プロンプト利用月3万回で一人あたり1日82分を創出。舞鶴市のGoogle Workspace移行

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三層分離による業務の非効率を解消し、全庁的なAI環境の定着を牽引!
舞鶴市 デジタル推進課長 森下さん、管理係長 中山さん、推進係長 瀬野さん、推進係 横田さん

9名体制で庁内のDXを進める舞鶴市デジタル推進課。2024年度の全庁的な「Chromebook端末」「Google Workspace」環境の導入から、「Gemini」や「GeminiNotebook(旧NotebookLM)」といった生成AIの展開・活用促進を推進。業務量増加への危機感を契機とし、自治体ならではのネットワーク環境の課題を突破し、月3万回のプロンプト利用と大幅な業務時間の創出を実現している。

この事例のポイント

  • 三層分離の壁や利用者の二極化という課題を解決する方法:全職員にChromebookを配備し、高度な指示が不要で、自然言語で直感的に回答が得られる「Gemini」が搭載されたGoogle Workspaceへ移行した
  • 月1万回だったプロンプト利用を月3万回まで増加させる方法:どの課の誰がどれくらい使っているかを可視化した「トップ100人のダッシュボード」を全庁に公開し、競争心を刺激した
  • 1人1日平均82分の時間創出と、問い合わせ件数を3分の1に削減する方法:全職員にAI環境を配備し、GeminiNotebookやAIチャットボットを案内フローに組み込んだ
  • AIが現場に定着しないという課題を解決する方法:GeminiがGoogleの各種ツール(ドキュメントやスライド等)内に直接組み込まれた環境を活用し、仕事をAIに溶け込ませた

1日82分の創出と問い合わせの66%削減。全職員への環境配備で圧倒的な成果

Q. 全職員へGoogle Workspace環境を配備された結果、1人あたりの業務時間の削減や、デジタル推進課への問い合わせ件数にはどのような変化が現れましたか。

A. 1日平均82.2分の時間創出と、1日30件の問い合わせを10件に削減

 中山さん: 導入から約10ヶ月が経過した時点で、1人あたり1日平均で約82.2分の業務時間を創出できました。全職員1,100名を対象にアンケートを実施し、約300名からの回答に基づいて算出した結果です。この削減できた空き時間を、本来あるべき業務に充てることができています。

 また、導入直後はGoogle環境への変更に伴い、デジタル推進課に1日約30件もの問い合わせが殺到しました。しかし、GeminiNotebookやAIチャットボットを活用し、まずはAIに確認してから問い合わせフォームに入力する順序を整えました。その結果、最終的に問い合わせ件数を3分の1程度となる1日10件ほどに減らすことができ、大きな業務効率化に繋がっています。

自然言語で直感的に操作。AIの活用フローをどのように整備したのか

Q. 庁内でのAIの利用フローやデータの読み込ませ方について、どのような工夫をされていますか。また、各種GoogleツールとAIをどのように掛け合わせて活用していますか。

A. 特定のフローは設けず自由に活用し、日常業務にAIを組み込んだ

 横田さん: 大前提として、舞鶴市のGoogle Workspace環境では、入力したデータがAIの学習に利用されない設定になっています。そのため、特定の業務フローに縛ることはせず、全職員が日々の業務の中で自由に活用しています。
データ整備に関しても、全庁的にAIフレンドリーな形式を求めるのはハードルが高いため、現時点では実施していません。その代わり、ドキュメントやPDFをAIが読み取りやすいようにGeminiを通じて変換するなど、個別のレベルで工夫を行っています。

 中山さん:現在では、あらゆる作業に生成AIが絡む働き方になっています。例えば、オンライン会議の「Google Meet」での文字起こしはもちろん、「Google スライド」で文字ばかりの資料を分かりやすく変換したり、画像生成を行ったりしています。また、「Google フォーム」でアンケートを作成する際にも、事前にGeminiへ尋ねてベースとなる叩き台を作ってもらうなど、様々な工夫が生まれています。

 横田さん:ただし、AIの回答にはハルシネーションのリスクが伴うため、全庁向けにガイドラインを配布し、「AIの出力は間違っている可能性があるため、個人の責任の下で確認して使用する」というルールを定めて安全な活用を推進しています。

