Salesforceを導入したものの、現場からの改修要望に応えきれず、かといって専任のエンジニアを採用する予算もない——そんなリソース不足や運用の属人化に悩んでいませんか。
元Salesforce社員が創業したイグネス株式会社が提供する「Blaze」は、対話形式で依頼するだけで実装や保守を行ってくれるSalesforce特化型のAIエージェントです。導入企業の約6割をSalesforceのパートナー企業が占め、現場に溜まっていた100件以上の改修リクエストを一気に消化した事例や、100万円かかるエンジニア採用コストを月額約9万円(3ライセンス分)に抑えたという圧倒的な実績を生み出しています。
汎用的なAIツールとは異なり、Salesforce特有の複雑なデータベース構造や仕様の依存関係を深く学習しているのが最大の強みです。国内のシステムインテグレーション(SI)のように要件定義書の作成から実装までを反復的に行う独自設計により、実務に即した安全なシステム開発を実現します。本記事では、開発の背景にある課題意識、現場の運用に定着させるためのUI/UXの工夫、そして導入企業がつまずきやすいポイントとその支援体制について、同社代表の小倉さんに伺いました。

対話のみで実装・保守を完結する特化型AIエージェント
Q. 貴社の事業内容と小倉さんの自己紹介をお願いします。
小倉さん: イグネス株式会社の小倉と申します。弊社は私と江口の2名で創業しました。両名とも元々はSalesforceの社員であったという背景があります。そのため、SalesforceとCRM周辺を中心に、同システムを用いて営業活動を促進したり、CRMシステム自体を構築・運用したりするプロセスを効率的に行えるよう支援することを軸にビジネスを展開しています。
Q. Salesforce特化型のAIエージェント「Blaze」の概要と、その具体的な機能を教えてください。
小倉さん: Blazeは、対話形式で依頼を送信するだけでSalesforceの実装と保守を行ってくれる製品です。世の中にAIエージェントツールは登場していますが、BlazeはSalesforceに完全に特化している点が特徴です。
例えば、Salesforceは特殊なデータベース構造を持っているため、システムの組み込みが複雑な部分があります。項目を1つ作成するだけでも、別の箇所から参照されていてロックがかかり、操作できないといった事象が起きますが、Blazeにはそうした周辺情報も学習させています。平易な言葉で「このようなアプリケーションが欲しい」「このようなエラーが起きているため解決したい」と指示を出すと、Salesforceのリアルタイムな情報を探索し、自動で実装を行います。
“Salesforce導入のハードルを下げたい” 15年の運用経験から生まれた課題意識
Q. Blazeを開発した背景や、解決したかった課題について教えてください。
小倉さん: 私自身、学生時代からSalesforceを利用しており、15年以上にわたり同システムを使い続けています。これまでに数多くの企業を見てきましたし、Salesforceを退職した後も副業として導入支援などを行ってきました。長年Salesforceの設定や新規導入に携わる中で、システムを効果的に導入・運用するハードルの高さを実感していました。
単純に技術的な知識があるだけでは解決できないSalesforce特有の仕様や落とし穴が存在します。そこにプロのナレッジをあらかじめ組み込み、標準化・平準化した状態で導入を進めることができれば、企業は自社の業務要求や個別の課題解決にリソースを集中できるようになります。技術的な課題をAIで補完し、本来注力すべきコア業務に集中できる環境を作りたいと考え、進化するAI技術を掛け合わせてSalesforce専用のAIエージェントを開発しました。
AIのブラックボックス化を防ぐ。要件定義から伴走する独自設計
Q. プロダクトを設計する上で、UI/UXにおいて工夫されたポイントは何ですか。
小倉さん: 最も重視したのは、AIが裏側で不可視的に処理を行うことで、ユーザーが「何をしているか分からない」という状態に陥るリスクを排除することです。そのため、Blazeが現在実行しているタスクをリアルタイムに可視化するだけでなく、今後の開発スケジュールを明確に提示する設計にしました。
国内のシステムインテグレーションにおいては、要件定義や設計といった工程が曖昧なまま進むと、最終的な成果物が使いづらくなったり、開発プロセスが迷走したりしがちです。そのため、Blazeには「要件定義モード」を搭載し、AIが要件定義書を自動作成してユーザーと共にブラッシュアップしていく仕組みにしました。
