裕を持って接することができるようになりました。

地方都市における限られた人員での窓口サービス維持において、テクノロジーがいかに有効であるかを示す好例です。

【福島県郡山市】単純作業の削減でコア業務への集中時間を確保

福島県郡山市では、働き方改革と行政サービスの向上を両立させるために、AI-OCRの全庁的な活用を推進しています。

特定の部署だけでなく、アンケートの集計業務や各種届出のデータ化など、庁内に散在する「紙からのデータ入力業務」を洗い出し、横断的にAI-OCRを適用しました。

例えば、手書きのアンケート回答をデータ化する作業は、従来は職員が残業して行っていましたが、AI-OCRの導入により作業時間が数分の一に短縮されました。

郡山市が重視したのは、「浮いた時間を何に使うか」という点です。

単純作業の時間を削減することで生まれたリソースを、企画立案や市民との対話、複雑なケースへの対応といった「コア業務」に振り向けることを明確な目標としました。

その結果、職員のモチベーション向上にもつながり、前向きな業務改善の提案が増えるなどの副次的な効果も生まれています。

ツールを導入して終わりではなく、組織の風土改革につなげている点が、郡山市の事例の重要なポイントです。

こちらは郡山市におけるAI-OCR導入の検証結果が報告されている資料です。 合わせてご覧ください。 https://www.city.koriyama.lg.jp/uploaded/attachment/54560.pdf

【子育て・福祉業務】複雑な帳票読み取りで成果を出したAI-OCR自治体事例

続いて、子育てや福祉分野での活用事例を紹介します。

これらの分野の帳票は、記入項目が多く、記述式の内容も含まれるため、読み取り難易度が高い傾向にあります。

しかし、AI技術の進化により、こうした複雑な帳票でも高い効果を発揮できるようになっています。

【東京都板橋区】保育施設入所申請で年間1,480時間を削減

東京都板橋区は、AI-OCR導入による効果測定において、非常にインパクトのある数字を叩き出した事例として有名です。

特に負担が大きかった「保育施設の利用申し込み」に関する業務において、AI-OCRとRPAを活用しました。

保育園の入所申請書は、保護者の就労状況や家庭の状況など記入項目が非常に多く、また手書き文字も多岐にわたるため、職員が目視で確認しシステムに入力する作業に膨大な時間を要していました。

板橋区では、この業務にAI-OCRを導入し、手書き文字のデジタル化を自動化しました。

その結果、保育課の業務だけで年間約1,480時間もの業務時間削減を実現しました。

これは職員約1人分の年間労働時間に匹敵する数字であり、その効果の大きさは計り知れません。

削減された時間は、保護者からの相談対応や、待機児童対策のためのきめ細やかな調整業務などに充てられています。

板橋区の成功事例は、多くの自治体が「まずは保育業務から」とAI-OCR導入を決めるきっかけとなりました。

こちらは板橋区におけるAI-OCR導入の効果について詳しく解説された事例ページです。 合わせてご覧ください。 https://www.hitachi-systems.com/case/government/2407/

【岩手県久慈市】手書き文字が多い福祉関連業務で効率化を実証

岩手県久慈市では、高齢者福祉や介護保険関連の業務においてAI-OCRの実証実験を行い、その有効性を確認しました。

福祉関連の申請書は、高齢者が記入することが多く、筆圧が弱かったり、枠からはみ出していたりと、読み取りが難しいケースが多々あります。

従来のOCR技術では認識率が低く、実用化は難しいとされていましたが、ディープラーニングを活用した最新のAI-OCRであれば、こうした文字でも高い精度で読み取れることが実証されました。

久慈市の取り組みでは、特に介護保険の認定調査票などのデータ化において効果を発揮しました。

専門用語や特記事項などの記述も多いため、すべてを自動化することは難しいものの、定型部分の入力をAIに任せるだけでも大幅な省力化につながりました。

また、過疎化が進む地域において、限られた職員数で高齢者を支えるためのインフラとして、デジタル技術が不可欠であることを示しています。

現場職員が実際に使ってみて「これなら使える」と実感できたことが、本格導入への大きな後押しとなりました。

こちらは久慈市でのAI-OCR活用とRPA連携の実証実験に関するレポートです。 合わせてご覧ください。 https://business.ntt-east.co.jp/case/2020/n017/pdf/kuji.pdf

