株式会社ディー・エル・イーは、株式会社AI VOLTと共同で『秘密結社 鷹の爪』を活用した観客参加型「AIインタラクティブ映画」の実証実験を行いました。上映される映画の物語に観客がリアルタイムで介入し、内容を変化させていくという、世界でも類を見ないこの先進的な取り組みは、エンターテインメントの未来に新たな可能性を示すものです。今回は、本企画を主導した株式会社ディー・エル・イーの代表取締役社長も務めるクリエイターFROGMANさんと、技術開発を担ったAI VOLTの代表取締役 軍神さんに、企画の背景から開発の舞台裏、そしてAIが切り拓くエンタメの未来像まで、詳しくお話を伺いました。
▼FROGMANさん

▼軍神さん

「公開しながら創る」全く新しい映画体験
Q. なぜ「AIインタラクティブ映画」という企画を立ち上げたのでしょうか?
FROGMANさん: 映画をただ上映するだけでなく、公開しながらみんなで一緒に創り上げるような体験型イベントにしたら面白いのではないか、と考えたのが始まりです。その構想を実現するためのパートナーを探す中で、AI VOLTさんに出会いました。ご提案いただいた内容が我々の目指す方向に合致していたこともあり、今回のプロジェクトを共にお願いすることになりました。
観客がキャラクターに!リアルタイムで物語を生成するAI技術の仕組み
Q. AIインタラクティブ映画は、具体的にどのような仕組みで、どんな技術が使われているのですか?
FROGMANさん: 我々が構想として軍神さんにぶつけたのは、例えば上映される地域や時間帯に合わせて劇中の広告が変化したり、参加してくれたお客さん全員の名前がエンドロールのクレジットに載ったりするような、インタラクティブな仕組みです。夜ご飯の時間帯ならラーメン屋さんの広告が出たり、商業施設での上映なら近隣店舗の案内が出たりしたら面白いよね、と。こうしたエンタメとしてのアイデアをまず提示しました。
軍神さん: 今回の映画の最も特徴的な点は、観客が自分そっくりの「鷹の爪キャラ」としてスクリーンに登場し、自分の声で会話に参加できることです。これにより、その場その場で上映内容がリアルタイムに生成され、毎回違う物語が展開されます。この仕組みを実現するために、我々は少ないデータ量から観客を”鷹の爪団のような”キャラクターに変換する独自のAI技術を開発しました。加えて、投げ銭機能や広告のリアルタイム変更といった要素もありましたので、劇場の通信環境を考慮しながら、すべてを遅延なくリアルタイムで生成していく技術を構築しました。
【参考:映画の特長まとめ】
■参加者の顔と声が”鷹の爪風”アバターに!映画の本編に登場

参加者の中からランダムで選ばれた観客の作成したアバターが本編に登場し、キャラクターの一人として物語に登場しました。
- 映像生成:事前登録した顔写真から、鷹の爪風のアニメキャラクターを生成。
- 音声生成:事前に収録した視聴者の音声をもとに、セリフ音声をリアルタイムに生成。
- パーソナリティを踏まえた会話生成:事前登録した簡単な質問をもとに、個人のパーソナリティを踏まえた会話劇を展開。
■バジェットゲージが進化!観客からのポイントで映画のシナリオやエンドロールが変化