利用の二極化と三層分離の。人や組織ではどのように推進をしたのか

Q. そもそもAI導入に至った背景や、Google Workspace環境へ移行された理由は何だったのでしょうか。

A. 業務増加と三層分離による機動性の低さを解消するため移行を決断

 瀬野さん: 導入の背景としては、まず業務量が増加していく中で危機感を常に抱いていたことが挙げられます。限られたリソースでも質の高い行政サービスを維持していくためには、生成AIの活用が不可欠だと考えていました。加えて、三層分離のセキュリティ環境による機動性の低さも大きな課題でした。インターネットに接続するだけでも手間がかかり、パソコンの動作が非常に遅くなっていたのです。これらの課題を同時に解決できるGoogleのサービスに着目しました。

 中山さん: 2023年当時はLoGoチャットの生成AIを活用していましたが、プロンプトを詳細に記述しないと期待する回答が得られないという課題がありました。初めてAIに触れる職員にとってはハードルが高かったのです。一方で、2024年度に向けて導入を進めたGoogleの「Gemini」は、自然言語で直感的に指示を出せるため、初心者でも利用しやすい環境が整っています。

 横田さん: 問い合わせ対応のためにAIを選んだというよりは、Google Workspaceを導入した結果、そこに付随する様々なツールを活用した方が最適だという結論に至りました。GeminiやGeminiNotebookといった高度な生成AI機能がすべて標準で整備されているのが、Google Workspaceの大きな魅力です。

Q. AI活用を推進する中でどのような壁にぶつかりましたか。

A. 利用の二極化に直面したが、ダッシュボードの公開で突破

 横田さん: 導入当初の壁として、「使う人」と「使わない人」の二極化が進んでしまいました。導入から1、2ヶ月経った頃、全庁での利用回数は月に約1万回程度でした。これをさらに伸ばすため、意識的に利用状況の可視化を行いました。どの課の誰がどれくらい使っているか、課単位での使用上位30位と個人単位での使用上位100位を全庁ポータルにあえて公開したのです。
また、基礎編と応用編に分けて生成AIの研修会も実施しました。それらの相乗効果で、月に1万回だったプロンプト利用量が、一気に2万から3万回まで増加しました。公開は大きな反響を呼び、上位の職員は誇りに思い、利用が少ない部署からは「もっと頑張らないとね」という声が上がるようになりました。

 中山さん: 大きく活用率が上がった転換点は、研修会の実施後と、GeminiがGoogle Workspaceの各種ツール内に追加された時の2回です。去年の夏頃、「Google ドキュメント」での要約や「Google スライド」の作成など、日常の業務プロセスの中にGeminiが直接入り込むようになりました。Google環境で「どう仕事にAIを溶け込ませるか」が設計されているのが大きく、仕事をAIにどうやってもらうかを自発的に考える職員が増えたことこそが、活用が定着している最大の理由です。昨年(2025年)秋頃からは「Gems(カスタムAI)」の共有も可能になったため、今後はプロンプトの定型化に向けたヒアリングも進めていきます。

今後の展望:RAGの展開と市外への波及。共にGoogle環境を使う仲間を増やす

Q. 今後のAI活用における展望や、他の自治体・民間企業に向けたメッセージをお願いします。

A. GeminiNotebookによるRAG展開や市外への波及を推進し、Microsoft Office環境から脱却する仲間を増やす

 瀬野さん: 今後は、GeminiNotebookのRAG機能を活用し、各課の固有業務や法令の確認などに展開していきたいと考えています。現在はGeminiを日常的に利用していますが、さらなる業務効率化のためには、自律的に動くエージェント化の推進や、自分たちでアプリケーションを開発するなど、まだまだ手を伸ばせる領域が多く残されています。これらの活用実績を庁内のデジタル化に留めておくつもりはなく、将来的にはこうした機能を市外や地域社会に向けても積極的に展開し、行政サービス全体の価値向上に繋げていきたいと考えています。

 森下さん: 私たちは、特定の環境に依存しないシステムへの移行こそが重要だと考えており、Google Workspaceを利用する「仲間」を増やしていきたいです。
現在、Google Workspaceを導入している自治体はまだ少数派です。行政機関は国や都道府県との連携が強いため、どうしてもMicrosoft Office環境や、それに伴う従来の文書形式・業務システムに縛られがちです。そのため、Google Workspaceを利用する我々のような自治体が不利益を被ることのないよう、都道府県全体、グループ全体での環境整備を推進し、”勢力拡大”に努めています。

 日々のDX推進の取り組みは、SNSの「note」でも定期的に発信しています。興味を持たれた自治体や民間企業の皆様からの視察も広く受け入れていますので、ぜひお声がけいただき、共に新しい環境づくりに取り組んでいければと思います。

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