【愛知県豊橋市】煩雑な手書き帳票処理を自動化し市民サービス向上

愛知県豊橋市では、子育て支援課における児童手当の現況届処理などにAI-OCRを活用しています。

現況届は、受給資格を確認するために毎年提出が必要な書類であり、短期間に数万件の処理が発生します。

豊橋市では、この処理を迅速に行うためにAI-OCRを導入しました。

以前は、書類の開封から審査、入力までに長い期間を要していましたが、データ化のスピードが上がったことで、審査業務への着手が早まりました。

これにより、手当の支給決定通知をより早く市民に届けることが可能になり、市民サービスの向上に直結しています。

また、豊橋市ではRPAとの連携もスムーズに行われており、AI-OCRで読み取ったデータを、RPAが自動で住民記録システムと照合するといった高度な処理も実現しています。

煩雑な事務処理をバックヤードで効率化することで、窓口では職員が笑顔で市民に対応できる余裕が生まれています。

業務効率化が、最終的には市民の満足度向上につながることを実証した事例と言えます。

【全庁的なDX推進】LGWAN環境下でセキュアにAI-OCRを運用した自治体事例

特定の部署だけでなく、全庁的にAI-OCRを展開し、組織全体のDXを推進している事例も増えています。

ここでは、LGWAN環境での運用や、スモールスタートからの拡大など、導入戦略に特徴のある事例を紹介します。

【東京都港区】高いセキュリティが求められるLGWAN-ASP環境で運用

東京都港区は、情報セキュリティに対する意識が非常に高い自治体の一つです。

AI-OCRの導入にあたっても、住民の個人情報を保護することを最優先事項とし、LGWAN(総合行政ネットワーク)内での運用を必須条件としました。

港区が採用したのは、LGWAN-ASPに対応したAI-OCRサービスです。

これにより、インターネットに接続することなく、閉域網の中で安全にデータを処理することが可能になりました。

セキュリティポリシーの厳しい自治体でも、外部のAI技術を安全に利用できるモデルケースを示したと言えます。

港区では、税務、福祉、人事など多岐にわたる部署で活用が進んでおり、各部署の担当者が自ら帳票の設定を行えるよう、研修体制も整備されています。

セキュリティと利便性を両立させながら、全庁規模での業務効率化を実現している点は、他の大規模自治体にとっても参考になるはずです。

強固なセキュリティ環境下でも、最新のテクノロジーを活用できることを証明しました。

【東京都三鷹市】先進的なITツール活用で自治体DXを牽引

東京都三鷹市は、古くからICT活用に積極的な自治体として知られており、AI-OCRの導入においても先駆的な役割を果たしてきました。

三鷹市の特徴は、AI-OCR単体での活用にとどまらず、チャットボットや電子申請システムなど、他のデジタルツールと有機的に連携させている点です。

例えば、AI-OCRで読み取ったデータを分析し、どのような問い合わせや申請が多いかを把握することで、WebサイトのFAQ改善やチャットボットの回答精度向上に役立てています。

