運用工数を大幅削減する自治体向けAIチャットボット開発の裏側

住民からの問い合わせ対応に追われているが、ホームページの改修やチャットボットのシナリオメンテナンスに割く工数がない―そんな悩みを抱えていませんか?

プレイネクストラボ株式会社が提供する「スマート公共ラボ AIコンシェルジュ」は、行政特有の課題を解決するAIチャットボットです。低コストで導入でき、すでに宮若市や岐阜県庁など複数の自治体で稼働を開始しています。

本プロダクトは、従来のシナリオ型チャットボットで発生していたメンテナンスの手間をRAGとWeb検索の組み合わせで解消し、文脈を読み取って攻撃的な言葉をブロックする高度なNGワード対応機能を備えているのが大きな特徴です。本記事では、開発の背景にある課題意識や独自の回答アルゴリズム、そして導入自治体を支える運用支援体制について、GovTech事業部 事業責任者の鈴木さんにお話を伺いました。

複雑なホームページの情報探しと、シナリオ保守の負担をなくすために

Q. まずは貴社の事業内容と、今回の「スマート公共ラボ AIコンシェルジュ」を開発された背景について教えてください。

鈴木さん: 2016年に創業し、現在社員数は約80名で開発メンバーが多い組織構成になっています。メインはシステムの受託開発ですが、6年ほど前から行政向けの「GovTech」事業を開始しました。自治体様のLINE公式アカウントの機能を拡張する「スマート公共ラボ」は、現在全国180以上の自治体にご導入いただいています。そのラインナップの一つとして提供しているのが「スマート公共ラボ AIコンシェルジュ」です。

開発の背景には、大きく2つの課題がありました。1つ目は、自治体のホームページが分かりにくく、情報が探せないために住民からの問い合わせが多くなっているという課題です。カテゴリーが複雑で構造化されておらず、サイト内の検索でもうまくヒットしない。ホームページをリニューアルするには多大な労力がかかりますが、AIがサイト内を検索して回答してくれれば、わざわざリニューアルしなくても解決できるのではないかと考えました。

2つ目は、職員様の業務工数の削減です。従来のシナリオ形式のチャットボットでは、情報をアップデートするたびにシナリオをメンテナンスしなければならず、担当者に大きな負担がかかっていました。また、確定申告のシーズンなどに、担当外の部署の職員に対して住民や他の職員から問い合わせが来ることも多くありました。マニュアルを探すのではなく、チャットボットが自動で解決してくれれば、職員様の業務は大幅に効率化されます。こうした背景から、2023年5月に福岡県の宮若市様で実証実験をスタートしたのが、AIコンシェルジュ開発のきっかけです。

「シナリオ・RAG・Web検索」の3段構えで最適な回答を自動生成

Q. 市民の方が使うフロント面のUI/UXや、設計において工夫されたポイントを教えてください。

鈴木さん: 検索エンジンのAI回答モードを参考にしました。選択肢を表示してユーザーに選ばせるのではなく、最適な回答を直接テキストで表示し、引用元のURLをしっかりと提示する設計にしています。簡単な概要だけを見せて「詳細はホームページで確認してください」と誘導するのではなく、チャットボットを見るだけでもうほぼ疑問が解決する状態を目指しました。少し文字数が多くなる場合もありますが、わざわざホームページを見に行かなくても済む体験を重視しています。

Q. 裏側の仕組みとして、膨大なホームページの情報をどのように読み込ませ、参照させているのでしょうか。

鈴木さん: ユーザーからの質問に対して、バックエンドでChatGPTが内容を分析し、3つのステップで回答を生成する仕組みになっています。

1番目に優先されるのは「シナリオ回答」です。例えば「イベント情報を教えてください」という質問に対しては、RAGで関連情報を引っ張ってくるのではなく、「詳しくはこちらのURLをご確認ください」と必ず決まった案内を返すように設定できます。自治体様では「特定の質問には必ずこの回答をしたい」というケースが多いため、まずはこれを最優先にしています。