『秘密結社 鷹の爪』の映画では、映画の予算がどの程度使用されているか、ゲージで表示される『バジェットゲージ』システムがあります。豪華な演出などが行われると急激にゲージが下降する、企業の宣伝などを行うとゲージが上昇するというように映画の予算が今どの程度残っているのかを作品を楽しみながら視認できる『秘密結社 鷹の爪』ならではのシステムです。
今回はシステム登録時やグッズ購入で付与されるポイントを、映画内で“投げ銭”のように使用することで、バジェットゲージが上がり、投げ込まれたポイントに応じてシーンが分岐。映画で視聴できるシーンに影響を与えます。
また、支援ポイントに応じてイラストが動くエフェクトが購入でき映画内に表示できる他、エンドロール中の大きさが変わるなど、観客の行動が直接映画を変化させる仕掛けを行いました。
「やりたい」が原動力。わずか3ヶ月で実現した開発の舞台裏
Q. 少ない情報量からの開発は非常に難易度が高かったと思いますが、特に意識した点や困難だった点は何でしたか?
軍神さん: 最も意識したのは、映像と音声を繋ぎ合わせる際に生じる遅延をなくすことです。1コマでも遅れると体験価値が著しく損なわれるため、コマの違和感や音声の途切れを極限までなくすことに注力しました。劇場の通信環境という制約の中で、いかにしてAIの会話を途切れさせることなく、かつ高速に処理し続けるか。この技術開発が最も難しく、大変なポイントでした。
FROGMANさん: 今回のプロジェクトがユニークなのは、通常AI開発で起点となる「AIで何ができるか」からではなく、我々エンタメ側が「こんなことをやったら面白いんじゃないか」という「やりたいこと」からスタートした点です。技術的に可能かどうかは一旦後回しにして、鷹の爪という作品で何を実現すればファンが喜ぶかを突き詰めていきました。この「面白いこと」から考えるアプローチこそが、エンタメとしては正しい形であり、今までになかったAIとエンタメの結びつきを生んだのだと思います。
何より、制作期間が非常に短かったことも挑戦でした。経済産業省が主導しているJLOX+(クリエイター・事業者支援事業費補助金)の採択が7月末で、そこから私たちが映像のベースを作り終えたのが9月末。AI VOLTさんには、そこからわずか3ヶ月ほどで、観客が使うスマホアプリから映画再生システムまで全てを仕上げていただきました。この驚異的なスピード感は、大手企業ではまず実現不可能だったでしょう。AI VOLTさんを選んだ理由の一つに、彼らの「若さ」がありました。無茶なお願いにもポジティブに取り組んでくれると期待していましたが、その期待を上回る献身的な対応でした。上映当日の朝まで続いた開発の末、最高の結果を出してくれた彼らの技術と情熱には、本当に感謝しています。ギリギリまで追い込んで実現してくれたのは、間違いなくAI VOLTさんでなければ不可能だったと思います。
軍神さん: 大変でしたが、大好きな作品に泥を塗るようなことは絶対にしたくないという強い思いがありました。ずっと楽しい期間を過ごさせていただきましたし、DLEさんから「アジャイルで」というオーダーを最初からいただいていたので、リリースの数日前まで「ここの体験は違うよね」と作り直すこともありました。自分たちだけでは絶対に生まれない発想で、お客さんが本当に喜ぶものづくりを学ばせていただきました。
鑑賞から「参加」へ。上映会の熱狂と、映画館の新たな価値創造
Q. 実際の上映会では、お客様からどのような反響がありましたか?
FROGMANさん: ストーリーを自分たちの手で変えたり、エンドロールに自分の名前が載ったりといった、「映画に参加する」という体験に対して、非常に大きなプラスの反応をいただきました。「登場機会がもっと欲しかった」というご意見もありましたが、これは裏を返せば「もっとこの世界に関わりたかった」という熱意の表れであり、体験そのものには極めて前向きな反応が多かったと捉えています。
今のエンタメ業界では、単なる「鑑賞」よりも「体験」の価値が非常に高まっています。お客さんは「この作品は確実に面白い」と分かっているものを選びたい傾向にあり、失敗したくないという心理が強い。だからこそ、自分が作品に参加できたり、物語に影響を及ぼせたりするような、テーマパークに近い体験を劇場で提供できれば、映画の新しい価値を提案できるのではないかと考えました。
実は今、映画館は世界的に斜陽産業の傾向にあり、日本も決して例外ではありません。配信サービスが普及し、家庭の視聴環境も向上した今、「なぜわざわざ映画館に行くのか?」という問いに答えを見つける必要があります。その答えの一つが、同じ回に集った人々と共に作品に影響を与え、笑い、泣き、一つの体験を共有する「場」としての価値です。今回の取り組みは、映画館が生き残るための新しいエンタメの形を模索するという、大きな目的も持っていました。
Q. ご自身が作品に登場する体験はいかがでしたか?
FROGMANさん: 想像以上にテンションが上がりますね。私は制作者として散々自分のキャラクターを演じていますが、それでもテスト上映で自分自身がスクリーンに映し出された時は、思わず声が出ました。DLEのファウンダーである椎木も言っていましたが、エンドロールに自分の名前が載るだけでも、皆さん非常に喜んでくださる。自分が好きな作品に少しでも関わりたいというニーズは、私たちが思っている以上に深く、大きいものなのだと改めて感じました。
収益構造の変革からプラットフォーム展開まで。AIで加速するDLEのビジョン
Q. このAIインタラクティブ映画の仕組みは、今後どのように展開していくのでしょうか?また、どのような世界観を目指していますか?
FROGMANさん: 例えば、M-1グランプリのようなお笑いコンテストで、視聴者が直接芸人さんに声援や投げ銭を送れるようにすれば、芸人さんの新たな収入源にもなり、モチベーション向上に繋がるかもしれません。様々な可能性を秘めていると考えています。将来的には、このインタラクティブシステムをプラットフォームとして様々なエンタメに提供し、ビジネスを大きく展開していきたいです。
軍神さん: 今回のプロジェクトが成功したのは、DLEさんが『秘密結社 鷹の爪』というIPを100%保有し、柔軟に活用できる稀有な存在だったからに他なりません。AIだけをやっている会社では絶対にこの発想は生まれませんでした。DLEさんがこの領域でトップになることは間違いないと確信しているので、我々はそのビジョンを技術でしっかりと実現できる会社でありたいと考えています。
FROGMANさん: 軍神さんがおっしゃる通り、100%自社IPであり、かつ経営のディシジョンメーカーである私や椎木が「どんどんやれ」と号令をかけたからこそ、このスピード感で実現できました。もしこれが他社の漫画原作だったら、複雑な権利関係でまず不可能だったでしょう。我々がAI VOLTさんを選んだことも、そしてAI VOLTさんが私たちの無茶な要求に応えてくれたことも、全てが噛み合った結果です。最高のパートナーシップだったと確信しています。

DLEとAI VOLTが切り拓くAI活用の新時代
Q. 最後に、皆様が今後注力していくサービスやメッセージがあればお願いいたします。
FROGMANさん: DLEは今、AIに積極的にコミットしています。一つは、月産800本のショート動画制作能力を持つ「OBETA AI STUDIO」。そしてもう一つが、企業や自治体のSNS運用を劇的に効率化する「しゃべくりAI」です。
この「しゃべくりAI」を使えば、広報担当者がキャラクターの口調を熟知していなくても、伝えたい内容を文章で打ち込むだけで、AIがキャラクターの口調のシナリオに変換し、音声と動画まで生成します。最短1分で動画が完成するため、即時性が求められるSNS運用に最適です。DLEが100%権利を持つIPだからこそ実現できる「ノー監修」でのスピーディーな活用が強みで、既に多くの企業様や自治体様から引き合いをいただいています。
軍神さん: 我々AI VOLTは、今回の映画制作でも活用した自社開発のAIエンジン「VOLT-Engine」を提供しています。この技術を使えば、従業員の方やキャラクターの見た目・声・会話内容を再現した「AIツイン」を迅速に生成できます。現在、特に上場企業の新規事業部の皆様からご好評をいただいております。AI活用にお困りの方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。