また、職員が自発的に業務改善に取り組む文化が根付いており、現場レベルから「この業務にAI-OCRを使いたい」という提案が活発に出されています。

三鷹市の事例は、ツールを導入するだけでなく、それを使いこなすための組織文化や人材育成がいかに重要かを教えてくれます。

自治体DXを牽引するリーダーとして、常に新しい技術の実証と実装に挑戦し続けています。

【茨城県つくば市】スモールスタートから定型業務の自動化を拡大

「科学の街」として知られる茨城県つくば市では、RPAとAI-OCRの導入において、まずはスモールスタートで実績を作る戦略をとりました。

いきなり全庁導入するのではなく、効果が出やすく、業務フローが明確な一部の業務から試験的に導入を開始しました。

最初の成功体験として、市民税課や資産税課での入力業務自動化を実現し、その成果を庁内で共有しました。

「本当に楽になるんだ」という実感が職員の間に広まることで、他の部署からの利用希望が増え、徐々に適用範囲を拡大していきました。

無理のないペースで導入を進めたことで、現場の混乱を最小限に抑えつつ、着実な効果を積み上げることができました。

また、つくば市ではRPAのシナリオ作成を職員自身が行えるよう勉強会を開催するなど、内製化にも力を入れています。

外部ベンダーに頼りきりにならず、自分たちで業務を改善していく力を養うことで、持続可能なDX体制を構築しています。

【石川県かほく市】限られた職員数でも運用可能な体制を構築

石川県かほく市のような中規模自治体では、大都市に比べてIT専門の職員を確保することが難しいという課題があります。

しかし、かほく市では、少数の担当者でも運用可能なAI-OCRソリューションを選定し、効率的な体制を構築しました。

重視したのは、専門知識がなくても直感的に操作できるUI(ユーザーインターフェース)を持つツールです。

現場の職員が自分で読み取り枠の設定や帳票の定義を行えるため、情報システム部門の手を煩わせることなく、各課主導で業務改善が進められています。

また、近隣の自治体と情報交換を行い、RPAのシナリオやAI-OCRの設定ノウハウを共有する動きも見られます。

リソースが限られているからこそ、ツール選びの工夫と自治体間の連携によって、効率的にDXを推進している好例です。

職員一人ひとりのITリテラシー向上も並行して進められており、組織全体の底上げが図られています。

【石川県津幡町】紙業務の電子化を推進しペーパーレス化を実現

石川県津幡町では、AI-OCRの導入をきっかけに、町役場全体のペーパーレス化を強力に推進しています。

従来は紙で保管していた文書を、AI-OCRによる読み取りプロセスを通じてデジタルデータとして管理する運用に切り替えました。

これにより、物理的な保管スペースの削減だけでなく、文書検索のスピードも劇的に向上しました。

過去の申請書を確認する必要が生じた際、これまでは書庫まで行って探していましたが、今では自席のパソコンからキーワード検索ですぐに見つけることができます。

また、デジタル化されたデータは庁内のネットワークで共有しやすいため、部署間での情報連携もスムーズになりました。

AI-OCRを単なる入力ツールとしてだけでなく、文書管理のデジタル化への入り口として活用し、業務環境そのものを変革した事例です。

紙文化からの脱却を目指す自治体にとって、非常に参考になるアプローチと言えるでしょう。

こちらは津幡町におけるAI-OCR導入とペーパーレス化の取り組みを紹介した事例記事です。 合わせてご覧ください。 https://www.pfu.ricoh.com/dynaeye/product/dynaeye10/casestudies/tsubata.html

自治体の導入事例からわかるAI-OCR活用の3つの具体的メリット

ここまで多くの事例を見てきましたが、AI-OCRの導入には共通する明確なメリットがあります。

自治体が予算を投じて導入する価値はどこにあるのか、3つのポイントに整理して解説します。

入力作業時間を約8割削減し、残業時間の抑制につなげる

最大のメリットは、やはり圧倒的な時間短縮効果です。

多くの事例で証明されている通り、手入力と比較して作業時間を50%〜80%削減することが可能です。

例えば、1枚あたり3分かかっていた入力作業が、確認作業を含めても30秒で終わるようになれば、その差は歴然です。

特に繁忙期の残業が常態化している部署においては、AI-OCRの導入が職員の長時間労働を是正する特効薬となります。

定時退庁が可能になることで、職員の健康管理やワークライフバランスの改善にも直結します。

「入力作業のために残業する」という非効率な働き方から脱却できる点は、組織としても個人としても非常に大きな利益です。

手書き文字の目視チェック・修正工数を最小限にする

人間が手入力を行う場合、どうしても避けられないのが「入力ミス」と、それを防ぐための「ダブルチェック」の手間です。

AI-OCRは、人間のように疲れることがなく、常に一定の精度で処理を行い続けます。

現在のAI-OCRは、認識精度が96%〜99%以上に達するものもあり、人間がゼロから入力するよりも遥かに正確です。

職員は、AIが読み取った結果に間違いがないかを確認するだけでよいため、精神的な負担も大幅に軽減されます。

また、AIが「自信がない」と判定した文字だけを人間がチェックする仕組みもあり、確認作業そのものを効率化できます。

ミスの修正にかかる手戻りの時間を削減できることも、隠れた大きなメリットです。

テレワーク対応が難しい「紙業務」をデジタル化できる

コロナ禍以降、自治体でもテレワークの導入が進みましたが、最大の阻害要因となっていたのが「紙の書類」でした。

「書類を見るために出勤しなければならない」という状況が多くの現場で見られました。

AI-OCRを導入して紙の書類をデジタルデータ化してしまえば、セキュアなネットワーク環境を通じて、自宅やサテライトオフィスからでも業務を行うことが可能になります。

