長年稼働してきたCOBOLシステムの有識者が退職し、ブラックボックス化したプログラムの保守・解析に膨大な時間とコストがかかっている。そんな悩みを抱えていませんか?
独立系システムインテグレーターである東京システムハウス株式会社が提供する「AIベテランエンジニア」は、COBOLに特化したAI開発・保守支援ソリューションです。導入企業のPoCでは、新任エンジニアの開発生産性を向上させ工数を30%削減したほか、ベテランへの問い合わせ時間をゼロにする成果を創出。また、150本の仕様書をわずか2週間で生成するなど、圧倒的な時間短縮を実現しています。
本プロダクトの最大の特徴は、単なるコード解析にとどまらず、有識者の「暗黙知」までも形式化してAIに学習させる点にあります。さらに「COBOLから無理に他言語へ移行するのではなく、COBOLのままAIに保守させる」という独自の設計思想が、多くの企業の注目を集めています。
本記事では、同社取締役事業部長の比毛さん、「AIベテランエンジニア」開発リーダーの島田さんに、開発の背景にある課題意識、競合にはない独自のアプローチ、そして導入企業がつまずきやすいポイントとその支援体制について伺いました。
▼比毛さん

▼島田さん

COBOLエンジニア不足の課題解決へ。レガシーとAIを掛け合わせた挑戦
Q. まず、貴社の事業内容と、比毛さん、島田さんの自己紹介をお願いできますでしょうか。
比毛さん: 弊社は、システム開発やモダナイゼーション、クラウド、AI活用などを通じて、企業のDXを支援しています。長年COBOL領域の支援を手がけてきましたが、近年はCOBOLエンジニアの減少が大きな課題となっています。私自身は、社外活動として「COBOLコンソーシアム」という団体の会長を2023年から務めているほか、昨年(2025年)には各社様と「AI駆動開発コンソーシアム」を設立するなど、AIに関する取り組みも推進しています。レガシーな古い言語と最新のAI、その両方を語れる珍しいタイプだと自負しています。
島田さん:私は、AIでCOBOL課題を解決するソリューション「AIベテランエンジニア」の開発リーダーを務めています。また、英語で展開されている「opensource COBOL Programmer’s Guide」の日本語翻訳版の公開なども行っており、学習材料としてご活用いただいております。
プログラムの流れから有識者の”暗黙知”までを可視化する3つの主要機能
Q. 今回ご紹介いただく「AIベテランエンジニア」の概要と、開発体制について教えてください。
島田さん: 「知識の健全さを取り戻してAIネイティブな開発環境に導く」ということをテーマとしたソリューションです。開発チームは5人以下の非常に少ない体制で、しかも若手のエンジニアが中心となって提供しています。
Q. プロダクトの主要な機能を3つに絞ると、どのようなものになりますか?
島田さん: 大きく分けて「仕様書作成システム」「質疑応答システム」、そして開発ツールに渡すインターフェースとなる「MCPサーバー」の3つを提供しています。
1つ目の仕様書作成システムは、COBOLのコードをアップロードするだけで、自動的にマークダウン形式の仕様書を作成できる機能です。文章による説明だけでなく、業務ロジックを視覚的に表現したフローチャートやシステム構成図も出力します。本機能の最大の強みは、「定型的で決定的な処理は静的解析ツールが正確に抽出し、文脈などの意味解釈が必要な部分はAIが担当する」と役割を分けている点です。これにより、AI単体に任せるよりも安定して高品質な仕様書を作成することが可能になっています。

2つ目の質疑応答システムは、COBOLシステムの質問や改修案の相談に対し、仕様書などのナレッジを検索して回答を生成するチャット機能です。今年5月のリリース版では、チャット履歴やフィードバックから暗黙知を蓄積する新機能も搭載しています。新機能の開発背景としては、COBOLシステムをよく知る有識者の方にチャットを使っていただいた際、非常に具体的な質問を投げていらっしゃるため、回答の精度が高いことに気づきました。そこで、有識者しか知らないような、コードや仕様書には表せない情報をフィードバックとして蓄積し、企業ごとの個別のデータベースを作成する仕組みにしました。

