3ヶ月の開発期間を2週間に短縮。生成AIネイティブ企業が実践する全業務自動化

ゲスト

AIを前提とした事業開発と社内システム構築を牽引!
株式会社Quixotiks 代表取締役CTO 水島さん

2019年頃からAIエンジニアとしてのキャリアをスタートし、生成AIネイティブな企業として共同代表の有吉さんと共に株式会社Quixotiksを創業。1年以上の期間を経てエンジニアの生産性を数倍に引き上げる成果を創出。現在はトータル10名体制で、介護やメンタルケア業界向けの対話型アプリ開発、ローカルLLM構築を担当。代表取締役CTOとして研究開発計画の策定、モデルの学習、エンジニアのマネジメント、PRまで幅広く牽引している。

この事例のポイント

  • 3ヶ月の開発期間を2週間に短縮する方法: 仕様書駆動開発/テスト駆動開発をベースに、仕様の初期案をAIでリファイン。ナンバリングや工程表、テストコード作成まで構造化されたアプローチを採用し、手戻りを最小化している。
  • コンプライアンスの壁を突破するローカルLLMの活用: 介護施設の音声データなど、外部に出せないプライバシー情報はオープンソースのローカルLLMで処理。公開可能なデータは主要なクラウド型LLMを使い分けることで安全性を担保した。
  • 属人化を防ぎ役割分担を徹底する文書化の仕組み: インターンが世界中にいる環境下で、個人のノウハウをクラウド型のドキュメントツールへ文書化。各人の作業を可視化することで、AI活用時の役割分担の課題を未然に防いでいる。
  • AIと人がやるべき領域の切り分け方: 会社の理念やアイデアをデザインに落とし込む作業は、AIでは限界があると判断。自動化を推進しつつも、外部のデザイナーというキーマンを巻き込みながら人とAIの境界を柔軟に調整している。

プロトタイプ開発を3週間に短縮。申請書作成も2日間で完了

Q. 生成AIの推進体制と、定量的効果について教えてください。

A. AIエンジニア2名での創業時から全業務にAIを活用し、開発工数を大幅に短縮している。

水島さん: AIエンジニア2名で立ち上げた会社ですので、当初から生成AIネイティブな企業として事業をスタートしました。最初の社名を決める際もAIの提案をアレンジして決定したほどで、現在も役員2名とインターン・業務委託を含むトータル10名全員が日常的にAIを活用しています。

定量的な効果として、エンジニアの生産性は数倍に向上しています。具体的な事例として、とあるアプリケーションのプロトタイプを作成した際、以前であれば3ヶ月程度かかっていた工程が、1年以上前(2025年頃)の段階ですでに2〜3週間で完了できるようになりました。現在はAIの精度がさらに向上しており、より一層のスピードアップが実現できています。

開発フェーズにおいては、最初の仕様策定や工数設計から実際のコーディング、コードチェック、さらにはバージョン管理システムでの管理に至るまで、すべての工程でAIを活用しています。現在は実際のコーディング以外の製品開発ワークフローを、すべてAIで自動化する仕組みを構築しているところです。

生成されたコードの品質については、人間による目視レビューとAIによる自動レビューの両方を組み合わせることで、品質の担保とハルシネーションの防止を徹底しています。

創業時からAI活用を前提とし、営業メールや採用業務を自動化

Q. 創業時からAIを前提とされていますが、その背景や前職時代からの活用について教えてください。

A. 次元の異なる技術革新を受け、最新技術を用いた会社立ち上げを決意し、2019年からの研究を基盤に採用や営業を自動化している。

水島さん: 私たち2人がAIの分野で共通の関心を持っていたことが大前提にあります。以前からAI技術の革新は言われていましたが、近年の高度な生成AIの登場により、これまでとは次元の異なる技術革新が起きたと感じました。このパラダイムシフトを受け、最先端の技術を全面的に使って会社を立ち上げようと決意したのです。

AIエンジニアとしてのキャリアは2019年頃からスタートしていました。弊社では開発領域だけでなく、会社のさまざまな雑務や事務的な作業にもAIを活用しています。例えば、リード獲得ツールから出力された顧客情報のCSVデータから生成AIで営業メールの草案を自動生成する仕組みや、X(旧Twitter)のAPIを活用して自社が求める人材を自動でリスティングする採用エージェントのシステムを自社内で開発しました。

Q. AI活用を通じて解決したい組織の課題についてお聞かせください。

A. マーケティングやPRなど、本来専門知識が求められる業務をAIに任せ、会社運営全体の完全なAI化を目指している。

水島さん: 私たちが目指しているのは、会社運営の全体をAI化していくことです。これはAI業界で語られる最終的なビジョンとも重なる部分があります。

例えば、通常は専門知識を持ったマーケティング担当者が行うSEO対策やPR戦略の立案なども、現在ではAIが具体的なプランを提案してくれます。このように、人間の担当者ではなくAIに業務を任せる領域を増やし、採用やPRを含む会社運営全般をどんどん自動化していく方針で取り組んでいます。

