ゲスト
2年目の若手PMを中心に、生成AIの全社展開と定着化を数ヶ月で推進!
株式会社国際協力データサービス
ソリューション1課 長谷川さん

執行役員 ビジネス・クリエーション課長 吉山さん

FileMakerやkintoneを用いたローコード開発・運用保守、Microsoft 365の導入支援、ウェブサイト・CMS構築などを手掛けるほか、ITコンサルティングなども幅広く手掛ける株式会社国際協力データサービス。「AIを使わない選択肢はない」という強い危機感を背景に、2025年1月に8人のプロジェクトからAI活用を開始。
この事例のポイント
- 社員の70%以上がAIの効果を実感した、全社展開・定着化の進め方:上位2割の社員が作成したGPTsやプロンプトをTeamsで全社共有し、約6割の中間層を底上げした
- 開発経験の浅いメンバーでも、AIを活用して改修作業の初動を進めやすくする方法:ClaudeやGeminiを活用してベースのロジックを作成させ、初動のスピードを格段に引き上げた
- 情報漏洩やハルシネーションのリスクを抑える方法:AIマネジメントシステムに関する認証を取得し、AI活用におけるリスク管理体制を整備し、回答には必ず参照元や根拠を盛り込ませるようにした
- 「自分でやった方が早い」という初期の戸惑いを乗り越える方法:計33回の勉強会を通じて日報や議事録といった汎用業務での活用に絞り、暗黙知を言語化・標準化した
社員の70%以上が効果を実感。経験の浅いエンジニアもAIを活用し、改修作業の初動や実装案作成を自走しやすく

Q. AIを活用して得られた定量的・定性的な効果についてお伺いできますでしょうか。
A. 日常的な業務活用が進み、社内アンケートで70%以上が生産性向上を実感
長谷川さん:全体を通して、AIを日常的な業務に活用できる社員が増加しました。定量的な結果として、社内アンケートでは、回答者の70%以上が「生産性が向上した」と答え、60%以上が「生産性が30%以上向上した」と実感しているという結果になりました。担当する業務の性質や個人の適性によって利用頻度に差は生じていますが、以前と比較すると組織全体としての活用度は間違いなく底上げされたと感じています。
Q. 具体的な業務において、どの程度の効率化がなされているのでしょうか。
A. 経験の浅いエンジニアがClaudeやGeminiを活用し、一人で開発やコードの改修を遂行可能に
長谷川さん:現場の体感としては非常に大きな変化が起きています。例えば日常業務において、これまで議事録作成には平均30分かかっていましたが、議事録作成用GPTsを使用することでわずか5分に短縮されました。また、開発業務においては、これまでなら先輩のサポートが必要だった経験の浅いメンバーでも、AIを活用することで、調査や実装案の作成、コード改修の初動を自分で進めやすくなりました。ゼロからロジックを考える前に、AIにたたき台を作成させ、それを人が確認・修正することで、初動のスピードが格段に上がっています。
Q. 新人エンジニアがAIでコードを書く際、品質はどのように担保しているのでしょうか。
A. AIが生成したコードはそのまま本番環境に反映せず、AIの出力はあくまでたたき台であり、最終的な判断と品質担保は人が行うという前提を徹底
長谷川さん:まだ経験が浅いメンバーがAIを使ってコードを書いた場合でも、そのまま本番環境に反映させることはありません。必ず最後にシニアのエンジニアに対して、「AIを使ってこういう風に書いたのですが、この実装方法で問題ないでしょうか」と確認をとるフローを設けており、そこで品質の担保を行っています。私自身もまだ開発経験が浅く、AIを使ってコードを書く機会がありますが、最後は必ずシニアエンジニアにレビューしてもらっています。
業務ごとに複数のAIモデルをどう使い分け、セキュリティ環境をどのように整備したのか

Q. AIツールをどのように使い分けているのでしょうか。
A. 開発業務ではClaudeやGeminiなども活用し、用途や顧客環境に合わせてCopilotなども併用
吉山さん:現在は全社で一つのモデルに統一するのではなく、社員それぞれが自分に合ったものを選択できる運用としています。全社導入から継続してChatGPTを使う社員もいれば、開発業務に携わっているエンジニアはClaudeやGeminiなど、より開発に適した生成AIを活用するケースが増えています。例えば、上司の指示で「この業務の担当者はClaudeを使ってください」と特定のアカウントを配布する動きも出ています。また、お客様によってはMicrosoft Copilotを導入されている企業もあるため、私たち自身も同じツールを導入し、的確なサポートを提供できるようにしています。ただし、利用にあたっては社内ルールや契約・セキュリティ上の管理を前提としています。
Q. データ整形や環境整備、ツール選定はどのような順番で進めていったのでしょうか。
A. まずChatGPT Teamを導入し、社内での活用推進とルール整備を進める中で、AIMS認証の取得へと発展
吉山さん:まず大前提として、生成AIを安全に活用できる環境を整えることから着手しました。当時、世間では生成AIによる情報漏洩リスクへの懸念も高まっていたため、「個人情報や機密情報を許可されていない環境へ入力しない」という基本ルールを設けたうえで、組織的な管理が可能なChatGPT Teamを導入しました。
導入当初は、まず全社員に生成AIへ慣れてもらうことを重視しました。プライベートでChatGPTを使い慣れている社員も一定数いたことや、メジャーなツールを使うことで「自分たちは新しい技術を業務に取り入れている」という意識を持ってもらう狙いもありました。
その後、日報や議事録作成、資料作成、開発支援など、社内での活用が広がるにつれて、単なるツール導入にとどまらず、利用ルール、教育、リスク管理、運用体制をより体系的に整備する必要性が明確になりました。その延長線上で、AIマネジメントシステムに関するAIMS認証を取得しています。
なお、当社のAIMS認証は、その後、一般社団法人情報マネジメントシステム認定センター(ISMS-AC)の認定下におけるAIMS認証の国内第1号という位置づけになっています。
Q. 社内ナレッジなどをAIに読み込ませる際、精度の高いアウトプットを出すためにどのような工夫をされていますか。
A. PDFや画像化された資料についてはOCR等でテキスト化し、AIが参照しやすく、後から確認しやすい形に整備
長谷川さん:社内ナレッジを学習させる際は、処理がブラックボックスになってしまわないよう工夫しています。できるだけテキスト形式のデータを使用したり、OCR機能を活用したりして、AIが得意とし、かつ中身が追跡可能な形式のデータを読み込ませています。
吉山さん:さらに、AIの出力にはどうしてもハルシネーションのリスクが伴うため、回答には、参照元や判断の根拠、前提条件を明示させるようにしています。何も考えずにAIに質問し、出力をそのまま信じてしまうと「AIに使われる側の人間」になってしまいます。そのため、「必ず自分で仮説を立てた上で聞く」という啓蒙活動を積極的に行っています。
「自分でやった方が早い」という壁をどのように突破し、組織に定着させたのか

