30分かかっていた照合業務を2分に短縮。累計6,400社を支援するキャスター経理部門の生成AI活用

ゲスト

AIを働き方の前提にして組織を作り変える!

株式会社キャスター 執行役員 兼 全社AI推進プロジェクト プロジェクトマネージャー 米谷さん
デジタルマーケティング業界での経験を経て、2026年1月に株式会社キャスターに入社。全社のAI活用推進や組織マネジメントを牽引。

株式会社キャスター 経理部マネージャー 吉田さん
freeeのMCPの勉強会などに参加し、AIの最新情報をキャッチアップ。経理部門における実務へのAI実装を主導。

株式会社キャスター
2014年の創業以来、全社フルリモートワークを実践。オンラインアシスタント「CASTER BIZ」シリーズなどの「AI×BPaaS」サービスを展開し、累計6,400社以上の企業を支援。2023年より全社的なAI活用を本格化させている。

この事例のポイント

  • 30分かかっていた照合業務を2分に短縮する方法:AIを用いてスプレッドシートの台帳とfreeeの会計データを統合し、取引先の合算処理を自動化させた
  • 決裁の確認漏れと手間という課題を解決する方法:Claudeとfreee、Slackを連携させ、自身が決裁すべき申請のみを抽出してSlackに通知する仕組みを構築した
  • 機密情報の壁で現場が利用できない課題を解決する方法:ChatGPTやGeminiの役割の違いや使い方を学ぶワークショップを実施し、Excel関数の質問などの簡単な用途からスモールスタートした
  • AI出力の品質ブレという課題を解決する方法:X(旧Twitter)の検証投稿をClaudeに読み込ませ、会社の基本情報やタスク一覧を追加して自社用マニュアルを即刻作成し、参照させた

目視で行っていた30分の照合業務を2分へ短縮。最大数時間単位の業務削減を達成

Q. 経理部門において、具体的な定量効果が出ている事例や、現場から上がってきた便利なユースケースはありますか。

A. 月次決算の売上作業を3時間以上削減し、freeeとClaudeの連携でBS・PLの異常値チェック等も自動化

吉田さん: 経理メンバーのAIエージェント(Antigravity)やGeminiの活用により、目に見える効果が出ています。月次決算で月1回、2名体制で行っているスプレッドシートの台帳とfreeeの残高照合では、目視での集計に30分以上かかっていましたが、AIに任せることで「この取引先は同じだから合算して処理しました」と自動で判断してくれ、わずか1〜2分で終わるようになりました。クレジットカード明細の重複チェックにおいても、以前は30分かかっていた確認作業が1〜2分で完了しています。

また、GeminiなどのAIと壁打ちをしながらGoogle Apps Script(GAS)の構築や表計算の改善を行った結果、月次決算の売上作業だけで3時間以上の業務時間削減に成功した事例も出ています。

私個人の使い方としては、freeeとClaudeを連携させた自動化を活用しています。例えば、月次決算におけるBS(貸借対照表)やPL(損益計算書)の増減分析や異常値のチェックを自動化し、これまで1時間以上かけていた作業を15分程度にまで短縮できました。

さらに、自分が決裁しなければならない申請だけをClaudeが抽出してSlack上に通知してくれる環境も構築しました。通知のリンクをクリックするだけで該当の申請を見に行けるため、自ら情報を拾いに行く手間や情報の漏れがなくなり、自分がボトルネックにならず業務フローがスムーズに進むようになっています。現在はマネージャー陣にClaudeの有料アカウントを配布しており、全社的な横展開を進めているところです。

自社独自の経理ルールをどのように反映させ、AIの出力品質のブレを防いだのか

Q. 環境整備を進める中で、経理資料のチェックなどに自社独自のルールをどう反映させ、出力品質を担保しているのでしょうか。

A. Xの検証投稿をClaudeに読み込ませて数分でマニュアルを作成し、回答を人間が最終確認する運用を導入

 吉田さん: 自社ルールを反映させるために、Claudeが参照するための大まかなマニュアルを作成しています。具体的には、会社の基本情報、経理チームメンバーの役割、組織の部門構成、月次決算などのタスク一覧を定義し、「このタスクの時はこのフォルダのこの資料を見てください」といった指示を書いておくことで、回答のブレを極力なくす環境を作っています。

ゼロからマニュアルの構成を考えるのは難しいため、X(旧Twitter)などで検証している方の投稿を参考にしました。その人が作ったマニュアルのキャプチャなどをClaudeに読み込ませ、「同じように自社のマニュアルを作りたい」と指示を出します。そこに弊社のルールや組織の情報を追加して作ってもらうという工夫をしたため、作成や整形にはほとんど時間はかかりませんでした。

また、品質担保については、AIの回答を鵜呑みにしてそのままOKにせず、必ず人間の目を通す運用を徹底しています。AIが参照するマニュアルに「フィードバック内容をマニュアル・指示書に反映させる」仕組みを組み込んでおり、対話を通じてAIの回答精度と品質が向上し続けるサイクルを構築しています。