紙という物理的な制約から解放されることは、柔軟な働き方を実現するための必須条件です。

災害時やパンデミック時における業務継続計画(BCP)の観点からも、紙業務のデジタル化はリスク管理として重要な意味を持ちます。

成功事例に学ぶ!自治体がAI-OCR選びで失敗しないための比較ポイント

AI-OCR製品は多数存在しますが、自治体が導入する際にチェックすべきポイントは民間企業とは少し異なります。

導入後に「使いにくい」「読み取れない」と後悔しないために、必ず確認すべき4つの選定基準を紹介します。

LGWAN対応かつ情報セキュリティ基準を満たしているか

自治体での利用において、セキュリティは妥協できない最重要項目です。

検討しているサービスがLGWAN-ASPとして登録されているか、あるいはLGWAN環境から安全に利用できる仕組みを持っているかを必ず確認してください。

また、読み取ったデータがAIの学習に使われるかどうかも重要なチェックポイントです。

住民の個人情報が含まれるデータを扱う以上、データがサービス提供側のサーバーに残らない設定ができるか、学習データとして二次利用されない契約になっているかを確認する必要があります。

総務省のセキュリティガイドラインに準拠していることは大前提として、ベンダーのセキュリティ体制を厳しくチェックしましょう。

自治体特有の「クセ字」や「特殊な帳票」の読取精度は高いか

自治体に提出される書類は、高齢者が書いた震える文字や、枠からはみ出した文字、訂正印が押された文字など、読み取り難易度が高いものが多く含まれます。

きれいな活字しか読めないOCRでは、現場では役に立ちません。

「手書き文字」の認識に特化したAIエンジンを搭載しているか、特に日本語の読み取り精度に定評があるかを確認しましょう。

また、自治体の帳票はレイアウトが複雑なものも多いため、非定型帳票や、項目がランダムに配置された書類にも対応できるかが重要です。

実際に現場で扱っている、一番読み取りにくそうな帳票を使ってテストしてみることをおすすめします。

現場職員だけで設定・修正ができる操作性(UI)か

高度な機能を持っていても、操作が難しく、設定のたびにSE(システムエンジニア)を呼ばなければならないようでは、運用は定着しません。

ITの専門知識がない現場の職員でも、マウス操作だけで直感的に読み取り範囲を指定したり、帳票定義を作成したりできるツールを選ぶべきです。

人事異動が多い自治体組織では、担当者が変わっても使い続けられる「使いやすさ」が非常に重要です。

マニュアルを読み込まなくても画面を見れば操作がわかるような、優れたUIを持つ製品を選定しましょう。

トライアル期間中に、実際に現場の担当者に触ってもらい、感想を聞くことが失敗を防ぐ鍵となります。

システム標準化への対応や生成AI連携などの拡張性はあるか

初めてAI-OCRを導入する場合、設定方法や運用ルール作りで戸惑うことも多いでしょう。

そのため、ベンダーのサポート体制が充実しているかは重要な比較ポイントです。

問い合わせに対するレスポンスの早さや、導入時の研修サポートの有無などを確認してください。

また、他の自治体での導入実績も信頼性の指標になります。

同じような課題を持つ他の自治体が使っているツールであれば、運用ノウハウや帳票の設定テンプレートなどが共有されている場合もあり、導入がスムーズに進みます。

「自治体向けコミュニティ」での情報共有に加え、2025年度のシステム標準化対応や生成AI機能の実装など、最新トレンドに追随できるベンダーであるかも重要な視点です。

業界を問わないDXの導入事例や成功事例については、こちらの記事で詳しく解説しています。 合わせてご覧ください。

事例確認の次は生成AI連携も見据えた実証実験(PoC)を

ここまで、AI-OCRの自治体導入事例と選び方について解説してきました。

多くの自治体がAI-OCRを活用し、劇的な業務効率化を実現していることは間違いありません。

しかし、記事を読んだだけでは、実際に「自庁の帳票」がどれくらいの精度で読み取れるかは分かりません。

導入を成功させるための次のステップは、実際に手を動かして試してみることです。

無料トライアルやデモを活用して費用対効果を試算する

多くのAI-OCRベンダーは、無料トライアルやデモ環境を提供しています。

まずはこれらを活用し、現場にある実際の申請書を使ってPoC(概念実証)を行ってください。

「どの程度の文字まで読めるのか」「設定にかかる時間はどれくらいか」を体感することで、導入後の運用イメージが明確になります。

その上で、削減できる見込み時間を算出し、導入コストに見合う費用対効果が出るかをシミュレーションしましょう。

具体的な数字があれば、予算要求の際にも説得力のある説明ができるようになります。

資料ダウンロードで詳細な導入事例とスペックを確認

まずは情報収集から始めたいという方は、各社が提供している製品資料や導入事例集をダウンロードしてみましょう。

Webサイトには載っていない詳細なスペックや、より具体的な他自治体の活用フローが掲載されていることもあります。

AI-OCRによる業務自動化は、自治体DXの最初の一歩にして、最も効果を実感しやすい取り組みです。

まずは他庁の成功事例を参考に、自庁の業務改革に向けた第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

【警告】AI-OCR導入で「組織が思考停止」する危険な兆候

「AI-OCRを導入したから、これでDXは完了だ」——。もし庁内でこのような空気が流れていたら、それは非常に危険なサインです。マッキンゼー・アンド・カンパニーなどの調査によると、デジタルツールを導入したものの、既存の業務プロセスをそのまま踏襲してしまった組織の多くが、期待した生産性向上を実現できていないことが明らかになっています。