2番目が「RAGからの回答」です。管理者が登録した学習データをもとに、Azure AI Searchを使って検索し、回答を生成します。

それでも回答の閾値に達しない場合、3番目として「リアルタイムのWeb検索」に移行します。Googleカスタム検索を使用し、指定したドメイン内から情報を探して回答を作ります。ドメインは10個まで指定できるため、例えば宮若市様であれば、宮若市のホームページに加えて国税庁のホームページも検索範囲に含めるといった柔軟な対応が可能です。

Q. 管理画面の使いやすさについても、こだわっている点があれば教えてください。

鈴木さん: 非常に直感的に操作できるように設計しています。例えば、検証環境と本番環境を簡単に切り替えられるようにしており、RAGで学習データを入れた際にどういう回答になるのか、管理画面内のチャットボットで事前に確認できます。問題がなければすぐに本番環境に反映できます。

また、ダッシュボードでは質問数や未回答数がひと目で分かり、未回答の要因が「Webのチューニングが必要」なのか「AIが判別不能とした」のかも確認できます。質問のログ検索機能もあるため、例えば「給付金」で検索すれば、給付金に関する質問の一覧をすぐに確認できます。他社のベンダー様と比べても、管理画面の使いやすさには高い評価をいただいています。

単なるキーワード弾きではない、文脈を理解するNGワード対応機能

Q. セキュリティやリスク対応の観点で、機能的に強みとしている部分はありますか。

鈴木さん: 最近追加した機能の中で特徴的なのが「NGワード対応」です。脅迫やわいせつといったキーワードに対しては回答しないように設定できるのですが、単なるキーワード一致で弾くわけではありません。

例えば、岐阜県庁様の事例でいうと、「脅迫してやる」といった攻撃的な入力に対しては「その情報には答えられません」とエラーを返します。しかし、「脅迫を受けて相談したい」といった被害者からの相談に対しては、適切に県警の相談窓口をご案内します。プロンプトの調整により、文脈を判断して暴力的なものには未回答にしつつ、支援が必要な方には必要な情報を提示できる仕組みを構築しました。

さらに、特定の人がNGワードを繰り返し投げてくるような場合には、自動的にそのIPアドレスをブロックする機能も備えています。私たちは後発のプロダクトだからこそ、導入いただいた自治体様からのご要望をこまめにヒアリングし、こうした実用的な機能のブラッシュアップを重ねています。

メンテナンス工数削減の定性効果と今後のプロダクト進化

Q. 実際に導入された自治体での成果や、現場からの反響はいかがでしょうか。

鈴木さん: 宮若市様や岐阜県庁様など数多くの団体様から、「シナリオのメンテナンスをしなくなって本当に助かっている」というお声をいただいています。最終的には、手動で設定しているシナリオ回答の割合をゼロにして、すべてWeb検索ベースの自動回答に切り替えたいとおっしゃっていただいているほどです。確実な業務効率化の手応えを感じています。

Q. 今後のプロダクトの展望や、追加していきたい機能について教えてください。

鈴木さん: まずはベースとなる機能をしっかりとブラッシュアップしていく予定です。

例えば、現在はRAGで読み込ませるURLを指定できますが、そのURL先のページ内容が更新された際に、自動的に変更を検知してRAGの学習データを更新する機能はまだありません。こうした「職員様の管理を極力楽にしつつ、住民には常に最新の情報が提供される」という状態を作っていきたいです。

もう少し先の展望としては、AIエージェントの機能を持たせていくことも視野に入れています。まだ、具体的なことは言えませんが、色々なニーズを把握して検討していく予定です。

Q. 導入後の運用支援についても、何か構想はありますでしょうか。

鈴木さん: 弊社がメインで提供しているLINEのシステムでは、システム利用料とは別に「運用サポート」のオプションを設けています。作業代行や様々な相談を受け付けるものですが、実は180以上の導入自治体のうち、約95%がこのオプションにご加入いただいています。

今回のAIコンシェルジュでも、管理画面から簡単にRAGのデータ登録などができるとはいえ、自治体の職員様は本当に多忙です。「登録を代行してほしい」「設定の修正などをまとめてやってほしい」といったご要望は確実に出てくるはずです。民間企業であれば自社内で完結できるかもしれませんが、自治体様では費用を払ってでも運用を任せたいというニーズが非常に高いのです。そのため、ツールの提供だけでなく、導入後の運用をしっかりと伴走支援するオプションメニューの拡充も進めていきたいと考えています。

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