経理部門への社内問い合わせを減らす方法とは?原因・解決策・企業事例を徹底解説

「交通費の精算ってどうやるんでしたっけ?」「この請求書、インボイス番号がないけど大丈夫?」

こういった問い合わせが毎日のように経理部門に届いている、という企業は少なくありません。しかも、まったく同じ内容の質問が毎月繰り返されているケースも少なくありません。

経理担当者にとって、問い合わせへの対応は「やるべき仕事ではあるが、本来業務ではない」という業務です。仕訳・決算・税務申告といった業務に集中したいのに、問い合わせ対応に時間を取られてしまうという形です。

本記事では、経理部門の社内問い合わせが抱える課題の本質を整理したうえで、具体的な解決策と実際の効率化事例を紹介します。

目次

経理部門への社内問い合わせが抱える5つの課題

課題①:何度も同じ質問が届く

経理への問い合わせのなかで最も多いのが「以前も同じ内容を聞いた」というパターンです。

精算申請のルール、領収書の書き方、支払日の確認のような、同じ質問が繰り返し届きます。問い合わせ1件にかかる時間を10分と仮定すると、月100件で月間16時間以上が消える計算になります。対応しているほうは「この質問、先月も来たな」と思いながらも、答えないわけにもいかない。この消耗感が積み重なっていきます。

課題②:繁忙期に問い合わせが集中する

月次締め・四半期決算・年度末など、経理担当者が最も忙しい時期に、問い合わせも2〜3倍に急増します。

「締め日が近いから急いで精算を出そう」と思った従業員が、やり方がわからず経理に問い合わせる、という構造がそのまま繁忙期の負荷に直結しています。本来最も集中すべきタイミングに、対応業務が重なってしまいます。

課題③:問い合わせ対応で本来業務が後回しになる

仕訳・決算・税務申告・予実管理——これらは経理担当者にしかできない、付加価値の高い業務です。しかしそれらを後回しにして、誰でも調べれば分かる内容の問い合わせに対応し続けていては、経理部門の本来の価値が発揮できません。

担当者が疲弊すれば離職リスクも上がります。少人数体制の経理部門において、経験豊富な担当者の離職は業務継続性に直結する問題です。

課題④:ナレッジが属人化・蓄積されない

「この件はAさんに聞かないと分からない」という状態になっている経理部門は少なくありません。

年次処理の例外対応や、過去の経緯を踏まえたルール解釈のような知識はベテラン担当者の頭の中にあり、メモも残っていません。

担当変更や退職のたびにナレッジが失われ、学習コストが発生してしまいます。これも社内問い合わせが減らない根本原因の一つです。

課題⑤:従来のマニュアルが読みづらい/どこにあるのか分からないという問題

経費申請・処理の基本的な方法は、社内ポータルサイトやマニュアルに書いてあります。しかし、「マニュアルのページ数が膨大で読みづらい・読む気が起きない」「そもそも、マニュアルがどこにあるのか分からない」といった課題から「直接聞いた方が早い」という結論に至り、担当者への対応が発生してしまいます。

網羅的なマニュアルがあれば解決するわけではなく、問い合わせを行う社員は「自分の疑問点に対してピンポイントかつ高速で回答が与えられること」を求めているため、ミスマッチが発生してしまいます。

経理の社内問い合わせの理想状態

前のセクションで整理したとおり、経理への問い合わせが減らない原因はフローの構造にあります。 どのような状態になれば理想的と言えるのかを整理します。

① 従業員が自己解決できる環境

現状、「どこに書いてあるか分からない/マニュアルが分かりづらい」から「経理担当に質問する」が最短経路になっています。これを変えるには、調べればわかる状態を作ることが必要です。

具体的には、社内のチャットボットに「交通費 精算 やり方」と入力すれば30秒で答えが返ってくる、あるいは社内ポータルを検索すれば申請書の記入例が出てくるといった環境を整備することで、問い合わせる必要がなくなります。