これは、手段であるはずのデジタル化が目的化してしまい、業務の本質的な見直しを行わない「手段の目的化」が起きている証拠です。この状態が続くと、次のようなリスクが考えられます。

  • 確認作業の肥大化:AIの読取結果を人間が過剰にチェックし、かえって工数が増える。
  • 業務フローの硬直化:今のやり方をAIに合わせようとし、より効率的な手順への変更を拒むようになる。
  • 職員のデジタルアレルギー:便利になるはずが手間が増え、現場が新しい技術を拒絶するようになる。

便利なツールを入れたことに満足し、本来の目的である「住民サービスの向上」や「業務プロセスの抜本的改革」がおろそかになってしまう可能性があるのです。

引用元:

マッキンゼー・アンド・カンパニーのDXに関する調査レポートでは、単なるツールの導入にとどまり、組織文化や業務プロセスの変革(BPR)を伴わないデジタル化は、長期的な競争優位や生産性向上につながらないケースが多いと指摘されています。(McKinsey & Company, “Unlocking success in digital transformations”, 2018年)

【実践】AI-OCRを「業務改革の起爆剤」にする賢い組織の思考法

では、成果を上げている自治体はAI-OCRをどう捉えているのでしょうか?答えは明確です。彼らはAI-OCRを「入力ツール」ではなく、「業務フロー全体を見直すためのきっかけ」として利用しています。ここでは、成功する組織が実践している2つの「賢い」向き合い方をご紹介します。

視点①:完璧を求めず「AIと協働する」割り切りを持つ

AIの認識率が100%でないことを前提とし、人間が補完するプロセスを許容することです。

成功する組織の思考例:

「AIが読み取れない文字があるのは当たり前。AIが迷った箇所だけを人間が見ればいい。全てを目視確認するのはやめよう。」

このように、リスクの許容範囲を定義し、過剰なチェック業務を廃止することで、真の時短効果が生まれます。

視点②:浮いた時間を「未来への投資」に充てる

単純作業の削減はゴールではなくスタートです。空いたリソースを何に使うかが問われます。

成功する組織の思考例:

「入力作業がなくなった分、窓口で市民の話をじっくり聞こう。あるいは、集まったデータを分析して、新しい子育て支援策を考えよう。」

AIにはできない「感情への配慮」や「企画立案」に注力することで、職員の働きがいが向上し、結果として住民満足度が高まる好循環が生まれます。

まとめ

自治体においては、人口減少に伴う職員不足や、多様化する住民ニーズへの対応が急務となっており、AI技術の活用が持続可能な行政運営の鍵として期待されています。

しかし、現場からは「AI-OCRだけでなく、もっと幅広い業務を自動化したい」「セキュリティが心配で、新しい生成AIツールの導入が進まない」といった声も多く聞かれます。

そこでおすすめしたいのが、Taskhub です。

Taskhubは、AI-OCRのような特定用途だけでなく、メール作成、議事録の要約、データ分析、レポート生成など、200種類以上の業務タスクを「アプリ」として選ぶだけで実行できる、包括的な生成AI活用プラットフォームです。

AI-OCRでデータ化した後の工程、例えばデータの要約や住民への回答案作成なども、Taskhubならシームレスに連携して自動化することが可能です。

しかも、Azure OpenAI Serviceを基盤とした高度なセキュリティ環境で提供されるため、機密性の高い情報を扱う自治体や企業でも安心して利用できます。

さらに、導入にあたっては専門のAIコンサルタントが業務フローの洗い出しからサポートするため、「どの業務にAIを使えばいいかわからない」という場合でも、確実に成果を出せる体制が整います。

単なる文字認識にとどまらず、業務プロセス全体の革新を目指すなら、Taskhubが強力なパートナーとなります。

まずは、Taskhubで実現できる具体的な業務改善例や機能をまとめた【サービス概要資料】を無料でダウンロードしてください。

AI-OCRの一歩先へ進み、Taskhubとともに組織全体のDXを飛躍的に加速させましょう。

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