非エンジニアでもアプリやツールを作れる生成AIサービスが増える一方で、作業が属人化する「個人戦」になってしまい、組織としてうまく運用できない。開発の内製化において、そんな壁にぶつかっていませんか?
今年(2026年)2月にソフトローンチされた「Navi」は、非IT人材でもフルスクラッチでツールを構築できるだけでなく、タスクを細分化して役割分担を行う「チーム運用」をコアに据えた画期的なプロダクトです。
本記事では、APIを繋ぐだけでは機能しないAI開発のリアルと緻密なプロンプト設計、非エンジニア最大の障壁であるデバッグを支援する「分析AI」の仕組みについて、 Synlai株式会社代表の高田さんにお話を伺いました。AIで自動化できない「最後の20%」を担うエンジニアの新たな価値や、年内10プロダクトのローンチを目指す同社のスピード感あふれる展望など、外注コストを抑えて事業立ち上げを加速させたい新規事業担当者や経営層にとって必読の内容です。

“個人戦”になりがちなAI開発の課題から生まれた「チーム運用」の設計思想
Q. 「Navi」の概要と、どのような背景で開発されたのかを教えてください。
高田さん: 非IT人材でもフルスクラッチでツールを作れるプロダクト「Navi」を、2月にソフトローンチしました。もともとコンサ ルティング領域の事業を行っていた際に、事業計画書などの作成をAIと絡めて自動化できないかと考えたのが開発の始まりです。私自身、AIを活用しながら開発を進めていく中で、現在のAIツールはどうしても「個人戦」になりがちだという課題を感じていました。一人の人間がすべてを完結できてしまう反面、途中で作業をほかの人に任せることが難しく、属人化しやすいという側面があります。
そこでNaviでは、チーム運用と役割分担をしながらプロダクトを作っていくことを設計のコアに据えました。最初は要件を知っている人が設計書を書き、別の人が実装を進め、最後にテストをしていく。このようにタスクを細分化することで、会社の中で空いている余剰リソースをうまく分配しながら開発を進められます。非エンジニアであっても、AIの命令に従っていけばツールを作り上げることができるため、「チーム戦」で開発できることがこのプロダクトの最大の勝ち筋だと考えています。

APIを繋ぐだけでは動かない。細かな条件分岐とプロンプト設計へのこだわり
Q. ユーザーが迷わず使えるよう、UI/UXや機能面で特にこだわったポイントや、開発で苦労したエピソードがあれば教えてください。
高田さん: 基本的な使い方としては、業務要件を知っている管理者がAIと壁打ちをするように会話しながら設計書を作っていきます。会話を通じてAIが仕様を細かくヒアリングし、インフラの構成なども提案してくれます。設計書が完成すると、それをタスクに分解してドキュメントを作成し、リポジトリを作成するというフローに進みます。

開発において最も骨が折れたのは、裏側で動くプロンプトの設計です。当初はAPIを繋げば一般的な生成AIのように賢く動いてくれると思っていましたが、実際には細かい条件分岐を入れないと正しく機能しませんでした。そのため、シーンや画面ごとにかなり細かくプロンプトを分けて設定しています。特定の条件を満たした場合にのみ特定のプロンプトが動く仕組みや、前のタスクの情報をうまく引き継いで次のタスクに活かす仕組みなど、UIからは見えない裏側の設定に膨大な時間を費やしました。現在はターミナルやコードエディタを一部使用するため多少の癖は残っていますが、今後のアップデートでこの部分もさらに自動化していく構想を持っています。
外注コストを削減し内製化へ。デバッグの壁を越える「分析AI」の仕組み
Q. 社内向けの業務改善ツールだけでなく、外販するプロダクトの開発や設計にも使っていけるものなのでしょうか?
高田さん: はい、十分に使っていけると考えています。想定しているユーザー層の一つに、少人数で運営しているベンチャーのITコンサルタント企業などがあります。これまで自社でプロダクトを開発する際、オフショアや下請け企業に外注することで利益幅が減ってしまうという課題がありました。Naviを活用すれば、この開発プロセスを内製化し、利益率を確保できるようになります。
ただ、非エンジニアが開発を内製化する上で一番の壁になるのがデバッグ作業です。Naviではこの課題を解決するため、フェーズの最後に必ず検証プロセスを挟み、常に検証しながら開発を進められるようにしています。また、「分析AI」という機能も搭載しました。これは裏側でシステムがどう動いているかを俯瞰的に監視しており、エラーなどで作業が詰まった際に、ログを読み込ませて相談すると解決策を提示し、軌道修正を行ってくれる機能です。
自動化できない「最後の2割」を担うエンジニアの知見を活かす新たな構想
Q. 非エンジニアでも開発ができるようになる中で、エンジニアは今後どのようにバリューを発揮していくべきとお考えですか?
高田さん: エンジニアの存在は今後も絶対に必要だと思っています。先ほど開発の自動化を進めているとお話ししましたが、どれだけ自動化が進んでもカバーできるのは全体の80%程度です。最後の10%から20%を仕上げるデバッグや品質担保の作業には、やはりコードの深い理解があるエンジニアの力が必要不可欠です。
そこで私たちは、このデバッグ作業に特化したクラウドソーシングのような仕組みを将来的な構想として考えています。Naviでさまざまなツールが作られるようになった際、最後のデバッグ作業だけを切り出し、外部の知見を持つエンジニアに依頼できるサービスです。AIに実装の仕事が代替されつつある状況でも、エンジニアが自宅にいながらその専門的な知見を活かせる新しい仕事の形を生み出していきたいと考えています。
年内10プロダクトを目標に。0から1を生み出す人を後押しする開発支援
Q. ローンチ後の現在の活用状況や、会社として今後どういったプロダクト戦略を描いているのか、展望を教えてください。
高田さん: 2月から広告配信を開始したばかりということもあり、外部企業の本格的な導入事例はこれから作っていく段階です。しかし、社内トライアルではすでに成果が出ています。例えば、非エンジニアのメンバーがNaviを使い、広告プラットフォームのAPIからデータを取得して保存し、管理画面に反映させる独自のツールを作り上げています。
Naviの開発自体、ある意味で偶然の産物でした。自らAIコーディングを実践する中で、「アイデアさえあれば無限にプロダクトを生み出せる」ということを実感しました。そのため今後はNaviの展開に留まらず、事業計画書のチェックツールや特許の調査ツールなど、0から1で事業を立ち上げようとする人々を後押しするようなプロダクトを次々と開発していきたいと考えています。現在は「年内で10プロダクト」のローンチを目標に掲げています。型にはまらない形で、スピード感を持って絶え間なく開発とローンチを続けていくつもりです。