Web広告の運用において、戦略立案からクリエイティブ制作、日々のデータ分析まで膨大な手間がかかり、リソース不足に悩んでいませんか?
株式会社renueがリリースした「広告運用AIエージェント」は、こうした広告運用の一連のプロセスをAIが自律的に完結させる画期的なプロダクトです。すでに同社内のテスト運用では「広告担当者ゼロ」でAIが広告を回し続ける状態を実現しています。
本記事では、既存SaaSの制約を越えるために採用された「CLI(コマンドラインインターフェース)× Claude Code」による柔軟なデータ連携の裏側や、AI導入時にどの企業も直面する「現場業務の言語化・データ整備の壁」を乗り越えるための伴走支援について、株式会社renueでマネージャーを務める堀井さんに伺いました。広告運用の自動化や、自社業務の抜本的なDXを推進したい経営層・マーケティング担当者に向けた実践的なヒントをお届けします。
広告運用の膨大な手間を解消。戦略からクリエイティブ制作まで一貫して担うAI
Q. まず読者の方に向けて、自己紹介と事業内容について教えてください。
堀井さん: 株式会社renueの堀井と申します。現在は主に大手企業様から中小企業様向けに、幅広い業種に対して生成AIを活用したコンサルティングを行っております。具体的な内容としては、業務改革や業務効率化、新規事業立ち上げの支援をさせていただいております。生成AIを使ったコンサルティングや受託開発にとどまらず、お客様ご自身でのAI活用を推進する内製化支援まで、幅広く伴走させていただいています。
Q. 「広告運用AIエージェント」の概要と、開発に至った背景をお聞かせください。
堀井さん:「広告運用AIエージェント」は一言で言えば、人が行っているWeb広告の運用をAIが全て完結させるシステムです。
Web広告には、Meta広告やGoogle広告、XやTikTokなど主要なプラットフォームがあります。現在の一般的な運用では、人が「どのキーワードや領域に広告を出稿するか」という戦略を決め、動画や画像などのクリエイティブを作成し、実際に配信を行います。さらに、配信データをトラッキングしながら「ターゲットを変えるか」「クリエイティブでABテストをするか」といった運用を回しています。この「出稿戦略・クリエイティブ作成・広告運用」の3軸を、全てAIが一括で代行します。
開発の背景にあった最大の課題は人材不足です。弊社の開発メンバーには元々広告運用をしていた者がおり、戦略立案やクリエイティブの制作、そして日々の運用を回していく作業は非常に手間がかかり、負荷が大きいという実体験を持っていました。まずはそこを効率化したいという思いから生まれたプロダクトです。
実際の流れとしては、まず上流でAIとチャットしながら広告の戦略を立てます。次に、その戦略に沿った画像や音声付き動画などのクリエイティブをAIが自動生成し、各種プラットフォームに配信します。配信後のコンバージョンや閲覧数といったデータもAIに戻すことで、「次はこのキーワードで打とう」「クリエイティブがいまいちだから少し変えよう」といった調整まで、AIが自律的に行ってくれます。
CLIとClaude Codeを活用。既存SaaSの壁を越える柔軟なデータ連携
Q. ユーザーが操作する画面のUIや、システム裏側の仕組みはどのようになっているのでしょうか。
堀井さん: ユーザー様がお使いになるUI自体は、基本的なSaaSと同じような見た目になっており、普段お使いのツールのように操作していただけます。
ただ、既存のSaaSによくある課題として、ユーザー様の手元のPCにあるファイル、例えば、過去に使ったクリエイティブや実績データなどをSaaSにうまく連携して渡せず、AIエージェントの機能を使い切れないというボトルネックがあります。
そこで私たちのプロダクトでは、表面上はSaaSの形をとりつつも、裏側の指示や処理にはCLI(コマンドラインインターフェース)を活用しています。CLIを使うことで、ユーザー様が現在操作しているPC内のファイルを読み出しやすくなるからです。また、裏側にある社内データベースに対してもCLI経由で直接アクセスし、社内に溜まっている過去の実績や広告データをAIに渡して戦略を考えさせる仕組みを作っています。SaaSでの操作と並行して、横断的なデータをAIに渡す部分はCLIが担っている形です。
Q. AIモデルとしてClaude Codeを採用された理由は何でしょうか。
堀井さん: シンプルな理由として、Claude Codeが現在、生成AIを使ったプログラミングやドキュメンテーション、そして広告の戦略立案において非常に良い動きをしてくれるからです。また、弊社の社員もほぼ全員が普段の業務推進にClaude Codeを使用しているため、これをベースに構築した方が他のメンバーにとっても使いやすいという背景もありました。
「完全代行」と「データ連携性の高さ」が導く圧倒的な競合優位性
Q. クリエイティブ作成を支援する類似ツールは他にもありますが、貴社のプロダクトならではの強みや競合優位性はどこにありますか。
堀井さん: 大きく2つあると考えています。1つ目は、上流の戦略立案から下流の運用までを「完全代行」できる点です。他のプロダクトでは、クリエイティブだけを作るものや運用の一部のみを代行するものが多いですが、我々のプロダクトは人が細かく予算設定や運用の調整を行わずとも、AIが全て自律的に完結させます。この完全代行という点は、明確な違いだと思っています。
2つ目は、「データ連携性の高さ」です。既存のSaaSで様々なデータと連携させようとすると、裏側で多様な開発や作り込みが必要になります。しかし我々は、Claude Codeを使って社内のデータや公開情報に幅広くアクセスできる環境を構築しています。これにより、いちいち開発を挟むことなく、Claude Codeがデータに直接アクセスし、それをもとにAIエージェントとして最適な広告運用を考えてくれます。このデータ連携のしやすさが強力な強みになっています。