3つ目のMCPサーバーは、蓄積したデータをAI駆動開発ツールに渡すためのインターフェースです。例えば「Claude Code」などのAI駆動開発ツールと接続することで、先ほどの質疑応答システムに蓄積した仕様書などの「形式知」や有識者の「暗黙知」を連携させることができ、開発環境上で効率的にCOBOLシステムの情報や独自のナレッジを引き出しながら開発を進めることが可能になります。

Claude Code x MCP Server
他社にはない独自性。メインフレーム資産をコード化しRAGに登録
Q. 既存の競合サービスと比較した際、AIベテランエンジニアの強みや独自性はどのような部分にあるのでしょうか?
比毛さん: まず、対象をCOBOLに特化している点が独自の強みです。技術的な仕組みとしてはRAGを活用しているのですが、COBOLのコードベースとそれを解説するドキュメント、そして暗黙知を蓄える仕掛けを備えています。
さらに大きな特徴として、メインフレームの質疑応答を作るにあたって、COBOLだけでなく、その上位にあるジョブの単位を示す「JCL」や、オンライントランザクションに関わるものも全て形式知化して登録しています。ここまでの範囲をカバーしているベンダーは、まだあまりないのではないかと考えています。
Q. どのような企業や担当者をターゲットにしているのでしょうか?また、適さないケースがあれば教えてください。
比毛さん: 製造業、流通業、金融や官公庁など幅広い業界の大規模企業様を想定しています。また、そういった企業様をサポートするSIerも対象です。現場としては、情報システムの部長から、実際にシステムを保守運用している現場のエンジニアまで幅広く活用いただけます。
導入前は、こうしたシステムの解析を全て人手で行っており、膨大な時間とコストがかかっていました。それをAIを活用することで、より短時間で、有識者の知識も生かしながら行えるようになります。
一方で、ERPやSAPなどのパッケージシステムへの置き換えが完了しており、残っているCOBOLのプログラムが100本程度しかないようなケースでは、費用対効果の観点からわざわざシステムを入れて解析する必要性は薄いかもしれません。ブラックボックスを紐解く目的で使うことは可能ですが、やはり対象となるプログラムの数が多いほど効果を発揮します。
工数30%削減・仕様書150本を2週間で生成。ベテランへの問い合わせもゼロに
Q. 実際に導入した企業では、どのような成果が出ていますか?
比毛さん: リリースから1年ということもあり本格導入はこれからですが、PoCの段階で既に大きな成果が出ています。
ある企業様では3ヶ月間のPoCを実施し、COBOLの開発生産性の検証を行いました。新任のエンジニアがチャットで「このプログラムをこう直したい」と相談し、提案されたコードを実際のコードに反映していくというやり方です。結果として、AIを活用しなかった場合と比べて、当初の目標であった15%を大きく上回る30%の工数削減を実現しました。さらに副次的な効果として、本来であれば発生していたであろうベテランエンジニアへの問い合わせ時間がゼロになりました。
また、別の製造業様でシステムの刷新を行った事例もあります。現行システムの仕様書をベースに、サーバーサイドで動くバッチ処理をSQLに書き換える作業でした。プロンプトの調整も含めて、150本もの仕様書をわずか2週間で作成することができました。短期間で圧倒的な成果を出せたことで、再構築する際のシステムのテストケース作成などにも大きく貢献しています。
導入の壁は”AIに100%を求めること”。トークン制限の課題と伴走型サポート
Q. プロダクトを導入して成功する企業と、うまくいかない企業の違いはどこにあるのでしょうか?
比毛さん: 仕様書を作成する際、定型的な部分は静的解析で行い、残りの部分をAIに任せるというように役割を分けています。これにより出力はかなり安定しましたが、AIが出力する部分はプロンプトの書き方一つで粒度や使われる用語が変わります。そのため、出来上がった仕様書に対して完全に100%の正確性を求めてしまうと、なかなか合格点が出せず、成功しづらい傾向があります。
また、ユーザー体験の面でまだ課題もあります。COBOLのプログラムは非常にサイズが大きく、現状のLLMの入力上限である100万トークンに対しても、3万行規模のコードを入力すると処理時間が長くなってしまうことがあります。コードをアップロードすれば自動的に仕様書が完成してダウンロードできるという直感的なユーザーフローにはなっていますが、そうした処理時間の部分は改善の余地があると考えています。