Q. 8人のプロジェクトから始まり全社展開まで数ヶ月を要したとのことですが、推進する上でぶつかった壁はありましたか。
A. プロンプト作成に戸惑い「自分でやった方が早い」と感じている、「何かあれば使う」層にどう広げるかという壁
長谷川さん:決して強い反発があったわけではありませんが、全社展開を進める中で一番多かったのは「結局、自分でやった方が早い」という声でした。プロンプトを考えるのに時間がかかってしまう、あるいは何をどうAIに指示していいかわからない、といった初期の戸惑いが定着への大きな壁になっていました。
Q. その壁をどのように乗り越え、組織への定着を図ったのでしょうか。
A. 勉強会や共有会などを計33回実施し、上位2割が作成したGPTsやプロンプトをTeamsで共有して6割の中間層を底上げ
長谷川さん:そうした方々に対しては、月報や議事録作成といった誰もが日常的に行う汎用的な業務での活用をおすすめし、効率的なプロンプトの書き方を提示しました。キックオフの段階から作成した標準資料に、勉強会や打ち合わせのたびに新しいノウハウを追加していき、最終的に33回分のナレッジを蓄積することができました。勉強会では、効果的だったプロンプトやお互いに作成したGPTsを共有し合うことで、暗黙知の言語化と標準化を進めていました。
吉山さん:組織には「ガンガン使う2割」と「何かあれば使う8割」が存在します。鍵となるのは「何かあれば使う」層にどう使ってもらうかでした。そこで、有効だった使い方やプロンプトを共有し、各自が自分の業務に応用しやすい形で展開しました。そうすることで約6割の中間層のレベルが引き上げられます。周りが当たり前のように使っている環境ができれば、残り2割も自然と使い始めるようになり、組織全体の底上げに繋がりました。
今後の展望:従来の工数ベースのビジネスに加え、AIを活用した高付加価値サービスの開発に取り組む
Q. 今後AIを活用していきたい分野や解決したい課題についてお聞かせください。
A. 「人月商売」から脱却し、AIで短縮した時間を新規サービス開発などクリエイティブな業務に集中する
長谷川さん:社内での業務効率向上という点においては、すでに多くの方が活用できていると実感しています。ですので、今後の展望としては、AIを活用した取り組みを自社の「サービス化」へと繋げていきたいと考えています。
吉山さん:生成AIの導入によって、これまで時間がかかっていた作業を大幅に短縮できるようになりました。一方で重要なのは、その短縮された時間を何に使うのかという点です。単なる作業時間の削減で終わらせるのではなく、新規サービス開発や業務改善など、より付加価値の高い活動に振り向けていく必要があると考えています。
当社としても、従来の工数ベースのビジネスに加え、AIを活用した高付加価値サービスの開発に取り組むことで、「時間」だけではなく「提供価値」で評価されるビジネスモデルへ広げていきたいと考えています。生成AIの活用は、単に業務を効率化するためだけではなく、社員一人ひとりがより創造的な業務に取り組み、会社として新しい価値を生み出していくための重要な手段だと捉えています。
また、AIを活用して高い成果を出す社員をどのように評価し、処遇に反映していくかも、今後の重要なテーマです。AI活用によって生まれる新しい成果を適切に評価できるよう、評価制度の見直しも進めています。AIを使いこなすことは今後ますます前提になっていくと考えていますが、そこから新しい価値を生み出し、それを周囲に理解してもらい、正当な評価につなげていくことが、私たちが取り組むべき次の課題だと考えています。
Q. 最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。
長谷川さん:AI導入は「ツールを入れて終わり」ではなく、組織への定着までが本当のスタートだと感じています。私たちが試行錯誤しながら得た知見が、皆様の取り組みの一助になれば嬉しいです。
また、当社は月1回のペースでウェビナーを開催しております。6月と7月に開催予定のウェビナーでは、私たちが実際にAIをどのように運用し、定着させているかといった具体的なお話を予定しておりますので、自社での推進にお悩みの方はぜひお気軽にご参加ください。
【ウェビナー詳細】
第3回 AI価値創造・新規サービス開発につなげる - AIMSを土台にした安全な実験と事業化の進め方 –
日程:7月28日(火) 14:00~14:45
コーポレートサイト:https://www.icds.co.jp/