米谷さん: ツールについては、一律でGeminiにするなどと決め打ちせず、情報をキャッチアップしながらそれぞれの適性に合わせてリアルタイムに判断して使い分けています。エージェントを活用して業務を圧縮したり、お客様にサービスを提供するフェーズに入っているため、まずはリテラシーの高い人やマネージャー層から有料アカウントを付与し始めています。

既存業務優先の組織で、どのように一時的な業績低下を覚悟してAI推進の壁を突破したのか

Q. 全社でAI導入を進める中で直面した壁と、それをどう乗り越えたのかを教えてください。

A. 機密情報の壁に対しGemini等のワークショップを実施し、経営層自らがAIエージェントを設定し意識改革を推進

 吉田さん: 経理部門の特性上、お客様の機密情報を扱うため、最初は大きな壁がありました。どこまでAIにデータを入れていいのかという線引きが難しく、利用へ踏み出せない方が多かったのです。加えて、AIエージェントの場合は「勝手にデータを更新・削除する等の暴走リスクやセキュリティインシデントへの不安」も踏み出せない要因でした。そこで、ChatGPTやGeminiの役割の違いや実際の使い方を学ぶワークショップを私が企画して実施しました。まずは資料の要約やExcelの関数の組み方をGeminiに聞くといった簡単な用途から始め、AIにドラフトを作ってもらい自社内の論点で漏れがないか整理していく、パートナーとしての使い方を進めました。具体的には日常の他事業部からの問い合わせ対応から、監査法人と議論するような専門的な会計論点の検討ドラフトの作成で活用していました。この段階から、数時間単位で生産性が上がったという効果を強く実感していました。

【経理チーム内の取り組み概要】

  • 2025年4月:ChatGPTやGemini等の各AIツールの解説、ワークショップを実施。
  • 2026年4月:AIエージェント(Claude)で何ができるかの実演と、メンバー全員が使用できるAntigravityでのワークショップを実施。
  • 2025年4月〜現在:経理チーム内でAI情報を共有するチャンネルを作成し、XやYoutubeのAI活用事例を紹介、自身の活用事例や失敗例をチーム内に共有。一部のメンバーからも活用事例が共有されることもあり。

米谷さん: 現場のメンバーは今日・今月の既存業務をこなすことが最優先になりがちで、AIを使う優先順位が下がる可能性があります。だからこそ、現場任せにせず、経営やマネジメントが自ら触って何ができるかを実感することが重要でした。さらに、触るだけでなく、積極的に全社でみんな使っていくことが当たり前、という空気感を醸成することも重要視しています。

AIの影響でビジネスモデルそのものが大きく変わっていく中、今最優先で取り組むべきはAIを自分たちのビジネスに実装していくこと。だからこそ、経営・役員・マネジメントから率先して取り組むのです。 代表自らが誰よりも率先してAIに触れ、環境構築を行い、新しい指針を作っているところです。大事なのはテクニカルな面よりも意識の面です。働き方そのものを創り変えるというミッションも推進においては重要な役割を果たしています。

今後の展望:ビジネスモデルが変化する時代だから、AI前提の新規事業と付加価値を生む人材育成に集中する

Q. 今後さらにAI活用を広げていくにあたっての展望や、読者に向けたメッセージをお聞かせいただけますか?

A. 顧客への運用ノウハウ提供やSlack連携の新サービスを展開し、AI前提で工数削減を果たす人材の評価制度へ刷新

 米谷さん: 今後の展望は大きく3つあります。
1つ目は、既存の事業や数千社のお客様に対して、私たちが社内で実践したAIの設計や運用の経験・ノウハウをご提供し、「キャスターにお願いすればAIの運用も推進してくれる」と実感していただくことです。

 2つ目は、AIを前提とした新しいサービス提供です。ビジネスモデルが変わっていく中で、貴重な人材資源をAIだけではできない新サービス開発や新規事業開発にも割り当てて、新しい伸びしろを開拓していきます。

 3つ目は、社内の評価や育成の考え方の変革です。AIを積極的に使って業務の質を上げ、工数を削減し、余った時間を付加価値業務に当てられる人材を育成・採用していきます。従来型の頑張りではなく、「AI時代にAI前提で頑張っている方」を評価するスタイルへと内側の制度を変えていく予定です。

そして、こうした「AIを前提にしながら、最後は人が品質を担保する」という私たち自身の実践は、そのままサービスにも反映されています。先日提供を開始した「CASTER NEO Assistant」は、Slackで届いた業務依頼をAIフロントが24時間365日受け付け、人のAIコーディネーターが作業指示から進行管理、納品前のチェックまでを担うことで品質を担保する、新しいバックオフィス支援のかたちです。AIだけで完結させるのではなく、人とAIが役割を分担する——今日お話ししてきた経理部門での取り組みも、まさにこの考え方の延長線上にあります。オンラインアシスタントをAIアシスタントへと刷新していく、私たちの新しい一歩です。 

https://cast-er.com/neo-assistant/

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