Q. 開発を進める上で、特に骨が折れたポイントやこだわった機能はありますか。
堀井さん: 開発で苦労したポイントも大きく2つありました。1つ目は、AIが生成するクリエイティブの品質に最初は不安定さがあったことです。例えば、弊社では自社で酒類のブランドを販売しているのですが、広告用に「お酒を飲んでいる人」というシンプルな指示を出したところ、パッと出てきた動画に人間が見ると若干の違和感がある、といったことがありました。現在は徐々に改善されていますが、初期段階ではこのクリエイティブ生成のコントロールに結構苦労しました。
2つ目は、先ほど強みとして挙げたデータ連携性の構築そのものです。AIに色々なデータを引っ張ってこさせるために、現在ではClaudeの先に各種データを繋ぐMCP(Model Context Protocol)のようなものを作り、そこを経由してデータを取得しています。しかし、そもそもこのMCPをどう準備するか、AIにどういうデータを渡せば適切に処理してくれるのかといった土台を作り上げる部分は、非常に骨が折れる作業でした。
社内テストで「運用担当者ゼロ」を実現。自社DXを起点としたプロダクト展開
Q. 実際にこのプロダクトを活用したことで、どのような成果や効果が得られているのでしょうか。
堀井さん: パブリックにお伝えできる実績はこれから増やしていく段階ですが、ファクトとして確かな成果が出ています。現在、弊社の中でテスト的にこのプロダクトを用いた広告運用を回しているのですが、社内のメンバーを広告運用担当として配置することなく、AIが自律的に運用を回し続ける状態を作ることができています。
また、外部の企業様に関しても、広告運用を行っている企業様や広告代理店様から、すでに強い興味を持っていただき、お声がけをいただいている状況です。
Q. 自社業務の課題解決を起点にして、プロダクトを外部へ展開されているのはなぜですか。
堀井さん: おっしゃる通り、私たちのプロダクト開発の起点は「我々自身の業務をDX化していく」というところにあります。作ったものの中には外部に出さないものもありますが、最近はSaaSのような形でプロダクトを開発していくタイムラインが非常に短くなっています。そのため、私たちが直面したのと同じ業務課題を持たれている企業様に対して、スピーディーにプロダクトとして展開していく動きが直近では多くなっています。
現場の”言語化とデータ整備の壁”を乗り越える伴走型の導入支援
Q. 企業のAI活用において、現場への導入や運用フェーズでつまずきやすいポイントは何だとお考えですか。
堀井さん: 現場の業務を「言語化」するプロセスを通らないと、AI活用が全く始まらないという点です。どの企業様からも「AIを使って業務を効率化したい」「社員の暗黙知をAIに理解させて業務を代替させたい」というご相談をいただきます。
しかし、それを進めるためには、現場で作業されている方々が「普段どういうふうに業務をしているか」という暗黙知を、テキストでも動画でも何らかの形で言語化する必要があります。この言語化をしないと生成AIの活用はうまく進みません。これが、私たちがどのプロジェクトにおいても直面する最大の課題です。
もう1つは、社内データの整備状況です。「社内のデータをAIに読み込ませてインサイトを出したい」という要望も多いのですが、例えば業務マニュアルがExcelの複数シートに分散していたり、画像形式で貼り付けられていたりすると、AIが利用できるデータとして成立していません。データが整備されていない、あるいは溜まっていない状態では、AI活用は立ち行かなくなります。
Q. そうした現場の壁や組織的な課題に対して、貴社はどのように伴走し、支援されているのでしょうか。
堀井さん: 私たちは単に「データ整備が必要ですね」と伝えて終わるような支援はしません。まずは現場に入り込み、「業務の言語化から一緒にやっていきましょう」と業務フローを書き起こすところから伴走します。データが整備されていないのであれば、まずはクイックにJSON形式やテキスト形式に変換し、一度トライアルで動かしてみる。そうやってスモールステップで障壁をクリアしていく支援を行っています。
組織的なアプローチとしては、大きく2つの軸で動いています。1つは、会社の規模を問わず、経営層や経営企画の方向けに「全社的なAI活用のロードマップ」を引き、何をどう変えていくかという戦略をディスカッションしながら作っていくアプローチです。
もう1つは、現場向けの取り組みとして、まずは特定の部署の中でスモールスタートで「業務効率化アプリ」を開発するというものです。全社展開を見据える場合もあれば、一部門の効率化に特化する場合もありますが、いずれにせよ、目の前のお客様の業務を生成AIでいかに代替し、楽にしていくかという部分を、現場の方々と深くディスカッションしながら一緒に作り上げています。
AIでコンサルティング業界自体をDX。2030年に向けたアジアトップへの展望
Q. 最後に、会社全体として描かれている今後の展望や戦略について教えてください。
堀井さん: 弊社のサイトでも掲げている通り、2030年までにアジアトップのコンサルティングファームとして、業界の新たなスタンダードを確立していくことを目標にしています。
具体的には、AIを使って「コンサルティング業界自体をDXしていく」ということです。コンサルティング業界では、未だに膨大な資料作成やExcelでの作業などを人が行っている側面がありますが、そういった業務は全てAIに任せていきます。
また、従来のコンサルティングでは「ITの実装や開発には触れず、上流の戦略だけをやる」というケースも少なくありません。しかし私たちは、上流の戦略立案はもちろんのこと、実際に自分たちでClaude Code等を用いてシステム開発まで行い、上流から下流までを一気通貫で支援できる体制を構築しています。
このように、これまでの伝統的なコンサルティングとは異なる「AIを駆使した新しいアプローチ」を拡大し、2030年に向けて確固たる地位を築いていくのが私たちの展望です。