既存の業務に則った要件定義書やシステム構成図を作成する、いわばシステムインテグレーター(SIer)のような振る舞いをベースにしています。一般的なAIエージェントであれば実装のみを行うケースが多いですが、ある程度の知識がないと適切な指示を出せず、誤動作を招く恐れがあります。入り口からゴールまで、確実な開発工程を踏めるようにウォーターフォール開発のようなプロセスを念頭に置いて構築しました。

Q. Blazeが駆動するLLMやワークフローの仕組み、および採用しているモデルについて教えてください。
小倉さん: 基本的なコンセプトは、LLMと一般的なAIエージェントのアーキテクチャ構成に基づいています。通常のチャットシステムは一問一答で思考が止まりますが、AIエージェントはゴールを与えると、それを達成するまで自律的に反復思考を繰り返す点が異なります。例えば、単に項目を作成するだけでなく、「画面のどこに配置すれば操作性が向上するか」といった運用の利便性まで考慮して自律的に動きます。
採用しているLLMについては、コーディングに強い主要モデル(Claudeなど)を利用できるようにしています。ただし、特定の商用モデルだけに依存すると、将来的なコスト変動などのリスクに対応できなくなります。そこで、自社サーバー上で動作する独自のオープンソース(OSS)モデル「Blaze 1」を開発し、提供を開始しました。このOSSモデルは非常に高速に動作するため、ユーザーは自社の用途や状況に合わせて、好きなモデルを柔軟に選択できる設計にしています。
特有のナレッジ学習によるハルシネーション防止と安全な実装の仕組み
Q. Salesforce特有の仕様に対応する上で、開発において特に注力したポイントは何ですか。
小倉さん: ナレッジのインプットには細心の注意を払いました。開発初期は、一般的なコーディングエージェントであればSalesforceの実装も可能だと考えていましたが、実際には精度が不十分でした。Salesforceに関する技術情報はインターネット上にそれほど多く存在せず、正確な知見が限られているためです。
そのため、開発初期段階のBlazeでは、項目の作成手順が漏れてデプロイに失敗するなどのエラーが頻発していました。この課題を解決するため、Salesforceの概念やリレーショナルデータベースの構造といった基礎的な部分から徹底的に再学習させました。プラットフォームの特性を深く理解した状態の知能へと持っていくプロセスには、非常に多くの時間をかけて丁寧に取り組み、ハルシネーションの防止を実現しました。
Q. 競合となる他のAIサービスと比較した際の貴社の強みは何ですか。
小倉さん: 最も大きな強みは、私が元Salesforceのテクニカルサポートエンジニアとして培った深い知見です。当時は顧客からの高度な問い合わせに対応するため、データベースの構成などシステムの裏側まで徹底的に調査していました。その知見が製品の隅々にまで落とし込まれているため、実装における技術力には絶対的な優位性があります。
また、安全にシステムを実装・運用する仕組みにもこだわっています。実装に失敗した際、元の状態に復元する「切り戻し」の処理において、Salesforceはコンポーネント間の依存関係が非常に強固であるため、正しい順序で行わなければシステムが破損するリスクがあります。Blazeでは、適切な順序を考慮した処理をあらかじめ仕込んでいるほか、将来のプラットフォームアップデートにも適応できる安全なモードや、強固なバージョン管理機能を搭載しています。
地方のパートナー企業を中心に導入拡大。開発工程の”真ん中”をAIに任せる運用術
Q. Blazeはどのような企業で導入が進んでおり、実際の運用フローはどのようになっているのでしょうか。
小倉さん: 現在、導入いただいている企業の約6割が、Salesforceの導入支援を手掛けるパートナー企業です。特に地方のパートナー企業に多く導入されています。ゼロからプロンプトを構築するよりも、Salesforceに特化したツールを活用した方が効率的であり、ツールのアップデートも自動で行われる点が評価されています。コーディングやデータベースの知識が少ない担当者でも、Blazeと対話し、標準機能とコーディングの切り分けなどを学びながら業務を進めています。
実際の運用フローとして、パートナー企業には「最初と最後の工程は人間が担い、中間の開発工程をBlazeに任せる」という役割分担を明確にお伝えしています。具体的には、要件定義の初期フェーズである「何を作るべきか」「本当に実装が必要か」の判断は人間が行います。要件が固まった後のシステム設計や実際の開発はBlazeが担当し、最終的な品質管理やテスト、納品責任は人間が担保するというフローです。