Q. 導入から運用において、どのようなサポート体制を提供していますか?
比毛さん: 基本的には、仕様書を作るためのプロンプトの調整や、企業ごとに異なるCOBOLの「方言」への対応など、微調整を伴走しながら支援していくやり方が多いです。
導入後については、お客様側で特別な手間がかからない想定で設計しています。プログラムを修正したら、チャット側にも最新の状態が反映されていく仕組みを作っているためです。
オンプレミス構築にも対応。機密データを守るセキュリティと料金体系
Q. 裏で活用されているAIにGeminiを選定された理由や、セキュリティ面への配慮について教えてください。
比毛さん: 弊社がGoogle Cloudのパートナーであり、APIを使い慣れているという点がきっかけですが、日々のベンチマークを見ていてもGeminiは非常に優秀なモデルだと評価しています。
セキュリティについては、会社としてJAPiCOマーク、ISO9001、ISO/IEC 27001などの認証を取得しています。お客様のCOBOLコードや仕様ドキュメントに対するGeminiのオプトアウトについては、Google Cloudの基盤側で保証されています。また、データのレジデンシー(保管場所)を気にするお客様も多いため、アップロード先のストレージを日本リージョンに限定し、データが国外に出ないようにすることも可能です。さらに、どうしてもクラウドだとセキュリティに懸念があるという企業様向けには、お客様のオンプレミス環境に構築するオプションも用意しています。入力するプログラムと返ってくる仕様書については暗号化され、オンプレミス環境とGoogle Cloudの間の通信となります。
Q. 料金体系や導入のステップについて教えていただけますか?
比毛さん: まず導入時の費用として、環境構築やプロンプトの調整、方言対応などの初期費用が最低60万円かかります。その上で年間利用料が発生します。一番ミニマムな「ライトプラン」は、ユーザー数と資産数の制限つきで、年間36万円からご利用いただけます。
これらに加えて、Google CloudのAIプラットフォームやコンテナ実行にかかる利用料は、実費としてお客様自身にご用意していただく形になります。
VBAなど対象言語の拡大、そしてIT領域を超えた”職人の暗黙知”の集約へ
Q. 今後の機能追加や製品のロードマップについて教えてください。
比毛さん: まずは対象とする言語やフレームワークを拡大していきます。現在はCOBOLに特化していますが、金融機関のお客様などで、現場が独自に開発したAccessのVBAがレガシーコードとして残っているケースが多々あります。そうしたVBAへの対応や、.NETといった言語にも対応していく予定です。
さらにその先の展望として、ITの領域を超えた活用も考えています。例えば、事務処理の領域や、職人さんの「暗黙知」をAIに集約させるといった用途です。最近ではClaude CodeやClaude Coworkといったツールも出てきており、MCPを使って接続できるようになっています。そうした仕組みを活用すれば、「AIベテランエンジニア」を事務処理的な暗黙知の蓄積に応用できると考えています。
Q. 最後に、システムの保守に悩む読者に向けてメッセージをお願いします。
比毛さん: 世の中的には今、「COBOLをやめてJavaに書き直す」というモダナイゼーションがブームになっています。しかし、その結果として「読みづらいJava」が量産されてしまっている状態をよく目にします。
私たちも当初は、このAIツールをその読みづらいJavaのメンテナンスに使えないかと考えていました。しかしふと立ち止まった時、「同じようにAIを使うのであれば、COBOLのままAIにメンテナンスさせた方がいいのではないか」という発想に至りました。これがこのソリューションの原点です。
弊社はCOBOLを別言語に移行する支援も行っていますが、この「AIベテランエンジニア」に関しては「COBOLのままでもいいんですよ」という強いメッセージを持っています。担い手のいないCOBOLシステムであっても、これからはAIがサポートして保守やメンテナンスができるようになります。「これからCOBOLをやめよう」と考えている方も、今安定して動いているのであれば、「COBOLのままAIに保守を支援させる」という新たな選択肢があることを、ぜひ頭の片隅に入れていただければと思います。