※本記事の内容は、2026年6月の取材時点の情報に基づきます。
「2030年問題」を前にレガシーシステムの移行が急務となっているものの、膨大な工数やコストが壁となり、なかなかプロジェクトを前に進められない——そんな悩みを抱えていませんか?
株式会社大和総研が提供する「Smartrans(スマートランス)」は、AIエージェントを活用してレガシーマイグレーションの高精度な処理を目指し、一部工程の自動化を支援するソリューションです。単純なコード変換による保守性低下を防ぎ、モダンアーキテクチャへの「真のリライト」を実現。導入した事業会社の事例では、開発から単体テスト工程にかかる工数を最大50%削減する成果をあげています。
本記事では、「Smartrans」開発の背景にあった課題意識や、類似ツールとの決定的な違い、そしてSIerならではの手厚い導入支援体制について、株式会社大和総研プロダクトソリューション部の松本さんと長谷川さんに伺いました。
▼松本さん

▼長谷川さん

“膨大な移行工数”という課題をAIエージェントで解決
Q. まずは貴社の事業概要のご説明と、自己紹介をお願いします。
長谷川さん: 大和総研は、国内有数の総合シンクタンクとして、大和証券グループにおけるIT・シンクタンク機能を担っており、「リサーチ」、「システム」、「コンサルティング」の3つの分野において、スペシャリストが相互に連携し、お客様の抱える潜在的な課題に対して最適なソリューションを提供しております。システム部門では、大和証券グループをはじめ、幅広いお客様に対してシステム開発・運用、DX推進、先端技術を活用したソリューション提供を行っております。我々が所属するプロダクトソリューション部は企業システム事業本部にあり、AIを起点としたソリューションの企画・開発・提供を通じて、お客様の業務変革やシステムモダナイズを支援しております。
松本さん: 私はプロダクトソリューション部で、各部門との連携のもと、プロダクトソリューションの拡充や顧客現場での価値創出のご支援をしており、現在はSmartransの開発と実装を担当しております。
Q. Smartransを開発された背景には、どのような課題意識があったのでしょうか。
松本さん: 開発の背景には「2030年問題」の1つである、大手国産メーカーのメインフレーム撤退という問題があります。これに伴い各企業様がレガシーマイグレーションを急がれており、当社のお客様でも同じような課題を抱えている方が多数いらっしゃいました。
従来、我々は人手でレガシーマイグレーション案件を成功させてまいりましたが、その知見から「開発から単体テストまでに非常に多くの工数がかかる」という課題を痛感していました。そこでAIを活用して省力化できないかと構想していたところ、昨今の生成AIの台頭とAIエージェントの飛躍的な進化があり、今回Smartransとしてソリューションをご提供できるようになりました。
単純なコード変換にとどまらないモダン化を見据えたリライトが最大の強み
Q. Smartransの概要と主要な機能について教えてください。
松本さん: Smartransは、AIエージェントを活用したレガシーマイグレーションを高精度かつ自動で実現するソリューションです。SaaSのようにお客様だけで使っていただく前提のものではなく、私たちSIerが活用する前提のものとなっており、様々な業界や業種のお客様が対象になります。金融業界をはじめ、レガシーシステムを保有している中規模以上の企業の情報システム部門での活用を想定しております。

主要な機能は大きく3つあります。1つ目は、ブラックボックス化したシステムを解析し可視化するための「ドキュメンテーション機能」。2つ目は、コンバートしたシステム自体をAIエージェントが自律的に現新一致を検証する「コンバート・テスト機能」。そして3つ目は、単なる変換だけではなくレガシー言語からモダンアーキテクチャに適したコード構成と高い保守性を提供する「品質保証機能」です。

Q. 生成AIを活用したツールが増える中、Smartransならではの強みや独自性はどこにあるのでしょうか。