Q. エンドユーザーにおける活用方法や、導入後のサポート体制について教えてください。
小倉さん: エンドユーザー企業においては、社内のヘルプデスクの代わりとして活用されているケースが多いです。公式サポートで対応が難しいとされた課題に対しても、Blazeが代替案を提示して実装まで完了できたという事例もあり、それ以降は細かい質問も含めてBlazeを頼る体制へと移行される企業もあります。また、社内の改修要望を収集し、自動で直せる箇所と議論が必要な箇所を整理させるなど、業務の高度化に役立てていただいています。操作環境としては、セキュリティを担保するため、デスクトップアプリケーションとして提供しています。
導入後のサポート体制については、現在は私自身が直接お客様をサポートする体制をとっています。現場からのフィードバックや挙動の細かな調整、機能追加の要望などに対して、迅速にアップデートをローンチできる体制を構築しています。単なるテクニカルサポートにとどまらず、Blazeを起点としていかに実務を効率化していくかという運用の定着まで含めて伴走しています。
導入初期のリスク回避と、採用費を大幅に削減する圧倒的な投資対効果
Q. 導入企業がつまずきやすいポイントと、それを回避するための対策について教えてください。
小倉さん: 製品自体を非常にシンプルに設計しているため、操作面でのつまずきはほとんどありません。唯一の課題は、指示を出すだけで何でも簡単に実装できてしまうため、優先度の低い機能まで要望のままにすべて作りすぎてしまう点です。
これを回避するため、Blazeのシステム側でプラットフォームの制限に抵触する可能性を注意喚起するガード機能を設けています。しかし、ツールによる制御だけでなく、「何が本当に必要な機能か」を現場が見極められるよう、運用面における事前の啓蒙活動やルールづくりも並行して重要になると考えています。
Q. 導入後の具体的な効果や、コスト削減における成果について教えてください。
小倉さん: 多くの定量的効果が出ています。規模の大きな企業では、現場からの改修リクエストが滞り、100件以上の要望が放置されて負債化しているケースが多々あります。Blazeの導入により、これらのリクエストを一気にリリースしてクリーンな環境を取り戻し、新たな戦略的施策にリソースを集中できるようになります。
また、投資対効果(ROI)の面でも絶大なメリットがあります。本来であればSalesforceの専任エンジニアを採用したいものの、予算の制約から断念している企業は少なくありません。外部の経験者を採用・稼働させるには月額約100万円のコストがかかるケースもありますが、月額2万9800円のBlazeを導入することで、そのリソース不足を大幅に解消できます。実際に、3人分のライセンスを月額約9万円で運用し、エンジニア1人分以上の業務をこなす成果を上げているお客様もいらっしゃいます。
行動だけでなく”思考のコンテキスト”を記録し、組織全体の知見を資産化する
Q. プロダクトの今後の展望について教えてください。
小倉さん: 基本的にSalesforce領域を軸にしていく方針は変わりませんが、今後は組織全体の「コンテキスト(思考の背景)」を管理・資産化できる構想を進めています。
これまでのCRMシステムが担ってきた役割は、単発の活動内容を時間軸で積み重ねていく「行動の記録」でした。しかし、その行動に至った「思考のプロセス」までは蓄積できていません。Blazeを介して対話しながらタスクやレコードを生成することで、エージェントとの会話の中に「なぜその判断をしたのか」という思考の履歴が残ります。
優れた営業担当者がどのような思考回路で動いているのか、あるいはエンジニアが過去にどのような意図でそのシステムロジックを組んだのか。それらをコンテキストとして保持し、いつでも呼び出せるようにしたいと考えています。これが実現すれば、過去の開発経緯や顧客アプローチの背景にある理由までAIが正確に教えてくれるようになり、企業の強力な情報資産になります。
Q. 最後に、Salesforceパートナーや導入を検討されている方へメッセージをお願いします。
小倉さん: 特にSalesforceのパートナー企業の皆様にお伝えしたいのですが、現在、地方の企業を含めてBlazeの活用が非常に盛り上がっており、開発プロセスへの定着が進んでいます。ぜひ全国のSalesforceに関わる多くの皆様に導入いただき、実際にその圧倒的な価値を体験していただきたいと考えています。