② 回答の一元化・一貫性

「Aさんに聞いたときと、Bさんに聞いたときで言っていることが違う」という状態は、ルールに対する従業員の不信感を生み、さらなる確認問い合わせを招きます。

あるべき状態は、誰が答えても同じ回答が返ってくること。そのためには、回答の源泉となる情報が一箇所に集約され、ルール改定のたびにその情報が更新されている仕組みが必要です。担当者の頭の中ではなく、システムやドキュメントに情報が宿っている状態が理想です。

③ 問い合わせ件数の可視化と改善サイクル

現状、「何の問い合わせが多いか」を把握できている経理部門はほとんどありません。感覚的に「精算の質問が多い気がする」とは思っていても、正確なデータがないため手が打てない。

あるべき状態は、問い合わせの内容・件数がデータとして蓄積されることです。「先月は精算関連が60件、支払日確認が20件」といったデータが見えれば、「精算のFAQをもっと充実させよう」「支払日はカレンダーに自動通知を設定しよう」という具体的な改善アクションに繋がります。問い合わせを減らすだけでなく、根本的な業務フロー改善のヒントにもなります。

経理部門の社内問い合わせを減らす4つの解決策

解決策①:社内FAQチャットボットを構築する

よくある質問をチャットボットに学習させ、社内チャットツールから即時回答できる環境を作ります。

社内FAQチャットボットのメリット:

  • 24時間・即時回答(経理担当者が不在でも対応可能)
  • 回答が一貫しており、担当者によるバラつきがない
  • 問い合わせ件数・内容がデータ化され、FAQ改善のサイクルが回る
  • 繁忙期でも対応負荷が上がらない

問い合わせ量が多い・繁忙期に集中する・担当者数が少ない——こうした条件に当てはまる経理部門には特に有効です。

解決策②:FAQページ・社内Wikiを整備する

精算ルール・書類の書き方・スケジュールをまとめた専用ページを社内ポータルやNotionなどに作成します。

現時点でマニュアルを整備している場合は、発生する問い合わせや課題別にマニュアルの内容を細分化して掲載することも有効です。

ただし「探す手間」は依然として残るため、自己解決率はチャットボットより低くなります。 メンテナンスも必要なため、定期的な更新体制を作ることが前提です。

解決策③:問い合わせフォームを一本化する

メール・Slack・口頭・電話など、バラバラな問い合わせ経路をフォームに集約します。

対応漏れを防ぎ、履歴管理・優先度付けが可能になります。 ただし、問い合わせの数自体は減りません。対応効率化のための施策として位置付けるのが正確です。

結論として、先述の課題の解決と業務負荷の削減を最も実現することができるのは、社内FAQチャットボットです。 他の解決策も組み合わせることでより効果が高まりますが、まず取り組むべきはチャットボットの導入です。

社内FAQチャットボットで業務効率化した3つの事例

ここからは、社内FAQチャットボットを導入し、自社の問い合わせ業務を効率化した企業事例を紹介します。

Taskhubで実施した独自取材に基づく情報のため、是非ご覧ください。

事例①:問い合わせ対応時間を4時間から3分に短縮【SB C&S株式会社】

ソフトバンクの100%子会社であるSB C&S株式会社では、社内の製品問い合わせに対してメールで返答するフローが定着しており、1回の対応に約4時間(半日)かかっていました。

同社はRAGを活用した社内AI「CASAI(SB C&S AI CHAT)」を導入し、社内ナレッジと連携させてチャットで即時回答できる環境を構築。結果、対応時間は4時間から約3分にまで短縮されました。社員の利用率も20%から90%に向上し、月5〜6万件のやりとりが発生するまでに定着しています。

AX戦略本部 本部長の北澤さんは以下のように述べています。

「これまで半日かかっていた確認作業が、わずか3分で自己解決できるケースも生まれています。」

また、社内への浸透度についても手応えを感じているといいます。

「『CASAIがなくなると業務に困る』という声が圧倒的多数を占め、非常に嬉しく感じています。」

「誰かに聞く」フローが根付いた組織でも、情報へのアクセス経路を変えるだけで劇的に改善できることを示した事例です。

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事例②:社内規程・ルール問い合わせをRAGで自己解決化【丸紅株式会社】