松本さん: ポイントは3つあります。1つ目は「モダン化を見据えたリライト」を実現している点です。代表的なレガシーマイグレーションであるCOBOLからJavaへの移行において、ルールベースや単純なAI任せの変換を行うと、性能や保守性が上がらないコードになってしまうことがよくあります。Smartransでは、Javaのフレームワークに則ったモダンアーキテクチャへの最適化や、お客様独自の開発規約を取り込んだコードに変換することで、この課題を解決しております。
2つ目は、人手で対応する必要性が低い工程をAIで代替することで、作業負荷を抑え、コスト効率の向上を図れる点です。
そして3つ目は、単なるツール提供にとどまらず、SIerとしてPoCの立案からコンバート後のJavaシステムの運用保守まで、ワンストップでご支援できるソリューションであるという点です。
最適なLLMの選定とセキュアな環境でのマイグレーションを実現
Q. SmartransではどのようなAIモデルを活用しているのでしょうか。
松本さん: Smartransでは、特定のLLMに固定するのではなく、当社がニュートラルな立場で各モデルの特性を見極め、ユースケースに応じて最も適切なLLMを選定しております。AIの進化速度は非常に速いため、最新動向を継続的に把握しながら、精度、処理特性、コスト、利用形態との適合性などを総合的に評価します。お客様に選定をお任せするのではなく、AIマイグレーションの利用形態や対象システムの特性を踏まえ、精度、安定性、コスト効率、セキュリティ要件などを総合的に見たうえで、当社が最適なモデルを目利きして選定しております。
Q. レガシーシステムの移行となるとデータの取り扱いが懸念されますが、セキュリティ面はどのように対応されていますか。
松本さん: Smartransでは、お客様からお預かりするソースコードや設計書、ジョブ定義、テストデータなど、マイグレーションに必要な情報をAIに入力する場合があります。そのため、利用するLLMやクラウド環境については、入力データがLLMの再学習やモデル改善に利用されないサービス/設定を前提に選定しております。
そのうえで、案件ごとにアクセス権限やデータの保管範囲を管理し、必要な関係者に限定して取り扱います。また、当社としてプライバシーマークの認証を取得しており、個人情報保護を含む情報管理体制のもと、セキュアな環境で対応しております。
Q, 既存システムとの連携など、稼働環境の再現についてはどのように対応されていますか。
松本さん: Smartransはコンバート時に現新一致を検証するのですが、その時に稼働環境の再現が必要になってきます。そのため、既存システムへのAPI連携が必要な場合は、案件ごとに都度対応していく形をとっています。
移行工数を大幅に削減。ブラックボックス化したシステムの可視化にも貢献
Q. 実際にSmartransを導入した企業では、どのような成果が出ていますか。
松本さん: ドキュメンテーションとコンバート、それぞれで効果が出ている事例をご紹介します。
ドキュメンテーションに関しては、事業会社A社様の事例があります。レガシーマイグレーションの事前調査として、ブラックボックスの可視化を目的としたドキュメンテーションを行いました。可読性が高く、事前調査に必要な情報を適切に整理した成果物を作成することで、後続のシステム更改における初期調査に活用されています。
コンバートに関しては、事業会社B社様の事例があります。Smartransを活用したレガシーマイグレーションを行い、人が対応した場合と比較して、詳細設計、製造、単体テスト工程で最大50%の工数削減効果が出ております。
Q. コンバート事例における「最大50%の削減」という数値は、どのように算出されたのでしょうか。
長谷川さん: プロジェクトの規模や言語の種別によって削減効果はまちまちですが、もともとお客様が保有されているシステムを保守している我々のチームが「人手で対応した場合の工数」と、「実際にSmartransを使った実績工数」を対比し、実測値として約50%の削減があったと計算しております。
また、ドキュメンテーションに関しても、お客様が影響調査を進めるためのインプットが「明らかにない状態」から「ある状態」になることで、マイグレーションを前へ進められるという大きな成果が生まれています。
「どこを目指せば合格か」SIerの知見で導入の壁を打破する
Q. Smartransの導入にあたって、顧客がつまずきやすいポイントや壁になる部分はありますか。