クラウドツールでの文書化と仕様書/テスト駆動によるハルシネーション対策

Q. データ整理やプロンプト作成の工夫、およびコーディング業務における活用フローについて教えてください。

A. 個人の知識をクラウドツールへ文書化してAIで自動処理し、仕様書/テスト駆動開発によって手戻りを防止している。

水島さん: 弊社のインターンは日本全国や北米など世界中に散らばっています。このような環境で重要なのは、徹底した文書化です。個人の知識やノウハウを属人化させず、誰もが理解できるようにクラウド型のドキュメント管理ツールへ確実に保存していくことを強く意識しています。そして、その文書化の作業自体も生成AIやエージェントを活用して自動的に実行できる仕組みを取り入れています。

プロンプトを作成する際は、まず自分が最初の案を入力し、それをAIを使って拡張・最適化させるアプローチを全社的なルールとしています。これにより、プロンプトの質に対する個人の偏りを防いでいます。

実際のコーディングにおいては仕様書/テスト駆動開発を採用しています。エンジニアがお客様と協議した初期の仕様案をAIでリファインし、ナンバリングや工程表が整理された仕様書を自動生成します。その仕様に基づいてテストコードを記述し、構造化された状態で実装を進めることで、コーディングの手戻りを防ぎ、望んだ通りに正確に動作させることを重視しています。

Q. セキュリティが重視される用途におけるローカルLLMの活用と、社内データをAIに学習させる際の工夫を教えてください。

A. 機密情報はオープンウェイトのローカルLLMで安全に処理し、公開可能なデータは主要なクラウド型LLMを使い分けて連携させている。

水島さん: セキュリティ面では、プライバシーに関わる機密データや外部に出したくない情報はすべてローカルLLMで処理し、一般的な情報はクラウド型LLMを利用するという明確な使い分けをしています。

例えば、介護施設からお預かりした音声データはクラウドにアップロードできないため、オープンウェイトのローカルLLMを用いて自社の計算リソース内で文字起こしと個人情報の匿名化を行っています。これは単なる効率化ではなく、コンプライアンスの遵守という質的な側面において非常に大きな価値をもたらしています。

また、社内データをAIに学習・連携させる際の工夫として、データ加工・整形に関して、markdownやマーメイド図、json linesなどデータ特性によって適切なデータ構造やファイル形式を採用しています。社内のナレッジについては、全データをRAG化するまでには至っていませんが、このように適切に処理した公開可能なデータのみを連携させてOpenClawにテックブログの草案を自動作成させるといった活用を行っています。

デザイン領域の限界を見極め、文書化による分担でチームを構築

Q. 全員がAIを活用する組織として、推進の中でぶつかった技術的な壁について教えてください。

A. 人間の細やかなニュアンスが求められるデザインなどは外部と連携し、全員がエンジニアである強みを活かして技術的な壁を回避している。

水島さん: 最も意識しているのは、人がやるべきこととAIができることの明確な区分けです。例えば、現在ではAIを使ってデザインワークを行うことも可能ですが、会社の方針や独自のアイデアをデザイン的な表現に落とし込む作業においては、まだAIでは人間の細やかなニュアンスを完全に表現しきれない部分があると感じています。そのため、属人的な感覚が求められる領域についてはAIに固執せず、外部のデザイナーと協働するという判断を下しています。

技術的な壁については、弊社は全員がエンジニアであり、AIの知識を持っている状態からスタートしているため、AIの使い方がわからないといった導入推進によくある課題にぶつかることはありませんでした。

Q. コーディングをAIに任せることで生じやすい役割分担の課題に対して、どのような仕組みを整えられたのでしょうか。

A. 各人が取り組む作業内容を文書化して可視化し、チーム全体で状況を正確に把握することで、分担に関する課題を未然に防いでいる。

水島さん: コーディングをAIに任せることで役割分担が不明確になるという課題も聞かれますが、弊社では一度も問題になったことはありません。

ここでもやはり、文書化の徹底が鍵になっています。各人が今何に取り組んでいるのかを文書化してしっかりと可視化し、チーム全体で正確に把握できる状態を維持しています。文書化をはじめとする情報共有の基盤がきちんと機能していれば、AIを活用した分担においても大きな困難は起きないと考えています。

人とAIの役割を柔軟に調整し、研究開発や組織構築を全自動化

Q. 今後さらにAI活用を広げていきたい領域や、AI導入を検討する企業の担当者へのアドバイスをお願いします。

水島さん: 営業やマーケティング、PRといった領域については一部で活用できていますが、まだ完全な自動化には至っていません。今後はこれらの領域や採用活動において、より深くAIを活用していきたいと考えています。また、研究開発のワークフロー全般についてもAIを用いたシステム化をさらに進め、より洗練された形での運用を目指していきます。

AIの発展段階に応じて、人がやるべきこととAIができることの境目を柔軟に調整し、徐々にAIに委ねる範囲を広げていくのが基本的な方針です。これから会社を立ち上げるフェーズであれば、最初からそうしたAI前提の組織作りをやるべきですし、むしろやらざるを得ない時代になります。

一方で、すでに既存のワークフローが確立している企業にAIを導入していく場合にはさまざまな難しさがあると思います。そうした壁に直面している企業は、ぜひ外部の知見も頼りながら推進していただきたいです。

弊社では自社事業の展開に加え、その過程で培ってきたローカルLLMやAIエージェントの構築ノウハウを活かし、受託開発や共同開発の提供も行っています。もしご興味をお持ちいただける企業がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡いただければ幸いです。テックブログも公開しておりますので、ぜひご覧ください。https://zenn.dev/p/quixotiks

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