丸紅株式会社では、RAGを活用した社内向け生成AIチャットサービスを自社開発し、グループ全体に展開しました。活用用途の一つが、社内規程集やルールブックへの問い合わせ対応の自動化です。「この申請はどの規程が適用されますか?」「この経費は精算できますか?」といった、これまで担当部門に聞かないと答えが出なかった質問を、チャットで即座に解決できる環境を構築しています。

2024年9月時点でグループ全体で約9,200名が利用し、アクティブ利用率は60%超を達成。「どこに書いてあるか分からないから聞く」という問い合わせを、ナレッジベースと連動したチャットで自己解決に変えた事例です。

デジタル・イノベーション部 データアナリティクス課長の吉田元気さんは、内製にこだわった理由をこう語っています。

「内製なのでユーザーの『業務でこれもできないの?』といった無邪気な質問にも迅速に対応することができる」

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事例③:5ヶ月で9,000件・1,620時間の問い合わせを削減【GMOペパボ株式会社】

GMOペパボ株式会社は、まず自社内でAIチャットボットによる問い合わせ対応の自動化に取り組みました。 2024年1〜5月のわずか5ヶ月間で、社内の問い合わせ対応件数を9,000件削減、対応時間を1,620時間削減という成果を上げています。

GMOペパボは、問い合わせチャットボットも販売していますが、事業開発部 即レスAIチーム サブマネジャーの秦さんは、自社運用の経験がサービスに活きていると述べています。

「実際に社内で運用して直面した課題、回答精度の維持、ナレッジの陳腐化、現場の抵抗感を一つひとつ解決してきた知見が、プロダクトの設計にもサポート体制にも反映されています」

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経理での社内問い合わせチャットボット導入でよくある質問

チャットボット導入を社内で提案すると、以下のような質問が出ることがあります。あらかじめ回答を準備しておきましょう。

Q1. 「導入コストが高いのでは?」

A. 月額数万円〜が相場ですが、経理担当者が問い合わせ対応に費やしている時間を人件費換算すると、多くの場合1〜3ヶ月で投資回収できる計算になります。

ポイント:担当者の時給換算3,000円 × 月16時間(100件対応)= 月48,000円のコスト。月額3万円のツールなら、初月から差益が出ます。こうした数字を提案資料に盛り込むと説得力が増します。

Q2. 「誰がFAQを登録・更新するのか。運用負荷が心配」

A. 専任担当者はほぼ不要です。ノーコードの管理画面で更新できるツールが多く、月1回程度の情報棚卸しで十分なケースがほとんどです。初期FAQは既存の問い合わせ履歴(メールやSlackの過去ログ)から抽出できるため、0から作る必要もありません。

ただし、月1回ペースでの情報の更新は必須です。情報が古くなり、現在の業務フローとの乖離が起きてしまうと、チャットボットが使われず、元の状態に戻ってしまいます。情報更新や点検の運用フローについては整えておくようにしましょう。

Q3. 「社内情報を外部クラウドに載せてセキュリティは大丈夫か?」

A. 社内問い合わせチャットボットには、クラウド型・オンプレ型・社内設置型など選択肢があります。セキュリティ要件の高い業種でも対応できるツールは存在します。まず情シスと「どのレベルの情報をFAQ化するか」を整理したうえで、要件に合ったツールを選定することが重要です。

Q4. 「チャットボットが答えられない質問はどうなるのか?」

A. 「担当者にエスカレーション」フローをあらかじめ設定しておけば、複雑な質問や例外ケースだけを人が対応できます。SB C&Sの事例でも、AIが回答できない質問を担当者に橋渡しするフローが機能しています。全件を担当者が受けるよりも、問い合わせのトリアージが自動化されることでミス・対応漏れが減るメリットがあります。

まとめ

経理部門の社内問い合わせが減らない原因は、個人の努力や注意喚起では解決できない業務構造の問題です

解決するためには、従業員が自己解決できる環境を作ることが重要です。そのための最も効果的な手段が、社内FAQチャットボットの導入です。

まずは経理への問い合わせのなかで頻度の高いものをTOP20〜30件ピックアップし、何をチャットボット化していくのかから始めてみるようにしましょう。

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