長谷川さん: SmartransをPoCや本番で実際にお使いいただいて、大きな問題が発生したケースは現時点では限定的ですが、「どうなれば合格なのか」についての基準を出しにくいという壁にお客様がぶつかることは多いです。
例えばCOBOLをJavaに置き換えた時に、単にJavaになれば合格なのか、品質や保守性、性能まで含めて合格とするのか、あるいはJavaの書き方そのものなど、評価の指標を定めるのは容易ではありません。
Q. そのような壁に対して、どのようなサポートを提供されているのでしょうか。
長谷川さん: 当社が培ってきたSIの知見を活かし、Java移行後に確認すべき品質、保守性、性能などの評価観点や判断基準を整理し、お客様が導入可否を判断しやすいよう支援しております。
松本さん: また、導入時のサポートとして、当社のFDE部隊が導入コンサルティングやチューニングを通じて、対象システムの特性に応じた適用を支援します。
事前のPoC実施で本番環境でのコスト最適化とスムーズな移行を実現
Q. 導入までのステップや料金体系について教えてください。
松本さん: お問い合わせをいただいてから、1カ月程度でNDAの締結やヒアリングシートによるご要望の確認を行います。その後、2〜3カ月程度のPoCを実施させていただき、その後に本契約となるのが平均的なステップです。
料金体系としては、SmartransのチューニングやセットアップにかかるSI・コンサル費用などの「初期費用」と、対象プログラムに応じた「従量課金となる利用料」、そして「LLMのトークン利用料」の3つで構成されています。最低契約期間は特に設けておらず、案件の規模に応じて変わります。
Q. なぜ、事前のPoC実施を強く推奨されているのでしょうか。
松本さん: PoCでは、お客様がお持ちのレガシーシステムの一部、一連のジョブ単位やJCL単位のプログラムをお借りして、Smartransでどのようなドキュメンテーションやコンバートができるのかを検証します。
PoCを通じて、成果物に対する期待値を事前にすり合わせるとともに、お客様のシステム特性を踏まえたSmartransのチューニング可否を確認します。この検証ステップを踏んだ上で、システム全体にSmartransを適用する本番プロジェクトに進むことで、PoCを実施しない場合と比べて、手戻りの抑制や適切な見積もりにつながることが期待できます。
なお、お客様には、通常のモダナイズ案件と同じように、現行プログラムや既存設計書のご提供や成果物のレビューといった稼働をお願いすることになります。
移行後のAI駆動開発を見据えた今後のプロダクト構想
Q. 今後、Smartransに追加予定の機能やプロダクトのロードマップについて教えてください。
松本さん: 大規模マイグレーション向けのスケールアウトや多言語対応をベースにして、その上で機能拡張として、稼働環境のAny-to-Any対応やSaaS化といったところを検討しております。マイグレーションに関して、人手不足などが要因で前に進めないお客様に、一番効果を実感いただきたいと考えています。
Q. 最後に、導入を検討されている読者へのメッセージをお願いします。
長谷川さん: 今活況となっているマイグレーション市場に対するドキュメンテーションやコンバートにとどまらず、今後はSmartransのAIで生成された資産を活用して、AI駆動開発へと流していきたいと考えています。通常の保守や開発プロセスもAIと組み合わせて業務変革できるようにしていきたいです。Smartransが、そうした新しい開発プロセスの入り口となるようなプロダクトに仕立て上げていきたいと思っています。
松本さん: 読者の方の中には、AIの導入に抵抗感がある方も多くいらっしゃるかと思います。しかしSmartransは、AIにすべてを丸投げするのではなく、限りなく人の手による開発に近い品質でのレガシーマイグレーションの実現を目指したソリューションです。レガシー資産の移行に課題を抱えている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
本記事に関連して、Smartransの機能強化に関するプレスリリースが公開されています。詳細につきましては、以下のリンクよりご覧ください。
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